Ellice Peters

 修道士カドフェル・シリーズ 作品別 内容・感想1

聖女の遺骨求む   6点

1977年 出版
2003年03月 光文社 光文社文庫

<内容>
 シュールズベリ大修道院にて一人の修道士が聖女ウィニフレッドからの啓示を受けたという話がもたらされた。シュールズベリ修道院ではその聖女の遺骨を受け取るべく、さっそく聖ウィニフレッドが埋葬されている村へ修道士達を派遣することにした。ところがその村で聖女の遺骨を受け取ろうとするための交渉は決裂し、難航状態におちいることに。そんななか、村での遺骨を渡すことに反対していた地主が殺害されるという事件が起こる!

<感想>
 エリス・ピーターズの本を読むのは初めてであり、よって修道士カドフェルシリーズを読むのも初めてのこと。今回光文社文庫版で復刊されたのを機会にカドフェルシリーズを読み尽くす予定。

 本書を読んで一番に感じるのは、“読みやすいじゃん”ということ。これは自分自身で勝手に“修道士”とか“教会”とかいった言葉から難しいものを連想していたからにすぎない。読んでみるとこれがまた、難しい哲学書とか宗教書といった印象はなく、ただただエンターテイメント作品として読むことができるようになっている。

 登場人物は、質実剛健で昔は悪だったが今では完全に落ち着いついた僧である主人公。温厚で目立たない主教。いばりくさって、見栄っ張りな副主教。そして、狂信的な若き僧と、対照的に落ち着きのない若い僧。といったドラマであれば王道のような配役。こうした配役らが聖女の遺骨を入手せんと夢のお告げに従って小さな村へ訪れるのだが、そこで殺人事件が起きてしまう。

 前述では本書はエンターテイメント作品であると述べたが、もちろん宗教色も強いものとなっている。遺骨を手に入れるために、ありとあらゆる手段(宗教的な)を利用する教会側。そのうさんくささを感じつつも、宗教的理詰めで遺骨は村のものであると主張する村の代表者。そして殺人事件が起きたら起きたで、そこに宗教的な見地を取り入れて、また骨の行方について主張せんとする。こうした繰り返しを物語りにうまく沿わせながら犯人探しと遺骨の主導権の争いらが語られていく。

 そしてなんといってもカドフェルが持ち上がったさまざまな問題を自らの手によって解決せんと孤軍奮闘するさまがなかなかのもの。そして最後は力技ですべてをうまく治めてしまう。いやぁー、よくできているというほかない。これは次を読むのが楽しみになってきた。


死体が多すぎる   7点

1979年 出版
2003年03月 光文社 光文社文庫

<内容>
 1138年、スティーブン王と女帝モードの従兄妹同士どうしの争いはすでに2年が経過し、混乱の極みにあった。スティーブン王は女帝モードがフランスにいる隙にシュールズベリ城を陥落する。その際、モードの支持者であるファルク・エイドニーの娘、ゴディスを取り逃がす。そのゴディスの行方を、婚約者であったヒュー・ベリンガーは何故か執拗に探そうと・・・・・・
 また城が陥落した際、王は多くの捕虜を処刑した。埋葬を頼まれた修道士カドフェルが死体を調べたところ1体、死体が多いことが判明する。いったいこの死体は何者なのか。

<感想>
 1作目を読んだとき、その面白さにびっくりしたカドフェルシリーズであるが、2作目の本書も前作に負けず劣らずの面白さに再び驚かされてしまう。内容はミステリーというよりは、冒険小説的な色合いが濃いのだけれども、その時代背景の雰囲気が良く出ている本としてでき上がっている。

 まず、その設定が卑怯なくらい魅力的である。これは他のミステリーではなかなかできない事だと思うのだが、時代が1135年から始まったイングランド内戦のまっただなか。その戦によって起きた事件が修道院に(主にカドフェル個人にだが)飛び火してくる。

 ミステリーとしては、タイトルのとおり“死体が多すぎる”ということが主題となっている。これはスティーブン王が処刑した人数よりも死体の数が1体多くなっているというもの。というわけで、その死体の身元は? 誰が何故? ということが問われてゆくことになる。しかし、その主題よりも本書で面白く感じられるのは修道士カドフェルとヒュー・ベリンガーとの駆け引きである。まさしく、くせものと表現したくなるような怪しい行動をし続けるベリンガー。そのベリンガーがいったい何を考えているのかがわからないものの、カドフェルは彼を出し抜かなければならない立場に立たされている。そしてクライマックスの2人の対決は本書の見所となっている。さらには、本書はそこで終わらずにラストにもまた別のこの時代設定ならではのクライマックスが用意されている。

 豪華というか本当に映画で見てみたいくらい魅力的な小説となっている。カドフェルのシリーズはまだまだ積読になっているが、このクオリティでシリーズが続いているならば積読にしておくにはもったいない。次の3作目も早めに読みたいと思わされた。それほどの内容の本であった。


修道士の頭巾   6点

1980年 出版
2003年05月 光文社 光文社文庫

<内容>
 自らの土地を教会に寄進することにした大富豪の荘園主が何者かに毒殺されるという事件が起きた。使われた毒は“修道士の頭巾”の異名を持つ、猛毒のトリカブトであった。犯人と疑われているのは、荘園主の妻の連れ子。彼は父である荘園主とは仲が悪く、その荘園主が毒で亡くなる直前に喧嘩をして家を飛び出していたのだった。
 カドフェルは事件で使われた毒が薬用として自分が作って保存してたものだとわかり、事件に乗り出すことに。すると、当の荘園主の妻というのが、40年前にカドフェルの恋人であった女性であることに気づき・・・・・・

<感想>
 前2作から比べると本書は地味な印象がぬぐえない。事件自体はひとつだけであり、誰がどのような目的で毒殺したのかということのみ焦点が置かれる。ただし、それを取り巻く登場人物たちに、カドフェルの昔の恋人やら、疑われた息子とその甥やらと魅力的な人々が大勢出てきて、飽きのこない物語の展開となっている。

 そしてラストではまたしても劇的な展開で犯人の告発がなされ、見せ場をつくる技術というものは3作目にしても今だ健在である。意外なところから出てくる真犯人と、突如の展開の中でその犯人を告発するカドフェルとの対決は見ものである。

 また、本書では修道院長を巡っての展開もなされているので、シリーズとしても決して見逃せないものとなっている。重厚なミステリーとして、読者を魅了し続けるカドフェル・シリーズ。第3作も読者の期待を裏切るようなことは全く無かった。まさに安心して楽しむことのできる1冊である。


聖ペテロ祭殺人事件   6点

1981年 出版
2003年07月 光文社 光文社文庫

<内容>
 聖ペテロ祭が間近に迫ってきたとき、町のギルドの長たちが修道院に税の一部を免除してくれるよう要求をしてきた。町は去年の戦争の痛手を受け、この祭りの費用でその修復にまかないたいというのである。しかし、新しい修道院長はその要求をはねつけてしまう。
 その後日、聖ペテロ祭を明日に控えたとき、ギルドの長の息子たちが修道院長の非道さを商人たちに訴えようとするのだが、突如いさかいに発展してしまう事に。そして次の日、そのいさかいの中心にいた商人のトマスが死体で発見されることに。当然、昨日の争いの中心にいた青年フィリップが疑われることになるのだが・・・・・・。
 トマスの美貌の娘エンマに請われてカドフェルは執行副長官ヒュー・ベリンガーと捜査に乗り出すのであったが・・・・・・

<感想>
 前の3巻までに登場した人物が数多く登場していて、シリーズものとしての雰囲気がより強く感じられた4巻目。メインは当然カドフェルで、多くの場面に登場していたのだが、今回はいまいち目立たなかったという印象。

 今回の物語の重要事項を挙げてみると、新修道院長ラドルファスの手腕について、ワイン商人トマスを殺害した者の正体と目的は、エンマを中心とするコルビエール、フィリップらとの恋の行方は、といったところであろうか。また、本書にはシリーズものとして前々作からの戦争を巡る話も含まれているので是非とも読んで確認してもらいたいところである。

 で、今回の出来具合はどうかといえば、ちょっとうまく行きすぎと言うか、あまりにも王道すぎる路線という感じであった。でも本シリーズは元々そういう話なのだからしょうがないともいえるだろう。いつもの流れであれば、カドフェルと犯人との駆け引きが楽しめるところなのであるが、今回はカドフェルの活躍を奪わんと若い者達が奮闘する。そして話としてはドラマチックな方向でうまくまとめられている。

 個人的なカドフェル・ファンには物足りないかもしれないが、シリーズとしてこれらの物語が好きならば十分満足させられる内容であろう。


死を呼ぶ婚礼   6点

1981年 出版
2003年09月 光文社 光文社文庫

<内容>
 カドフェルが努める修道院にて盛大な婚礼が行われようとしていた。花婿は50を超えてなおも精力的なドンヴィルという男。それに対し、花嫁は40歳以上も年下のイヴェッタという娘。それはいかにも財産目当ての伯父と叔母の手による政略結婚という図式が見え見えのものであった。しかし、婚礼の前日の夜に花婿のドンヴィルは誰にも告げずに突如姿を消してしまった。そしてその後、彼は死体となって発見された。犯人は花嫁を慕う、ドンヴィルの若い従者であると思われたのだが・・・・・・

<感想>
 5作目にもなると、展開がありきたりというかパターン化しているようにも見られる。今回も虐げられた女性と、それを救おうとする若者という図式を基に進行する物語となっている。

 とはいえ、時代背景を含めた物語全体の構成は良くできている。登場人物の一人一人が生き生きと活動し、それらによって物語が紡がれてゆくさまは見事といえよう。話の内容は結局のところ勧善懲悪モノという気がするが、それはそれで安心して読むことができる。また、物語の進み具合がマンネリだと言っても、結末の付け方は相変わらずうまいと言うしかない。安定したカドフェル・シリーズの1作品と言ったところか。


氷のなかの処女   6点

1982年 出版
2003年11月 光文社 光文社文庫

<内容>
 シュールズベリの修道院に他の修道院からの使いが来ていた。彼が言うには町が襲撃にあった際に高貴な身分の姉弟の二人が町から命からがら逃げ出し、その後消息不明となったのだと。そして、現在その行方を捜している最中であると・・・・・・。
 そんな折に別の修道院からカドフェルに怪我人の手当ての要請が来た。なんでも身ぐるみはがれて大怪我を負った修道士が倒れていたとのことだった。カドフェルはさっそくその男の手当てに向かったであったが、そこで行方不明になっていた姉弟の消息を知る事になり・・・・・・。

<感想>
 6作品目も相変わらずの面白さが続いている。こんどはカドフェルが消息不明になった姉弟の行方を捜す事件に巻き込まれてゆくのだが、これがまた、あちらこちらへとカドフェル他大勢の人々が引きずりまわされるはめになるという破天荒な作品になっている。

 とにかく物語が動く動く。怪我を負った修道士のところへ行ってみれば、行方不明の弟だけが見つかり、かと思うとまた違うものが見つけられたり、見つかったものがいなくなったりと、とにかくあちらこちらへ行ったり来たりし続ける。それもただ見つかったり、いなくなったりするだけではなく、さまざまなものが物語の中で付随されて行くので、読んでいるほうも飽きる事はない。

 さらには、このような展開であるのだから本書は冒険ものという趣が強い作品のように思えるのだが、きちんとミステリたる部分もおさえられたりしているので、あらゆる意味で読み応えのある作品となっている。

 作中ではカドフェルがそれなりに目立っているとは思えるのだが、その裏の目だたぬところで州執行副長官のヒュー・ベリンガーがやたらと苦労していたのではないかと思われる。しかもラストでは、なぜかカドフェルが一番報われるような展開になっているのだから、ヒューはなんとなく働き損としかいえないような気が・・・・・・


聖域の雀   7点

1983年 出版
2004年01月 光文社 光文社文庫

<内容>
 夜半の祈りの最中、教会に一人の若者芸人が群集に追われ、殴打されながらも、なんとか逃げのびてきた。町の者達が言うには、その芸人は結婚披露宴の余興に来ていたのだが、主人を殴打し、金品を奪って逃げたのだという。ただし、その芸人は所持品らしきものは何一つとして持っていなかった。また、芸人が言うには、余興の最中アクシデントがあり、それに怒った家人に杖で殴打され、報酬も払ってもらえずに家から追い出されたのだという。その後、突然彼らに襲われて、金品が奪われたことなど知らないというのである。
 教会では追われてきたものを一時的に40日の間、かくまう事ができるという取り決めがなされている。カドフェルらは、その間に実際に起こった出来事を調べようとした矢先、早くも次の事件が起こり・・・・・・

<感想>
 今回、本書を読んでいて思ったのは、昔の人々の身分や階級というもの。階級とまで言ってしまうと仰々しいのであるが、その昔、各地を放浪して芸を見せることを生業とする者が、低い身分として扱われたのは間違いのないことであろう。本書のなかでは色々な条件が重なって、芸人にとっては良い方向へと物事が動いていくのだが、これがひとつまかり間違えば、この芸人が犯人だということで軽く片付けられたかもしれない。そう思うと、なかなか一人身で芸を商いながら放浪するという所業がいかに大変な事かというのを思い知らされる。

 また、この若き芸人を見ていて思い出されるのは、栗本薫著のグイン・サーガに登場するマリウスという人物。なんとなく、この物語で出てくる若き芸人とマリウスがだぶり(軽薄なのに微妙な正義感を持ったところなど)、グイン・サーガの物語と照らし合わせると、本書の物語とは別に、なかなか楽しく読むことができた。

 と、芸人の話ばかりに終始しそうなのだが、本書の主となる人物は実は意外な所に存在する。最初に出てきたときは気にもとめない人物であったが、話が進んでくるにつれ、徐々に存在感が増すように書かれている。結局のところ本書は虐げられた芸人の話ではなく、虐げられ続けてきたひとりのある人物の話であったことがわかるのである。

 というように、今回もなかなか水準の高い作品であった。閉ざされたひとつの教会と、小さな街の中の話でしかないにもかかわらず、よくぞここまでさまざまなネタが書けるものだと感心するほかはない。


悪魔の見習い修道士   6点

1983年 出版
2004年03月 光文社 光文社文庫

<内容>
 カドフェルらが勤めるシュールズベリ修道院に、荘園主アスプレー家の次男が新しく見習い修道士として入る事となった。その青年メリエットは見た目は熱心なのであるが、誰とも打ち解けずに好んで孤立してゆくことに。そして、夜な夜な大きな叫び声をあげてうなされることにより、“悪魔の見習い修道士”などと陰口をたたかれるようになる。
 そんなある日、大聖堂からの使いのものが目的を果たす前に行方不明になったと言う知らせがもたらされる。なんでも、その使いはアスプレー家に立ち寄った後、足取りがつかめなくなったのだと言うのだ。この事件はアスプレー家に何らかの関わりがあるのだろうか? また、夜な夜なうなされるメリエットにもなんらかのかかわりが!?

<感想>
 相変わらず、うまく書かれている作品だと感心するほかない。今作では悩める見習い修道士と、行方不明になった使者の事件が絡み合った物語となっている。

 今作にて、うまく書かれていると思われたのは人物造形。荘園主アスプレー家の人々と、そのアスプレー家と婚約をかわしたリンデ家の人々の性格が実にうまく描かれている。とはいっても、別に人物描写に長々とページがとられているというわけではない。にも関わらず、物語全体を通してそれぞれの登場人物の性格が明確にされていくように書かれている。

 本書のミステリとしての内容も、二転三転する展開となっていてうまく書かれているなと感じられるのだが、それだけに留まらず、物語り全体の描き方がうまいと今更ながらに感心してしまう。いや、本当にもう相変わらず良く出来ているシリーズだとしか言いようがない。


死者の身代金   6点

1984年 出版
2004年05月 光文社 光文社文庫

<内容>
 スティーヴン王と女帝モードとの争いが激化する中、州執行長官のプレスコートが敵の捕虜となった。そのとき、シュールズベリ修道院では別の女子修道院にて捕らえられたウェールズ人の若者が連れてこられており、この青年とプレスコートとを捕虜交換することが考えられた。相手側との話はすんなりまとまり、捕虜交換が行われる事となったのだが、ウェールズ人の青年とプレスコートの娘とが恋に落ち、話はややこしいことへと・・・・・・

<感想>
 このシリーズの背景となっている戦争であるが、今のところはまったく沈静化する動きはなく、逆に事態はますます悪化しているようである。今までは戦乱もシュールズベリの外でという感もあったのだが、徐々にシュールズベリの町や修道院でさえも巻き込まれつつあるのではないかと感じられる。

 特に今回はシュールズベリの執行長官プレスコートが戦乱に巻き込まれ、大怪我をすることとなる。このプレスコートという人物は今までは名前は何度も出てきているものの、さほど物語自体には関わってこなかったのだが、今回はいろいろな意味で大きくクローズアップされることとなる。

 また、本書のもうひとつの焦点はウェールズ人の3人の男女とそこにプレスコートの娘を合わせた“四すくみ”の男女関係にある。これらがどのように入り組みあい、そして事件に関わっているのかが、物語が進むにつれて徐々に紐解かれてゆく。

 こういった男女の関係はもはやこのシリーズではお約束事であり、特に特筆すべき点はないものの、物語としてはそれなりに楽しんで読む事ができるようになっている。戦乱の様子と、4人の男女の行方と、そこから派生したひとつの殺人事件。そして、これらの事件がまたうまくまとめられており、こういった内容のものを書かせれば、この著者の右に出るものはいないだろうと言いたくなるような、綺麗すぎる終りかたで幕が引かれている。


憎しみの巡礼   6点

1984年 出版
2004年07月 光文社 光文社文庫

<内容>
 スティーブン王が囚われの身となり、女帝モードの軍が優勢となりつつある1141年5月。修道士カドフェルらが住む、シュールズベリでは聖ウィニフレッドの祭りが行われようとしていた。その祭りを一目見ようと、多くのひとびとが村へとやってくる。その中でカドフェルの目を惹いたのは、胸に大きな十字架を下げ、裸足で歩くという苦行を続ける青年とその青年のそばから片時も離れないもうひとりの青年。足の悪い弟と一緒に旅をしてきた姉。そして、不穏な雰囲気をまとう、幾人かの旅人達。そういった人々が集まる中、村の中でちょっとした盗難事件が起こることとなり・・・・・・

<感想>
 カドフェル・シリーズ10巻目ということもあり、序盤は現在までの戦線の様子と今までの作品を思い起こすかのような内容に終始するのかと思えたのだが、今作は今作できちんと独自の物語が語られていた。ただし、そういったなかでも本書では1巻の「聖女の遺骨求む」と6巻の「氷のなかの処女」に深くからんだ内容となっているので、忘れた人は軽く目を通しておくと、いっそう本書を楽しめることとなるであろう。

 今作では女帝モードのもとで、高貴な行いから命を落とした騎士の話が核となり物語が進んでいく。といっても、その話が注目されるのはだいぶ話が進んでからのことで、序盤は足の悪い弟と姉、苦行を行う青年と彼に付き従う友人の様子、そこに盗賊たちがからんでの話が展開されてゆく。

 そしてこれらの要素がそれぞれ絡み合いながら、最終的にはうまく収集されることとなる。まぁ、このへんの展開については、もはやうまく描くのは当たり前と、その手腕を賞賛する他はない。

 また、さらには今までのシリーズを通しての話も含めて、うまく話が収められているところもさすがといえよう。こうして読んでいくと、このシリーズはバラバラに読むよりは間隔をあけずにいっぺんに読み通したほうが良かったのかなと思わずにはいられなくなる。

 あと短編集も含めて11冊が残っているが、来年中をめどにそろそろこのカドフェル・シリーズも読み通そうかなと思っている。ただ、読み終えてしまうほうがなんとなくもったいない気が・・・・・・




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