キャプテン・フューチャー・シリーズ 感想

恐怖の宇宙帝王   Captain Future and the Space Emperor

1940年 出版
1974年05月 早川書房 ハヤカワ文庫SF
2004年08月 東京創元社 創元SF文庫<キャプテン・フューチャー全集1>
<内容>
 木星にて奇怪な事件が勃発した。木星に住む地球人たちが先祖がえりを起こしたかのように、毛むくじゃらの猿のような生き物に変身してしまうという事件が続出しているというのだ。どうやらその事件は“宇宙帝王”と名乗る男が起こしているらしいのだが・・・・・・。政府は事件の解決を図らんと、キャプテン・フューチャーに出馬を依頼する。
 キャプテン・フューチャーの物語がここに開幕。

<感想>
 レンズマン・シリーズの感想にこれこそSF初心者向けだと書いたのだが、それよりももっと初心者にとっつき易いと思えるSFがあった。それがこの“キャプテン・フューチャー・シリーズ”である。

 内容はキャプテン・フューチャーと名乗るカーティス・ニュートンが“脳”だけで生きている科学者、力自慢のロボット、変装名人のアンドロイドとともに宇宙規模の悪人をやっつけるという勧善懲悪もの。SFの設定も内容もわかり易く、誰もが気軽に手に取ることができるSF本である。

 ただ皮肉なことに著者のエドモンド・ハミルトンはこのシリーズにて、あまりにもわかり易いSFを書いてしまったがために、SF作家というよりは通俗作家の烙印を押されてしまったということも付け加えておく。

 第1作目の内容についてであるが、いくら簡単なわかり易いSFであるとはいっても、きちんとSFならではの設定の中で謎を設けて物語が進められている。今回の謎は木星人たちを裏からあやつる“暗黒帝王”の正体は? そして“暗黒帝王”が使う科学の秘術はどのようにして手に入れたのかというもの。この謎に挑戦すべくキャプテン・フューチャーが“暗黒帝王”に立ち向かっていく。

 本書の見所は描かれた木星の様子。木星人の生態がどのように描かれているのかは是非とも本書を読んで確かめてもらいたいところである。そして今後のシリーズでも様々な惑星人たちの様相を見ることができるというのがこれからの楽しみのひとつとなることであろう。


暗黒星大接近!   Calling Captain Future

1940年 出版
1971年11月 早川書房 ハヤカワ文庫SF(1995年03月:改訂新版)
2004年08月 東京創元社 創元SF文庫<キャプテン・フューチャー全集1>
<内容>
 全宇宙にザロ博士と名乗る者から通信が発せられた。ザロ博士が言うには、暗黒星の接近により太陽系の危機が訪れているというのだ。その危機を回避するために、一時的にザロ博士に太陽系の支配権を握らせてもらいたいというのである。そして空にはどの星の科学者達もが観測し得なかった暗黒星が徐々に近づいてくる様子が・・・・・・。地球の危機を救うためにキャプテン・フューチャーが出動する、シリーズ第2弾!

<感想>
 2作目は“暗黒星”の謎とその星の襲来を唯一予測した謎の科学者“ザロ博士”の正体についてが焦点となっている。これらの謎をキャプテン・フューチャーらは敵と戦いながら解いていくという構成になっている。

 そして今回の舞台は冥王星。冥王星に住む人々のみならず、冥王星にある3つの衛星も重要な舞台となっており、今回の事件のカギはその衛星が握っているのである。

 このシリーズにて楽しみといえるのが、この星々の設定である。星の設定については物語だけではなく、コラムとして掲載された図解が今回の創元文庫SFのなかに付録として掲載されているので、それを読んでさらに想像を膨らますことができるようになっている。

 内容に関してだが苦言を一つだけ。“勧善懲悪”シリーズゆえのご都合主義はしょうがないと思うのだが、今回の作品の中ではキャプテン・フューチャーらがあまりにも敵に捕まりすぎである。そしてその敵の手から、無造作においてある武器や道具を取り返して脱出するという展開が何回も繰り返されるというのはどうだろうかと思ってしまう。

 まだこの全集の2作目なのであるが、こういったシリーズものはマンネリズムとも闘っていかなければならないことはしょうがないことであろう。今後の作品でそれらをどう打開しているのかを見ていくのも、また楽しみの一つである。


挑戦! 嵐の海底都市   Captain Future's Challenge

1940年 出版
1971年07月 早川書房 ハヤカワ文庫SF(1995年03月:改定新版)
2004年09月 東京創元社 創元SF文庫<キャプテン・フューチャー全集2>
<内容>
<破壊王>と名乗る男が太陽系に数箇所しかないグラヴィウム鉱山を攻撃し始めた。このグラヴィウム鉱山とは惑星間飛行に必要な“重力等化機”を作るための原料であり、これがなければ宇宙飛行が不可能になってしまう。<破壊王>の目的は何なのか? そして海王星の“海悪魔”の伝説とは!? 

<感想>
 シリーズ3作目の本書であるが、それなりに随所に工夫がなされていて、なかなか見ごたえのある作品となっていた。

 どういう工夫かと言えば、その内容がミステリー張りになっていること。今回の敵は<破壊王>を名乗るものだのだが、それが各星のグラディウム会社の社長5人の中の誰なのかを探るという設定になっている。さらには、<破壊王>の目的、そしてタイトルにも記されている海底に隠された謎を解くというのも十分な見所である。

 そして当然のごとくアクションシーンも満載であり、さらにはキャプテン・フューチャーが思いもよらぬ危機に遭遇するところも見所のひとつである(ただし、あっけなく解決しすぎのようにも思えたが)。また、“グラッグ、神様となる”という章もなかなか笑わせてくれた。

 今作はマンネリ化を吹き飛ばすような快作といえよう。


脅威! 不死密売団   The Triumph of Captain Future

1940年 出版
1975年05月 早川書房 ハヤカワ文庫SF
2004年09月 東京創元社 創元SF文庫<キャプテン・フューチャー全集2>
<内容>
 肉体を急激に若返らせる伝説の飲料“生命水”。その伝説と思われた飲料が世界各地に出回り始めた。しかし、その“生命水”には副作用があり、飲み続けなければ急激に老い始め、死んでしまう事に。“生命水”を密売する<生命王>と名乗る者とキャプテン・フューチャーの死闘が始まる。

<感想>
 今作は麻薬密売団ならぬ、麻薬よりも強烈な生命薬を売る組織とキャプテン・フューチャーとの対決。今回も前作と同様に、謎の組織のボス<生命王>というものの正体がわからず、何人かの候補者がいて、その中から<生命王>を特定していくというもの。最初はこの設定では前作の二番煎じに過ぎないのでは? と思ったのだが、読み手の裏をかくように、こちらが犯人かと思えば裏を返されと、かなり凝ったものとなっていた。さすがに色々と工夫しているなと思わず関心。

 また、本書の魅力として色々な“都市”の設定というものがある。火星の“機械の都”や“永遠の若者の町”といった架空都市の描写によっても楽しむ事ができるものとなっている。

 前作は“グラディウム”というものを用いたエネルギー問題を扱っており、今回は“生命水”というものを用いた麻薬シンジケートをとりあげている。当然のことながらSF風に脚色しているものの、取り扱っている内容は現代における社会的な問題である。実はキャプテン・フューチャーは社会派SF!? といってしまうのは大げさな事だろうか。




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