<内容>
『ミステリィの館』へようこそ。もともと当ホテルは密室で死んだ作家・来木来人の館。これから行われるイベントでは、彼が遺したという「お金では買えない究極のトリック」を探っていただきます。まずは趣向をこらした連続殺人劇をどうぞ。そして興奮の推理合戦等々・・・・・・当館のミステリィをたっぷりとご堪能ください。
<感想>
軽口の会話で進められる話であるが、内容もそれにともなった(実際の殺人が起こらないという)明るい雰囲気があり、軽快に読み進めてゆくことができる。話し自体も、殺人が起こらないミステリーであり、解くべき謎は何なのかを推理していく趣向も面白い。最終的な怪盗やそこへの持っていき方には多少口をはさみたいところもあるが、なかなか面白くまとめていると思う。
ただ、登場人物の軽快な会話の中にいくつか従来のミステリーに対する批判めいた表現があるように思える。それは著者の主張であり、そしてそれゆえにこのようなミステリーを書くことによって、著者なりのものを表現したということなのだろうか? まぁ、これは穿ちすぎなのかもしれないが。次回作がどのような形式で、どのような内容で書かれるのかに注目したい。しかし、それにしても女子高生が繰り出すレトロギャグというのはおかしいような・・・・・・
<内容>
古離津(こりつ)島へようこそ。これから五日間、心理学研究のため無人島で精神的サバイバル生活が始まります。持ち込める物はひとつだけ。しかし考えた末に持参したパソコンは壊され、携帯電話は紛失。なぜかCDやK談社ノベルスも消えた。奇抜なミステリィ談義と意匠を凝らした周到な事件。
櫻藍女子学院ミステリィ研のの女子高生ミリアとユリに引き連れられて、特別顧問の石崎も一緒に孤島での精神的サバイバル生活を送るはめに。他のメンバーは多くが、櫻藍女子学院の生徒と教師。そして城陽大学の生徒。主宰者は城陽大学の医学部講師によって行われる。サバイバルと称して行ってみれば、物をひとつしか持ち込めないという以外は何一つ不自由しない生活。食料も電子レンジはないものの弁当やインスタント食品やらスナック菓子やらが食べ放題。石崎はミリアとユリと共にゲームによってあけくれるなかで消失劇と殺人劇が起こる! 犯人はいったい!そしてこのサバイバルイベントの影に隠されている罠とは??
<感想>
感じとしては前回と同様ライトな雰囲気で全編進められる。前作を読んでいれば過剰な期待はしないと思うので、軽い気持ちで読むことができるお手軽な一冊。それでも前回よりは話がうまくまとまっていて良いできだと思う。軽めの宝探しゲームを感じさせるぐらいの内容で悪くない。
あいかわらず、ミリアとユリの区別はつかないが、それはもう区別がついたところで大したことはないだろうから、二人で一組ぐらいに考えておけば良いのだろう。しかし、序盤の本題に入るまでの石崎とミリユリとの掛け合いは少々くどすぎるような気も・・・・・・。それでも不覚にも第一章のラストで思わず、爆笑してしまった。
<内容>
岐城島へようこそ。自分にかけられた「呪い」を解くため少女が帰った先は、その一族だけが住む孤島。かつて姉を交通事故死に追いやり、今度は妹の双子にまで伸びる魔手の正体とは? 木に刺さったネジ、腕を切断された人形が示す想像を絶する真相とは!?
<感想>
三作目になるシリーズであるが、三冊通して事件の謎を解くという物語ではなく、その謎自体は何かを当てていくというところにスポットを当てている。今作も“呪い”とは何か?を探るという点にスポット当てた作品である。
ただ、考え方そのものは非常に面白い嗜好なのだが、それだけをネタにしてしまうのは弱い。細部までは読み取れなくても、結構簡単に表面上は見えてくる。そのへんをもうすこし趣向を凝らしてもらいたいものだ。
それにしても第一章の作者によるネタの披露は恒例なのだろうか? 本のページを厚くするためだけの趣向であれば止めてもらいたいものだ。
<内容>
孤島に隠棲する才能ある研究者が、自慢の施錠システムの中で襲われた。「嵐の山荘」状態で人間の出入りはなし。荒らされた室内で何が起こったか。事件の鍵は石崎が持ち込んだ袋綴じのミステリィ本に。封印が破られた瞬間、啓示は訪れた!?
<感想>
2002年、講談社の企画として「袋綴じの密室本」というものが行われている。たいがいの作家は普段の作風と少々異なったように思えるようなものを出してくる中、普段とまったく変わらない作調でずばりと出してきた作家がいた。“石崎幸二”。
これは悪い意味ではなく、通常のミリユリシリーズと変わらない構成で(ファンには)安心して読ませてくれる。まぁ、そのへんは見事というか、“密室本”の意味がないかとか・・・・・・まぁうまくできているので良しということで。
面白いのは解決のミスリードと思わせて犯人に罠をしかけるところが良く出来ている。その犯人がとるべき行動がなかなか論理的に語られていて以外にも感じられる展開となっている。“密室?”、“袋綴じ?”(確かに本は袋綴じだが)と思わせるようなものはなんのその。いつもの石崎ワールドを楽しみましょう。
<内容>
“首鳴き鬼”の伝説が伝わる頸木島。編集者の稲口は怪奇特集の取材により、今まで私有地ということであまり人の訪れた事のなかった島へと渡った。その島は一流企業・竜胆グループが所有する島であり、まさか取材の許可が認められるとは思っていなかった。友人の女性を連れて、島へとわたり、竜胆家の人々と出会った稲口であったが、島に着いたその夜から惨劇の幕があがることに・・・・・・事件は首鳴き鬼の見立て殺人へと発展していき・・・・・・
<感想>
久しぶりの石崎氏の作品ということで期待していたのだが・・・・・・まぁまぁということで。まぁ、このくらいの出来具合が石崎作品にふさわしいのかもしれない。
やはり、前作から間隔があいているせいか、あまり書き方がうまくなっていないというのが一番目立つところ。元々、メフィスト賞からデビューした当時も人物が書き分けられていないとか、あまり描写には定評がなかった作家である。このへんは、書き続けていればうまく徐々にうまくなっていくのであろうが、これで5作目ではあるものの長らく間隔があいてしまったため、本書がデビュー作というような出来具合のようにさえ感じられた。
本書でも特に展開とか感情表現などで粗が目立っていた。事件が始まってから、あまりそういったことも気にせずにスピーディーに読むことができたのだが、事件前と事件後のつなぎや展開などについては無理やりという印象が強かった。
肝心の内容のほうもそこそこ。事件の見せ方や、誤誘導を誘う手法などはよいと思えたのだが、いささか真相が突飛すぎると思われた。もう少し、真相へと至る伏線を張ってくれていたほうが納得がいきやすかったのではないかと思われる。
この作品に関しては、これはこれでいいと思えるのだが、やはりもっと間隔をあけずに書き続けてもらいたいと願うところである。
<内容>
サラリーマンの石崎幸二と女子高生コンビ、ユリとミリアらは孤島にある建設中のテーマパークへと招待された。彼らをそこで待っていたのは、10年前に起きた事件の復讐者と名のる者からのメッセージであった。次々と殺害され、棺へと入れられてゆく、テーマパークの社員達。そして、ついに残るは犯人だけとなったはずなのだが・・・・・・
<感想>
昨年「首鳴き鬼の島」で復活した石崎氏であるが、講談社ノベルスでの作品としては6年ぶり。どうしても期待せずにはいられずに読んでみたのだが・・・・・・まぁ、こんなものだったかなと。どうやら、長らく待っていたうちに、石崎氏に期待しすぎていたような気がしないでもない。
本書はノベルスで200ページ弱と短い作品であるのだが、内容からすれば、もっと書き込むことができたのではないかと思われる。そこを書ききれなかったのは、残念ながら作家としての力量のなさということになるであろう。
事件の進行についても、やりたいことはわかるものの、必要以上にあわただしい展開となり、どうにも事件が起きている最中の登場人物らの行動に疑問が残ってしまう。また、事件の展開もあまりにもパターン化しすぎており、読んでいる最中で退屈に感じられてしまった。
どうもこの作品を読むと、久々に書き方が未熟な新人のメフィスト賞作家の本を読んだという気分にさせられてしまう。内容やトリックはそれなりに創造してあるのだから、もっと作家としての力量を上げてもらいたいところである。
<内容>
石崎と女子高生のユリとミリアらは、またもや絶海の孤島に招待され、殺人事件に遭遇することとなる。双子が住むゆえに、同じものが二つセットでそろえられているという奇妙な室内の状況。そこで発見される惨殺死体。しかも、何故か室内のセットになっているうちの片方のみが盗まれていた。事件は犯人が名乗りをあげたことにより、解決されたかと思ったのだが・・・・・・
<感想>
「帰るに帰れないことは多いけど、来ることは出来るんだ、なぜか」(本文より)
そんな具合で始まる事件。事件開始までの、冗長ぎみな導入や、オフビートな文調、区別のつきにくい女子高生を3人も出す必要があるのかなど、色々と突っ込みどころは満載なものの、石崎氏の作品にいくつか触れていれば、もはやそこは気にするところではないとわかるはず。ただ、最初にこの本を手にした人には取っ付きにくいところがあるかもしれない。
いつもの調子で事件が始まり、いつもの面々が殺人事件に巻き込まれてゆくこととなる。ここ最近の作品では、DNAを用いた内容のものをよく見受けられるという気がしたが、今作もそれをトリックとして用いている。
本書のポイントは、“何故、死体の左半身を必要以上に傷つけたのか”、“何故、ふたつセットになっているものの、片方のみを盗んだのか”というもの。
その解答に関しては、まずまずのもの。できれば、もう少し趣向を凝らしてもらいたいという気もしたのだが、それなりにうまくできていたといってもよいだろう。
あと付け加えるのであれば、作品の中途半端な長さ。思い切って短編にするか、もう少し趣向を凝らして話を長くするか、どちらかを選択できる内容であったと思われる。本書のような中途半端な長さが一番微妙と感じられてしまう。まぁ、この著者らしいといえばらしいのではあるが。
<内容>
巷では“女子高生連続殺人事件”が勃発していた。産業廃棄物の投棄現場で5人の女子高生の死体が発見された。死体は全て左腕と左足のみが切断され、死体といっしょに打ち捨てられていた。警察が調べたところ、殺害された女子高生は全て生年月日が一緒であることがわかった。警察はその生年月日と同じ女子高生を見張ることによって事件の解決をはかるのだが、4ヶ月後にまた別の5人の女子高生の死体が発見され、彼女たちの生年月日はバラバラであることが確認される。
そうした事件が起きている中、サラリーマンの石崎と櫻藍女子高ミステリ研のミリア、ユリ、深月仁美らは天羽結花の誘いにより深角姿(みかくし)島へと行くことに。なんでも結花は女子高生連続殺人が起きていることを心配して、島へ避難しているのだそうだ。不吉な予感を感じつつも島へと渡る石崎たちであったが、案のじょう、そこで殺人事件に出くわすこととなり・・・・・・
<感想>
最初は女子高生連続殺人事件のことが語られてゆくのだが、その事件を解決するのかと思いきや、突然離れ小島へと向かうこととなり、そこで別の事件に遭遇する羽目となる。その島で起きる事件は不可能犯罪というようなものではないのだが、何故起きたのかがよくわからない不透明な事件。そして本書の焦点はその“何故”というところにスポットがあてられることとなる。
最近の石崎氏の作品ではよくDNAを題材としたものを見受けることができるが、本書も同様にDNAに重点をおいた作品となっている。最初は地味な作品のように思えたものの、実際にはなかなか大味なものを示すミステリ作品となっている。部分部分には納得のいかないところもあるのだが、その意外な犯行動機についてと、その検証については見所があったといってもよいであろう。
やや、大風呂敷というか、大味過ぎるきらいはあるものの、楽しめるミステリ作品に仕上げられていると感じられた。最近、石崎氏は1年に1冊くらいのペースで作品を書き上げてくれるが、それくらいのペースでこのくらいの水準のミステリを今後も書き続けてもらえることを願っている。
<内容>
ミリアとユリが通う櫻藍女子学院の生徒である星山玲奈が誘拐されそうになるという事件が起きた。車で拉致された後に、玲奈は犯人のすきをついて逃れたために、事件は未遂に終わった。しかし、その後、犯人グループを名乗る者から警察に脅迫状が届けられることとなり・・・・・・
一方、誘拐未遂に終わった星山玲奈はミリアとユリの犯行時の状況を聞かれ、ミステリ研究会に出入りすることになり、石崎らを自分の別荘に招待すると言いだした。何でも彼女の母親は10年前に殺害されているのだが、犯人はいまだ見つかっていないのだと・・・・・・
<感想>
どうも読んでいてページ数の少なさとか、内容の薄さとか、脅迫状の同じ文章を繰り返し掲載しているところとか、つっこみどころは満載なのだが、ここ数年、1年に1冊のペースで書いてくれているので、読者としては満足しておくところなのであろう。
内容的に分量が少なく感じられてしまうものの、話としてはうまくできている。女子高生誘拐未遂事件から、警察に対する脅迫状、そして過去の事件の真相とうまく物語が展開されている。特に誘拐未遂事件や脅迫状がどのような考えのもので行われたのかということについては、うまく考えられていると感心させられた。過去の事件についても相次ぐどんでん返しを入れつつ、物語上すべての伏線を取り込み、無駄なく構成されている。
正直、途中は誘拐事件のてん末等、わかり易く感じられるところもあり、微妙な作品のように思えたのだが、最後まで読み終えてみると意外としっかりした作品であることがわかる。あとは書き方に厚みがあれば、それなりにきちんとしたミステリ作品になるような気もするのだが・・・・・・石崎氏の作風からしてこんな感じでも良いのかな? ひょっとしてうまくいえば東川氏みたいにブレイクする可能性も・・・・・・そんなわけないか。
<内容>
瀬戸内海の島にて、美蔵家が執り行う“婿取りの儀式”。それは、美蔵家の娘が4人の婿候補の中から一人を選ぶという儀式。その儀式が二十数年ぶりに行われる。しかし、これが曰く付きで、以前行ったときには、脅迫状が届いたり、失踪者が出たり、さらには殺人事件にまで発展したという。そんな儀式に櫻藍女子学院高校ミステリ研究会の顧問・石崎が婿候補のひとりとして参加することとなった。石崎らは殺されては大変と、必死に過去の事件の謎を解こうとするのであったが・・・・・・
<感想>
シンプルながら、うまくまとめられたミステリ作品。ありきたりのテーマをうまい具合に使いこなしている。
この作品のポイントはなんと血液型。血液型と言えば、ABO式が一般的で、ミステリにもよく使われているもの。そんなありきたりのものを使用して、いまさらミステリなんかにと思いきや、意外にもうまく使われているのである。
過去に婿取りの儀式に参加した者のデータと、それぞれの状況から、事件を起こしたものの狙いを推理するミステリ。数多くのデータからすると、一見複雑なようであるのだが、解が明かされると実にシンプルな話であったことに気付かされる。なおかつ、タイトル“皇帝の新しい服”というものが意味する内容も見事にはまっている。
ライトな作調かつ、ページ数が薄いわりには、読み手を満足させてくれる本格ミステリ。なかなかの佳作と言えるので、是非ともお薦めしておきたい作品。
<内容>
大手美容チェーン天野ビューティーグループから、顧客の身体を数値で示した3Dデータが盗まれた。さらには、そのデータを元に、女性がスプレーをかけられたり、服を切り裂かれたりといった事件が起きる。そして、とうとう殺人までが・・・・・・。天野ビューティーグループは、事件を起こす犯人をおびき寄せるために、自分たちが住む孤島の島の情報を公開する。そこを訪れることとなった櫻藍女子学院高校ミステリ研のミリア、ユリ、仁美と顧問の石崎。島では天野グループ会長の娘、天野鏡子が奇妙な城の奇妙な部屋のなかで万全の体制をしいていたのだが・・・・・・
<感想>
石崎氏の講談社ノベルスでの作品はこれでなんと10作品目。思いのほか息が長く、さらにはよく書き続けてくれているものだ。メフィスト賞作家のなかで、ここまできっちりと書き続けている人って、少ないのではなかろうか。
今回もいつもと同様、前半はミステリ研の雑談から始まり、やがては孤島や密室などといった事件にかかわっていくというスタンスは変わらず。さらに今回は一風変わった密室が出てくる。その密室とは、入ることはできるが、出ることはできないという7つの扉で構成されているもの。こんな部屋が必要なのかと感じてしまうのだが、それに関する密室の解答は面白かった。なるほどとうならされるトリック。ただ、トリックのための密室という感じは否めない。
物語全体を包む謎や、奇妙な城の謎、さらには密室と、なかなか見どころ満載であった。強烈に感じるとまではいかないものの、きちんと完成されたミステリ作品であるということには間違いない。