“使える” 本 屋 を 捜 せ !




 3月末に引越しをし、4月から新天地での生活が始まった


 引越しをしたとき、私にとっては早めになさなければならない重要な事項がある。それは、電力会社への連絡でもなく、水道局への連絡でもなく、住民票の移動でもない(もちろん実際にはこれらもすぐに行うし、ガス会社や電話会社には先に連絡が必要)。




それは本屋の確保である



 私はこのようなHPを作っていることから推察できるだろうが、読書を中心とした生活を送っている。それはほとんど読書マニアといってもいい域なのかもしれない。そのような生活を続けているうちに、“新刊は発売したら直ぐに買わなければならない”という強迫観念まで芽生える始末である。


 そんな中、いままでの人生においても逃した本の数は多い。それは本の種類によっては(というか売れない本)、すぐに絶版になってしまい、手に入らなくなるものが多いからである。さらには新刊のうちには平積みになっていて、綺麗な本を選ぶことができるが、何日かして、書棚に一冊しかない状態になると、カバーが破れていたりとか、日の光によって赤茶けていたりとか悲惨な状態をさらす運命にいたる書籍は数多い。どうせそろえるならば、できるだけ綺麗な状態の本が望ましい(すいませんマニアですから)。


 よって、新刊は早いうちに攻めなければならないので、引越しをしたらすぐに本屋を探さなければならない。ところがこれがまた難しい。本屋というもの自体はどこにでも数多くある。しかしながら、“使える”本屋というべきものはほとんどない!


 この“使える”というのはどういうことかというと、一言でいえば規模である。つまり基本的には大きな本屋ほど多くの本を置いているわけである。しかしながら、大きければそれで済むかというとそういうわけでもない。ではもう少し具体的に、私にとっての“使える”という意味をあげてみると、



 ・自分が欲しいジャンルの本(私の場合は推理小説)を数多く入荷している。
 ・発売日に忠実である(一日早く出ていたりするとなお可)。




 という2点である。一番は“欲しい本が売っているかどうか”ということだ。これが一番肝心である。さらには本屋によっては欲しい本以前にその出版社の本が置いてあるかどうかということを確認せねばならないのである。よって、欲しい本を探すには、どの本屋にどの出版社の本がおいてあるかどうかということを事前に確認しておく必要があるのだ。また書店によって、この出版社のものはたくさん入荷するとか、この出版社のものは1冊しか置かないという書店独自の性質がある。それをふまえながら本屋を選択することによって、手に入れる確立を高くするということが可能となるわけである。


 また、発売日というものも大事である。本には当然発売日というものがあるのだが、その発売日どおりに本屋に並ぶとはかぎらないのである。例えば、地方都市などであれば発売日の1日おくれ、2日おくれが基本となっている。また、書店によっては店に並ぶ日が前後する場合もある。早めに本を置く書店もあれば、遅い書店もある。さらには書店によって、午前中に新刊を並べるか、午後もしくは夕方に並べるかという時間単位でも考えなければならないのである。新刊発売日を狙って、昼休みに本屋へ行ったとしても、まだ並べられていないということは十分ありえることである。


 このように“本屋を探す”ということにおいては、さまざまなその本屋における属性をも調べなければならないのである。そこで今回は、その本屋を見定めるときの指針として、“推理小説”に注目したランク分けしながら本屋を分類してみようと思う。









ランクG雑誌と漫画くらいしか置いていない

 駅の売店かよ! とつっこみたくなるような本屋がままあることは事実である。
 しかもそういう本屋に限って、むきになって“立ち読み禁止”を掲げていたりする。
 というような私怨はさておき、それでもこういったものも本屋のひとつに他ならないのである。

 <*非常時の雑誌などを手に入れるところ、または立ち読みできれば、立ち読み専用として利用されたし>
 <*もしくは通常の書店では買えないもの(?)を買うための専用本屋としてキープしておくのも可>






ランクF新潮文庫、角川文庫、講談社文庫、文春文庫、集英社文庫 が置いてある

 たいがいの本屋であればこれらのラインナップはそろえているはず。
 しかしながら気をつけていただきたいのは、西村京太郎、赤川次郎といった大御所の本は山積みになっているが、それ以外のものは新刊でさえも1冊しかおかないという本屋は多いのである。
 身近にこういった本屋しかない方は本の発売日に対してその書店では“いつ”、“何時に”並ぶのかということをチェックしておくべきである。
 例をあげるならば、「この書店では発売日の前日の夕方4時ごろに店に並ぶ」、というような感じである。
 このようなリサーチによって、他の者達を出し抜いて数少ない新刊本を手に入れることが可能になる。欲しい本を手に入れるには、こと細かい調査が必要なのである。

 <*一般的に人気の高い文庫などを手に入れる店の一つとして活用されたし>





ランクE光文社文庫、祥伝社文庫、中公文庫 が置いてある

 これらの文庫は本屋に置いてあって当たり前と思っているあなた、それはあなたの周りの環境が恵まれているというだけなのである。
 場所によってはこれらの文庫が置いていない本屋もあるのだ!
 私の経験では、とある所に住み始めたとき、周りの本屋に光文社文庫があまり置いていなかったのを見て、「まさか出版社がつぶれてしまったのでは・・・」といらない心配をしたことがある。
 都会から田舎へ引っ越す際には要注意! 本読みには残酷な世界が展開されていることもそこには在る。

 <*新刊文庫を手に入れる店の一つとして活用されたし>





ランクD早川文庫、創元推理文庫、扶桑社文庫 が置いてある

 推理小説(特に海外作品)を読むものにとっては金字塔たるラインナップであろう。しかし、小さな本屋においてはこれらの本というのはなかなか置いていない。特に創元推理文庫を置いてない本屋というのは結構あるのだ。さらには置いてあったとしても、書棚一列で済んでしまうような数しか置いてないところも多い。
 本読みにとっては最低限でもこのへんのラインナップがそろう本屋くらいは近所に確保しておきたいものである。
 ただし、最近であればこのくらいのランクの本屋を探すくらいならば、最初から「Book Off」を探したほうがよいのかもしれない。

 <*海外の作品が好きならば、このくらいの本屋は確保>
 <*古本では我慢できないという人は「Book Off」に頼らず、自分の手で幸せをつかめ!>





ランクCノベルス各種 がそろっている

 マイナーではないはずなのに、なぜかノベルスが充実している本屋というのは少ない。私にとっては講談社ノベルスやカッパ・ノベルスなどは置いてあって当たり前という感覚なのだが、こういった本さえろくに置いてない本屋が多いというのはどういうことなのか?
 講談社ノベルス、カッパ・ノベルス、トクマノベルズ、カドカワノベル、ノン・ノベル、ハルキ・ノベルス、C・NOVELS、ジョイ・ノベルス、幻冬舎ノベルス、双葉ノベルス、等々あるが、これらが皆きちんとそろっている本屋というものがあるのだろうか? ノベルスは特に新刊書き下ろし作品が多いので、できるだけそろえておいてもらいたい本である。

 <*このランクCくらいの本屋を確保することこそが本好きにとっては必要なことである>
 <*大人だったら車で30分以内、学生以下は自転車で1時間以内のところまでは探してもらいたい>
 <*なければ電車で隣の県(市)へ週に一回買出しだ!!>





ランクBちくま文庫、河出文庫 が手に入る

 この辺から若干、マイナーになってきたような感はある。それでも推理小説読みにとっては、これらの出版社から出る復刊本などは、けっして落としたくないものであるはず。
 特にこの辺の本は早めに手に入れておかないと再度絶版にて目にすることもなくなる可能性がある。さらには書店に置かれる冊数も少ないので発売日は要チェックだ。早めに行かないと、あなたの知られざるライバルのどこかのおっさんの手に先に渡ってしまうかもしれない(妙齢の女性が買っていったという可能性が少ないことはいうまでもない)。

 <*このくらいの規模の本屋が近くにあれば、あなたの読書生活はハッピーだ>
 <*ちなみに数少ない本に対するライバルとなるおやじは“私”であるという可能性もあるので地域によっては注意>





ランクA早川ポケットミステリ が並んでいる

 さぁ、みんなの周りの本屋においてこれが20冊以上置いてある本屋は何件あるかな? がんばって数えてみよう。
 これが、50冊もおいてあれば大手の本屋といえるだろう。大きな本屋でもなかなか数多くは置いていない。
 しかしながら、何故これが本屋に置かれないかはすぐにわかる。あまり売れないからだろう・・・
 あの本屋においてあるポケットミステリ、ずっと昔のままのラインナップだもんなぁ

 <*せっかくだから、おもいきってポケミスを買い占めてみよう。今後その空いた書棚に再びポケミスが置かれるかに注目>
 <*自分の家の本棚に100冊以上並んでいると“かっこいいぞー” (ちなみに世間一般の意見ではない)>





ランクS新樹社、晶文社、出版芸術社 を発見した

 ここまで置いてあれば、十分であろう。これらが置いてある本屋が近所にあれば、あなたの本読みの人生はもう勝組みであるといっても過言ではない。
 たぶん、ローカルであっても県内に1店舗はあるはずだ。ぜひとも探してみよう。
 ちなみに私はここに引っ越してきて、出版芸術社から出た新刊の「マーキュリーの靴」鮎川哲也著を探そうと、各書店を地図を片手に周ったのである。結果は見事に1件見つけることができた。

 <*近所に限界を感じたら、県庁所在地まで出るべし>
 <*地図を見てよく確認すれば隣の県のほうが近い場合もある。その際、山や峠の存在にも気を配れ!>





ランクSS国書刊行会、沖積舎 が見つかった

 置いてあるかを探すよりも、知ってるか? と聞きたくなるような出版社。
 それでもたまに大型書店で目にすることがあるのでは。
 これらの本はたいがいが2千円以上する本が多く、なかなか手を出しづらい。さらには古書の復刊や全集などに力を入れているところが多いので、読むといっても難しいところか。
 しかし、ここまでくれば“読んでみたい”というよりも“並べてみたい”という本ではないだろうか。

 <*探してごらん、マニアだよ。 若人よ東京へ出ろ!>





 といったように自分にとって“使える”本屋を探し出してもらいたい。地図などを参考にするといいと思うが、例え地図上では小さな本屋に見えたとしても、とりあえずは行ってみるべきである。自分の目で見てみないとなかなか本屋というものはわからない。たとえ小さな本屋でも、古い珍しい本が売れ残っているという可能性もないとはいえない。

 そしてここは「使えそうな本屋だな」というのを見つけたら、あとはそこの書店の新刊を並べるパターンを模索すべく通いつめるべし。そうすると、すぐそこにあなたの読書マニアとしての道が手を広げて待っていることであろう。









「週末はちょっと遠いところにある本屋まで足をのばしてみませんか」






<注意>
 書店の中で「ここはランクFだな」などと口に出して、書店の親父に殴られても責任は持ちませんのであしからず







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