ラ行−ロ  作家作品別 内容・感想

フリッカー、あるいは映画の魔   Flicker (Theodore Roszak)

1991年 出版
1998年06月 文藝春秋 単行本

<内容>
 ジョナサン・ゲイツはいつからか映画に魅入られて、その世界にのめり込むようになる。そして彼は大学のときにマックス・キャッスル監督の映画と出会う。ゲイツはその短い間に活躍した天才監督の軌跡を追い求めるうちに徐々に闇の世界の奥へと向かうことに・・・・・・

<感想>
 ある種これは理想的な生き方なのかもしれない。

 このホームページを作成したのは、読書好きがこうじて内容を書きとめておこうと思ったり、自分で感想を付け加えてみたりということをしてみたくなったからである。そして自分の力で一冊の本を文章にて表現するのは難しいことであるということを、続ければ続けるほど思い知らされる。そんな中で“映画”というものを力いっぱいに表現をしているこの本に出会うこととなった。

 この本の著者は絶対に“映画好き”であろう。というよりは“映画好き”でなければ絶対に描くことのできない本である。本書の中では一人の映画監督にスポットを当て、その人の軌跡や撮影技術についてを突き詰めていく、というように描かれている。ただそういった内容よりもその映画や撮影技術に対する事細かな模写にこそ、本書における“力”というものを感じるのである。

 自分が好きで表現したいものを自分なりに自由に書く、これこそがまさに理想ではないだろうか。そしてそれを表現するだけの力量をもっていればもはやいうことなしであろう。趣味人として見る限りはうらやましいとしかいえない一冊である。

 ただし、その映画を描ききったという点においては評価できるのであるが、物語としてはやや退屈である。ページ数も長く、読むまでにはかなりの月日を要した。ラスト近くなってから展開に動きがみられてミステリっぽくなるのだが、それもやや遅かったという感がある。

 とはいうものの、やはりこの趣味人として書ききった一冊。読み逃してしまうのは惜しいものであるのかもしれない。特に映画好きな人には読んでみてもらいたいと思う。ぜひとも映画好きの人からの感想を聞いてみたいものである。




作品一覧に戻る

著者一覧に戻る

Top へ戻る