鏡の中は日曜日


 事件が起きたのは14年前。仏文学者・瑞門龍司郎の住む屋敷、梵貝荘にて毎月行われる「火曜会」。迎えるのは当主・龍司郎とその息子の篤典、誠伸。そして秘書の倉田辰則。出席者はK大助教授と彼の生徒3人。そして文芸評論家と俳優と弁護士。さらにはイレギュラーとして探偵、水城優臣とその助手、鮎井郁介。

 彼らが集まった奇妙な屋敷、梵貝荘。その特徴は、中庭を取り囲むようにして家が建っているのだが、庭を見渡すための窓が回廊に一つもついていない。さらには、その中庭へ出るためには一度二階に上り、そこのテラスの階段から降りなければ辿り着くことができない。そしてその中にはには、故人を惜しむかのような、墓標とも取れる彫刻が・・・・・・

 惨劇はその夜起きた。何者かの悲鳴が聞こえ、寝ていた一同がそれぞれ部屋から飛び出し、声が聞こえたと思われる中庭へと向かう。そしてそこに見たものは、弁護士の刺殺体であった。なぜか彼の周りには一万円札がばら撒かれていた。この奇妙な事件に対して、探偵・水城優臣は犯人を指摘する。そして事件は決着がついたのだが・・・・・・

 事件から14年後、現在。探偵の石動のもとに編集者から、梵貝荘の事件の謎を再び調査してもらいたいと依頼される。探偵・水城優臣の功績は鮎井の手によって、五冊の本として公表される。しかしその五冊目は水城優臣の最後の事件となっており、しかもその事件こそが「梵貝荘事件」となっている。そしてなぜか解決したはずのあの事件が未完となっているのだった。そこに何か作為的なものを感じ、興味をもった編集者の手によってこの事件が掘り返されることになる。水城優臣のファンであった石動は本人に会えるかもしれないと思い調査を引き受けるのであったが・・・・・・



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