ひぐらしのなく頃に解 内容・感想

第一話 〜目明し編〜   

2008年05月 講談社 講談社BOX 上
2008年06月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 昭和57年、園崎詩音は寄宿していたお嬢様学校から脱走し、雛見沢村へと帰ってきた。しかし、祖母である園崎家の当主の言いつけを破って帰ってきたせいもあり、姉の魅音や忠実な部下の葛西の力をかりて、魅音の名を語りながらひっそりと隠れた生活を送っていた。そんなある日、詩音は北条悟史と出会うのであった。しだいに悟史に惹かれつつあった詩音であったが・・・・・・
 悟史が消息を経ってから一年後、村には新しく前原圭一という少年が引っ越してきて、しだいに魅音と仲良くなっていった。そして、今年も“綿流し”の夜が近づいてきて・・・・・・

<感想>
 ようやく解答編に突入ということであるが、問題編の流れからして、レナ編が先かと思っていたのだが、第一話は“詩音&魅音編”となっている。今作を読む事によって、問題編第2話の“綿流し編”の背景が解るようになっている。

 最初は詩音という魅音の双子の存在が出てきたときには、何か釈然としないものがあったのだが、本書を読む事によってそれらの多くが理解できるようになる。“綿流し編”の裏に秘められた感情、想いが今作を読む事によって、ひしひしと伝わるように書かれている。

 とはいえ、いくら問題編と解答編とはいえ、これらが予想できる範疇なのかどうかは微妙だと思われる。

 今作は一言でいえば、“園崎魅音の失敗”といったところか。詩音と魅音、二人の秘められた感情を押さえたうえで、問題編の“綿流し編”を読めば、また違ったものが浮かび上がってきそうである。

 そういえば、本書は解答編とはいえ、まだ多くの謎を残したままとなっている。今作で本人が登場した北条悟史の行方、真の意味での雛見沢村の祟りの正体、真の黒幕というものが存在するのか、等々、読めば読むほど物語の細部は混迷を極めるばかりである。これは、とにかく残りの作品を読み続けてゆくほかないであろう。


第二話 〜罪滅し編〜   

2008年07月 講談社 講談社BOX 上
2008年08月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 竜宮レナは雛見沢村に引っ越してきてからは気の合う仲間達に囲まれて、楽しい毎日を送っていた。しかし、父親が女にだまされた事が発覚してから暗い毎日が続くことに・・・・・・
 レナの両親は離婚し、レナは父親と共に雛見沢村へと舞い戻ってきた。離婚後、多額の慰謝料をもらったものの、父親は虚脱した日々が続き、働きもせずに毎日を送っていた。そんなレナの父親に目を付けた詐欺師の男女によって、少しずつ金を巻き上げられることとなる。レナはなんとか現状を打開しようと、とある行動をとることにした。レナの一世一代のがんばり物語が幕を開けることに。

<感想>
 解の第一話が“詩音&魅音編”となっていたため、今作は同様にレナ編かと思っていたのだが、読んでみるとちょっと趣が異なっていた。てっきり問題編の“鬼隠し編”になぞらえて話が進むのかと思いきや、それらとは全く別の話が展開されてゆくこととなる。

 途中まで読んでいて感じたのは、竜宮レナという人物が雛見沢村にとってはある種の部外者であるということ。一応、出身とはなっているものの、彼女の持つ背景は雛見沢村にあまり関係せず、詩音ら他の登場人物のように根っこでのつながりというものはない。そして、今回の作品で起こる事件も雛見沢村の事件とは全く別種のもののように思える。

 今作では、今まで前原圭一が経験してきたかのような出来事が、今度は竜宮レナに降りかかるというような展開によって進められる。ここで気がつくのは雛見沢村の因習に直接関係の無いレナや圭一がなんらかのキーパーソンであるべきということを示唆しているのではないかということ。そして、後半の展開によりそれが現実味を帯びてくることになる。

 この作品になって、ようやく物語が“解”らしくなり、いままでの作品とのつながりが見え始めるようになる。最初“鬼隠し編”とは全く関係のない作品のように思えたのだが、最後まで読むことによって、実はレナと圭一の感情的なつながりを示す作品になっているという事が理解できる。

 一応、この作品でも今まで起きた不可解な出来事のいくつかが示唆されるような内容が含まれている。ただし、この作品内ではあくまでも妄想の域から出ずに終わってしまっているのだが。

 ただ、本書を読んでいて感じた事は、この一連の作品というものは何が起きたかを解決するという物語ではなく、どのように解決したらよいのかを登場人物たちが話し合いながら真実のルートを発見していく物語というように捉えられるようになってきた。

 数々の誤解が生んだ悲劇を回避するために、それぞれの登場人物たちが持つ情報を持ち寄り、それによって本当の雛見沢村の姿が見え始め、そして全ての人々が幸福になるためのルートがあらわになってゆくのではないだろうか。


第三話 〜皆殺し編〜   

2008年09月 講談社 講談社BOX 上
2008年10月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 古手梨花は雛見沢村の呪いに捕らわれ続けていた。昭和58年の6月に必ず殺されるという輪廻転生を繰り返す呪いに。いつか、その運命の日を全員そろって無事に乗り切るという方法を考えつつも、決して実る事のない期待を抱き続けることに絶望し始めたとき、運命を打ち破る一筋の希望の光が刺し始め・・・・・・

<感想>
 ようやくこの巻で「ひぐらし」の全貌を見渡すことができたような気がする。今まで起こってきた多くの謎、そしてこれら一連のループし続ける物語の謎、それらの多くがここで解かれることとなる。

 この巻では今まで謎の存在であった古手梨花についての真実が明かされ、梨花自身の視点から物語が語られてゆくこととなる。また、梨花以外での本書でのキーパースンとも言える者も登場しており、それはここに来て初登場する“羽入”というものの存在と、今まで雛見沢村の呪いで必ず殺害されていた鷹野三四である。

 この物語では最初に、雛見沢村一連の謎を解くための謎について整理されることとなる。それに応じて物語が進んで行き、それらの多くの謎が明かされることとなる。ある種、この巻で終わらせてもおかしくないという気がするくらい、まとめの一冊となっているのだが、まだ物語りはここで終わらず最後の一編へと続いてゆくことに。

 残る謎としては、今回初登場となった“羽入”についてであろうか。この存在によって、本当の意味での雛見沢の真相が浮き彫りにされることになるのかもしれない。そして前原圭一をはじめとする登場人物一同が幸福な結末を迎える事ができるのか、それも大きな見所となってゆくのであろう。

 ここまで読んだことによって、「ひぐらし」という物語の大きな枠をようやく理解する事ができた。この物語が完結した後もいろいろな作品やアンソロジーが出ているのを目にするが、このような内容ならば確かに色々と話を広げる事ができるなと納得。

 長きにわたって読み続けてきた話もようやく2009年の1月で完結を迎えることとなる。どのような内容にして、どのように話を収めてゆくのか、ここまで読んでも最終巻への興味は決して尽きる事が無い。


第四話 〜祭囃し編〜   

2008年11月 講談社 講談社BOX 上
2008年12月 講談社 講談社BOX 中
2009年01月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 雛見沢村に巣くう敵の正体も見え、あと一歩で勝利が果たせるかと思いきや、結局のところ負けてしまった古手梨花。しかし、ようやく希望の光が見え始め、次こそはと迫る最後の戦いに備え始めてゆく。彼女の望みに呼応するかのように、次々と協力者が現れ、カケラは全てそろい、今まで決して事件に介入する事のなかった羽入までもが皆のもとへと集まってきた。ようやく準備は整えられた。あとは実行に移すのみ・・・・・・

<感想>
 とうとう雛見沢村の物語が大団円を迎えた。ここまで長きにわたってつむがれてきた物語のひとつひとつがようやく大きな実を結ぶこととなる。

 本書はミステリ的な作品というわけではないので伏線という言い方が正しいかどうかはわからないが、物語上の伏線がすべて回収され、ひとつの大団円に至るさまは、もう見事と言う他はない。長きに渡ってこの物語を読み続けてきたが、ここまで読んで心底よかったとほっとしている。

 この「ひぐらしのなく頃に」という作品であるが、一部の過激な描写のみが取りざたされ、それによってこの一連の作品の評価が決め付けられてしまっているのは残念なことと言えよう。確かに“問題編”のみを読んでもこの一連の物語が本当に伝えたい事は伝わってこず、“解決編”まで読み通すことによって真の意味合いが伝わるようになっている。そして、その真の意味こそがこの物語で大きな位置を占めるものゆえに、そこまで読みきらずにこの作品を判断されてしまうというのは実にもったいないことである。

 本書で語られている大団円とは、誰一人欠けることなく綿流しの祭りに参加するというものである。そのために、互いが抱える問題を皆で分かち合い、その問題を解決するのに決して短絡的な行為に走らずに、全てが良い方向へと向かうよう皆で知恵を出し合おうということが成されている。子供だけで解決できなければ、彼らに力を貸してくれる大人に頼り、その大人の手を借りてさらに大きな力を動かし、というように雛見沢の輪をひろげてゆくという試みがなされてゆく。その試みが全て成功したとき、彼らは真の勝利を手に入れることとなるのである。

 ということで、本書を先入観のみで判断している人には是非とも一読してもらいたい(とはいっても気軽に手に取れる量、値段ではないのだが)。この作品を読み通してくれれば、著者がこの物語を通して何を伝えたかったのか、必ずわかってもらえるはずである。







ひぐらしのなく頃に礼 内容・感想

 〜賽殺し編〜(完結)   

2009年03月 講談社 講談社BOX

<内容>
 雛見沢村を巡る事件も大団円を向かえ、古手梨花らは事件後の平穏な日々を過ごしていた。そんなおり、梨花は自身の不注意が原因で車にひかれてしまうことに・・・・・・。また別の世界へと飛ばされたようなのであるが、梨花を待ち受けていたのは今までとは全く異なる世界で、雛見村沢がダム開発により無くなってしまうということが前提の世界であった。そこで梨花がとならければならない選択とは・・・・・・

<感想>
 とうとう「ひぐらし」の物語も完結と思いきや、本当の完結編が残されていた。といっても、ある意味おまけの一冊と言えるかもしれない。ただ、最後まで読み通してみるとおまけはおまけであっても、古手梨花の人生にとって必然性のあるおまけであるということは確かであろう。

 ということで、ようやくこれら一連の物語も終演を迎えることに。いや、長い物語であったがそれなりに堪能させられた。ただ、後半に行くにつれて、基本的には同じ物語が何度も繰り返されるというためか、若干飽きがきたのも事実である。とはえい、最後まで読み続けて良かったとも思えるのもまた事実。

 本書で少々不満に思えたのは、最終的に古手梨花のみが中心となって終わってしまったということ。序盤の主人公である前原圭一や竜宮レナなどの心情にも、物語完結時にもっとスポットがあたってもよかったのではないかと思える。この物語には多数の人物が登場してくるので、それらひとりひとりの心情を取り上げるということは不可能に近いかもしれないが、物語を読み続けてきたものとしては気になる登場人物の心情にもっと触れたかったと考えてしまうのも決して不思議なことではないだろう。

 ただ、そういう数々の要素を残した作品だからこそ、未だに語り継がれ、アンソロジーなどが書かれているのであろう。そのような形で今後も語り続けられてゆけばよい、そういうスタンスを持ち続ける作品がこの「ひぐらしのなく頃に」なのかもしれない。


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