黒い仏


 石動戯作は助手のアントニオを連れて、依頼人の元へと車で向かっていた。その依頼人は非常識にも午前零時を時刻に指定してきたが、こちらも非常識で、仕事に困っていた石動はその要求を引き受け、依頼人の元へと向かうのだった。渋滞のために30分送れて、着いた所へ待っていた依頼人。彼は大生部暁彦。会社社長である。彼の依頼とは、福岡の寺である宝を探して欲しいというものであった。

 福岡のあるアパートで一人の絞殺したいが発見された。男はそのアパートに住むものであったが、身元を偽っていたようではっきりせず、身元不明ということになる。彼の部屋には少々の着替えが置いてある程度で、まったく生活臭がしないのであった。なぜか一つ部屋に数珠が置いてあった。

 石動とアントニオは九州へと渡り、現地で星慧(セイエ)という住職から宝の由来を聞くことになる。その宝とは、九世紀に唐に渡っていた僧、円載が日本に帰国する際に中国から持ってきたものだという。しかし、船は途中沈没してしまった。ある日、ある漁村に木箱が打ち上げられたという。それが今回の宝だというのだ。書物から、この地にその宝があるはずなのだが、それがどこにあるのかを探してもらいたいというのだ。

 謎の絞殺したい。不気味な僧・星慧とその下男。彼らと敵対する僧の集団。異様な雰囲気を感じ取る、謎の助手のアントニオ。殺人事件を追う警官達。

 一人のんきに宝を探す石動の周りでは死闘が繰り広げられようとしていた・・・・・・



内容・感想へ戻る