ひぐらしのなく頃に 内容・感想

「ひぐらしのなく頃に」を読む前に   

 2007年8月に講談社BOXから「ひぐらしのなく頃に」が出版されたのを機に、この作品に触れることとなった。ただ、この「ひぐらしのなく頃に」の名前だけはすでに色々なところで聞いたことはあった。同人ソフトとして販売されたのが最初とか、ゲームになったりアニメになったり漫画になったりしているなどということくらいは知っていた。

 ただ、よくわからなかったのは「ひぐらしのなく頃に」というタイトルの後に、必ず“〜編”という文言がついていること。これが何を意味するのがわからなく、「ひぐらしのなく頃に」って、一つの話ではなく、色々な話がたくさんあり、今もまだで続けているのかと疑問に思っていた。

 そういう風に思っていて、どこから手を付けていいのかもわからなかったため、今まで手を出すことさえできずにいた。ただ、今回それが小説となったため、とりあえずここから手を付けてみればわかるのではと思い、購入してみたのである。

 ただ、この小説が“第一話 〜鬼隠し編〜 上巻”というタイトルから始まり、いったいいつまで続くのかと気になり、ようやく「鬼隠し編」を読んだ後で「ひぐらしのなく頃に」についての全体像を調べてみたのである。

 すると、なんとこの物語には“問題編”というのものが四編あり、“鬼隠し編”がそのうちの一つということ。この問題編が講談社BOXで7冊にわたって(つまり7ヶ月)出版されるというのである。この問題編により作品の謎が提示されて、その後の“解答編”がまた四編あり、そこで全ての謎が解けるという構造になっているのだそうだ。

 ・・・・・・いやぁ、これはなんとも気の長い話で・・・・・・。しかし、もう既に“鬼隠し編”を読んでしまったので、ここで止めるというわけにもいかず、結局は全部買って読むこととなりそうである。また、読んでみて実際気になるところも多々あり、面白いと感じられたのも事実である。今ではこれは是非とも最後まで読み通さねばと強く思っているしだいである。

 ただ、困っているのは、あまりにも先行きが気になってしまい、既に先行しているアニメや漫画に手を出したくてしょうがないということ。問題編が出揃うだけで、あと5ヶ月もあるというのはちょっと長すぎる。しかし、ここはモチベーションを下げないためにも、他のもので作品の内容を見ないように小説だけで物語を追って行きたいと思っている。


第一話 〜鬼隠し編〜   

2007年08月 講談社 講談社BOX 上
2007年09月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 昭和58年、前原圭一は雛見沢村に引っ越してきた。転校の心配をしたのもつかの間、圭一には、のどかで可愛い物好きの竜宮レナ、男勝りでゲーム好きで皆のリーダーである園崎魅音、年下でちょっと生意気な北条沙都子、そしてこちらも年下で大人しくて人形のような古手梨花という四人の友人ができた。彼らは放課後、教室に残ってゲームをして過ごすという毎日を送っていた。
 雛見沢村で毎年行われる祭り、綿流しが近づいてきた頃、圭一はとある噂を耳にする事に。それは、ここ数年祭りの際に必ず一人の人間が殺害され、もう一人が行方不明になるという事件が起きているというのである。そのことを村の外から来た者から聞いた圭一であったが、村の中の人に聞いても誰もきちんとは答えてくれない。そして祭りの日がだんだんと近づくにつれ、親友と思っていた竜宮レナの様子がだんだんとおかしくなり・・・・・・

<感想>
 まだ問題編の最初の作品ということで、物語り全体が見えず、何がなんだかまったくわからない状況。とにかく驚いたのは、この「鬼隠し編」という話がこんな終わり方をするのか、ということ。主要人物と思われる者たちが最後の最後で次々と・・・・・・。いや、これは本当にどんな風にこの先続いていくのだろうと期待せずにはいられない。

 とりあえず今作のポイントとなるのは、今まで起きた数々の連続殺人事件。被害者の奇妙な死に方(喉を自分の爪でひっかくという)。圭一が背後に感じ続けた奇怪な影の存在。竜宮レナの過去。圭一と同じ行動をとったという悟史という人物について。村ぐるみで隠している(?)らしい何か。白いワゴン車。富竹ジロウという人物の正体。

 と、とりあえずこんなところを挙げてみた。これらに関してはまだわからないことも多々あるので、続きを読んでいけば全体の構図もわかってくるのではないかと思われる。何はともあれ、一ヶ月に1冊というのも、ちょっと待ち遠しい気がする。できる限り、その間に余分な知識は仕入れないようにして、小説のみで「ひぐらしのなく頃に」を堪能したいと思っている。


第二話 〜綿流し編〜   

2007年10月 講談社 講談社BOX 上
2007年11月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 雛見沢村に引っ越してきた前原圭一はすぐに転入した学校にうちとけることができ、竜宮レナ、園崎魅音、北条沙都子、古手梨花と仲良くなる。また、別の学校へ通う、園崎魅音の双子の詩音とも出会い、これもまた仲良くなることに。
 しかし、村で行われる綿流しの祭りのときに圭一は、詩音、富竹、鷹野の四人で開かずの祭具殿に忍び込むという禁忌を犯してしまう。その出来事のためか、次々と関係者達が殺害されたり行方不明になり・・・・・・

<感想>
 第一話を読み終えたときには主要人物の多くがあんなことになって、この後物語りはどう続くのだろうか? と、かなり気になっていたところだったのだが、まさかこんな形で話が続けられるとは・・・・・・

 なんと、第二話では時間が巻き戻されて、同じメンバーで多少異なる話が展開されていくという内容になっている。それはまるで、アドベンチャー・ゲームをやっていて、バッド・エンディングを迎えたから、また最初からやり直し、異なる選択をして違う話を進めていくというような感じになっているのだ。第一話を竜宮レナ編とするならば、第二話は園崎魅音編と言ってよいだろう。

 設定は第一話とほぼ変わりないのだが、第二話では前作に登場していない人物が出てきている。魅音の双子だという詩音、また、前作で名前だけ登場していた富竹の恋人の鷹野。

 さらには、前作と比べると性格が変わったように思える人物もちらほら。富竹もちょと変わったような気がするし、また、一番雰囲気が変わったのは警官の大石。こうしたちょっとした変化も気になるところである。

 という感じで、第一話から第二話へと流れて進展というものがあったのかどうかというのは、どうもまだ判断を付けづらいところ。第一話における謎の大半はある程度形付けられたようにも感じられる。今回は園崎にスポットが当てられたことにより、雛見沢村発展の経緯がくわしく語られたので、おおかたの謎にも説明がつけられそうな感じがする。

 ただ、今回拷問道具という存在が明らかになったものの、富竹の不可解な死因がきちんとは語られていなかったようなので、ここにもひょっとしたらもう一波乱くらい付け加えらるのかもしれない。

 そんなこんなで、展開さえ予想だにできないので、これらの物語がどのように解明されるのか、または何が解明されるのかが既に不透明にさえなってきた気分である。問題編の残りではたぶん、沙都子と梨花について詳しく語られるのだろうということは予想がつくのだが、それが明らかになったことにより、何がわかるようになるのだろうか? 謎は深まるばかりである・・・・・・


第三話 〜祟殺し編〜   

2007年12月 講談社 講談社BOX 上
2008年01月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 前原圭一は竜宮レナ、園崎魅音、北条沙都子、古手梨花と共に放課後は部活と称したゲーム合戦をして楽しい毎日を過ごしていた。そんな中、圭一は沙都子の複雑な家庭事情を知ることとなる。沙都子は現在、両親が亡くなり、兄が失踪し、同じく親のいない梨花と二人で共同生活をしているというのである。そしてある日、今まで沙都子を放って村から出ていた沙都子の叔父が戻ってきて沙都子と二人で住むようになってから、それまでの平和な日々が崩れ始めることに!

<感想>
 第三話もまた同じように時間が戻され、同じような別の物語がつむがれることになる。今回は北条沙都子編である。

 と、パラレルワールドのように別の物語が繰り返されるものの、第二話と部分的に話がリンクするところもあり、単純に“パラレルワールド”と言い切ってよいものかどうか未だに迷っている。だからといって、同じ時期に同じようなところで同じ名前の違う人物が別々の行動をとっているというのも無理があるだろう。と、思いつつも何らかの仕掛けが施されているのではないかと疑ってしまうのである。

 第一話から続いてきて、興味深いと思えるところは、同じ人物でも性格がかなり異なるように書かれているところ。特に警官の大石については人格者に思えた第一話から比べると、第三話では性格破綻者のようにさえ思えてしまう。

 半ば部外者のように描かれている富竹と鷹野に関しては、第三話へと進むに連れて存在が薄くなる富竹に対し、だんだんと存在が濃くなる鷹野、という具合に対照的に表されているところも興味深い。

 今回は新たに、野球部の監督という人が重要そうな役割を担っている(?)ような感じで登場している。また、第二話で登場した詩音も登場していることには驚かされた。双子というのは、てっきり第二話のみの設定であると思い込んでいた。

 と、物語も第三話まできて、ある程度語りつくされたといってもよいのだろうけれども、未だに何が謎になっているのかがよくわからなかったりする。“解決編”というものがいかなる解決をもたらすものなのか、さっぱり想像がつかない。

 今回、著者があとがきで、第一話から第三話までの物語を主人公の立ち位置によって区別をしているのだが、これは何らかのヒントになりえるのだろうか? 重要そうに思えながらも、私の視界は依然霧に包まれたままである。

 次作は問題編の最後をかざる“暇潰し編”とのことであるが、基本的には問題編は第三話までが核となっているそうなので、最後は補足的な内容ということなのだろうか? とりあえず、その作品を読みながらでも、ここまでの問題編をじっくりとまとめることができればなと考えているところである。


第四話 〜暇潰し編〜   

2008年02月 講談社 講談社BOX

<内容>
 昭和53年、建設省の大臣の息子が誘拐されるという事件が起きた。警察は大臣に陳情してきた環境保護団体などを手分けして捜査を開始した。公安の刑事である赤坂は雛見沢村ダム建設を反対する団体の調査を任命された。彼が雛見沢村へと潜入したとき、不思議な少女・古手梨花と出会うことに・・・・・・
 赤坂衛の視点により語られる、雛見沢村の惨劇が起こる前兆が描かれた作品。

<感想>
 この作品には“暇潰し編”というタイトルが付けられていたために、てっきり補足的な内容だと思い込んでいた。しかし、読んでみると結構重要なことが描かれており、とてもおまけというだけではすまされない内容となっている。

 今までの作品は前原圭一が全て主人公を勤めてきたが、今作では大人であり公安の刑事である赤坂衛の視点により語られている。時代設定は昭和53年と、前原圭一が引っ越してくる昭和58年よりも5年も前のこと。赤坂は誘拐事件の調査のために雛見沢村へと潜入することになる。

 また、今回は前作までの流れから見れば古手梨花編という一面も持ち合わせている。

 作品のタイトルは“暇潰し編”となっているが、この内容からすると“前兆編”といってもよいかもしれない。今回は外から来た者の視点から雛見沢村の独特の閉鎖性が描かれている。

 ただ、赤坂が村の外から来た大人であるという設定により、村の中深くへ入り込むまでにはいたらず、今回の主題となっている誘拐事件の解決に終始しているといってもよいであろう。そうした中で、赤坂は警官の大石や医者の入江らと出会っているが、今までの登場人物で関わりあうことができたのは梨花も合わせて三人くらいである。

 そして、本書が“前兆編”ともいうべき兆しを見せているのは、古手梨花がこの後に起こる惨劇の全てを予言しているということである。しかし彼女は自分の死も含めた予言をしたにもかかわらず、何故行動を起こさなかったのかということも疑問のひとつとして残される。

 こうした全てを含めてようやくここで問題編が終わり、この後に解決編へと導かれることになるようである。今作の最後では、その解決に向けてある登場人物の決意が表されることとなる。

 これからようやくこれらの事件の解決が成されるようであるのだが、どのような形で何が解決されるのか!? ここまで来ても全く想像がつかない状態である。


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