2007年ベストミステリ




2007年国内ミステリBEST10へ     2007年海外ミステリBEST10へ



このランキングは(おおむね)2007年01月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年は国内ミステリに関しては豊作の年と言っても過言ではないだろう。ミステリ界の重鎮である島田氏や有栖川氏が新作を書き、近年勢いのある三津田氏、柄刀氏、米澤氏、道尾氏、石持氏らがこぞって新作を出し、旧作ミステリの復刊としては山沢氏の作品が出版された。

 しかもただ単に出版されただけでなく、どれをとっても良作ぞろいとなっており、ランク付けするのに困ってしまうほどである。
 一般的にいえば、「女王国の城」「首無の如き祟るもの」「密室キングダム」が3強といえるだろうか。ひとによっては「インシテミル」を入れて3強とする人がいたり、いやいや「離れた家」を外すことはできないと言う人もいるだろう。「リベルタスの寓話」は中編ゆえにトップ3からは落ちるかもしれないが、これが長編だったらどうなることであっただろう・・・・・・などと、ちょっと考えただけでもベスト10の半数以上が埋まってしまう。
 年によってランキング付けをするのが難しいこともあるのだが、今年はそれぞれのレベルの高さによって順位を付けるのが難しい年となったのだが、それはそれで喜ばしいことではある。

 今年の各方面の企画ものを見ていくと、一番驚くのはミステリ・フロンティアのペースが全く落ちないこと。今年はなんと13冊。ただし、新人発掘という趣が強いためか、これといった作品がすくなかったのも事実。
 また、ミステリー・リーグもそれなりに順調といえよう。ただし、倉阪氏や三津田氏といったおなじみの面々が張り切っているだけのようにも感じられる。
 最近、勢いが感じられなかったメフィスト賞であるが今年は「天帝のはしたなき果実」という奇作が出たところが収穫か。
 ミステリー・ランドから今年2作しか出なかったというのは残念なところ。この勢いだと、これ以降は出なくなってしまう気配さえも感じられる。
 本格ミステリマスターズについては、出版数0冊。登竜門は続いてはいるものの、より内容のわかりにくい賞になってしまったという印象。あとは理論社のミステリーYA!が地道に奮闘しているくらいか。


 海外の作品に関してはちょっと寂しいと感じられた。出版点数に限っては、十分多くなっていると思われる。ただ、その中で特に突出したという作品がなかったためか、流行作家のシリーズものがランキングでは強かったように感じられた。
 やはりなんといっても毎年のように作品を書き続けているジェフリー・ディーヴァー、マイクル・コナリー、ポール・アルテ、トマス・クック、ロバート・ゴダード、ヘニング・マンケルなどはランキングの常連となっている(最近はゴダードの名がランキングに挙げられることが少なくなってきたのは寂しいかぎり)。

 そういったなかで特に注目されたのは、私はまだ未読なのだがカール・ハイアセンという作家。ただしこの人、新進の作家というわけでなく、前々から日本で紹介されていたようである。昨年のランキングでも扶桑社からの作品がベスト20位以内に入っていたという記憶がある。それが今年「復讐はお好き?」という作品で大ブレイク。2008年はハイアセンの本の既刊が店頭に並ぶことになるかもしれない。

 海外ミステリの企画に関しては、今年とうとう「世界探偵小説全集」が終わりを迎えた。第五期もあるのかと思っていたが、今のところ予定されていないようである。この全集が終わってしまうのは悲しいが、海外翻訳ミステリの復刻という意味で充分な役割を果たしたと思う。
 今後は現在も続いている「ヴィンテージ・ミステリー」「論創海外ミステリ」「KAWADE MYSTERY」「Gem Collection」、そして終わっていなくてほっとした新樹社のミステリ作品に期待をしてゆきたい。





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