<内容>
妹が死んだ。自殺だった、(私は病気。でも誰にも相談できない。)
と僕のイカれた家族は云うが。(絶対に云えないよ。)
そして現れた男。手にはビデオ。(七十七人の少女を屠った)
内容は妹のレイプ中継。(連続殺人、突き刺しジャック。)
渡されたのはレイプ魔どもの(彼が少女を殺す時・・・・・・)
愛娘達の克明すぎる行動表。(彼の視覚が私の視覚に接続するの。)
こうされちゃあ、する事は一つ。(怖いよ。もう駄目。しかも彼は、)
これが自然な思考だね。(私の存在を知っている。)
そして僕は、少女達の捕獲を開始した。(そして私は、彼に立ち向かってしまった。)
その果てに・・・・・・、(その向こう側に、)
<感想>
どうも作品にオリジナリティが感じられない。どのネタもなんらかの漫画作品やパソコンゲームのストーリーとかそういったもののなかで見られるようなものばかり。そういったものからのネタをつぎはぎしたかのような作品にしか思えない。
ただ、本としてなりたっているのは、妹が死んだため復讐(?)をなさんとする鏡公彦の行動と、その友人(恋人?)の明日美が連続殺人犯の視点とリンクしてしまうという二つの物語が結びついているという部分でかろうじて成り立っている。
しかし理由のつかないものは狂っているという言葉でいいわけすることにより成り立っている世界。ということでおさめてしまうのはどうかと・・・・・・
<内容>
青春は美しくない。私の場合もそうだった。二年B組に現われた転校生。校内で発生した密室。それらを起点として動き出す、不可解な連中。コスプレを通じて自己変革する少女。ぐちゃぐちゃに虐められる少女。人間しか食べられない少女。ドッペルゲンガーに襲われた少女と、その謎を追う使えない男。そして・・・・・・予言者達。私は連中の巻き起こす渦に呑まれ、時には呑み込んで驀進を続けた。
その果てに用意されていたのは、やはりあの馬鹿げた世界。
<感想>
これが著者にとっての二作目になる作品。処女作よりはそれなりに読めたし、書けていると思う。これであとは著者なりの世界をうまく構築できれば、もっと面白くなるのではないのだろうか。今の書き方のままであると、寄せ集められたパーツの部分がどうも他の作品やら漫画などからなんらかのネタを持ってきてだけのものとしか感じられないのである。せっかくそれなりに読ませる力があるのだから、なにか一味ほしい。
また、この作品においては、中途半端な密室など不要であろう。十分にエンターテイメントミステリとして勝負できる内容であるのだから。
<内容>
お祭り騒ぎは、もうお終い。今回は愛をめぐる三つの物語だ。暗澹たる日々に埋もれた無様な青年。悪意から逃れられない少女を護り続ける少年。密室情況の屋敷の中で繰り広げられる、贖罪を含んだ惨殺劇。それらは歪んでいて、壊れていて、間違っている。でも確かに愛の物語なのだ。俺は行動を開始した。その目的は、水没した全てのものを引き戻すため。そして、その果てに浮かび上がる真相。そこにはもう、馬鹿げた世界は存在しない。
<感想>
一作目は肌に合わず、二作目は良くできていると思いながらも少々乱雑な感じを受けた。そして本書が三作目であるが、これがすっきりとまとめあげられていてミステリーとしても完成度の高いものに仕上がっている。
鏡家サーガと銘うたれてはいるが、三作とも独立しているのでまったく気にせず読み進めることができる。本書は三つの話が並列にならぶ構成をとっている。それらが微妙に関連しているような、していないような感覚を受けながら物語が進んでいく。話の途中から鏡創士という人物が登場するのだが、これがどのような位置にあるのかがさっぱりわからず話が進められる。しかし、実は鏡創士ははっきりと意図を持って登場しており、彼の存在理由が最終的に明らかになった時に物語はすべてが収束し終局を迎える。今回はこの構成とこのまとめ方に素直に感嘆した。
<内容>
女子高生・冬子が「本物の衝動」に突き動かされてたどり着いた見知らぬ孤島。そこで出会った青年から冬子はある男の「監視」を依頼される。密室状態の岬の小屋に完璧にひきこもり、ノートパソコンに向かって黙々と作業を続ける男。その男の「監視」をひたすら続ける冬子。双眼鏡越しの「見る」×「見られる」関係が逆転するとき、一瞬で世界は崩壊する!
<内容>
突如、学校が崩れ落ちた! 何が起こったのかわからないが、とにかく学校が大地に呑み込まれてしまったらしい。ほとんどの生徒が死んでしまった中、生き残っているのはたったの10名。その10名それぞれがとる行動とは!? そしてその中には鏡佐奈と鏡那緒美の鏡家の姉妹が含まれていた・・・・・・
<感想>
まぁ、面白いといえば面白い。学校が崩れ落ち、そこで生き延びようとするもの達(というより暴れまわっているだけという見方もあるのだが)の様相と、物語自体の展開には興味を惹かれ、一気に読み通すことができた。
しかし、その物語の展開を邪魔するかのように描かれる登場人物たちの会話には、少々うんざりしてしまった。いちいち引用する、本やアニメのタイトルに、それらの登場人物らしき人々の名前。そういったものが挿入された会話があちこちというか、ほぼ全編にわたって挟まれている。こういった作風を良しとするか否とするかで、佐藤氏に対する評価が大きく分かれてしまうことであろう。
全体的にそれなりに読めた物語だと思うのだが、西尾維新氏が活躍している現在において、こういう内容の物語をわざわざ出す意義があるのかどうかは疑問。結局のところ、全体的に漂う“借りもの”という感触をぬぐうことのできない作品。
<内容>
ふと目を覚ますと、隣で眠っているはずの妻の首に包丁が突き刺ささっており、妻は死んでいた。何故妻は殺されているのか? そして、警察の捜査後も何故か事件として取り上げられていない。いったい何が起きているというのか? 協力者を名乗る六条というホームレスと共に事件を探ると、過去にも似たような事件がいくつも起きていることを知り・・・・・・
<感想>
久々に読む佐藤氏の作品。「鏡姉妹の飛ぶ教室」を読んでから9年も経過している。著者の佐藤氏はミステリ系の作品から文学系の作品へと移行したようで、最近は作品を手に取ることもなかった。ただ、今作は帯に“三島賞作家4年ぶりのミステリー長篇”と書いてあったので、期待して読んでみることにした。
それで実際に読んだ感想はというと・・・・・・うーん、不満ばかりが残るような内容であった。基本的にミステリというよりは、どこかSFに近いような作品。ミステリ的なネタよりも、世界設定のほうに力が入っているように感じられた。ただ、最近のSF作品でもよくあるように、世界設定のみで終わってしまって、その設定自体を生かしきれていないように思われた。
また、残念に思ったのは、久々に読む作品という事で文章や書き方にも厚みが出たかなと思って期待したのだが、あまりそういった事も感じられなかった。全体的に薄っぺらいというか、何も残らないというか。伊坂幸太郎氏の作品を水で薄めたような感触の作品。