<内容>
有名女流作家イーディス・メアリー・マーカーの自宅に集う人々。彼らはマーカーが主催するミステリ講座に出席するために集まってきたのであった。しかし、その講座をよそに“天の声”といわれる銅鑼の音とともに殺人事件が幕を開ける。最初に殺された人物はマーカーの秘書である老婦人。犯人の目的はいったい何なのか? そして謎の言葉“ルスピアム”が意味するものとは!?
<感想>
予想していたよりも本格スピリットにあふれていた作品なので満足する事ができた。巻末に“手掛かり索引”までが挿入されたこだわりの探偵小説となっている。
前半は殺人事件が起きた後、着目されることとなる動機はもちろん遺産がらみ。しかし、後半になり新事実が浮かび上がることによって遺産がらみだけではなく、別の視点からの容疑も浮かび上がってくるように描かれている。
本書では前述したように“29の手掛かり索引”というものが掲載されている。これだけ手掛かりがあることからか、読む人はある程度は真犯人について予測がつくのではないだろうか。
ただ、この作品で納得しがたかったのは、少なくとも登場人物である作家のマーカーには事実のほとんどが提示されているので、犯人について見当がつくはずなのではないかということ。にも関わらず自分だけが知っている“ルスピアム”というものの謎をひた隠しにしたりと理解しがたいところがいくつかあった。
とはいえ、存分に本格推理小説というものにこだわった作品ではあるので、読んで決して損のない作品であることは確か。この作品くらいのレベルの著書がまだまだあるのならば、クリフォード・ナイトという作家の本はこれからも翻訳され続けるのではないだろうか。
<内容>
サーカスの一行を乗せた船、“サーカス・クイーン号”。旅の途中、ゴリラの檻のなかで団長のカービー・マーティんが死んでいるのが発見される。状況からして、ゴリラに殺害されたと予想され、団長の死体は海に葬られる。その後、サーカス団は団長の姪であるドリス・マーティンが引き継ぐことに。しかし、旅の途中でさらなる事件が起き、ひょっとすると団長の死も何者かの手によるものかと・・・・・・。途中でサーカス団の一向に付き添い始めた、大学教授のハントン・ロジャーズが捜査に乗り出す!
<感想>
サーカス団に関わる者たちが、ひとりまたひとりと、どんどんと殺害されていく連続殺人事件が描かれた作品。サーカスという特殊な舞台とミステリ性が非常にマッチした作品であると思われる。
ただ、微妙に感じられたことも多々ある。ひとつは、色々な人たちが殺害されていくものの、動機らしきものが見当たらず、また特に読者の考えを誘導していくような方向性も見えず、単なる無差別連続殺人事件のように見えてしまうといったところはどうかと。また、殺害される人々ばかりが個性的な人物で、犯人と目されるはずの残された者たちのほうが没個性の人物ばかりで、真相が明かされてもサプライズ性が薄れてしまっている。
そんなこんなで、基本的なミステリ作品として十分な要素を踏まえているように思えつつも、そこかしこで不満が残る作品であったなと。また、サーカスの経営面ばかりを強調したような作品であったが、せっかくサーカスを舞台にしているのだからそちらの活動を描き表してもらいたかったところ。