乙一  作品別 内容・感想

夏と花火と私の死体

1996年10月 集英社
2000年05月 集英社 集英社文庫

<内容>
 九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか? 死体をどこへ隠せばいいのか?


天帝妖狐

1998年04月 集英社
2001年07月 集英社 集英社文庫

<内容>
 とある町で行き倒れそうになっていた謎の青年・夜木。彼は顔中に包帯を巻き、素顔決して見せなかったが、助けてくれた純朴な少女・杏子とだけは心を通わせるようになる。しかし、そんあ夜木を凶暴な事件が襲い、ついにその呪われた素顔を暴かれる時が・・・・・・
 表題作ほか、学校のトイレの落書きが引き起こす恐怖を描く「A MASKED BALL」を収録。

「A MASKED BALL ア マスクド ボール −及びトイレのタバコさんの出現と消失−」
「天帝妖狐」

<感想>
「A MASKED BALL 」のネタは非常に面白いと思う。“せつなさ”を描いたり、独特のホラー色のものを描いたりという多彩な著者であるが、こういったアイディアを生かすのもまた著者の特色であろう。できれば、これを一つのネタとして長編でも書いてくれたらとも思うのだが。

 ふと思うのだが、こうしたネタを生かす本を書くの人で、近年の作家として思い浮かべることができるのは、恩田陸とこの乙一くらいであろうか。


石の目

2000年07月 集英社 集英社ノベルス

<内容>
 ある夏休みに私は、友人とあの山に登ることにした。私が幼い頃、あの山に一人入って、消息を絶った母親の遺体を探すためだ。山には古い言い伝えがあった。曰く「石ノ目様にあったら、目を見てはいけない。見ると石になってしまう」と。そして私たちは遭難して・・・・・・

 「石ノ目」 (jump novel:vol.16 1999年9月25日号)
 「はじめ」 (jump novel:vol.14 1999年5月3日号)
 「BLUE」 (jump novel:vol.15 1998年5月1日号)
 「平面いぬ。」 (書き下ろし)


失踪HOLIDAY

2001年01月 角川書店 角川スニーカ文庫

<内容>
 14歳の冬休み、わたしはいなくなった。大金持のひとり娘ナオはママハハとの大喧嘩のすえ、衝動的に家出! その失踪先は・・・・・・となりの建物! こっそりと家族の大騒ぎを監視していたナオだったが、事態は思わぬ方向に転がって!? 心から安らげる場所を求める果敢で無敵な女の子の物語。

 「しあわせは子猫のかたち」 (ザ・スニーカー)
 「失踪HOLIDAY」 (ザ・スニーカー)


きみにしか聞こえない

2001年06月 角川書店 角川スニーカ文庫

<内容>
 私にはケイタイがない。友達が、いないから。でも本当は憧れてる。いつも友達とつながっている、幸福なクラスメイトたちに。「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日、とりとめなく空想をめぐらせていた、その時。美しい音が私の心に流れだした。それは世界のどこかで、私と同じさみしさを抱える少年からのSOSだった・・・・・・ (「Calling You」)

 「Calling You」 (2000年4月号:ザ・スニーカー)
 「傷−KIZ/KIDS−」 (2000年10月号:ザ・スニーカー)
 「華 歌」 (書き下ろし)


暗黒童話

2001年09月 集英社 集英社ノベルス

<内容>
 ある日、私は片目を失った。そして、その日までの記憶も。祖父のはからいで眼球移植を受けた私の頭に、時折激しい痛みと共に見知らぬ映像がよぎる。その映像の源を求めて旅に出た私は・・・・・・

<感想>
 著者の代表作となるべく本書。移植と記憶を結びつけた作品というものは他にもいくつかあるが、本書はさらに少女の失った記憶と再生の物語とを融合することによって斬新な作品となっている。

 本書はホラーと銘うっているだけあって、非現実の出来事も描かれている。さらにそれらが現実と童話の世界と交錯し、現実と虚構が入り乱れることによって読み手は惑わされることになる。これはある種ミステリーとしても成功しているといえよう。

 全編アイディアに満ち溢れ、独自の世界観を築き上げている。全面的に暗さがあふれる作調とはなっているのだが、それがだんだんと落ちていくというものとは違い、主人公の造形によるものだと思うが徐々に浮かび上がろうとするかのような暗さに感じられた。


死にぞこないの青

2001年10月 幻冬舎 幻冬舎文庫

<内容>
 飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現われた。

<感想>
 ある種、いじめられっこが暴走していく過程を描いたかのような作品であるが、それを変わった趣向を用いて描いている。少年は怒るとか憎むというような感情が欠落しているかのように、ただひたすら自分自身をさいなむだけである。それが淡々としていて一種異様な雰囲気をかもし出している。そのかれの怒り、憎しみの感情の化身であるかのように現われる“青”。それはあたかもマサオの内面であるかのようであり、また二重人格の一面かのようでもありながら、あえてマサオとは別のもののように切り離された存在として描かれている。そして、マサオはその現われいずる“青”とともに歩み始める・・・・・・

 ただ、救いようのない小説とはまた異なる一面を持ち、著者らしさはでている。しかしながらラストがあまりにもあっさりしすぎているのには少々理解不能な面もある。それとも全ての憎しみを“青”が持っていってしまったと考えるべきなのだろうか。


暗いところで待ち合わせ

2002年04月 幻冬舎 幻冬舎文庫

<内容>
 視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった。

<感想>
 これは、設定の時点でやられたという感じだ。そのアイディア自体が見事である。あとはもう乙一の独壇場の小説といったところか。強烈なうったえかけがあるわけではないのだが、静かな力強さがなげかけられる一冊。


GOTH

2002年07月 角川書店 単行本

<内容>
 森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。学校の図書館で僕らは、次の土曜日の午後、まだ発見されていない被害者の死体を見物に行くことを決めた。


さみしさの周波数

2003年01月 角川書店 角川スニーカー文庫

<内容>
「お前ら、いつか結婚するぜ」そんな未来を予言されたのは小学生のころ。それきり僕は彼女と眼を合わせることができなくなった。しかし、やりたいことが見つからず、高校を出ても迷走するばかりの僕にとって、彼女を思う時間だけが灯火になった。 「未来予報」
 ちょっとした金をぬすむため、旅館の壁に穴をあけて手を入れた男は、とんでもないものを掴んでしまう。「手を握る泥棒の物語」
 他二編収録。

 「未来予報〜明日、晴れればいい」 (ザ・スニーカー:2001年10月号)
 「手を握る泥棒の物語」 (ザ・スニーカー:2002年04月号 「手を握る泥棒のはなし」改題)
 「フィルムの中の少女」 (ザ・スニーカー:2002年08月号)
 「失はれた物語」 (書き下ろし)

<感想>
 いつもながら、シチュエイションの妙が最高である。「手を握る泥棒の物語」と「失はれた物語」の微妙な状況などはよくぞ考えついたなというしかない。そのような状況が整えば、もうあとは乙一氏の物語に耳を傾けるほかはない。

 今回一番のお気に入りは「手を握る泥棒の物語」。状況設定だけにとどまらず、意外な展開ときれいに収まるラストまで付けてくれればもう言うことなしである。

 また、「未来予報」の微妙な揺れ動く感情、「フィルムの中の少女」のどこか透き通ったかのような恐怖感なども捨てがたい。

 そして「失はれた物語」、これは中年男性必読の一編である。交通事故に遭い全身麻痺になった男と残された妻との物語。これが実に乙一らしく微妙な状況のもと、やるせなさを感じざるをえなく描かれている。今回もやられたとしかいいようがないであろう。


ZOO

2003年06月 集英社 単行本

<内容>
 「カザリとヨーコ」 (1998年12月号:小説すばる)
 「血液を探せ!」 (1999年12月号:小説すばる)
 「陽だまりの詩」 (2002年12月号:小説すばる)
 「SO-far そ・ふぁー」 (2001年7月号:小説すばる)
 「冷たい森の白い家」 (2002年2月号:小説すばる)
 「Closet」 (2001年1月〜3月号:青春と読書)
 「神の言葉」 (2001年2月号:小説すばる)
 「ZOO」 (異形コレクション『キネマ・キネマ』井上雅彦監修:光文社文庫)
 「SEVEN ROOMS」 (『ミステリ・アンソロジーU 殺人鬼の放課後』:角川スニーカー文庫)
 「落ちる飛行機の中で」 (書き下ろし)

<感想>
 今やもう時代の寵児といってもいい乙一氏。そんな乙一氏のデビュー当時からのさまざまなところに掲載された短編を集めたものが本書である。

 本書を読んでみて、乙一氏が“今”なぜ人気があるのかということのヒントが隠されているのではと感じられたところがある。全編通してみてみると、それぞれが異なるテーマをもとに書かれたもので共通項はないように思える。しかし、なにとはなしに多くの作品から感じとることができたキーワードがある。それは“不安”である。

 成長することの“不安”、生きることの“不安”。それらが多くの作品を通して虚実に現れているように感じられるのだ。うまく生きていけるのだろうか、周囲の人たちとうまくやっていけるだろうか、ちゃんと生活していけるのだろうか、といったような事柄が時には日常的に、時には非現実的に、時には極端な方向へとさまざまな形によって短編が描かれている。

 このような“不安”というのは現代における象徴的なものではなかろうか。誰しもが抱える不安というものをさまざまな形を用いて数々の小説を築き上げる。そういったところに多くの人々が賛同したり共感を覚えることにより支持され、時代の寵児へと祭り上げられているのではないだろうか。

 今、読んだこの本を20年後に読んでみたらどのように感じるのだろうかということをふと考えてしまう。そして20年後には乙一氏の作品がどのように評価されているのかと考えてみると興味が尽きることはない。


失はれる物語   

2003年11月 角川書店 単行本

<内容>
 「Calling You」 (「君にしか聞こえない」角川スニーカー文庫)
 「失わはれる物語」 (「さみしさの周波数」角川スニーカー文庫)
 「傷」 (「君にしか聞こえない」角川スニーカー文庫)
 「手を握る泥棒の物語」 (「さみしさの周波数」角川スニーカー文庫)
 「しあわせは小猫のかたち」 (「失踪HOLIDAY」角川スニーカー文庫)
 「マリアの指」 (書下ろし)

<感想>
 本書は角川スニーカー文庫によって出版された作品を選りすぐり、一冊の本にまとめたものである。「マリアの指」だけ書下ろし作品となっている。私は角川スニーカー文庫のほうは全部読んでいたので、今回は「マリアの指」を読むためだけの購入。

 というわけでここでは「マリアの指」だけについて触れることにする。他の短編に比べて「マリアの指」は少し長めの中編(100ページ)となっている。読んでみての感想は、「GOTH」の流れのような小説で、もう少し本格推理よりの本かなと感じられた。

 姉の友人が電車に飛び込み自殺をした。主人公の少年はその亡くなった女性にあこがれており、偶然その死の欠片である彼女の指を手に入れてしまう。その現場では彼女の婚約者という人物が彼女の欠けた指輪がついているはずの指を毎晩のように探していた。

 主人公の少年はその指を自分で持っていながらも、婚約者という男の指を探す手伝いをする。その行為は失ってしまった何かを探すためであるかのように感じられる。ただ、主人公自身も本当に自分が何を探さんとしているのかは、はっきりしていなかったのではないだろうか。ただ単に彼女に親しい人たちに近づいて事の真相と突き止めようということであったかもしれないし、もしくは彼の知らない彼女のことを知りたいと思ったのかもしれない。または、彼女が死んだ今だからこそ、彼女に近づきたい、または近づけると思ったのかもしれない。

 そしてその理屈を超えたかのような行為によって行き着いた先は、彼自身の手で事件の真相が明らかにしてしまうというものであった。それはあたかも彼自身にとって“失われる物語”であるかのように。


小生物語

2004年07月 幻冬舎

<内容>
 乙一がネットに書き込んでいた日記が一冊の本として刊行!
 激闘? 平凡!? 虚飾?? な、乙一の161日が赤裸々に語られる。

<感想>
 Web日記を本にしたものという事で当初買う予定はなかったのだが、コンパクトな本であったために買ってもいいかなという気にさせられた。そして読んでみたら・・・・・・これが意外と楽しめた。

 日記ということで、その日の出来事が面白おかしく書かれているだけの本かと思いきや、それだけではなく、そこには虚飾入り混じった奇妙な日常が展開されていた。これはちょっとしたショート・ショートのような感じになっていて、一つの作品として楽しむことができる本となっている。また、日々の日記のネタ作りがうまいと感じられ、乙一氏の才能の片鱗を表わす本といっても過言ではないだろう。

 これは乙一ファン以外の方にもお薦め。気軽に一日に少しずつ読むのに調度よい本である。


銃とチョコレート   6点

2006年05月 講談社 ミステリーランド

<内容>
 富豪の家から金貨や宝石を盗み出す怪盗ゴディバ。そのゴディバを捕まえようと、とうとう名探偵のロイズが乗り出してきた。ロイズは国の英雄で、町の子供達の憧れの的であった。下町に住む少年リンツもそんなロイズの活躍を心待ちにしているひとりである。父親を亡くしたリンツは母と二人、貧しいながらも幸せに暮らしていた。そんなある日、リンツは父の形見の聖書の中から謎の地図を見つけ出す。その地図を巡るゴディバとロイズの闘いの中へ、リンツ少年は少しずつ巻き込まれてゆく事に・・・・・

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<感想>
 これこそまさにミステリーランドにて書かれるにふさわしい作品と言ってよいであろう。これは本当に大人でも子供でも楽しめる内容になっている。ただ、どちらかといえば、やや子供向けかもしれない。

 本書を読んで驚かされたのは、勧善懲悪の物語として終始していないこと。普通であれば同じくミステリーランドで田中芳樹氏が書いた「ラインの虜囚」のようなものが書かれると思わせるような舞台設定である。もしくは、同じ怪盗ものとして書かれた法月綸太郎氏のような、ややユーモア・クライム調というのが予想されるべきところであろう。それを乙一氏は真っ向から異なる作調の冒険活劇を描いてしまったのである。

 あまり詳しいことを言ってしまうと内容に触れてしまうのでこれくらいにしておくが、少年に対してある種の残酷さを描き、さらに残酷さだけに留めるのではなく希望も見出せるように描く書き方は絶妙といえよう。適当な言い回しをすれば、思わず“非勧善懲悪”とでも言いたくなってしまうところである。

 こういう書き方は他の作家陣と比べると、ひょっとすると年代によるものなのかなぁなどと考えてしまったのだがどうだろうか??


GOTH  モリノヨル   

2008年12月 角川書店 単行本(写真:新津保建秀)

<内容>
 自分の満足する写真を撮るために、殺人を続ける男がいた。男は以前に自分が殺害した人物の写真を撮った現場へと出向く。その人里離れた現場で、森野夜という少女と出会うこととなり・・・・・・

<感想>
 短編1編と写真集が付いての単行本ということで非常にコストパフォーマンスの悪い本。とはいえ、それを分かっいながら買ってしまう自分が一番悪いのだろうと思う。出版社のほうも、それでも売れるだろうというのを見越して発売しているのだろうから。

 といったことはさておき、内容はといえば・・・・・・この短編自体は悪くないのだけれども、やはりこれ一編だけではなんとも評価しにくい。6年前に出版された「GOTH」のように、ある程度の数の作品が集められて初めて作品らしい体裁が整うものではないかと感じられる。

 本編の語り手である写真家よりも、途中から登場する「GOTH」の主人公である“僕”の不気味さをより感じ取れる作品とはいえ、これ一編だけではその恐ろしさというものが強調しきれてなかったように思われる。

 たぶん別にまた何編か書き上げる事ができたら、それらをまとめて別の一冊の本になるのであろう。

 そういえば、読み終えてこの文章を書いている最中にようやく、副題の“モリノヨル”が「森の夜」と登場人物の「森野夜」をかけているものだと今更ながら気づく。


箱庭図書館   

2011年03月 集英社 単行本

<内容>
 「小説家のつくり方」
 「コンビニ日和!」
 「青春絶縁体」
 「ワンダーランド」
 「王国の旗」
 「ホワイト・ステップ」

<感想>
 乙一氏の全編新しい作品集というと、ずいぶんと久しぶりに読んだ気がする。しかも内容も乙一氏らしく満足させてくれる内容・・・・・・と思ったのだが、あとがきでこれらの作品は読者からボツ原稿を送ってもらって、それを乙一氏がリメイクするという企画から生まれた作品集とのこと。それを知ってしまうと、ちょっと複雑な思いがしなくもない。

 確かに「小説家のつくり方」や「青春絶縁体」あたりは今風のありがちな感じがして乙一氏らしくないようなとは思っていたのだが・・・・・・。それでも“小説を書く”という行為がテーマのひとつになっているのかなと思えば自然な流れのうえで出来た作品とも感じられた。

「ワンダーランド」と「ホワイト・ステップ」あたりはいかにも乙一氏らしい作品。でも「ワンダーランド」はオチの付け方がいまいちだったかな。それに対して「ホワイト・ステップ」はすごく良かった。雪に付いた足跡による交流を描いた不思議な作品。

 と、全体的に良かったのだが、やはりあとがきによるこれら物語のできた経緯を聞いてしまうと、なんとなく気持ちがトーンダウンしてしまう。しかし、どういう形であれ乙一氏の物語が読めたということで良しとするべきなのだろう。この企画もまだ続くのかもしれないが、そろそろ乙一氏によるオリジナルストーリーを読みたいところである。


小説 シライサン   6点

2019年11月 角川書店 角川文庫

<内容>
 とある怪談話があった。それは、目が異常に大きな女に襲われるという話。その大きな女の名、“シライサン”という言葉を聞いてしまうと、それを聞いた者のもとに“シライサン”が現れるという。そして、“シライサン”に襲われたものは、両目が破裂して死亡するという。巷で、次々と両目が破裂して死亡するという事件が広まりだし・・・・・・

<感想>
 久しぶりの乙一氏の新刊。読んでみても、乙一氏の作風ってどうだったっけ? てな具合で、特に乙一を感じられる作品と言うようなものではなかったような気がするが、作品としては十分面白い。

 ホラー小説として、なかなか良い出来ではなかろうか。ちょっとした「リング」の現代版というような感触を感じられる。さすがに“シライサン”が“貞子”のようなブームを巻き起こすことはないだろうが、それはそれとして、怪談として面白い内容であった。

 両目が破裂するというショッキングな死因、謎のワード“シライサン”、静かに広がってゆく死因の感染。そういった恐怖がうまく描かれている。ホラー作品でありつつも、非常に読みやすいエンターテイメント作品という風にも捉えられる。

 次年度映画が公開されるということで、その映像化作品も面白そう。映画のブームのみならず、ついでに令和の乙一ブームが起こるということはなかろうか。




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