<内容>
高校生の白石秋美の通う学校では会談がはやっていた。文化祭が近づく中、昨年旧校舎で殺害された女教師の亡霊の噂がたちはじめる。そんな折、秋美は学校に通う女子のあこがれのもとである、生徒会長の木吉と空手部の渋谷と親しくなる。そして秋美は怪談好きな渋谷らと共に旧校舎に忍び込み、事件に関わることとなる。彼女たちが旧校舎に忍び込んだ後に、その旧校舎でひとりの教師が死亡するという事件が起きたのだった。警察は自殺で片づけようとするが、その教師と親しかった秋美は、自殺という結論に納得しなかった。秋美は木吉と渋谷と共に事件を調べてゆくのであったが・・・・・・
<感想>
ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の大賞に漏れた作品ゆえに、あまり期待しないで読んでいた。しかし読み終わってみると、これはなかなかの作品ではないかと感心してしまった。書きようによっては、大賞を獲得することもできたのではないかと思ってしまうくらい。
読み終えてみると、序盤の展開がやや残念な気がした。最初はごく普通の女子高生が人間関係に悩みつつも、イケメン男子二人と知り合いになり、旧校舎に忍び込んだりと青春を満喫しているかの様相。そして、教師の死亡事件が起き、過去に起きた事件との関連が取りざたされる。事件が起きてからは、主人公である白石秋美中心に物語が語られるだけでなく、刑事である楠木のパートも並行して進行していくようになる。
読んでいる最中は、事件に自ら関わり合いになろうとするも、どこか傍観者めいた主人公の存在に物足りなさを感じさせられる。ただ、真相に近づきつつあると、序盤からの行動すべてに伏線が張られていることに気づかされ、計算しつくされた物語であったことに驚嘆させられる。
近年、学園ミステリを読んでいても、自らが年をとったせいか、あまり共感できなかったり、面白いと思えなかったりと感じることが多かった。ただ、本書においては素直によくできたミステリであると感心させられた。できれば前半のうちに、もうすこし事件を読者に印象付けるような工夫や、ミステリとしての色を強めるような展開で物語を走らせることができれば、もっとこの作品に対する評価が強くなったのではなかろうか。そう思うと、大賞を逃したのが惜しいと思われる作品である。なんとなくで手にとった作品であったが、今年読み逃さずにいれて良かったと思えた一冊である。
<内容>
幽霊の存在を目視でき、話すことまでできる赤茨耕一。彼の趣味は、幽霊たちがどのようにして死に至ることになったのかを調べる“幽歴”を調査すること。新しいアルバイト先のコンビニにに、赤茨の前にさっそく幽霊が表れ・・・・・・
<感想>
なんかホラー風の作品。幽霊たちと語ることができるという設定のみで、単にその幽霊たちから過去の話を聴くだけというような・・・・・・と思いきや、連作短編作品として最後にうまくまとめていた!
幽霊となった者の過去を掘り起こす、“幽歴”というものを収集するのが趣味の赤茨耕一。彼がさまざまな場所で起きた事件を掘り起こしていく。ひとつひとつの短編作品としては、ミステリめいたものもあるのだが、ネタとしてはわかりやすく、さほど見るべきところはないように感じられた。
しかし、実はそのひとつひとつの短編での調査が一貫したものであり、適当にそれぞれの事件を調べていたのではなく、確たる意識を持って赤茨が調査していたことが明らかとなる。これはうまい具合に組み上げた物語だなと感心させられた。単に幽霊から話を聴くだけなのかと思っていたが、“幽歴探偵”あなどりがたし!
<内容>
フリーターの福山鞆広は、バイト先から解雇され、新たな職探しを始めようとした矢先、大学時代の先輩である城之内祥子にあう。福山は、祥子が行おうとしているビジネスに参加しないかと誘われる。それは“指令ゲーム”という名で、日常のなかで与えられた課題(出題内容や仕掛け人探し)をクリアしていくというもの。福山は試しにそのゲームをテストプレイすることとなり・・・・・・
<感想>
分量・内容ともにお手軽というような作品で、1日で一気読みできる作品。ライトな感触のサスペンス・ミステリ。
内容は、“指令ゲーム”のテストプレイをすることになったフリーター青年の様子を追っていくというもの。その“指令ゲーム”とは、どこどこへ行きなさいという指令から始まり、そこで指示に書かれている通りのことをして、次の指令をもらい、また別のミッションをこなすというもの。指令のレベルが高くなると、その指令を行う相手を見つけづらくなり、観察力が問われるものとなっている。
という感じで、町全体を使用したようなミッション攻略ゲームを描いている。実際に行うには難しそうだが、やるとなると結構面白そうな感じがする。ただ、ミステリ小説としてとりあげる題材としては意外と難しいものではないかと感じられた。というのは、本書を読んで物足りないと感じたとしても、では、どのような結末に持っていけばベストなのかというものなのか想像がつかない。まぁ、よっぽど想像を超えるような結末が待ち受けていなければインパクトの強い小説とするのは難しい題材であろう。
ミステリをあまり読みなれていない人にとっては面白く感じられると思われるが、ある程度読みなれた人にとっては似たような構成のものは読んだことがあるのではないかと思われる。私は、岡嶋二人氏の某作品を思い起こしたのだが・・・・・・