うみねこのなく頃に 内容・感想

Episode1   Legend of the golden witch   

2009年07月 講談社 講談社BOX 上
2009年08月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 1986年10月、伊豆諸島に浮かぶ孤島“六軒島”にある大富豪・右代宮家の本家にて、右代宮家の全ての親族が集まり、親族会議が行われようとしていた。なんとかして、当主・金蔵から莫大な財産を巻き上げようという思惑を持って集まった金蔵の息子や娘たち。無邪気に再開を喜ぶ、その子供たち。そして、彼らに金を渡す気のない当主の金蔵。当主の金蔵は財産よりも、魔女ベアトリーチェの復活のみを祈り、自室に閉じこもったきりであった。
 そんななか、台風が接近し、島から出る事ができない状況になったとき、連続殺人事件の幕が開けることとなる。

<感想>
「ひぐらしのなく頃に」に続いての竜騎士07氏の作品、「うみねこのなく頃に」。「ひぐらし」を読み通しただけあって、やはりこちらも気になってしまい、引き続き読み通す事にした。

 今作については、上巻を読み上げるのに、ちょっと手間取ってしまった。何しろ、上巻のほとんどが人物紹介のようなものであり、物語がなかなか前に進まない。ただし、その分下巻になると、話は一気に加速することとなる。まぁ、本作はこの上下巻だけというわけではないので、人物紹介が少々長くても許容せねばならないところなのであろう。

 と、なんだかんだでこの“Episode1”を読み終えたのだが、この作品だけでは何とも。「ひぐらし」のようにこれはこれで一応の完結がなされているが、これだけで全てが判断できるものではない。一番のポイントは、この作品をミステリと判断すべきなのか、ファンタジーと判断すべきなのかということ。これについては、著者より、現時点では読者の判断にまかせるということになっている。ようするに、この時点では完全なる解答はなされていないということなのだ。

 ただ、本書をミステリとするのであれば、ここでの真相はかなり難解なものとなるのだろう。果たして本当に人の手による犯罪なのかと、疑問に思わずにいられない。なんとなく、こう考えている時点で著者の術中にはまっているという気がものすごくするのだが。

 個人的には、最終的にミステリとして収束していくのではと考えながら読み進めて行くつもりである。それならば、今後どのような展開が待ち受けているのかということも非常に気になるところ。まだ“Episode2”に手を付けていないので、早めに着手したいと思っている。たぶん、今回は「ひぐらし」とは異なる趣向じゃないかとは思っているのだが、どうであろう。


Episode2   Turn of the golden witch   

2009年11月 講談社 講談社BOX 上
2009年12月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 大富豪・右代宮金蔵の孫の一人譲治。彼は右代宮の使用人のひとり・紗音を恋し、二人は結婚を誓うことに。その誓いの儀式のために、紗音は魔女を封じているという鏡を破壊する。それを機に魔女ベアトリーチェが右代宮家の者達の前に現れ、恐るべき事件が次々と・・・・・・右代宮戦人とベアトリーチェとの闘いの第2幕が始まった。

<感想>
「うみねこのなく頃に」はどのような展開で話が進められるのかと思いきや、こちらも物語の繰り返しが行われるよう。「ひぐらし」に続いて並列世界が繰り広げられるようであるのだが、こちらの作品では大まかな内容は変わらず、その部分部分を読み取りベアトリーチェが起こした奇跡のように思える事象を現実のものとして捉える事ができるかどうかが鍵となって来るようである。

 本書では“魔女のターン”という副題が付けられている通り、数々の現実とはかけ離れたかのような出来事が起こる。これは抽象的なものの言い方ではなく、実際に怪物との闘いのような描写が繰り広げられている場面さえ見られる。よって、推理小説というよりもどこかファンタジーめいた雰囲気が感じられる。

 しかし、この“Episode2”はそれだけではなく、魔女が奇跡を起こしたかのように思われる出来事に対して、それぞれ論理的に暴くことができるというようにほのめかされてもいるのである。その一端として、ベアトリーチェが言った言葉で“赤”で書かれているものは“真実”であると定義されている。よって、そこから現実的な推理をひも解くことができるという可能性を残しているのである。

 2作品目に入って、個人的にはより推理小説という趣が強くなったようにさえ思われるのだが、今後どのように展開していくかを期待しつつ話を追ってゆきたい。ところでこの作品は何冊まで刊行され、どの巻まで読めば謎が解けるのであろうか? そのへんを知りたいものだが・・・・・・すでに十分に推理(推測?)できそうなところもあるのもしれないが。


Episode3   Banquet of the golden witch   

2010年03月 講談社 講談社BOX 上
2010年04月 講談社 講談社BOX 下

<内容>
 魔女の度重なる攻撃に屈服せず必死に解決の道筋を見つけようとする戦人。そんな彼の前で六軒島における右代宮家の惨劇・第三幕が幕を開ける。
 右代宮家にて殺人が繰り広げられる中、黄金の存在と次代の当主の座に目がくらむ長女の絵羽。心の中の声が語りかけるままに行動を起こしていくことにより、絵羽はベアトリーチェから告げられた謎を解き、次代の魔女の座へと昇華する。彼女は今回の右代宮家をめぐる殺人劇の犯人なのか!?

<感想>
 さすがに同じ事の繰り返しも3回目になるときつく感じられる。著者の方もそういったことはわかっているようで、単純に右代宮家の惨劇にスポットを当てるだけでなく、魔女とベアトリーチェのやり取りの方を前面に出すという展開がなされている。

 とはいえ、この魔女とのやり取りが個人的には微妙と思えた。魔女とのやり取りにおいて、妙に戦人のほうがあれやこれやと主張しだし、話がだんだんと説教臭くなる。それに対する魔女の反応についてもどうかと思えるようなもの。決して表面的なやりとりだけが全てというわけではないのだが、読み続けている最中は首をかしげっぱなしであった。

 それに対してミステリ的な展開としてはまずまずだったのではないかと感じられた。今作では表面的な犯人として絵羽を持ってきている。そうしたなかで彼女が魔法を使うことなく犯行が可能であったのかを考えさせる内容。

 今回の展開を読みながら思ったのは、ではEpisode1とEpisode2の犯人も絵羽であったのだろうかということ。今までの作品では絵羽は序盤で死んでいたはずなので、全作を通しての真犯人という存在ではなさそうな気がする。そうすると、Episodeごとに犯人は別の人ということなのであろうか? これは前の作品に戻って赤字の部分を抽出して色々と考えてみた方がいいかもしれない。


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