2015年ベストミステリ




2015年国内ミステリBEST10へ     2015年海外ミステリBEST10へ



このランキングはおおむね2015年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 おぉー、自分の国内ランキングでは昨年と今年で、かぶっている人がいない。国内ミステリも不作といいつつも、結構な人たちが幅広く書き続け、意外と根強いという印象。一時期のミステリブームが異常で、今くらいが丁度良いということなのであろうか。

 今年の国内ミステリについては、不作という言い方はそぐわないかもしれない。深水氏、小島氏、鳥飼氏と良質の作品を書き上げ続けてくれている。特に小島氏、鳥飼氏は出版点数も多い。また、私のランキングには入っていないが、米澤氏の活躍や深緑氏の「戦場のコックたち」などと話題になった作品もいくつかある。

 今年は新本格ミステリ・ベテラン勢の作品が少なかったように思える。新刊が出たのは、島田氏、有栖川氏、麻耶氏あたりか。法月氏の新刊も出ていたが、ミステリ系ではなさそうだったので未読。ベテラン勢の作品も話題にならなかったわけではないが、今年はさほど大きな足跡は残せなかったという気がする。

 それと新人作家の活躍はさほど目立たなかったような。といっても、全くいなかったわけではない。挙げるとすれば「夕暮れ密室」の村崎友氏、周木律氏、早坂吝氏、井上真偽氏、あたりであろうか。ミステリ界全体を見渡しても、さほど話題になった新人賞がなかったような気もする。

 そうしたなかで、もはや新人なのかベテランなのか、どちらともつかない中堅層は結構書き上げていたように思える。深木氏、倉知氏、平石氏、三津田氏、大倉氏、石持氏など、話題になった人、そうでもない人とさまざまであるが、しっかりと新刊を出してくれていた。特に、近年活躍が目立つのは、深木氏と平石氏あたりか。三津田氏や石持氏などは、ずっと新刊を出し続けてくれているので、話題になるというほどではないのだが、ミステリ読者にとってはありがたい存在である。



 海外ミステリで今年気を吐いたのは、なんといっても論創海外ミステリではなかろうか。物凄い一冊、というものはなかったのだが、今年度出た作品に関してはだいぶレベルの底上げがされたという印象である。なかなか印象に残る本も何点か見られた。ただ、逆にいえば、それだけ本格ミステリもしくは古典ミステリを出版するところが、あまり無くなってしまったゆえにという側面もある。いまだ本格ミステリにこだわっている出版社といえば、他には東京創元社くらいしか思いつかない。早川書房が古典ミステリの発掘や復刊に力を入れなくなってしまっているのは残念なところ。

 今年出版された本格ミステリ作品については、良い作品がそこそこ出てきてくれはしたが、物凄く良いと思えるものはなかったかなという印象。そんな思いもあり、自分のランキングでは結局ディーヴァーの作品を1位に持ってきてしまった。

 古典本格ミステリで目立ったのは、未訳本の翻訳が続いているヘレン・マクロイ、パトリック・クェンティン、D・M・ディヴァイン。またエラリー・クイーンの外典コレクションについてもなかなか存在感がある。あと、レックス・スタウト著のネロ・ウルフ・シリーズの中編集の第2弾が出たのもうれしいところであった。

 海外ミステリ界については、古典本格ミステリよりも、近代サスペンス風ミステリに力をいれているように感じられる。今年もディーヴァーをはじめとして、スティーブン・ハンター、ジャック・カーリイ、トマス・H・クック、ロバード・ゴダードなどの新刊が顔をそろえている。そしてなんとっても、話題となっているのは昨年「その女アレックス」話題を独り占めした、ピエール・ルメートル。彼のブームが今年も続いている。今後、日本のミステリ界をにぎわす常連作家の一人となりそう。

 と、近代ミステリが軒並み出版されているものの、個人的に気になった作品があまりなかったというのも特徴。ルメートルの作品も「その女アレックス」を超えるようなものはさすがに出なかった。海外近代ミステリに関しては、出版点数が多くて、やや全体的に薄まったというか、煮詰まったというか、そんな印象。今が過渡期なのかもしれない。

 ミステリ界ではあまり流行ってなさそうだが、個人的にブームが再燃しつつあるのはイアン・ランキン。リーバス警部シリーズが帰ってきた。決して、もろ手を挙げて面白いというほどの作品ではないが、それなりの味があるものとなっている。

 それと付け足しておかなければならないのは、2015年の年末に「ミレニアム4」とドン・ウィンズロウの新刊が2作でたということ。こちらは今年のランキングに間に合わなかったので、場合によっては来年のランキングに入れることになるかもしれない。この作品を吟味しなければ、2015年は不作だったなどと言うのは、おかしな発言だということになりかねない。





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