ア行−オ  作家作品別 内容・感想

ザリガニの鳴くところ   Where Crawdads Sing (Delia Owens)   7点

2018年 出版
2020年03月 早川書房 単行本

<内容>
 ノース・カロナイナ州の湿地帯に住む少女カイア。暴力をふるう夫に耐え切れずカイアとその兄弟たちを残して、カイアの母親は家を出ていった。そして、カイアの兄弟たちも末っ子のカイアを残して次々と家を出ていく。カイアは父親と二人っきりで過ごすこととなるのだが、やがてその父親さいえもいなくなり、カイアは一人っきりとなる。少数の人の助けと自身が強くなることで、独りで成長していくカイア。そして成長したカイアの前に、村の裕福な青年が表れ、その出会いがやがて事件を起こすこととなり・・・・・・

<感想>
 今年のミステリランキングの海外部門で上位を占めていた作品。著者は動物学者であり、かつてノンフィクションの小説は書いたことがあったようだが、フィクションの小説はこれが初めてとのこと。69歳にして書いた小説が全米で大ヒットしたようである。

 実際に読んでみると、これは確かに面白いと思わせられる内容。単行本で500ページの作品となっているが、読みやすいので一気に読み通すことができた。そして、その物語に思わず引き込まれてしまった。

 本書がどういう話かというと、湿地帯で暮らすカイアという少女の成長物語。両親や家族に捨てられた少女がひとりでたくましく育っていく様が描かれている。この成長物語だけでも十分に楽しめる内容となっているのだが、そこにもうひとつ並行して、警察による殺人事件の捜査が描かれていくこととなる。そうして物語が進み、殺人事件の容疑者が逮捕され裁判が開かれることとなるのだが、その裁判の行方は、そして事件の真相はいったい!? という感じで話が進められてゆく。当然ことながら、最終的にカイアの行く末は? というところも気にしながら読み進めていくこととなる。

 これはとにかく、うまく描き上げた小説だと感嘆するほかはない。ミステリ云々というよりも、ひとりの少女の感情を成長から事件を通してまで、うまく描き上げていると感心してしまう。これは著者が女性であるからこそ書くことができた小説だと言えよう。これは老若男女、誰にでも自信を持って薦められる作品。


ガラスの街   City of Glass (Paul Auster)

1985年 出版
2009年10月 新潮社 単行本
2013年09月 新潮社 新潮文庫

<内容>
 作家であるクインのもとにかけられてきた電話。その電話の主は「私立探偵のポール・オースターに依頼をしたい」というもの。あきらかに間違い電話であるのだが、クインは探偵のオースターを騙り、依頼人と会う。その依頼人から頼まれ、クインはとある男を尾行し続けることとなり・・・・・・

<感想>
 ポール・オースターという作家は文学界ではそれなりに有名な作家らしい。ただ、私自身は全く知らなく、本書を手にとって初めてその存在を知った。この作品は、ポール・オースターの第一作であり、近年日本でようやく出版されたものが今年文庫化されたというもの。

 ハードボイルド調の探偵小説らしいということで読んでみたのだが、そのようなジャンルのものとは言い切れない。なんとなく探偵調に語られた物語ではあるものの、主人公は決して探偵らしい行動をとらないのである。

 なんとなく、個人的な妄想のような話であり、悩める作家が一つの出来事をきっかけに、どんどん内向的に、さらに自分の内側へと入って行ってしまうような内容。ニューヨークを描いた作品である割には、他のアメリカ系の文学作品と異なり、暗い方向へとどんどんと沈み込んでいくような物語。決して面白い作品とは言えないものの、妙な魅力に取りつかれてしまうような味わいを感じた。こういった内容の作品には本来あまり興味がないのだが、もうちょっとオースターの作品に触れてみてもいいかなと考えてしまう。


幽霊たち   Ghosts (Paul Auster)

1986年 出版
1988年07月 新潮社 単行本
1995年03月 新潮社 新潮文庫

<内容>
 ブラウンから仕事を引き継ぎ、私立探偵となったブルー。彼はホワイトに依頼され、ブラックという人物を見張ることとなった。ブルーは特に何かをするような気配もないブラックを日々見張り続け、淡々と報告書のみを書き綴ることとなるのだが・・・・・・

<感想>
「ガラスの街」に引き続き、読んでみようと思った「幽霊たち」。年代としては順番通りに読むことができたのだが、日本で紹介されたのは、この「幽霊たち」のほうがだいぶ前のようである。別に順番に読む必要はないものの、両方読むと若干作品に対する印象が変わるのではなかろうか。

 ブルーとかブラックとか、色を表した名字のない登場人物ばかりが出てきている。どうやら戯曲をもとに書いたことにより、こんな風になったようである。そうした、名前のせいでもあろうか、全体的に空虚な感じが広がる内容となっている。

「ガラスの街」を読んだとき、奇妙な張り込みの様子が描かれている場面があるのだが、その張り込みのみを描いたのがこの作品。じっとブラックという人物を見張る私立探偵ブルー。しかし、ブルーは職務を超えて、ブラックに接触するという危険を冒すこととなる。そして、それがラストに起こるカタストロフィの幕開けとなるのである。

 まぁ、変わった作品というしかない。文学的にとらえなければ「ガラスの街」も「幽霊たち」も探偵にあこがれる人物が探偵をやろうとするものの、どのようにしたらよいのかわからずに失敗するという様相を描いているように感じられてしまう。

 一応、本書にはブルーとブラックという人物が登場しているものの、どこか一人芝居を見ているようにさえ思えてしまう。ブルーを想定した人物の頭のなかでのみ構成される物語というような閉塞的な印象を受けた作品。


特捜部Q −檻の中の女−   Kvinden I Buret (Jussi Adler-Olsen)

2008年 出版
2011年06月 早川書房 ハヤカワミステリ1848

<内容>
 コペンハーゲン警察の警部補、カール・マーク。彼は捜査中に犯人と銃撃戦となり、仲間のひとりが死亡し、もうひとりは寝たきりとなることに。今だ、その事件の影響から抜けきることができず、仕事に身の入らないマークに対し、彼の上司たちはマークを“特捜部Q”の責任者に任命した。それは政治家が提唱した未解決事件を解決するための部署であった。コペンハーゲン署では、その特捜部を引き受けることによって、多大な予算を獲得し、厄介者となりつつあるマークを隔離することができたのである。特捜部の責任者となったマークであったが、彼の部下はシリア系のアサドという刑事でもない怪しげなバイト一人のみ。マークが未解決事件の資料を渋々見渡しているとき、たまたま5年前に突如行方不明になった女性議員失踪事件の資料を手に取ることに。マークとアサドはその事件について調査することとなったのだが・・・・・・

<感想>
 結構、ライト系刑事小説。ページの厚さがやや気になるところだが、比較的読みやすい部類に入る作品。内容に関しても、重厚さや綿密さなどは無縁で、手軽に読むことができる。外国で描かれた、テレビドラマ向けの警察小説というようにも感じられる。

 ただ、一部陰惨な場面も描かれている。この作品ではタイトルの通り、行方不明になった女性議員の行方を調査するという内容。その監禁場面がなんとも陰惨であり、強烈な復讐劇が描かれているのである。それ以外に関しては、結構お気楽とも言えるような内容が多いのだが。

 全体的に意外性とか、どんでん返しとか、そういったものは感じられず、地道な捜査で事件の真相へと達する様子が描かれている。そうしたなかで主人公の周囲を取り巻く多くの人々が描かれ、それらの人たちが今後どのような役割を担うのかが注目すべきところ。この作品単体で見ると、普通のできの警察小説という感じなのだが、シリーズとして考えると、今後の展開が非常に気になってしまう。うまく後を引くように描いている作品と言えよう。

 ただ、この作品単体についても、最後の最後ではページをめくる手がとまらなくなり、ラスト100ページは一気読みしてしまった。サスペンス・ミステリとして展開が気になるようにうまく描かれている。今後のシリーズの行方が楽しみな注目作品である。


特捜部Q −キジ殺し−    (Jussi Adler-Olsen)

2008年 出版
2011年11月 早川書房 ハヤカワミステリ1853

<内容>
 コペンハーゲン警察に新設された特捜部Q。彼らが次に挑む事件は、20年前に殺害された10代の兄妹を巡る事件。犯人は既に捕らえられているのだが、カールとアサドは事件をさらに掘り下げていく。すると、捕らえられた犯人を含む、学生時代に同級生だった一団で今ではエリート集団に成り上がった者たちの名があげられることに。彼らは現在の地位を利用して、事件を隠蔽しているのではないかと。さらに、10代の殺害された少女の事件のみならず、次々と似たような事件が過去に起こっていたことをつきとめる。そして、その一団で唯一の女性であったものが現在ホームレスとなっていることを知り、彼女の行方を捜査するのであったが・・・・・・

<感想>
 シリーズ2作目となり、特捜部Qの面々をとりまく状況がさらに面白くなってきた。前作にて事件を解決したことにより、やや地位の上がった感じのする特捜部。しかし、その特捜部に新たなメンバーとして加えられたのは、秘書課の鼻つまみ者。さらには、カールとともに事件の被害者となり体が動かなくなったハーディとの関係や、アサドの過去の秘密。急な進展はないものの、徐々にシリーズの流れと共に色々と変化していくようである。

 今作の事件は、過去の暴行殺人事件を掘り起こすというもの。エリート集団の権力が見え隠れする中、カールは事件にくらいついていくこととなる。読者からすれば、エリート集団の視点も描かれているため、話の全貌がわかってしまい、物語の展開としてはいまいちという風に捉えられる。しかし、後半へ進むにつれて、わかりやすく見えた真相がぼやけはじめ、一気に意外な展開が怒涛のように押し寄せることとなる。

 本書では、ミステリとしては、ありきたりに見える冒頭の場面が後半になり効いてくるところが見ものである。また、エリート集団たちとキミーと呼ばれる女性との関係が色々な意味ですさまじく最後の最後まで魅せられることとなる。シリーズものとしても、一つの作品としても、なかなか気が利いているなと感心させられた。これは、今後の作品も既2作品が積読となっているので、どんどんと読んでいきたいと思わせられた。


特捜部Q −Pからのメッセージ−    (Jussi Adler-Olsen)

2009年 出版
2012年06月 早川書房 ハヤカワミステリ1860

<内容>
 カール・マーク警部補とアサドがコンビを組む“特捜部Q”に新たにもたらされた事件は、海辺に流れ着いたボトルメールの解析。そこに「助けて」と文字が書かれているものの、他は判別できず。カールがやる気を出さない中、アサドとローセの代わりに来た双子の姉ユアサの二人は懸命にボトルメールの解析に取り組む。徐々に明らかになってきたメールの内容。すると、卑劣な誘拐事件の存在が明らかとなり、しかもその事件は現在進行形で起きており・・・・・・

<感想>
 特捜部Qシリーズ第3弾。とっくに文庫化されていて、第5弾も訳されているというのに、今頃になってようやく読了。

 シリーズキャラクターの様相はコメディタッチというか、笑わせてくれるところも多々あるのだが、本題の事件については陰惨なもの。過去に書かれたと思われる“助けて”と書かれたボトルメール。その一通の手紙を解読していくことにより、卑劣な誘拐事件があらわとなる。しかも、その事件の首謀者は、何年も前からその犯罪を続けていて、現在進行形で同様の誘拐を実行しようというところ。

 最初は事件に興味を示さなかったカール・マークもボトルメールの内容が解析されるにつれて、その悲惨な内容を目の当たりにすることにより、がぜん捜査に力を入れることとなる。今作では過去の事件をたどる特捜部Qの面々と、現在の事件を起こすものと巻き込まれる者達が徐々に近づいていく様子が大きなみどころと言えよう。

 また、シリーズとしては、カール・マークの家で共に暮らすこととなった元部下のハーディの、未だに謎めいた行動をとるアサド、ローセが仕事をボイコットし、その代わりに特捜部に来る双子の姉のユアサと、見どころ満載。さらには、未だ明らかになっていないカールとハーディの過去の事件。話が進むにつれて、益々訳が分からなくなるアサドの過去。さらには、カール・マークの家族の行方と、今後も見逃せないものばかり。前半は、いろいろな事象により、場面や内容の移り変わりも激しいものの、後半に入ると事件の首謀者との対決がクローズアップされ、一気読み必至となる。次の作品を読むのが益々楽しみとなる。


特捜部Q −カルテ番号64−    (Jussi Adler-Olsen)

2010年 出版
2013年05月 早川書房 ハヤカワミステリ1871

<内容>
 警察署内でインフルエンザが猛威を振るい、カール、アサド、ローセらもそれぞれ病に悩まされつつも、新たな事件調査に乗り出すことに。ローセがひっぱりだしてきた事件は、1980年代に起きたクラブを経営していた女性の失踪事件。決して、失踪や自殺をするようなことはなさそうな女性が何故、突如皆の前から姿を消したのか!? 特捜部Qが事件の捜査をしていくと、同じ時期に失踪を遂げたものが他にも数名いることが確認された。さらに、彼らの背景を調べると現在躍進しつつある新進政党の幹部の名前が挙がってくることとなり・・・・・・

<感想>
 一人の女性の復讐劇と、別の面から事件を調べる特捜部Qの活躍を描く本書。しかもこの作品では、デンマーク社会で起きた不妊医療という人権侵害の闇を描いたものとなっている。

 カール・マークらの活躍は毎度のこと。相変わらず、カールは昔の事件を掘り起こされたり、家族関係で悩まされたりして、私生活ではとんでもないことばかりが起こり続ける。そして、アサドの胡散臭さは相変わらずで、ローセの頑固さも変わらず。さらには、特捜部Qの面々の見せ場がしっかりと盛り込まれているというシリーズらしさ。

 今作では、ニーデ・ローセンという一人の女性が物語の大きな核となっている。1985年に起きたあることをきっかけに復讐へとかりたてられることに。彼女が何故凄惨な復讐を行うかについては、さらに時間をさかのぼり、ニーデが過ごしてきた凄惨な人生が語られてゆく。そのニーデの人生経験がフラッシュバックされつつ、ニーデが淡々と復讐を遂げていく様子が描かれている。

 ただ、読んでいる途中疑問となるのが、この物語のもう一人の重要人物であるクアト・ヴァズは、何故ニーデの手から逃れて、普通に生活しているのか? それは物語のクライマックスにより、全ての真実が明らかとなる。

 今作は、終盤かなり派手な展開であったと思われる。特捜部Qの面々が命を狙われつつも、なんとか事件の真相を暴こうと奔走する姿は見物。これだけ大きな事件を挙げたこととなれば、もう少し特捜部Qの待遇も上がってもよいのではないかと思えるのだが、次回作ではどうなっていることやら。


特捜部Q −知りすぎたマルコ−   Marco Effekten (Jussi Adler-Olsen)

2012年 出版
214年07月 早川書房 ハヤカワミステリ1885

<内容>
 犯罪組織の集団のなかで育ったマルコは、組織の秘密を知ってしまい、さらには自分のいる場所に対し嫌気がさし、組織から逃げ出すことに。マルコが知る秘密の裏には、アフリカの経済援助という名目のなかで行われている大がかりな公金横領に関わる事実が隠されていた。マルコが逃げ出した組織の者たちは、執拗にマルコを追い、捕まえようとする。そして外務官僚の失踪事件を追うこととなった“特捜部Q”の面々は、マルコの存在を知ることとなり・・・・・・

<感想>
 5作品目となる“特捜部Q”シリーズ。シリーズキャラクターの変容も色々とみられ、今まで主人公のカールとやり取りしてきた殺人捜査課長のマークス・ヤコブスンが退職したり、カールの家に住む者たちの様相が変わってきたりと、見どころ満載。さらには、アサドが抱える秘密も徐々に明らかにされつつあるような。ただし、肝心のカール自身が抱える過去の事件については全く進展していない模様。

 今作では、アフリカで起きた事件や外務官僚失踪事件のカギを15歳の少年マルコが握ることとなり、彼が物語全編を通して奔走・奮闘する様子が描かれている。さらにいえば、もうひとり注目キャラクターがいて、その人物は序盤は単なるチョイ役というか、あっさりと殺害されるか切り捨てられそうな役に見えたのであるが、しぶとく生き残り、やたら存在感を発揮することとなる。

 そんなわけで、今作では主人公たちよりも、今作に登場するサブ・キャラクターたちのほうが目立っていたという感じ。肝心のシリーズキャラクターたちはといえば、前半に彼らが関わる事件はいらなかったのではないかと思えたりと、もちょっとページを削ってくれても良かったではないかと思える始末。それでも最終的にはカール、アサド、ローセの三人が事件を解決してくれている。というか、正確には、4人目が加わったという事なのかな!?


特捜部Q −吊るされた少女−    (Jussi Adler-Olsen)   5点

2014年 出版
2015年11月 早川書房 ハヤカワミステリ1901

<内容>
 特捜部Qのもとに新たに舞い込んだ事件は、17年前に起きた少女ひき逃げ事件。跳ね飛ばされた少女が気に逆さ吊りになって発見されるという悲惨なもの。この事件を解決しようと奔走しつつも、結局犯人を捕らえることができないまま定年を迎えた刑事は自身の退官式で拳銃による自殺を図った。まるで未解決の事件を特捜部Qに引き継いでもらいたいというように。否応なく事件を引き受けることとなったカールたちは、現場から消え失せた一人の男の行方を捜そうとするのであったが・・・・・・

<感想>
 シリーズ第6弾となった特捜部Qシリーズであるが・・・・・・ちょっとネタに詰まって来てしまったのかなという感じ。

 いつも通り、カール、アサド、ローセの3人が未解決事件に奔走することになるものの、その事件自体の魅力が薄い。最初は、引退することとなった警官が自殺を遂げるといいうショッキングなものであるのだが、そこからは一人の男を探すということのみに、延々とページを割いていくこととなる。

 シリーズとしてのネタ、カール自身が経験した昔の未解決事件、カールの家に住んでいる体を動かすことのできない元警官ハーディ、アサドの過去、ローセの家庭事情などそれぞれ盛り込まれているものの、それらもあまりにも小出し過ぎるという感じ。忘れたころに、ちょっと出しという感じで、シリーズも6作も続くと、そろそろどうにかならないのかと思わずにはいられない。

 ラストはそれまでの停滞ぶりを一気に解消するような感じで、怒涛の如く解決になだれ込むこととなるので、それなりに見どころはある。全体的には、それなりに面白かったとも思えるのだが、この内容であれば、ここまでの長いページ数は必要ないのではという感じであった。


特捜部Q −自撮りする女たち−   Selfies (Jussi Adler-Olsen)   6点

2016年 出版
2018年01月 早川書房 ハヤカワミステリ1927

<内容>
 特捜部Qが関わることとなった過去の女教師撲殺事件。それに酷似する老女撲殺事件が管内で発生する。事件にとりかかろうとするカールとアサドであったが、ローセの状態が悪く、まったく使い物にならない状態。いよいよローセの状態がひどくなり、カールとアサドはローセの過去に起きた事件に向き合うこととなる。そうしたなか、カールとアサドに様々な事件が降りかかることとなり・・・・・・

<感想>
 7冊目となる特捜部Qシリーズ。今回は、特捜部のメンバーのひとりであるローセについて深く入り込んでゆく内容となっている。

 このシリーズを読んでいて、前作くらいから感じ始めたのであるが、どんどんと扱う事件がしょぼくなっていってるなと。今回もローセの事件を除けば、過去に起きた単なる撲殺事件。しかも、何気に本腰を入れて調べを進めていけば十分に事件は解決できるというもの。また、現在起きている事件についても捜査することになるのであるが、そちらは自堕落な女たちとソーシャルワーカーのわけのわからない戦いという始末。

 物語が後半に入ると、さまざまな動きが加速していき、複数の事件が入り乱れ、一気に大団円へとなだれ込むこととなる。その飽きさせない展開には目を見張るものがあり、ある程度このシリーズも面目躍如したのかなと思えないこともない。ただ、冷静に事件全体を見渡してみると、何の関連もない事件が小さなところに寄り集まっていただけであると・・・・・・

 一応、ローセに関する事件は収束したようなので、それについてはシリーズとして見るべきところはあったのかなと。このシリーズ予定では10作ということだったような気がするが、続きを読む気力がどんどんと失せてきたような。ただ、あともう少しなのであれば、もうちょっと付き合ってもよいのかな。


愛おしい骨   Bone by Bone (Carol O'Connell)

2008年 出版
2010年12月 東京創元社 創元推理文庫

<内容>
 陸軍で犯罪捜査を行っていたオーレン・ホッブス。彼は家政婦のハンナから手紙をもらったことにより、陸軍を辞職して20年ぶりに故郷へ戻った。かつてオーレンが17歳のころ、15歳の弟が森で行方不明になるという事件が起きた。その弟の骨と思われるものが20年経った今、家の玄関に少しずつ置かれているというのである。オーレンは20年ぶりに過去の事件と向き合うことに・・・・・・

<感想>
「クリスマスに少女は還る」以来、この作家の本を読むのは2作目。昨年のランキングで評判がよかったのでどんなものかと思い読んでみたのだが、これが期待以上に面白かった。

 物語の始まりは、20年前に行方不明となった弟の骨が見つかったというもの。20年ぶりに故郷へ戻った主人公が過去の事件の捜査をしていくものということで、ここらへんはミステリ作品としてはよくある内容。

 序盤は、多くの登場人物それぞれに視点が切り替わって、読みづらく感じられた。しかし、読んでいくにしたがって、ちょっとした役でしかないと思えたそれぞれの登場人物が存在感を増し、それら全員でひとつの物語をつむいでいくようにさえ感じられてしまうのである。

 最初は多視点ということが鬱陶しくも感じられたのが、徐々に気にならなくなり始め、むしろそれぞれの人物の行動が気になるようになっていった。この物語は基本的には過去に起きたと思われる殺人事件を捜査するものなので暗い話のはずなのだが、にも関わらず不思議なことに全体的に明るい雰囲気の中で進められていくようにさえ思えてしまう。

 これは、もう物語の展開の仕方が見事という他ないであろう。また、タイトルに“愛”という言葉が含まれているが、キャラクター一人一人の心の奥底に秘められた愛情が感じられる内容となっており、軽快な展開ながらも物語の重さを感じさせるものとなっているのである。

 ひとつの“町”というものを描いた非常に印象深いミステリ。他の作品とは何か異なるものを感じさせる物語に仕上げられているのは、やはりそれぞれのキャラクタに対する愛情ゆえなのだろうか。


木曜殺人クラブ   The Thursday Murder Club (Richard Osman)   6点

2020年 出版
2021年09月 早川書房 ハヤカワミステリ1971

<内容>
 高齢者施設“クーパーズ・チェイス”。この施設では未解決事件の調査を趣味とする老人たちが“木曜殺人クラブ”を作り、集っていた。この施設では、新たな開発を進めようとする経営陣と住人との対立が起きており、そんな折、経営陣のひとりが撲殺されるという事件が起きた。施設に関わる事件が起きたことを受け、“木曜殺人クラブ”の面々は、警察官を巻き込み、自分たちの手で事件を解決しようと捜査を始め・・・・・・

<感想>
 イギリスで好評を得た謎解きミステリ! といううたい文句に惹かれた読んだのだが・・・・・・個人的には期待外れであった。全体的になんか微妙。

 著者のデビュー作ゆえに、書き方に難癖をつけるのは、的が外れているかもしれない。ただ、本書を読むと、ミステリ作品というよりは、全12話のドラマを見せられたようなそんな印象の物語という感じであった。ゆえに、本格ミステリ作品のようなものとはかけ離れていたように思われる。

 近年は、欧米諸国の警察ミステリが数多く紹介されているという背景もあってか、この作品を読んだときに、大きな違和感にとらわれた。起きた事件を素人探偵の老人たちが捜査しようとするのだが、そもそも素人探偵が捜査するような事件ではないというのが一番大きな印象。不可能犯罪でもなく、未解決事件でもなく、ただの撲殺事件であり、どう考えても警察が捜査するべき事件であろう。それが、警官らが老人たちに懐柔されて、いつの間にか老人たちの使いっ走りになっているという状況。

 その後に起こる事件は、一応、高齢者施設や“木曜殺人クラブ”の面々にかかわりも出てくるので、事件を捜査するという状況も違和感なくとらえらえるのだが、それでも警察があまりにも無能すぎるような。また、事件自体が裏で“木曜殺人クラブ”の面々に関わり合いがあり過ぎるところもちょっと、という感じであった。

 いくつかの事件が起き、それらに関わる捜査をしていくものの、作品全体的な関りがあまりにも薄かったような。そんな感じで、個人的には中味がスッカスッカのミステリという風に感じられた。なんでこんな内容で人気を博したのだろうと不思議に思うところだが、一般的に重厚な警察小説のような内容のものよりは、大衆よりの軽めの中味の作品のほうが喜ばれるのかもしれない。まぁ、変に期待しすぎて作品に挑んだこと自体が間違いであったのかもしれない。もっと気楽な心持で読むべきであったか。




作品一覧に戻る

著者一覧に戻る

Top へ戻る