麻耶雄嵩  作品別 内容・感想2

化石少女と七つの冒険   6.5点

2023年02月 徳間書店 単行本

<内容>
 化石部は、部長である3年生の神舞まりあ、と2年生の桑島彰の二人だけ。熱心に部活動をするまりあに対し、彰はそのまりあのお目付け役。そんな化石部に新たな部員、高荻双葉が入ることとなる。このペルム学園では、何故か殺人事件が頻発し、事件が起きるたびに神舞まりあがしゃしゃり出て、探偵活動を繰り広げようとする。彰は、そんなまりあの行動を抑止しようとし・・・・・・

<感想>
 前作「化石少女」の続編のような形で出版された本作。前作については、あまり印象に残らなかったのだが、今作はなかなか面白かった。ただ本書についてだが、普通にミステリとして読んでみても、そんなに面白いものではない。ちょっと変わった位置づけの小説として読むと、そこに面白さを見出せるものとなっている。

 この作品、実は高校を舞台とした青春小説となっている。化石部の部長・神舞まりあと、そのお目付け役の後輩・桑島彰。桑島はまりあを支えるという役割でありつつも、どこかそのポジションに違和感を感じ始める。さらには、新入部員・高荻双葉が入ったことにより、部員同士のちょっとした三角関係のような形に戸惑いを感じ始める。さらには、同じクラスで話をするようになった鹿沼亜希子のことも気にしだし、不安定な心持ちのなかでの高校2年の学校生活を送ることとなる。

 と、ここまで書けば普通に青春小説という感じであるのだが、何故かこの学園では何度も何度も繰り返し、殺人事件が起き、しょっちゅう生徒が死亡しているのである。殺人事件がなければ、本当に青春小説であるのだが、ここが本書のちょっとした特徴・・・・・・と、いいつつも実は本書はミステリとして読むのではなく、殺人事件を無視してしまい青春小説として読んでしまえばいいような気にさえ思えてしまう。

 前作「化石少女」に対して、あまり面白くないと思ってしまったのは、前作をミステリと捉えたからではなかろうか。前作は古生物部対生徒会という構図を青春小説として読み込めば、また別の感想を抱けたのかもしれない。このシリーズは、殺人事件とかトリックとかにはこだわらず、あくまでも“殺人事件”や“殺人”を学園小説、または青春小説における不安定な心持ちにおける一要因として読み込んでいくべきものではなかろうか。

 と、考えて読んでいたら、最後の最後で、これまた麻耶氏の作品らしいトリックに引っ掛けられ、あっけにとられてしまうこととなる。それがどんな仕掛けかは読んでのお楽しみと言うことで。ただ、この作品をもって、部長のまりあは高校を卒業してしまうと思われるのだが、今後シリーズで続いて行くと言うことはあるのかな??


「古生物部、差し押さえる」 理科室で生徒が殺害された事件。容疑者の一人に古生物部の新入生候補者が・・・・・・
「彷徨える電人Q」 バイク部のロボット“電人Q”が夜な夜な動くという噂が・・・・・・トイレで発見された死体は電人Qの腕を抱えており・・・・・・
「遅れた火刑」 書道部の顧問が殺害された後、火をかけられ燃やされるという事件。
「化石女」 発見された女生徒の死体のそばに“化石女”というダイイングメッセージが残されており・・・・・・
「乃公出でずんば」 桑島彰の制服が盗まれ、女性との死体がそれを着ていたという事件。
「三角心中」 クスノキで首を吊って死んでいた男子生徒の遺体の両隣に、手首同志をロープでつないだ女生徒二人の死体が・・・・・・
「禁じられた遊び」 ラブレターが出されたものの、それが盗まれ、その出し主が殺害されているという事件が起き・・・・・・




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