2020年ベストミステリ




2020年国内ミステリBEST10へ     2020年海外ミステリBEST10へ



このランキングは2020年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年の国内ミステリは不作という印象。そもそも本格ミステリ系の作品の出版点数自体が少なかったと感じられた。個人的には、そうした不作のイメージがあったなかで、国内ミステリランキングで辻真先氏の「たかが殺人じゃないか」が首位を独占したのは意外な思い。また、他にも上位に挙げられていた作品のほとんどに興味が持てなかったところは、私の趣向がどうかしているということなのか。それとも年を重ねることにより、時代についていけなくなったということもあるのかもしれない。

 近年、新進の本格ミステリの書き手は、そのほとんどが鮎川哲也賞受賞者という感じ。少し前まではメフィスト賞受賞者からも出ていたように思われるが、近年はエンターテイメント系の作家ばかりが多くなっているような気がする。

 今年は全体的に、ベテラン勢、中堅作家、新進の作家と偏らずに幅広い層の作品が出ていたように思える。ただし、どの層がよりがんばっているとか、印象に残るということはなかったのは残念。

 また、今年はコロナ禍という特殊ななかでの一年となったのだが、小説を書くほうに関しては、特に大きな影響はなかったのかどうかと考えてしまう。ひょっとすると、2020年にいろいろ書いたものが一挙に2021年に出てくるのかなと期待したいところ。それとも、元々作家の方々は家に引きこもっていることが多く、コロナ禍だからといって、作品の書く分量には変わりがないということも考えられるのだが。ただ、読み手のほうとしては、何かと暇な一年になってしまったという思いが強い人は多かったのではなかろうか。

 そして、今年一番の大きな事件と言えば浦賀和宏氏の死去、さらには年末に小林泰三氏までもが亡くなったということであろう。特に浦賀氏はまだ若い作家というイメージが強かったので、亡くなったと聞いて大きなショックを受けた。小林氏に関しても、近年色々なジャンルの本を数多く書き上げいたので、闘病生活を送っていたと言うこと自体に驚かされた。両作家ともにデビュー作から読み続けていたので、何とも言えない心境である。



 海外ミステリに関しては、色々と良い本が出ていたように思われた。ただそうしたなかで、良い作品と思えたもののほとんどが現状で活躍している作家の作品ばかりで、古典ミステリに関しては良い作品にあまり出会えなかった。そもそも、古典ミステリ作品は出版された数自体が少なかったという印象。今年度の古典本格ミステリは、論創社の論創海外ミステリのみにとどまっていたというようにさえ思えてしまう。

 現役作家のミステリに関しては出版点数からして充実していたようである。ポール・アルテの作品が今年も行舟文化から出版され、最近は毎年の恒例となったアンソニー・ホロヴィッツの新刊。そしてマイクル・コナリー、ジェフリー・ディーヴァー、ドン・ウィンズロウらもしっかりと新しい作品が出版されている。

 そうしたなかで中華系のミステリが台頭してきたのも今年のというか、近年の特徴であろう。かつては、中華系ミステリ作品に良いものがなかったように思えたのだが、最近はそんなこともなく、素直に面白いと思われる作品が多くみられるようになってきた。ミステリのみならず、SF界でも注目作が多いようであり、今後はますます出版点数が増えてくることになるであろう。

 また、ランキング関連の作品としては「ザリガニの鳴くところ」が素晴らしかった。これはランキングで紹介されなければ手に取ることはなかったと思えたので、読めて良かった作品。今回、海外ミステリにおいては、ランキングに掲載されている作品で読んでいないものが多いので、ひとつひとつ虱潰しに読んでいくのもいいかもしれない。あとは、それぞれの作品のページ数が短めであれば、なおのこと買いやすいのであるが。





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