ラ行−ル  作家作品別 内容・感想

死のバースデイ   The Birthday Murder (Lange Lewis)

1945年 出版
2006年03月 論創社 論創海外ミステリ44

<内容>
 脚本家のヴィクトリアは再婚相手で映画プロデューサのアルバートと良好な夫婦生活を送っていた。二人の共同作業となる映画の企画も順調に進行していた。そしてヴィクトリアの誕生日の朝、夫が客間で死んでいるのを発見する事に! 死因は毒物によるもの。いったい誰が? 何のために? 嫌疑は妻であるヴィクトリアに向けられることとなるのだが・・・・・・ロサンゼルス市警警部補リチャード・タックが捜査を開始する。

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<感想>
 出来は普通のように感じられたものの、よくよく考えてみると、薄いページ数にもかかわらず、きっちりと書けている作品であった。心理サスペンス小説として、それなりに良い出来であったと思われる。

 ついこの間、ヘレン・マクロイの「幽霊の2/3」を読んだのだが、この作品もそれと同じように予想した人物が死なずに、意外と思える人物が殺害される。それにより、動機に検討がつかず、誰が何のために殺害したのか予想だにつかない展開となっている。

「幽霊の2/3」と比べれば、こちらの方があっさり目だが、心理的な面が強調される動機がうまく描かれていると感じられる。論理的には微妙な面もあるものの、うまく描かれた心理サスペンス・ミステリの良書と言えよう。


友だち殺し   Murder Among Friends (Lange Lewis)

1942年 出版
2015年06月 論創社 論創海外ミステリ149

<内容>
 キャスリン・ファーはコールダー医学部にて秘書の仕事をすることとなった。なんでも前任者の秘書ガーネット・ディロンが突然、失踪したというのである。その後、学内を案内してもらうキャスリンであったが、医学部内の死体安置所であるものを発見することに。それは、失踪したはずのガーネット・ディロンの死体であった。殺人捜査班の警部補、リチャード・タックは元秘書の死について、捜査するのであったが・・・・・・

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<感想>
 この作品についてだが、出版された当時に読んだ人たちに、どんな受け入れ方をされた作品なのだろうかと不思議に思った。いわゆる学園ミステリ的な受け入れ方なのか? それとも警察小説か? はたまたサスペンスミステリか? 書かれてから70年以上経って、邦訳されて読むこととなったわけだが、どのようなスタンスで読めばいいのかよくわからなかった。

 何しろ、警察小説としては捜査がいい加減で中途半端に思え、学園ミステリとしても秘書視点ゆえに、これまた中途半端。ミステリとしても、肝心な証拠や証言が後半になってからようやく出てきたりして、それはもっと早くに開示しておくべき事象では、と思えることが多々。

 そんなこんなで、あまり面白いと思えなかった作品。終わり方も、こんな感じで本当にいいのかと思えてならないほど。


夜鳥(よどり)   Les Oiseaux De Nuit(Maurice Level)

2003年02月 東京創元社 創元推理文庫

<内容>
 フランスのポオと呼ばれた、短編の名手モーリス・ルヴェル。恐怖と残酷、謎と意外性に満ちたルヴェルの珠玉の作品集。

<感想>
 本書は昭和三年に日本にて出版されたものの復刊である。読む前の印象としては、古く、しかも海外の短編集であれば読みにくく、読了するのに時間がかかるだろうと思っていた。そのために一時、積読になっていたのだが、いったん読んでみるとその読みやすいのに驚いた。そして一話目の内容から惹きつけられて、さほど時間をかからずに一冊を読み通してしまった。読む前の堅そうなイメージから手にとるのを控えてしまうにはもったいない一冊といえるだろう。

 この短編集の全編にただよう雰囲気は“闇”。悪だとか残虐だとか、そのようなものとは異なる雰囲気をもつ。普通に暮らしている一般のひとびとが、ふとしたことから“闇”にそっと引き込まれてしまうといったような印象が強い。その主人公たるや、乞食であったり、孤独な男、医師、売春婦、そういった街で普段の日々をおくり過ごす者達が誰にも知られずそっと消えていくかのごとく、“闇”へ落ちていく。それがグロテスクでもなく、荒々しくもなく、静寂の中で淡々とフェードアウトしていくような落ち方に深い味が感じられる。

 これは今年一番の印象に残る短編集といってよいものであろう。


八点鐘   Les Huit Coups de L'Horloge (Maurice Leblanc)

1923年 出版
1961年01月 新潮社 新潮文庫

<内容>
 「塔のてっぺんで」
 「水瓶」
 「テレーズとジェルメーヌ」
 「映画の啓示」
 「ジャン=ルイの場合」
 「斧を持つ貴婦人」
 「雪の上の足跡」
 「マーキュリー骨董店」

<感想>
 ルブラン描くルパン・シリーズというと冒険物という印象が強い。しかし、その短編においては今の世で語られる代表的なトリックがいくつも使われている。短編を読めば実はルブランはトリック・メーカーでもあることに気づかされる。とはいうものの、ルブラン描く物語は決してトリックを主とおくことなく、ロマンスを重視した物語が描かれている。惜しげもなく、さらりとトリックを扱う振る舞いは、その作風においてまでもルパンに翻弄されているかのように錯覚してしまう。

「塔のてっぺんで」
 事件を推測のみで指摘する部分が多く、ミステリーという感じがしないのだが、二十年間動いていなかったはずの鐘がなる場面は印象的。プロローグという印象が強い。

「水瓶」
 スピーディーな展開であるが終わり方がとても微妙に感じる。レニーヌ公爵は果たして本当に謎を解いたのだろうか疑問。
 別の解決を考えてみると、
(ややネタバレ気味↓)
 @実は勢いだけで容疑者に無理やり告発させて、事件を解決したかのように見せかけた。
 もしくは、
 A証拠隠滅を図る放火は実ははレニーヌ公爵が行ったもので、まんまと金をせしめた。


「テレーズとジェルメーヌ」
 これぞ有名な密室トリック。しかし本編で主となっているのは密室トリックではなく、二人の女性の対決であるかのように思われる。あくまでもロマンス重視というところか。

「映画の啓示」
 レニーヌ公爵の小さな親切、大きなお世話といったところ。美女と野獣。

「ジャン=ルイの場合」
 これぞレニーヌ公爵らしい解決の仕方といえよう。また、当事者の心理的描写がよく表されていると感じられた。なんか日本の時代劇にもこういうネタがありそう。

「斧を持つ貴婦人」
 サスペンス・スリラー。苦悩しながら事件を解決しようとするレニーヌ公爵。その様は怪盗対狂女といったところ。終わりよければすべてよし。

「雪の上の足跡」
 これも古典トリック。この有名な足跡トリックもルブランが最初に考案したものなのだろうか? だとしたら驚きである。

「マーキュリー骨董店」
 冒険の締めくくり。何から何までレニーヌ公爵の計算尽くしといったところか。

 全体的な印象を述べると、まさにレニーヌ公爵の事件といったところ。レニーヌ公爵が8つの事件を解いてはいるのだが、その8つの事件を期間内に解くという条件ゆえに、たいした事件ではないものにまで顔を突っ込んでゆく様相がなんともいえない。しかもいくつかの話では、事件を強引に解決したように見せかけているだけに思えるところがなんともおかしい。ロマンスのためならば、なんでもやってしまうというように感じられるレニーヌ公爵の強引さには脱帽である。


バーネット探偵社   L'agence Barnett et Cie (Maurice Leblanc)

1960年 新潮社 新潮文庫

<内容>
 「したたる水滴」
 「ジョージ王の恋文」
 「バカラの勝負」
 「金歯の男」
 「べシューの十二枚のアフリカ株券」
 「偶然が奇跡を作る」
 「白手袋・・・・・・白ゲートル」
 「ベシュー、バーネットを逮捕す」

<感想>
「8点鐘」を読んだ後にこちらを読んだのだが、ずいぶんまたそれとは印象の異なる短編集となっている。「8点鐘」のほうは、推理とラブロマンスが溶け合った作品というところだったが、こちらは盗賊根性まるだしの“悪漢小説”といった内容になっている。タイトルも「バーネット探偵社」よりも「バーネット盗賊社」のほうがふさわしいであろう。そしてまた、権力をあざ笑うかのような風刺が感じられる象徴となっているベシュー刑事の存在も見ものである。
 新潮文庫版が新装版となり、読みやすくなったので読み逃している人はぜひともこの機会にごらんあれ。誰にでもお薦めできる“快笑”小説。

「したたる水滴」
“あのしたたる水滴・・・あのしたたる水滴”という断末魔の言葉が見事に表されている作品。しかしその言葉に隠された恐怖も怪盗の手によって、すっぱりと断ち切られる。とにかくうまくできている作品だと感じられた。

「ジョージ王の恋文」
 悪党の犯罪を暴くにはどうすればよいのか? それは、その悪党を上回る悪党を連れてくればよいのだ。小悪党をねじ伏せて、金持ちからは巻き上げる。バーネット氏の快刀乱麻の活躍。

「バカラの勝負」
 トランプの席での殺人事件。心理的描写が見事に表現された作品。これは短編といえどもなかなかあなどれない。

「金歯の男」
 教会から盗まれた宝を取り戻せ。その犯人の意外な正体とは? ちょっとした犯罪に手を染めてしまったとしても、その行為は神によって見られている。ときには、その神がシルクハットをかぶり片メガネをしていることもあるのだが。

「べシューの十二枚のアフリカ株券」
 あまりにも、あまりにも人間的はベシューのようすがまざまさと描かれてる。それにしてもベシューは不謹慎だ。そしてここで用いられている強奪トリックは秀逸。

「偶然が奇跡を作る」
 弟の死を嘆く、姉の願いは届くのか。高所から墜落死した弟の死の真相とは? この作品はなんといってもバーネットの解決の仕方が気の利いたものとなっている。話の流れも最初から最後まできれいにまとまっている作品。

「白手袋・・・・・・白ゲートル」
 犯人たちによる強奪トリックも面白いものなのだが、それよりも面白いのはバーネットが最後に盗むもの! 相変わらず色々とやってくれる男である。ベシューはもう歯噛みをするだけである。

「ベシュー、バーネットを逮捕す」
 とはいうものの、そんなにうまくいくはずがない。そして最後にはこの二人の関係が一文でうまく表現されている。お後がよろしいようで。


戯曲アルセーヌ・ルパン   Arsene Lupin et Autres Pieces (Maurice Leblanc)

2006年11月 論創社 論創海外ミステリ58

<内容>
 ○戯曲アルセーヌ・ルパン
 □「戯曲アルセーヌ・ルパン」校異
 ○アルセーヌ・ルパンの帰還
 ○アルセーヌ・ルパンの冒険
 □(解 説)住田忠久
 □アルセーヌ・ルパン・シリーズ出版目録(住田忠久編)

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<感想>
 タイトルとなっている「戯曲アルセーヌ・ルパン」は長編作品としては「ルパンの冒険」(大冒険?)を戯曲化したもの・・・・・・と読んだ時は思っていたのだが、どうやら違うようだ。というのも、そもそもこの「戯曲アルセーヌ・ルパン」こそがオリジナルであり、「ルパンの冒険」という作品は本国では書籍化されていないようである。それが日本では南洋一郎氏訳のルパン全集のなかに「ルパンの冒険」として書籍化されているようなのである。

 ポプラ社から出ているルパン全集を読んだ人は、ルパンの敵役の刑事でゲルシャールという人物の名を覚えている人もいるであろう。このゲルシャールはここに掲載されている「戯曲アルセーヌ・ルパン」のために創造された人物なのである。ルパンの敵役といえばガニマールという刑事の名前が筆頭にあげられるだろう。しかし劇場の支配人の名前がガリマールという酷似したものであることから、それに配慮してゲルシャールという人物を登場させたとのこと。

 本書ではそういった逸話が解説にいろいろと挙げられている。こういった話が聞けるようになったのも最近のことのようで、今までは作者のルブランに対する研究というものがなされていなかったようなのである。それが近年になり、研究がすすめられ、ようやくアルセーヌ・ルパンの作品の全容が明らかになってきたとのこと。

 特に日本の読者にとっては、私のように児童書のルパン全集こそが正典と思い込んでいる人も多いと思うので、それを原書一覧と比較してみるとかなり異なるものとなっていることがわかる。こうしたルブランの研究がきちんとなされれば、日本でもアルセーヌ・ルパン完全版というものがいつか披露されるかもしれない。

 と、結局作品に対する内容についてはほとんど言及していないのだが、本書についてはルブランとルパンの研究書という見方でよいと思われる。ルパンに興味を持っている人は一家に一冊置いといてもらいたい書籍である。


名探偵ルパン   Arsène Lupin, Célèbre Détective (Edited by Ayumi Yano)   5.5点

2018年10月 論創社 論創海外ミステリ220

<内容>
 「赤い蜘蛛」
 「刺青人生」
 「プチグリの歯」
 「鐘楼の鳩」

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<感想>
 怪盗ルパンのオールドファンであれば知っているであろう、ルパンが探偵に扮する“バーネット探偵”が活躍する事件簿。ただ、ここでの訳は“バルネ探偵”となっていて、何故か訳があまりにも古臭い。実はここに掲載されているものは、大正から昭和初期にかけてルパン作品を翻訳して紹介していた保篠龍緒氏による翻訳作品。しかもそれだけではなく、モーリス・ルブラン原作の非ルパン作品を“バルネ探偵”譚に改作した作品集であるとのこと。ゆえに日本オリジナル作品集といってもよいようなものである。

 それゆえか、ここに掲載されている作品はちょっと微妙なものばかり。最初の「赤い蜘蛛」は一番しっかりとした作品と思え、人妻を手に入れようとする男の妄執が描かれた作品であり、さらには思わぬところからの探偵の登場も面白く描かれている。

「刺青人生」は、次から次へと“お前の本当の父親だ”という者が名乗り出てくるという、ちょっと変わった物語。しかもそれが冒険風に描かれている。ただ、この作品はルパン作品の「813」に続くような内容として描かれているようで、この単体ではしっかりとした結末が付けられていないようなところが微妙。

「プチグリの歯」は、とある死体を巡る綺譚が描かれ、「鐘楼の鳩」は教会に隠されていた財宝強奪事件が描かれている。

 どれも訳が古いので、基本的にはルパン作品もしくは訳者・保篠龍緒の研究書といったような印象が強い。できれば新訳で読みたいところであったが、それでは本編の価値が損なわれてしまうとことになってしまうか。


黄色い部屋の謎   Le Mystere De La Chambre Jaume (Gaston Leroux)

1907年 出版
1965年06月 東京創元社 創元推理文庫
2008年01月 東京創元社 創元推理文庫<新装版>

<内容>
 グランディエ城で、娘のマチルドと共に難解な研究を続ける高名なスタンガースン博士。彼が研究をしているとき、隣室から娘の悲鳴が聞こえてきた。内側から密閉されたドアを壊し、中に入ってみるとそこには血だらけになったマチルドの姿が! しかし、その閉ざされた部屋の中には他に誰の姿もなかったのである。このような奇怪な事件が起き、警察が捜査するものの、犯人の影も形もつかむことができなかった。この事件に乗り出してきたのは、若干18歳の新聞記者ジョセフ・ルールタビーユ。彼が解き明かす真相とはいったい!?

<感想>
 再読となるのだが、読むのはまだ2回目であり、前回読んでからかなりの歳月がたっている。一度は読み直したいと思っていたのだが、その念願が新装版という機会によってようやくかなえられた。

 本書における密室事件のおおまかなトリックは覚えていたものの、物語の流れについては完全に忘れていたので、楽しんで読むことができた。本書は、密室事件のトリック云々というよりも、その事件が起きる物語の背景こそがメインというように思えた。トリックだけ抜き取れば、それほどたいしたものではないと思う。しかし、その事件がどのようにして起きる事になったかという背景を踏まえる事によって、本書のミステリ性というものが高められている。

 さらには、素人探偵ジョセフ・ルールタビーユと名刑事であるフレデリック・ラルサンとの対決も見ものである。

 確かに、今現在読むと、全体的にもミステリ作品としての評価はまぁまぁというようにしか感じられないかもしれない。とはいえ、本書が書かれた年代と作品がかもしだす雰囲気からすると、調度コナン・ドイルとディクスン・カーの間にぴったりと収めることができる作品ということに気づかされるのである。

 この“黄色い部屋”という作品こそ、怪奇性と本格ミステリを兼ね備えた、ミステリ界における初期の傑作と言えることは確かであろう。

 個人的にちょっと不満に思った点といえば、本書だけではルールタビーユという素人探偵の説得力が薄弱なこと。できれば、もう2、3作ルールタビーユが主人公とする別の作品を書き上げた上で、「黄色い部屋」を発表すれば完璧であったのではないだろうか。


黒衣婦人の香り   Le Parfum De La Dame En Noir (Gaston Leroux)

1909年 出版
1976年03月 東京創元社 創元推理文庫

<内容>
 黄色い部屋の事件が片付き、ルールタビーユらは怪人物バルメイエの手から逃れられたかのように思われた。しかし、死んだはずのバルメイエの姿がたびたび目撃されるようになる! ルールタビーユらは、マチルドたちを堅牢な砦に隠し、バルメイエの魔の手から防ごうとするのであるが・・・・・・

<感想>
 これは長らく積読の本であったが、今年「黄色い部屋の謎」の再読を機に、ようやく手にとることができた。この作品に関しては、「黄色い部屋」の続編ということ以外、あまり話題になっていない通り、さほど見るべきところある作品というものではないのだが、書かれた年代から考えると、サスペンス色の強いホラー・ミステリ作品として評価できる内容かと感じられた。

 この作品は、本格推理小説というよりは、ほとんどホラー小説というような感触であった。怪人物バルメイエの手から、いかにして逃れるかということが主題となった作品である。ある種、不可能犯罪を描いた作品ともいえないことはないのだが、あまりそのような書き方がなされているとは思えなかった。

 また、肝心のストーリーに関しては、一番重要ともいえるルールタビーユの出生の秘密については、感のよいひとであれば既に「黄色い部屋」のほうでわかってしまったであろうから、今更語られるようなことはほとんどないと言ってもよいであろう。

 本書について、惜しいと思われたことは、この作品では奇怪な出来事について全て理由付けがされているものの、真の解答よりも、その前段で匂わされた心理的な解答のほうが優れているように思えたことである。

 それをネタバレ気味に書かせてもらうと

 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ネタバレ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
“バルメイエは実は本当に死んでいて、マチルドの夫のダルザックが、マチルドが見る幻影と区別をつけるために、一人二役を行っていた”
という解のほうがしっくりいったように思われた。

 バルメイエが生きていて、話に都合のよいときだけ、すり代わっていたというのは、いささか苦しく感じられる。


 まぁ、個人的には、これでようやく、歴史に残る名作に区切りを付けることができたという思いでいっぱいである。




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