<内容>
「あきらめのよい相談者」
「規則正しいエレベーター」
「詳し過ぎる陳述書」
「あきらめの悪い相談者」
<感想>
弁護士事務所を舞台に描かれる日常系のミステリー。ミステリーのネタのみをとれば、その内容は結構平凡ともとれるのだが、弁護士事務所という舞台を背景に用いたところが本書の格をワンランクアップしていると思われる。
「あきらめのよい相談者」
これはヒントというか、全体的な構成がわかりやすく書かれていたので、謎を読み取ることができた。ただ、弁護士事務所が集まったビルという背景をうまく生かした内容と言えよう。この題材の短編集の導入としてはもってこいの作品。
「規則正しいエレベーター」
本書の中ではあまり好きになれなかった作品。弁護士という背景と内容があまりマッチしていないように感じられ、しかも、そこを無理やりつなげているようにも感じられた。また、トリックとしても微妙なところ。現実にはこんなことも十分ありそうな気はするのだが、事件に結びつけてしまうのには少々強引な気がした。
「詳し過ぎる陳述書」
これは法廷場面が緊迫していてなかなか楽しむことができた。トリックを割ってしまえば、なんだということになりかねないのだが、こういった事例は実際にありそうな気がする。
「あきらめの悪い相談者」
目からうろこ落ちる、というのはこの事だろうか。本編の最後にて出される結論を見たときは、思わずなるほどとため息が出てしまった。日常と照らし合わせて納得される人も多いのではないだろうか。これは必見の一編である。