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猫は知っていた   6点

第3回江戸川乱歩賞受賞
1957年11月 講談社 単行本
1975年01月 講談社 講談社文庫
2022年10月 講談社 講談社文庫(新装版)

<内容>
 仁木雄太郎と悦子の兄妹は、箱崎医院の2階に部屋を借りることとなり、そこへ引越しをする。新たな部屋に下宿を始めた矢先、箱崎医院で失踪事件が起きる。箱崎家の祖母と入院患者の一人の姿が見えなくなったのだ。捜索のすえ、使われなくなった防空壕のなかで祖母の死体が発見されることに。もうひとりの行方不明の患者が加害者と思われ、警察の捜査が始まったものの、さらにまた別の殺人事件が! 事件に巻き込まれ、興味を持った仁木兄妹は、素人探偵として事件を調べてゆくことに。

<感想>
 講談社文庫から新装版として出ていたので、思わず購入してしまった。この作品、既読であるのだが(ひょっとすると過去2度くらい読んでいるかもしれない)、全く内容を覚えていなかった。そんなこともあって、再読し読んでみたのだが、これがなかなか面白かった。ちなみに本書は、言わずと知れた江戸川乱歩賞受賞作。

 江戸川乱歩賞の作品と言うと、なんらかの背景をしっかりと描き、その背景に沿ったミステリが描かれるという印象。それが本書については、単純にミステリのみが描かれており、それだけ見ても結構珍しい部類の作品であったのではなかろうか。ユーモア調で読みやすい作品。

 警察の捜査がおざなりすぎではないかとか、素人探偵のみの捜査はどうかとか、犯行現場をいじくりまわすのはどうかとか、細かいことは抜きにして、ミステリ小説として面白い。やや登場人物が多く、ドタバタしている傾向はあるものの、基本的にはよくできている。特に最後の解決によって、見事に全体的にクリアな形で真相が示されるところは良かったと思われる。ただこの作品、何気に良さそうな感じで描かれつつも、良く考えると医者の家族の方にかなりの非があったのではないかと・・・・・・




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