<内容>
冒険家のジェイムズ・メイトランドは、従妹のパーシーに連れられ、くだらないパーティーに出かける羽目になる。唯一の収穫はジュディ・ドレイコットという女性に出会えたことくらい。そのパーティーの帰り、ジェイムズは銃声を聞きつけ、ちょっとした厄介ごとに巻き込まれる。持ち前の冒険精神からか、その厄介ごとにジェイムズは積極的に関わることになり、手に入れた地図から、その島に隠されている財宝を目指して海へと出航することに! しかし、その目的の島はとかく不吉な噂がある島であり・・・・・・
<感想>
74年ぶりに完訳された作品とのこと。著者のサッパーというのは筆名。現役軍人であったため本名を名乗ることができなかったので、陸軍工兵の俗称である“サッパー”としたらしい。
簡単にいえば、大人版“宝島”。事件に巻き込まれた冒険家ジェイムズは、宝の島の地図を手にすることとなる。そして宝を求めて、いわくつきの島へと向かう。
“宝島”のような作品とするのであれば(その名作についてそんなに詳しいわけではないのだが)、話が短めであったかなと(約300ページ)。 また、主たるキャラクターもやや少なめ。タイトルからすると冒険ものというよりは、恐怖的な部分を強調したかったのかとも思えるが、冒険かホラーか、ややどっちつかずになってしまったような。
ハードボイルド風サスペンスの展開から、冒険を求めての宝探し、未知なる島で謎の生物との戦い、さらにはラブロマンスまでと、ちょっと要素が多過ぎたかのように思える。これならば、島での冒険のほうにもっとスポットを当てたほうがよかったと感じられた。
<内容>
第 一話 俳優の話 キルトの布きれ
第 二話 弁護士の話 サー・エドワード・ショーハムの決断
第 三話 医者の話 死の宣告
第 四話 一市民の話 死の笛
第 五話 軍人の話 オレンジの皮の切れ端
第 六話 作家の話 アップルドアの花園
第 七話 古びたダイニングルーム
第 八話 曲者同士
第 九話 ジミー・レスブリッジの誘惑
第 十話 レディ・シンシアと世捨て人
第十一話 ウイスキーのグラス
第十二話 酔えない男
<感想>
前書きにより、クラブに集まる異なる職業の6人の男たちが、それぞれ物語を披露すると語られている。それゆえ、黒後家蜘蛛の会のような内容のものを期待したのだが、中身はちょっと異なるものとなっている。最初の6話までは物語を語る者が強調されていたものの、後半の6話ではそれすらもなくなってしまっている。ゆえに、全体的に見て単なる“奇譚集”というような位置づけの作品と捉えられた。まえがきをわざわざ書くくらいならば、もう少しその設定を活かしてくれてもよいと思えるのだが。
とある俳優志望の夫婦の悲哀を描く「キルトの布きれ」や、怪盗ルパンのような人物を描く「曲者同士」あたりが面白かった。オチのない作品も多いのだが、意外とそれなりに読者を引き込ませる短編集として出来上がっていると思われる。惜しいのは、それぞれの作品が短すぎるところか。
<内容>
12月の朝、ロンドンのボウ地区で下宿を営むドラブダンプ夫人はいつもより遅く目覚めた。下宿人のモートレイク氏はもう出かけたらしい。夫人はモートレイク氏の友人のコンスタンス氏を起こしに二階へと上がったが、ドアには鍵がかかり、返事はなかった。不審に思った夫人は近所に住む元刑事のグロドマンに知らせることに。知らせを聞きグロドマンがコンスタンス氏の部屋のドアをぶち破るとそこには!! 数時間後、新聞売りの少年が威勢よく叫んでいた。ボウ地区で戦慄の自殺が!
<感想>
いやはや古典だ。そうくるのか。
しかしそれにしても、薄い本ながら事件が始まってから解決までがやたら長く(無駄に?)感じた。これならば短編のほうが評判がよかったのでは?
それでも古典だから。いやはや