2012年ベストミステリ




2012年国内ミステリBEST10へ     2012年海外ミステリBEST10へ



このランキングは(おおむね)2012年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年の国内ミステリ界は盛況だったと言えるのではなかろうか。ベスト10を選ぶのにも、さほど苦労もせず楽々と選ぶことができた。選んだ中で気が付いたのは、10月発売の本に良書が多かったこと。これは例年同じようなことが言えるのだが、年末近くになってから多くの良書が出ているように思える。これは何か理由があるのだろうか? 読書の秋というくらいで、秋口が一番本が売れるとか。もしくは、夏休みは文庫の方に力を入れているので、とか。個人的には年末の読書が忙しくなってしまうので、まんべんなく出してくれれば助かるのだが。

 本格ミステリの作家としては、法月氏、綾辻氏、有栖川氏、山口氏といったベテラン勢が新刊を出していて、これは珍しく盛況な年と言えるのではないだろうか。特に綾辻氏の館シリーズの新刊は待ちに待った作品である。中堅としては、三津田氏、石持氏、東川氏らが相変わらず安定した作品を書き上げている。また、東野氏も昨年に続き、3作品も新刊を出しており、これまた頭が下がる思い。

 また、今年は新人作家の活躍も、陰ながら光っていたと感じられた。「体育館の殺人」にて鮎川哲也賞を受賞した青崎有吾氏や昨年、横溝正史賞を受賞し、今年2作目を書き上げた長沢樹氏など。ミステリ・フロンティアで新刊を出していた作家の中にも、これは良い作品だと感じたものが見受けられた。

 そして、今年の作家としてあげずにいられないのは横山秀夫氏。今年、7年ぶりの長編が刊行された。単に書けなかった、書かなかっただけなのかと思いきや、病床についてたりと、大変な時期を過ごしていたらしい。そうしたなか、書きあげられ刊行されたのが「64」。これがまた、なんとも言えない作品に仕上げられていた。


 海外ミステリについては、盛況といってよいくらい良作は出ていたと思うのだが、やや本格ミステリが足りなかったかなと。古典作品の掘り起こしをしてくれるのが東京創元社と論創社くらいしかないので、もうちょっとなんとかしてくれたらと思ってしまう。復刊でも良いので、是非とも2013年は本格ミステリ成分を濃くしてもらいたいものである。

 本格ミステリで目立った動きと言えば、パトリック・クェンティン作品の掘り起こしというのが一番に挙げられる。復刊、未訳作品の刊行とここ2年ほど、クェンティンだらけという感じ。これを機に全て出版するくらいの勢いで臨んでくれればよいのだが。

 現代ミステリでいえば、ディーヴァー、コナリー、ウィンズロウ、マンケル、レックバリとシリーズ作品は順調に出版されている。これらは、それなりに需要もあるということなのだろう。昨年はハヤカワミステリが気を吐いたが、さすがに2年連続とまではいかなかったようである。来年に期待。

 国内でもそうなのだが、海外でも警察小説が目立っているように思える。ただ、このへん当たり外れがありそうで、気軽にはなかなか手を出すことができない。よって、どうしても年末のランキングを見てからと、安全策をとってしまう。まぁ、海外ミステリには痛い目にあったことも何度もあるので。


 今年、もうひとつ気が付いたことは、各種ミステリランキングにあげられた作品でSF作品が目立ってきたこと。これは事件と言ってもよいのではなかろうか。各出版社が意外とSFに力を入れているようにも見受けられる。まだまだ敷居は高いと思うが、徐々にミステリからSFにシフトチェンジしていくのであろうか。もしくは、SFとミステリの境があいまいになってゆくのか。今後、ミステリ作家がSF作品に手を出していくということが多く見られるようになれば、この辺の界隈が大きく変わって行くということもあるのかもしれない。





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