2006年ベストミステリ




2006年国内ミステリBEST10へ     2006年海外ミステリBEST10へ



基本として2006年01月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年は本命作といえるようなものはなかったのだが、良い作品に恵まれていた年であったと思われる。国内、海外ともにベストとなる10作品を挙げるのにも苦労することなく(順位を決めるのは苦労したが)すらっと出揃ったという感じであった。



 今年の国内ミステリ事情を振り返ってみると、序盤は“「容疑者xの献身」は本格か”というものが2005年から続いていたが、「本格ミステリ大賞」などといった賞を総なめにしたこともあってか、なし崩し的に立ち消えていったように思える。
(とはいうものの、もともと少数の人のみの議論であって、ミステリ界全体に与えた影響というのは微妙なのかもしれない)

 2006年最も活躍した作家といえば道尾秀介氏が挙げられるであろう。また米澤穂信氏も以前から注目されていた作家とはいえ、今年さらなる躍進を遂げたと感じられた。
 個人的に注目している新人は海堂尊氏、岸田るり子氏の両名。どちらも別々の賞を受賞後、精力的に新作を書き上げている。今度どれだけ伸びてくるか期待したい。
 古株でいうと、世間一般には“大極宮”の三人ががんばったといえよう。ミステリーランキングに三作品軒並み顔をそろえていたのは見事なことである。
 本格ミステリの分野では島田荘司氏、芦辺拓氏、有栖川有栖氏が例年通りの検討を見せている。他の本格作家にも2007年はがんばってもらいたい。

 ミステリ関係の企画モノを見ていくと、2006年はやけに元気がなかったのが気になるところ。“メフィスト賞”は非ミステリが一冊のみ、“本格ミステリマスターズ”は一冊も出版されず(麻耶氏の新作でつまづいているらしい)、“ミステリー・リーグ”は前半に3作品が出たっきり、“ミステリーランド”はなんとか4作品、“KAPPA-ONE 登竜門”は今年は該当者がいなかったもよう。
 そういった中でひとり気を吐いていたのが“ミステリ・フロンティア”で、9作品の出版。「配達あかずきん」や「シャドウ」といった話題作も出し、量・質ともにひとり勝ちであったようにも思える。
 また、講談社からは“講談社BOX”というものが年末から新レーベルとして開始されたが、こちらはミステリというよりはエンタメ路線。“メフィスト賞”から徐々にそちらへ移行していくのだろうと思うと、ミステリ読みにしては残念なところである。




 今年は海外の本格ミステリ作品がやけに充実していたなと感じられたという気がした。世界探偵小説全集、論創海外ミステリ、ヴィンテージ・ミステリーを中心としてさまざまな海外作品を読むことができた。

 2006年の注目べき新人は「あなたに不利な証拠として」で注目を集めた、ローリー・リン・ドラモンド。警察小説というかノン・フィクション小説ともとれる内容のものであったが、今後どのような作品が書かれるかは非常に待ち遠しいところである。

 今年活躍というか、通年活躍し続けている作家としては、ジェフリー・ディーヴァー、ポール・アルテなどを挙げることができる。(ただし、アルテに関してはまだまだ訳が追いついておらず、昔の作品が出版されているという状態ではある)
 個人的に注目しているのはフレッド・ヴァルガス、ジャン=クリストフ・グランジェ、ジェームズ・アンダーソン、ジェイムズ・カルロス・ブレイクといった作家達。今挙げた作家の作品は来年以降も色々と訳されていくことであろう。

 また、今年は海外ミステリの企画ものが色々と名乗りを挙げてきている。まず既出の企画から見ていくと、世界探偵小説全集の第4期があと1冊を残すだけとなった。これはてっきり5期へと続くと思っていたのだが、今のところその予定はないらしいので寂しい限りである。
 怒涛の出版を続けてきた論創海外ミステリであるが、ことし出版点数が若干少なくなったとはいえ、まだその衰えを見せることはなく、これでもかといわんばかりに出版し続けている。そして良作もちらほらと見かけることができるようになった。最初の頃はやけにマニアックな作品ばかり紹介していたが、ここ最近は有名作家の作品も取り上げるようになってきた。
 忘れてはならないのが原書房のヴィンテージ・ミステリー。こちらはカーの最後の未訳作品「ヴードゥーの悪魔」やオースティン・フリーマンの「証拠は眠る」など渋い作品を順調に紹介し続けている。2007年もこれくらいのペースでお願いしたい。
 新企画としては晶文社ミステリから受け継いだかたちとなった河出書房新社による“KAWADE MYSTERY”が立上り、ジャック・リッチーの第2作目が無事に出版された。また年末には長崎出版がミステリの新企画を立ち上げたり、新樹社が久しぶりにミステリ作品を出したりと、様々な形で本格ミステリの賑わいぶりを見せてくれた。

 他には企画ではないが出版社としては早川書房と東京創元社が従来どおりの安定ぶり。また同様に文藝春秋も変わらずに良い作品を出版してきている。そんななか、最近元気がなかったように思えた扶桑社が盛り返してきたと感じられたのはうれしいことである。2007年もさらなる良作を出版し続けてもらえればと期待している。





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