<内容>
クリスマス気分が盛り上がる山間の村。そこは、さまざまな人生模様が交錯する、ひとつの小宇宙だ。だが、猛烈な吹雪で雪崩が発生、幹線道路は分断され、村は外界から孤立した。折悪しく、村はずれには秘密裏に3人の犯罪者が忍び込んでいた。その邪悪なリーダーは、住民全員を抹殺する、おそるべき計画を練り始めた・・・・・・果たして村人たちに生き残る道はあるのか?
<感想>
ミステリーというよりも映画にしたくなるようなアクション・サスペンス小説。もしくはキングが異なるアプローチで書き上げるような題材かもしれない。いやはやプロンジーニは多彩である。
といいつつも内容的には以外によくあるパターンかもしれない。しかしながらその内容を多視点によって、効果をあげながらうまく書き上げている。サイコキラー、世間を捨てた男、浮気をしている夫とそれに気づく妻、熱心に村のために働く者や文句ばかりいっているもの。閉ざされた村の中での細かい感情さえも見事に書ききっている。かなりリーダビリティが高い作品となっていて、一気に読めること間違いない。そしてこの事件によって村の中の人々がたどり着く先とはいったい・・・・・・
普通のストレートな内容となっているので、本書ではだまされる心配はせずに安心して読むことができる。ひょっとしたらプロンジーニにとってはひっくりかえさないことも一つのトリックなのか!?
<内容>
田舎町で凶行を重ねる“切り裂き魔”。犯人には犯行時の記憶がなく、自分が殺人鬼だと自覚していないという。恐怖に覆われた町で戦慄する男たちがいた・・・・・・切り裂き魔は俺ではないのか?
<感想>
25年前との物とは思えない内容。どうみても現代風な作調である。これが昔かかれてたことにびっくりする。また、現在ではこれがありがちな作風とはいえ、本書はまったく飽きさせずに読み進めさせる魔力がある。構成の工夫とかも見事である。そして、登場人物の全てを疑いながらラストへと突入する。そして最後には・・・・・・なかなか衝撃的な終わり方というよりは、思わずにやりとさせられてしまうような終わりかただ。ただ、本書は内容そのものより、全体的に飽きさせず面白く描いているところが非常に良い。
<内容>
“我が敬愛する大統領閣下。止むなくこの手紙は匿名とさせていただきましたが、わたしは決して狂人ではありません。個人的にも政治的にも閣下にきわめて近い人間で、ホワイトハウスの中核を構成する一員であります”・・・・・・だめだ。こんなことをしてみても大統領への脅威を取り除くことはできない。裏切り者には死を。ほかに道はない・・・・・・
任期終盤、合衆国大統領の身辺を襲った連続殺人。はてしてこの殺戮を演出したのは何者か?
<感想>
新本格派の小説家たちが行うべきトリックがすでに1977年にアメリカでなされていた。その後の日本にてようやくこれらに追従するかのような作品が出版され、実際この作品と似たようなトリックのものがいくつも出版されている。そういった類似品が多々あるなかでも本書はかなり大胆な手法を使っており、反則すれすれというほかない。しかし、それでもあまりの大胆さに許す気になってしまう、そういったトリックがなされている。こんなものが25年も前に書かれていたら後のミステリ作家はどうすればいいのだろう!?
<内容>
国民が熱狂するニュー=スポーツ、その名も“ブローズ・ボウル”。それはスタジアムにて、二人の作家が制限時間内に決められたテーマで一万語の小説をタイプライターにてたたき出すという競技。“メタファ・キッド”ことレックス・サケットは順調に競技を勝ち抜き、いよいよチャンピオンの称号を手にしようとするところまできた矢先、八百長を持ち掛けられることとなり・・・・・・
<感想>
若干、SFチックな作品。アメリカで有名(らしい)なアメリカン・フットボール選手権“ローズ・ボウル”にちなんだ題名で、こちらは“ブローズ・ボウル”。これがなんと普通のスポーツではなく、小説の速書き選手権という奇妙な設定をスポーツ化した作品。なんとなくイメージ的には、スティーブン・キングが書いていてもおかしくなさそうな題材のような感じがした。
そして、この内容なのだが・・・・・・題材の奇抜さをのぞけば普通のアメリカ風スポ根ものかと。チャンピオンを夢みた青年が、さまざまな障害を乗り越えて、チャンピオンとの戦いに挑むという物語。特に捻りはなく、普通の青春スポーツ小説という感じ。さすがのプロンジーニとマルツバーグのコンビも、こればかりは奇抜などんでん返しというようなものは成しえることはできなかったようである。まぁ、普通に楽しむことができた小説という事で。
<内容>
カリフォルニア州の田舎町ポモに、顔に傷のある並外れた巨漢・よそ者のジョン・フェイスがやってきた。その男が何の目的でこんな田舎町にやってきたのかわからないなか、町の人々はさまざまな噂をし、色々な想像を繰り広げる。よそ者が来たことが起点となったかのように様々なことが起こり、さらには殺人事件までも・・・・・・
<感想>
群像小説。片田舎に、よそ者が入ってきたことにより、町の人々の秘めたる思いが徐々にむき出しになってゆく。
何の目的で来たのかわからない不気味な巨漢のよそ者。夫に先立たれ、町の多くの人々と関係を持ち、男たちを振り回す女。その未亡人の魅力にとらわれる警察署長と新聞記者。嫉妬深い夫に虐待され続けるウェイトレス。インディアンの血を引く女教師は警察署長に想いをよせる。実は横領していた銀行の支配人。妊娠するも恋人から突き放される女子高生。勝手なことを想像し、噂を振りまくリゾートのオーナーと噂好きの主婦。
といった町の人々は、特に未亡人周辺に元々危ういものを抱えつつも、それまでは日々普通に生活を送っていた。それが独りのよそ者の存在により、大きくかき乱されることとなる。
全体的に読みやすく、内容についても楽しむことができた作品。数多くの登場人物の行動を追っていくという形態で書かれているのだが、しっかりと登場人物の名前を把握しておけば、興味深く読むことができる。単に町の様子を描いた小説というわけではなく、徐々にサスペンスタッチに騒動が起き始め、事件の行方も気になりながら内容に没頭してゆくことができる。また、最後にはしっかりと見所が用意され、事件の幕引きも派手で読みごたえがあった。
最終的に、よそ者ジョン・フェイスは善なのか悪なのか、それとも単に媒体のような存在なのかという判断に迷うところ。結局は“町”全体が主人公のようであり、異分子により刺激を受けたらどのようになるかを描いたものという風にも捉えられる。