<内容>
「おきまりの捜査」
「階段はこわい」
「そこは空気も澄んで」
「物しか書けなかった物書き」
「拳銃つかい」
「支払い期日が過ぎて」
「家の中の馬」
「いやしい街を・・・」
「ハリウッド万歳」
「墓場から出て」
「予定変更」
「犯罪の傑作」
「八百長」
「オーハイで朝食を」
<感想>
面白いと思える作品はいくつかあったものの、これといった作品がなかったというのもまた事実。この作品集もまた、もう少し各短編の内容を統一してもらえればと感じられた。
最初のほうの作品は、どれも最後にオチがつけられており、ユーモア小説として読むことができる内容となっている。しかし、「支払い期日が過ぎて」と「家の中の馬」という作品ではモアマンという共通の主人公が出てくる続きの作品になっているのだが、ここまでくると悪ふざけが過ぎていて、むしろ不快感の残る内容と感じられた。
その後は、ハリウッドのパロディのような作品「いやしい街を・・・」「ハリウッド万歳」続き、その後の作品はハリウッドの雰囲気を引きずったままホラー小説のような内容の作品へと移行していくように続いている。
途中にある「犯罪の傑作」のみは、ちょっと毛色が変わっていて、本格推理小説に関する薀蓄がいきなり挿入されていて驚かされる。さらにはエラリー・クイーンまでが登場しているところは見どころともいえよう。
後半の作品のなかでは「オーハイで朝食を」が郡を抜いて良かったと思われる。刑事とひとりの男とのやりとりによって、徐々に浮き彫りになっていく犯罪模様。この霧に包まれたような雰囲気と構成にはなかなか目を見張るものがある。
ただ、できればこういった作品群で統一してくれれば、また違った見方もできるのだが、前半に軽いテンポの作品が続けられている中で、こういう真面目な作品が挿入されていると、作品集としては浮いた雰囲気になってしまわざるを得ないのではないだろうか。
<内容>
「蝋人形の死体」
「空飛ぶ追いはぎ」
「消えたシェイクスピア原稿」
「ミンシング通りの幽霊」
「ディー博士の魔法の石」
「女中失踪事件」
「チャーリー王子のルビー」
「博士と女密偵」
「消えた国璽の謎」
<感想>
著者のリリアン・デ・ラ・トーレが1946年から40年以上に渡って発表した短編集全四冊から9編を厳選した作品集。探偵役となるサミュエル・ジョンソン博士とその若き友人ジェームズ・ボズウェルの二人が挑む事件の数々が描かれている。ちなみに主人公のジョンソン博士は実在の人物であり、英国文学史上の巨人とのこと。
各短編作品の最後に付記として、実在の事件や出来事との関連性が書かれている。よって、実在の事件などを元にそれぞれの作品が描かれているよう。ただし、その事件が18世紀を舞台にしたものとなっているので、ピンと来ないもののほうが多い。
内容としては、シャーロック・ホームズ風の探偵と助手が活躍する探偵小説として楽しめることは事実。ただし、推理ものというよりは、冒険ものというような趣が強いように感じられる。また、作風はよいと思われるのだが、主人公のジョンソン博士が良いおじさんという風で、やや印象にかけるところがもったいないところ。
実は、読んでいるときにはさほど感銘を受けなかったのだが、読み終えた後にあとがきを読むと、さまざまな歴史との関連性や、後の探偵小説に大きな影響を与えたことを知り、この作品集に対するイメージが変えられた。イギリス史(ただし、著者はアメリカ人)、探偵史といった深いところまで読み解くと貴重な一冊と言えるのであろう。
<内容>
村の名士ビューレイ医師が睡眠薬の飲みすぎで死亡した。検視審問では事故死と判断されるものの、スミス警部はこの事件に何やら怪しいものを感じ取っていた。噂では年の離れた若い婚約者ローナ・マイルズが手を下したのではと。さらにそのローナはビューレイの弟で俳優のレイモンドと通じていたと・・・・・・
その後、ローナは周囲の冷たい眼から逃れるために、女子校を経営していると言うロバート・ニールの誘いによってガーンジー島へと移り住む事に。しかし、そのガーンジー島はビューレイ医師の過去に関係する場所であり・・・・・・
<感想>
まぁ、普通のサスペンス小説といったところ。全編を通して“鬱”気味な話の展開が続くので、読んでいて気持ちの良いものではなかった。その男女の関係のもつれというか、何かどろどろとしたものがまといつくような描写は好みが分かれるところではないだろうか。
ただ、推理小説として見るべきところもある。本書のポイントは睡眠薬による毒殺トリック。地味なトリックながらも考え抜かれたものであり、これだけでも本書は推理小説としての価値があると言えるだろう。
全体的な雰囲気を楽しむ事ができたら、もっと面白く読めたと思うのだが・・・・・・