<内容>
<感想>
<内容>
「噴火口上の殺人」
「妖鬼の呪言」
「四月馬鹿の悲劇」
「真実追求家」
「死の湖畔」
「巧 弁」
「地獄から来た女」
「死者は語るか」
「石を投げる男」
「情 炎」
<感想>
「噴火口上の殺人」
捨てられて自殺した妹の敵を果たさんと噴火口にて決闘を行うという内容。噴火口にて決闘という考え方が今にしてみれば斬新(当時でもそんな設定のものは他にないとも思われるが)。
結末はオーソドックスのようで一ひねりというか、それとも一ひねりときてオーソドックスなのかが微妙。
「妖鬼の呪言」
“お告”の通りに次々と起こる殺人事件・・・。 レッドヘリングがうまくちりばめられている作品。
「四月馬鹿の悲劇」
文中で語っているように、乱歩の小説をモチーフとしたものか。繰り返されるどんでん返し模様はまさに四月馬鹿ならでは。
「真実追求家」
文学作品のよう。ひねくれた男の妄執とでもいうべきか。そのひねくれた性癖に自分自身が一番悩んでいることが悲劇なのでは。
「死の湖畔」
上記の「四月馬鹿の悲劇」を途中で終わらしたような感じ。
「巧 弁」
なんとなく落語のオチであるかのような話。まさに地獄の橋渡し。
「地獄から来た女」
とてもうまくできているサスペンス。展開からラストまでと息をつかせぬ展開であり、最後までよくまとまっている。
「死者は語るか」
なかなか恐ろしい犯罪だと思うが実行可能かは疑問。ラストでのダイイングメッセージの解釈が粋である。
「石を投げる男」
挑戦状が加えられたミステリー。
<内容>
喫茶店の中で男を射殺して逃げ去った犯人。意外なその行方とは? 「街の殺人事件」
白昼堂々、事務所で弁護士が殺害される。犯人は伝法探偵を含む五人の客の中に・・・・・・。「5−1=4」
元刑事で人情に厚い伝法義太郎探偵が、さまざまなトリックに挑む傑作事件簿、ついに刊行! 幻の新聞連載中編に策を加えた全18編を一挙に収録。
「街の殺人事件」 (「黒猫」:昭和二十三年二月号)
「雲の殺人事件」 (「新探偵小説」:昭和二十三年七月号)
「心の殺人事件」 (「読物春秋」:昭和二十四年一月号)
「夜の殺人事件」 (「探偵趣味」:昭和二十四年一月号)
「村の殺人事件」 (「探偵よみもの」:昭和二十五年八月号)
「兇器」 (「鬼」:昭和二十八年九月)
「白い野獣」 (「宝石」:昭和二十六年一月号)
「男の曲」 (「宝石」:昭和二十七年三月号)
「椿姫」 (「宝石」:昭和二十七年六月号)
「雁行くや」 (「宝石」:昭和二十八年十月号)
「わたしは飛ぶよ」 (「宝石」:昭和三十年六月号)
「三文アリバイ」 (「宝石」:昭和三十年九月号)
「犯罪の握手」 (「別冊宝石」:昭和二十七年六月号)
「鋏」 (「宝石」:昭和二十六年十月号)
「悪魔の愛情」 (「別冊宝石」:昭和二十四年十二月号)
「5−1=4」 (「宝石」:昭和二十八年一月号)
「悪魔の手」 (「夕刊岡山」:昭和二十三年六月五日〜七月二十五日)
「女人三重奏」 (「夕刊岡山」:昭和二十四年四月九日〜五月三十一日)
<感想>
「悪魔の手」以外はすべて伝法探偵が活躍する事件簿となっている。作品もここまでそろえば圧巻といったところか。解説を見ると、どうやらこれらが一つの短編集としてまとまったのは初めてのことらしく、それが集められて出版されたということだけでも快挙なのであろう。
全体的にはミステリの内容であったり、ハードボイルド調であったりとさまざまな様相で楽しませてくれる本となっている。また伝法探偵の熱血なのか冷血なのかがよくわからない微妙さ加減が面白い。その伝法探偵の性格を用いて、事件によってやる気があるときとなさそうに見えるときのコントラストで事件をうまく引き立てつつ、毎回パターン化させないように工夫されているかのようにも感じられる。
印象に残るのは最後の長めの三編。「5−1=4」は誰が殺人をなしえたのか? というものであるが、似たようなものが山田風太郎氏の作品にもある。個人的には山田氏の作品のほうが好きなのであるが、こちらのあるトリックも捨てがたい。
「悪魔の手」こちらは伝法探偵が出ていないせいというわけではないだろうが、なんとなくサスペンス調の作品という印象が強い。この作品の女探偵にもっと活躍してもらいたかったという気も・・・・・・
「女人三重奏」ミステリとして一番よくできているように感じられた。その舞台の裏にひそむ嫉妬や憎悪がまざまざと描き表されている。
結局、この作品集が話題になったのはミステリ史における価値観なのかなという気もしないではないが、一連の作品集として読むことの出来る意義は十分にあるのだろう。