キッド・ピストルズの妄想


「神なき塔」  (EQ誌 1992年 5月号 掲載:文庫化に際し、「反重力の塔」改題)
 『ハンプティ・ダンプティ』より
 反重力の研究をしているハンフリー・ダンプリー博士は皆に反重力の研究の成果を見せるという。白い卵型のヘルメットをかぶり、塔の上に登った博士であったが一向に何する気配もない。遅れてきた編集者カークをともなって最上階へ登り、閉ざされたドアを破ると、窓の下の地面のドームの模型が壊れているのが見えるだけでそこには誰もいなかった。皆が塔を降りると塔の上から突然カークが落ちてきた! 再び塔に登ってみるとそこには先ほどはなかった博士の死体が・・・・・・。偶然とられたビデオによって博士が塔に登っていたときもう一人の人物がいたらしいことはわかったのだが・・・・・・
 博士は地面ではなく天に向かって落ちたのか!? 反重力にとりつかれたハンフリー博士の心理と殺害方法の謎をパンク探偵キッド・ピストルズが解き明かす。


「ノアの最後の航海」  (書き下ろし)
 『雨、雨、いっちまえ』より
 ノア・クレイポールは聖書による妄想から現実に箱舟を作り始め人や動物を船へと運び入れ始めた。折りしもイギリスでは異常気象による大暴風雨にみまわれていた。ノアは幸運の数であるべく八人の身内を箱舟に乗せたいと考えていて、親類や息子たちを呼び寄せていた。しかしノア自身は心臓の疾患によりいつ死んでもおかしくない状態であった。
 皆が集まった夜ノアは遺言状を作成し、自分の父方と母方のいとこ八人に財産を残し、息子シドニーと未来の妻マーサは相続のリストから外されていた。奇妙な遺言が発表された後、銃声が鳴り響き、ノアの部屋でロナルド・クレイポール博士が銃殺され、ノアは心臓発作により死んでいた。そして兇器である拳銃は部屋から発見されなかった。自殺にしろ殺人にしろ動機がわからない状態で、殺人であればその殺害方法がわからないという情況であった。
 箱舟にとりつかれたノアの妄想とは?そしてこの事件の真犯人とはいったい?


「永劫の庭」  (書き下ろし)
 『つむじ曲がりのメアリー』より
 ラドフォード伯爵家の宝探しゲームに招かれた探偵士に付いてやってきたキッドとピンク。しかしそこの主人のラドフォード伯爵が昨日から行方不明だという。雇い人の一人は伯爵の死体らしきものを見たとまで・・・・・・
 そんな中、強引に宝捜しは進められラザフォード家の庭園の中をヒントをたどり皆は進んで行く。そして一向は宝捜しゲームのゴールらしき祭壇の棺の中にラドフォード伯爵の首なし死体を見つけることに! 伯爵の首を切断した理由は? そして伯爵はなぜ、誰に殺されなければならなかったのか?
 キッド・ピストルズが庭園にこめられた思いを感じ取る。




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