<内容>
月刊誌「ミレニアム」の発行責任者で経済ジャーナリストであるミカエルは名誉毀損による有罪判決を受けようとしていた。彼が書いた記事に信憑性がないということで訴えられたのである。何者かにはめられたかのように思えるミカエルであったが、打つ手はなく、このまま刑にふくし、世間から辛らつな意見をあびせられるのを絶えるしかなかった。
そんなとき、ミカエルに大企業グループの会長ヘンリック・ヴァンゲルからお呼びがかかることに。なんとヘンリックは、40年前に兄の孫娘失踪したという事件の謎をミカエルに解いてもらいたいというのである。しぶしぶながらではあるが、他にすることのないミカエルはその事件の調査を始め・・・・・・
<感想>
最近、本屋に積んであるのをよく見かけるこの「ミレニアム」という作品。かく言う私も出版されてからすぐに読み始めたわけではなく、3巻全てが出揃ってから購入し始めた次第。最初は上下巻の3部作ということでハードカバー6冊を買うのに躊躇したのだが、思い切って購入してみた。
もし買うかどうか迷っている人に一言。この作品は3部作とはいっても、1部ごとに完結しているようである。よって、全部を買わなくてもとりあえず、第1部だけ購入して読んでみてはいかがか。まずは第1部を読んでみて、もし肌に合わなければそこで購入を控え、面白ければ次を買うということでどうだろうか。ちなみに私は、第一部を読んだ後、残りの作品もすぐに読んでしまいたいと熱烈に感じてしまった。
物語の出だしは、とあるジャーナリストの失敗談のようなものから始まっている。ひとつの失敗(というか、はめられた?)により、全てを失おうとするひとりの男。それがこの物語の主人公ミカエルである。正直言って、序盤はちょっと退屈に思えた。ただ、このへんは何とかがんばって読んでいってもらいたい。その後から徐々に話は加速し始めて行く。
そして主人公ミカエルは大企業の会長から、40年前に失踪したひとりの少女の事件を調査してもらいたいというのである。しかも、その失踪当時、彼らが住んでいた島は、唯一の通行手段である橋が交通事故のため封鎖されていたのである。もし、失踪したのであればどのように島から脱出したのか? はたまた、何者かに殺害されたのか? このような途方もない事件の謎をミカエルは調査してゆくこととなる。
さらには、もうひとりの主人公である凄腕の調査員リスベット・サランデルという人物が登場してくる。彼女こそが副題になっているドラゴン・タトゥーの女であり、普段誰とも打ち解けない彼女が何故かミカエルと共に事件の調査を進めてゆくこととなるのである。
このリスペットという女性は、本作品のテーマを表していると言えよう。リスペットという人物を通すことによってスウェーデン社会が抱えるさまざまな問題が示されており、それらをわかりやすく提起しているのである。
著者がジャーナリストであるということで、まさにそれらしい作品として仕上げられている。さらには、サスペンス・ミステリとしても十分に楽しむことができ、話題になるのも当たり前という優れた作品である。
ただ、個人的にはリスペットによるハッキングという手段で物事のほとんどが解決してしまうというのは、都合がよすぎるとも感じられた。
ということで、今は残りの作品を読むのが非常に楽しみである。第2部、第3部の内容次第では、今年度のランキングは「ミレニアム」がトップを占めるといっても過言ではないかもしれない。これは、今年中に全て読んでしまわなければ。
<内容>
月刊誌「ミレニアム」を取り巻く事件から月日が経ち、ミカエルの周辺も落ち着きを取り戻していった。しかし、前回の事件を経て友人となったはずのリスペット・サランデルは彼の元から姿を消し、行方知れずとなっていた。当のリスペットはさる方法で大金を手にした後、海外をひとり気ままに旅行していた。彼女の後見人であり、恨みをもっているビュルマン弁護士が復讐しようと策略を練っているのも知らずに。
そんなとき、「ミレニアム」ではダグというジャーナリストが持ち込んだスウェーデン国内の人身売買に関する記事を特集しようと、仕事が進められていた。ミカエルもその仕事を手伝っていたのだが、突如驚くような事件が起き、ミカエル自身がその騒動の渦中に巻き込まれてゆく。
<感想>
前作からこの第2作を読み終えるまでに少し期間が開いてしまった。というのも、前作では一通り事件に関する話が落ち着いてしまい、今作はまた別の物語という流れになっている。そして、本書ではその肝心の事件を迎えるまでに長いページ数を要しているのである。
「ミレニアム」の第1作から読んで思った事は、主人公のミカエルのパートについてはそれなりに読めるのだが、もうひとりのリスペットに関しては振る舞いに共感できないためか、あまり興味がもてないということ。
第2作目の序盤はリスペットがただ日々を過ごしているだけの描写が多く、そのために作品にのめりこむ事ができなく、なかなかページをめくる手が進まなかった。
しかし、上巻の後半に来て、話が急展開してからはもうページをめくる手が進まなくなり、下巻まであっという間に一気に読み干す事ができた。2巻の最後までを読み終えての感想は、これはもう面白いと言う他なく、「ミレニアム」という作品は確かにすごいと言わざるを得なくなっている。
この2巻を読む終えるまではリスペット・サランデルという女性に対して共感できなく、何に基づいて行動しているのかわからないという不安定さが付きまとい続けた。しかし、この第2巻を通して、リスペットの過去を知ることとなり、彼女の行動原理が明らかになる。それによって全面的というわけではないにしても、彼女を応援したくなる気持ちが出始めてきたのも事実である。
また、1巻を読んでいたときは、これら一連の「ミレニアム」というシリーズの主人公はどちらかといえばミカエルなのではないかと感じていたのだが、本書を読み終えた今では「ミレニアム」という話はリスペット・サランデルの物語だと言い切る事ができる。
第2巻を読み終えるまでは時間がかかったのだが、第2巻は一応物語の終決はついたと言えるが、中途半端に終わっている部分もあるので、すぐにでも第3巻を読みたいと思えるような展開となっている。この分なら今年中に第3巻も読み終える事ができそうだ。
ここまで読んだうえでは確かにこの「ミレニアム」は、今年最強のミステリ作品と言っても過言ではなさそうである。
<内容>
ザラチェンコとの対決により大怪我を負ったリスペット・サランデル。入院する彼女をよそに、引き起こされた一連の事件の終決のため、周囲は次々と行動を開始してゆく。この一件を公にしたくないザラチェンコに関わるものたちは、一同を集め、事件を隠蔽するための行動を起こす。一方、ミカエルやアルマンスキーらは、その勢力に対抗しようと、警察らの手を借りつつ、リスペットに課せられる裁判を有利に運ぶための計略を練る。そんな折、“ミレニアム”の編集長エリカは他の有力新聞社に引き抜かれ、そこで待望の編集長の職につく事になったのだが・・・・・・
<感想>
面白かった。ひとりの亡命したスパイを始まりとする事件にさまざまな要素を付け加えることによって大きな事件とし、さらには多数の登場人物を用いて大団円へと持ち込んでゆく、ある種壮大ともいえるこのような物語をよくぞ作り上げたものである。
今作は前作からの続きという内容であったので、物語にはすぐにのめりこむ事ができた。今回は1巻のようなミステリ的な内容でもなく、2巻のようなアクションシーン満載の動きのある内容でもなく、事態をどのように解決してゆくかという対立する集団同士の謀略戦を描いた作品である。
本書は(のみならず全体を通しても)良くも悪くもジャーナリストという肩書きを持つ著者が描いた作品であるということを理解できる作品。この巻では特に、主人公であるリスペットを通して、スウェーデンにおける人権問題にメスを入れる内容になっている。このジャーナリストの独特な視点から造りこまれた物語ということが目新しさとなり、ミステリ界において注目された理由となったのであろう。
ただしその反面、物語としては読みづらいと思われた部分もしばしあった。このへんはジャーナリストゆえに、詳細についてもこだわるべきところなのであろうが、それらのいくつかがリーダビリティを損ねていたということも確かである。
とはいえ、全編と通してみれば、大満足のミステリ作品と言えよう。これほど多くの要素を詰め込みつつも、よくぞ物語をしっかりとまとめきったと感心させられる。荒が目立つ点もあるものの、これが処女作であることを考えれば、ものすごいことであろう。
ただ残念なのは、この作品が本国で刊行される前に、著者が既に亡くなってしまっているということ。この作品の続編も含め、今後さまざまな目新しい小説を書いてくれたのではないかと思えるので、非常に残念なことである。
このミレニアム3部作では主人公であるリスペット・サランデルが社会的に虐げられている状態からの脱却が大きなテーマとなっていた。この巻の最後では、今まで虐げられていたことによる反発心から、社会不適合者のように振舞ってきたサランデルであったが、ようやく一般の社会人として生きる事への自覚が芽生え始めるのである。ようするにこれまでの3部作では、わがままな子供のような振る舞いを続けていたサランデルが、今後は大人としての責任を負い、しぶしぶながらも一社会人として生きてゆくということがテーマになりつつあったのではないかと考えられる。そうしたサランデルの成長を読む事ができないという点はなんとも惜しいものである。
著者の冥福を祈ると共に、このようなすばらしい物語を創ってくれた事に感謝をしたい。本書は間違いなく2009年の翻訳ミステリにおける最大の話題作と言えるであろう。
<内容>
人工知能研究の世界的権威フランス・バルデルは、シリコンバレーでの仕事を辞め、スウェーデンに帰ってきた。フランスは、離婚した妻から自閉症の息子を引き取り、育てることを決心する。息子アウグストと共に暮らし始めると、フランスは息子の大いなる才能に気がつくことに。そんな折、フランスはシリコンバレーで行っていた仕事の関係で、誰かが自分を狙っているのではないかと恐れ始める。そこで彼は、有名なジャーナリストであるミカエル・ブルムクヴィストに相談しようと試みる。ミカエルは以前に経験した事件の後に、徐々に仕事に対してやる気を失っていたが、このフランスの相談の件に興味を示す。そして、ミカエルは、リスペット・サランデルと共に、大きな陰謀劇の渦に巻き込まれてゆくこととなり・・・・・・
<感想>
期待のミレニアムの続編がついに登場! 著者のスティーグ・ラーソン氏が亡くなってしまったがために、続編は望めないと思われていたが、遺族らの依頼によりダヴィド・ラーゲルクランツ氏が引き継いで作品を書くこととなった。
大まかな内容は人工知能の権威バルデル氏とその自閉症ながら天才の片りんを見せる息子とを巻き込みつつ、ジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィストとリスペット・サランデルが謎の組織と対立するというもの。その謎の組織というものが、今までの過去の作品で徐々に明らかにされつつあった、リスペットの過去と交錯することとなる。
というもので、いかにもシリーズらしい展開であったのだが、ずばりこの作品が面白かったかというと、個人的には期待外れであった。どこが期待外れかというと、物語の描き方にあると感じられた。それは、この作品、盛り上がる場面がほとんどないのである。盛り上がりそうなところがあるものの、そこをきっちりと描けていないのである。ゆえに、最初から最後までずっと平坦な物語を読まされたという印象。
本作品を描いたダヴィド・ラーゲルクランツ氏についてだが、あくまでもノンフィクション作家であって、エンターテイメント小説の書き手ではない。ゆえに、こうしたミステリやエンターテイメント作品を書くという事に関してはあまりうまくないのではと感じさせられてしまう。そのへんをもっと工夫して描けば、物語に対する受け取り方も全く異なったものとなったのではないかと残念でならない。
このミレニアムシリーズ、これで終わりではなく、ダヴィド・ラーゲルクランツ氏によって5作目6作目が書かれることが決定しているよう。それらも邦訳されることとなるのであろうが、次を読むかどうか、ちょっと迷うところ。
<内容>
殺人罪で逮捕されたジェインは、私は悪の組織と戦うバッド・モンキーズの一員だと精神科医に告げる。そうしてジェインから彼女がどうやってバッド・モンキーズとなり、その後どのような人生をたどってきたかが語られてゆくことに・・・・・・
<感想>
悪の組織と戦う戦闘員の話なのか、たんなる中年女のホラ話なのか、それともそれらを覆い尽くすような壮大な妄想であるのか。読めば読むほど、どんどんと煙にまかれてゆく奇怪な作品。
こういった退廃的な雰囲気の作品は好みである。ただし、一般的には好き嫌いがかなりわかれそう。また、雰囲気の問題だけではなく、後半の展開においてどんどんと話が進むにつれ、前半での出来事の一部が虚飾にすり替わり、どんでん返しが繰り返されることによって、真相がどんどんと闇に包まれてゆくこととなる。こうした展開においても好き嫌いがわかれそう。
この著者は現在4作の本を出しているそうだが、日本ではこれが初の翻訳作品となる。本書の売れ行き次第で、残りの作品が訳されるかどうか決まると思うのだが、できれば他の作品も読んでみたい。近代におけるマニアックな作家のひとりということで。
<内容>
推理作家の藍霄は奇怪なメールを受け取ることに。そのメールには、ある医学生が普通に日々を過ごしていた際、突如周囲の人たちが自分の事を忘れてしまうという奇妙な体験が綴られていた。しかもそのメールには、藍霄自身が七年前に不思議な体験をしたときに同時に起こった密室殺人事件についても触れられていたのである。やがてそのメールの差出人と思われる人物の死体が発見されたとき、容疑は藍霄に向けられることとなり・・・・・・
<感想>
アジアのミステリ小説を紹介するということで始まった企画“アジア本格リーグ”。その記念すべき一冊となるのが台湾のミステリ作家・藍霄(ランシャウ)の処女長編「錯誤配置」である。
パッと読んでみると、この小説家が海外のミステリ作品よりも、どちらかといえば日本の島田荘司氏以降のミステリに影響を受けたのではないかというような記述がしばし見受けられる。
内容であるが、突如周囲の人たちが自身のことを忘れてしまうというショッキングな体験が綴られ、さらには7年前に起きた密室殺人事件までもがからんでくる。これらの謎を語り手であるミステリ作家・藍霄の友人で本書の探偵役である泰博士が解き明かしてゆく。
導入の部分に関しては文句なしであると言えよう。不可解とも思われる謎を持ってくることにより、十分に読者の興味をひきつけている。しかし、中盤以降についてはうまく書けているとは決していえない。
中盤では探偵役らが集まって、あれこれと議論を重ねたり、捜査を行ったりするのだが、このへんはどうも議論のピントがずれているように感じられた。また、作家・藍霄の友人役として出てくる泰博士や場をなごませる役割の李という人物らについてきちんと書ききれてないということも気になった。
さらには、魅力的な謎に対して解決がうまくいっているとは決して言えない。特に現在と過去の事件がきちんと結び付けられていないことが気になった。
等々、不満を言えばきりが無くなってしまう。序盤の導入部分がうまく書けていただけあって、実に残念な作品と言わざるを得ない。ただ、この作家はこれ一冊で終わっているわけではないので、これだけで判断してしまうのは誤りと言えよう。今後も別の作品が出版されれば是非とも読んでみたいと思っている。
良くも悪くも、新本格系の作品が乱造されていた時期を思い起こさせる一作であった。
<内容>
田舎町ヴァーセイルズの若き警察署長ベン・トルーマン。彼は自分の管区内で検事の他殺体を発見する。しかし、事件の捜査は都会から来た刑事達の手で行われ、ベンは捜査の片隅に追いやられてしまう。そんなときベンは引退した刑事のジョン・ケリーに出会う。彼から事件捜査の基本を教わるベンは徐々に事件に対する熱意が芽生え、ケリーの手を借りて事件を捜査するためにボストンへと乗り込む。しかしそこは麻薬組織が牛耳る無法地帯であった・・・・・・
<感想>
昨年話題になった、ウィリアム・ランディのデビュー作である。
読んでみて、まず最初に驚いたのは意外と落ち着いた警察小説であるということ。表紙の印象のせいか、読む前はこの作品はノンストップ・アクション小説なのかと勝手に思い込んでいた。それが終始、警察小説として進められていくことに意外さを感じてしまった。雰囲気的に言えば、イアン・ランキンが描くリーバース警部ものに似たような感じである。
内容のほうであるが、田舎の若き警察署長が自分の管轄で起きた殺人事件の行方を追って、都会へと乗り出していくというもの。“成長小説”とまで言ってしまうといいすぎかもしれないが、今までくすぶった生活をしていた若者が警察捜査というものに魅せられながら、徐々に“自分の手で”という気持ちが芽生えていくかのような展開はなかなか惹き付けられるものがあった。
とはいうものの前述したとおり、基本的にはあくまでも警察小説といった内容なので淡々と進められていくという感想を抱いた。そして事件自体の結末も、ある程度先が見えるようになり、これが何故去年の話題作だったのだろうと疑問に思ったのだが・・・・・・これがラストでは見事にやられてしまう。
やられるといっても、本格推理小説におけるものとはまた異なるのだが、実はよくよく考えてみれば全編きちんとした計算に基づかれて書かれているということに気づかされるのである。なるほど、これは一筋縄ではいかない小説であったと感心しきりの作品である。
<内容>
1960年代、ケネディ大統領が暗殺された事件が報じられた頃、デイリー三兄弟はイタリアンギャングがはびこるボストンにて暮らしていた。警官だった父親が亡くなり、父と同様に警官の職についた長男のジョー、検察官のマイケル、定職につかず空き巣を繰り返すリッキーの三人。彼らはそれぞれ厄介ごとを抱えていた。ジョーはギャンブルがもとで借金が膨れ上がり、ギャングと癒着せざるを得なくなる。マイケルはボストンを脅かす連続絞殺魔の事件に借り出される。リッキーはとある盗みの件によりギャングから付けねらわれることに・・・・・・
<感想>
このウィリアム・ランディという作家、まだ2作目にもかかわらず、このような大作を書いてしまうのかと感心させられた。本書の内容が飛びぬけてすごく良いというほどでもないのだが、それなりに大作という雰囲気が出ているところが良いと感じられる。
ロバート・B・パーカーの「過ぎ去りし日々」、ランズデール「ボトムズ」などをほうふつさせるような大河ドラマ的な作品に仕上げられている。前作のサスペンスフルな展開とは異なるノワール的な雰囲気のなかで終始物語は語られてゆく。
また本書が当時のボストンの社会的な問題などもとりあげている作品だというところも注目すべき点である。特に現実に起きながらも、実際に謎めいた部分を残したままになっている“ボストン連続絞殺魔”という事件が作中で扱われている。さらにはイタリアン・ギャング、土地開発問題なども扱い、ケネディ暗殺後の不安な情勢を背景として用い、さらには三兄弟の精神的な不安定さとからめるという、いかにも近代アメリカ小説らしい雰囲気の作品として仕上げられている。
物語の展開自体は特に複雑さや意外性が見られるものにはなっていないのだが、それだけに落ち着いた作品として読むことができる。個人的にはもうすこしボストンの絞殺魔事件を掘り下げてもらいたいと思われた。この事件に関しては、物語のメインともとれるように書かれていたので(原題が「The Strangler」のわりには・・・)終わり方がちょっと中途半端になっていたのは不満が残るところ。
ということで2作目にして大作家が描くような作品を書き上げてしまったウィリアム・ランディであるが、次回作がどのような作品になるのかは、決して予想することはできないであろう。良い意味でまた読者の期待を裏切ってくれるとよいのだが。