タ行−チ  作家作品別 内容・感想

この男危険につき   This Man is Dangerous (Peter Cheyney)

1936年 出版
2007年07月 論創社 論創海外ミステリ66

<内容>
 一匹狼の悪党、レミー・コーション。レミーは資産家の娘ミランダを追って、アメリカからはるばるロンドンまでやってきた。目的はミランダを誘拐し、その父親から多額の身代金をせしめること。しかし、同じ目的を持つギャングの親玉シーゲッラが介入してきたことにより、事態はややこしくなる。シーゲッラと組むふりをしながら、裏切る機会をうかがうレミー。最後に笑うのはいったい誰か?

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<感想>
 B級ハードボイルドの香りがぷんぷんする作品。わけのわからない行動をとり続け、ひたすら暴力で突き進む謎の主人公。主人公を邪魔するかのように行動するギャングの親玉とその部下たち。さらには、いわくありげな美女。そして自分が誘拐されることなど考えてもいない能天気な資産家の令嬢。こんな面々が繰り広げるハードボイルド作品。

 と、B級の匂いがするといったのだが、読み進めていくと、実は結構きちんとした内容の作品であったりする。後半には展開というかスタンスが、がらりと変わる作品になっている。しかし、個人的には後半きちんとした内容になってしまったからこそ、作品に対するインパクトが薄れてしまったようにも思える。できれば、前半の勢いのままB級ハードボイルド調で進めていってもらった方が面白かったような気がするのだが。


聖者ニューヨークに現わる   The Saint in New York

1935年 出版
1957年01月 早川書房 ハヤカワポケットミステリ293

<内容>
 セイントことサイモン・テンプラーがニューヨークへやってきたのは、直接には富豪ヴァルクロスの頼みからだった。三年前、息子のビリーを誘拐して殺し、証拠不十分で釈放された五人のギャングを始末してくれたら百万ドルの報酬を支払うというのである。悪漢相手の仕事ならセイントにとっても異存はなかった。
 だが、セイントの前に立ちふさがる悪党達はなまやさしいものではなかった。判事や警察内部の人間を配下に置く巨大な組織がニューヨークの暗黒街を支配しているのだ。だが、セイントはひるまなかった。悪の組織に敢然と挑戦状を叩きつけ、さっそく行動を開始した!

<感想>
 前半のセイントの大活躍には、なかなかしびれるものがある。これぞ義賊といったところ。しかし後半に入ってそのパワーが落ちてしまい、都合よすぎる展開に流されてしまうかのようなのが少々哀しい。最後まで快刀乱麻でありつづけてもらいたかった。

 ただ、本書のみでセイントをどうのこうのいうのもちょっと気が引ける。なぜなら、本書はどうもセイントの作品の中でも外伝的な位置付けのような気がする。たとえれば、「メグレ、ニューヨークへ行く」のような。本書だけで終わらせずにセイントの活躍をもっと見たいものである。




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