2002年も終わってしまったが、ミステリ界においてはどのような年であっただろうか。2002年に読んだ本を回想してみると
“本格推理作家復活”の年ともいえるようなさまざまなラインナップが出版されたと感じる。
「最後の記憶」綾辻行人、「オイディプス症候群」笠井潔、「法月綸太郎の功績」法月綸太郎、「魔神の遊戯」島田荘司、「奇偶」山口雅也(敬称略)
と長い間待ちに待った作家の新刊を手にとることができたのは嬉しいかぎりであった。
その他にも
芦辺拓氏、愛川晶氏、有栖川有栖氏、霞流一氏、北森鴻氏、柄刀一氏、二階堂黎人氏、西澤保彦氏、森博嗣氏
などといった作家達は2002年もコンスタントに我々の元にミステリを送り続けてくれた。
こういったミステリが次々と我々の元へと届くのは
“出版社によるさまざまな企画”がなされているという背景によるところもあるであろう。講談社ではもうおなじみの
『メフィスト賞』、そして2002年の企画の『密室本』。原書房では『ミステリ・リーグ』、また2002年からの目玉としては光文社からの新人発掘のための
『KAPPA-ONE 登竜門』と文藝春秋のベテラン作家による『ミステリ・マスターズ』のふたつ。また、ライト・ノベルといった畑違いのところからもミステリの企画がなされていたということも注目すべき点であろう。現在のミステリの人気をさらにあおるかのような、こういった企画によってさまざまな新人の作品が発掘され、さらには沈黙した重鎮たちをも呼び起こし2002年のミステリ界が支えられていったのではないだろうか。
海外作品に目を向けてみると、こちらも
“古典本格推理小説復刊”というものが顕著であった。国書刊行会ではお馴染みの
『第3期世界探偵小説全集』が出揃い、今度は
『第4期世界探偵小説全集』のラインナップが発表されて、そのいくつかがすでに出版された。また、昌文社による
『昌文社ミステリ』という企画からも目を離すことができなかった。これらの企画の話をすると、行き着くところは
アントニイ・バークリー(フランシス・アイルズ)の初お目見えとなる3作が一年のうちに出版されたということであろう。
それ以外でも
ドロシー・L・セイヤーズ、ヘレン・マクロイ、エリザベス・フェラーズなどの作品が競うように出版されたのも本格ファンにとっては見逃せないところである。
さらには、現代の本格作家として
ジル・マゴーン、ポール・アルテなどの本が出版されているということが本格ファンを“もっと他の作家も!”と期待させるところではないだろうか。
2003年はこういった企画のなかからどのような傑出した作家が飛び出してくるのだろうか? もしくは新しい企画のなかから奇想ともいうべき作家が登場してくるか? というようなことを期待させる2003年になるのではないだろうか。
これに刺激を受けて、沈黙している新本格作家たちが目を覚ましてくれればと期待したい。
「暗黒館」と「生首に気をつけろ」はぜひとも2003年に!!