光文社文庫 幻の探偵雑誌 作品別 内容・感想

「ぷろふいる」傑作選   幻の探偵雑誌1

2000年03月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 1933年(昭和8年)5月、ぷろふいる社により創刊。
 1937年(昭和12年)4月に終刊。合計48冊刊行。
 無名新作家の発表の場として創刊された雑誌。
 当時の探偵作家の多くが短編やエッセイなどを寄稿している。
 (山下利三郎、山本禾太郎、西田政治、甲賀三郎、橋本五郎、江戸川乱歩、小栗虫太郎、森下雨村、大下宇陀児、水谷準、海野十三 等)
 ただし、創刊当初に掲げた新人作家の登竜門としては十分な成果をあげることはできなかった。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 探偵ファンの熱気に満ちた「ぷろふいる」 山前譲

 「血液型殺人事件」 甲賀三郎
 「蛇 男」 角田喜久雄
 「木 魂」 夢野久作
 「不思議なる空間断層」 海野十三
 「狂操曲殺人事件」 蒼井雄
 「陳情書」 西尾正
 「鉄も銅も鉛もない国」 西嶋亮
 「花束の虫」 大阪圭吉
 「両面競牡丹」 酒井嘉七
 「絶景万国博覧会」 小栗虫太郎
 「就眠儀式」 木々高太郎

 プロファイリング・ぷろふいる 芦辺拓
 当時の探偵小説界と世相
 「ぷろふいる」 作者別作品リスト

<感想>
 昭和に書かれた探偵小説でよく見ることのできる傾向のものがある。それは自立失調症型というか自虐症型とでも言えばいいのか、自分自身に対する不安が肥大化し、いつしか現実と幻想の境が無くなっていくという内容のもの。ここで取り上げられた作品の中にもそういった典型的なものを見ることができた。

「蛇男」「木魂」「不思議なる空間断層」「陳情書」の4編。
「蛇男」は自分の家から向かいの建物の2階に住む女性を眺めるのを楽しみにしていた男の恐怖の体験を描いたもの。しかし、それが実体験なのか、男が創り上げた幻にすぎないのか白昼夢のように途切れてしまう。
「木魂」は妻子を亡くした数学教師の不安定な心持を描いた作品。ミステリというよりは、ちょっとした罪にさいなまれる男の姿を描いた小説。
「陳情書」はタイトルの通り、警視総監宛てに届けられた、ひとりの男の告白が手記形式で語られる。真実なのか虚言なのか、これを読んだのみで判別がつかないが、時代性が顕著にうかがえる作品である。
「不思議なる空間断層」も虚言で終わってしまいそうな作品なのだが、情景描写をSF風に仕立て、最後の最後で登場人物の視点を変えることにより効果を上げている。他3作にいているようで、微妙な味付けで差をつけているといえよう。

「両面競牡丹」も自虐症型といいたいところなのだが、こちらはこういった作風には珍しく、主人公が女性である。悩む人物が女性のせいか、上記の作品の男性よりは精神的にたくましく感じられ、事件のショックも軽く乗り越えてしまったように思えてしまう。驚いたのは、当時もドッペルゲンガー的な考え方が根付いていたということ。
さらに「就眠儀式」も似たような内容であるが、こちらは悩むものの視点ではなく、謎を解く側からの視点であるため、普通の探偵小説として読むことができた。事件自体はわかりやすいものであるが、心理学による考察については興味深さがうかがえる作品であった。

 これ以外の5編については、それぞれきちんと本格推理小説という体裁になっていたかと思われる。
「血液型殺人事件」は、とある有名な博士が死亡し、もうひとりの博士が疑われるというもの。血液型に関する真相については、想像のつくものであったが、きちんと密室殺人を取り入れているところはさすがと言えよう。

「狂操曲殺人事件」はアリバイトリックを用いた作品。ひとつの家の中で起きた殺人事件をめぐる内容。導入としてショッキングな始まり方をしたわりには、それ以降が地味な内容であったと感じられた。今では見られない、ちっと変わったトリックが堂々と使われている。

「鉄も銅も鉛もない国」は日本ではなく、別世界での殺人事件を描いた変わった内容のミステリ。とはいえ、ミステリというよりは物語的な展開をしてしまっている。タイトルの意味合いがもっとミステリ的なトリックに絡んでくれればよかったのだが。

「花束の虫」は崖の上で二人の男がもついれあい、ひとりが転落死するという現場が目撃されるという事件。そのトリック自体が面白く、また小道具として時代性に見合うものが使われているところも特徴的な作品である。

「絶景万国博覧会」小栗虫太郎は天才的というしかないのであろうか。幻想的なものを日常に取り入れてしまい、なおかつそうした要素を事件の解決に用いてしまうというとてつもない事をやっている。ゆえに、決してわかりやすい作品ではないのだが、やっていることはすごいと感嘆させられてしまう。


「探偵趣味」傑作選   幻の探偵雑誌2

2000年04月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 1924年4月、「探偵趣味の会」が誕生。
 その「探偵趣味の会」の機関誌として、1925年9月に「探偵趣味」が創刊された。
 江戸川乱歩、小酒井不木、甲賀三郎らが編集を担当。
 1928年9月に発行されたものを最後に、全34冊で廃刊となる。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 探偵文壇形成期の活気を伝える「探偵趣味」 山前譲

 「素敵なステッキの話」 横溝正史
 「豆 菊」 角田喜久雄
 「老婆三態」 XYZ(大下宇陀児)
 「墓 穴」 城昌幸
 「恋人を喰べる話」 水谷準
 「浮気封じ」 春日野緑
 「流 転」 山下利三郎
 「自殺を買う話」 橋本五郎
 「隼お手伝い」 久山秀子
 「ローマンス」 本田緒生
 「無用の犯罪」 小流智尼(一条栄子)
 「いなか、の、じけん」 夢野久作
 「煙突奇談」 地味井平造
 「或る検事の遺書」 織田清七(小栗虫太郎)
 「手摺の理」 土呂八郎
 「怪 人」 龍悠吉
 「兵士と女優」 オン・ワタナベ(渡辺温)
 「頭と足」 平林初之輔
 「戯曲 谷音巡査(一幕)」 長谷川伸
 「助五郎余罪」 牧逸馬
 「段梯子の恐怖」 小酒井不木
 「嵐と砂金の因果率」 甲賀三郎
 「木馬は廻る」 江戸川乱歩

 「探偵趣味」から現在へ 二階堂黎人
 当時の探偵小説界と世相
 「探偵趣味」 総目次
 「探偵趣味」 作者別作品リスト

<感想>
「探偵趣味」という雑誌の傑作選。ただ、これは商業雑誌というものではなく、どうやら同人誌であったようである。関わった人は豪華であるのだが、書きたいものを書いた、もしくはとりあえず何かを書いた、というような感じにとらえられる。基本的に短めの小説が多かったよう。ここに掲載されているものは非ミステリ作品が多かった。

 夢野久作氏の「いなか、の、じけん」が面白い。もっと読みにくい作品を書いていたというイメージであったのだが、これは読みやすい。田舎での様相を事件を通して描いた作品集。

 他は煙突にて死体が発見されるという「煙突奇談」、嵐の日に小屋で出くわした二人の男が語り合う「嵐と砂金の因果率」、とある男の死の顛末が語られる「自殺を買う話」あたりがミステリ色が濃くて面白いところか。

 ありがちな話かもしれないが「浮気封じ」なども微笑ましい。「老婆三態」は、小説の割には現実味があって残酷な感じ。

 江戸川乱歩の「木馬は廻る」は、これからどうなるのかと思いきや、肩をすかされるような終わり方をしており、脱力感が残る。


「シュピオ」傑作選   幻の探偵雑誌3

2000年05月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
「シュピオ」の前身雑誌である「探偵文学」が1935年3月に創刊。
「探偵文学」は1936年12月で一区切りとなる。
 巻号数を引き継ぎ改題された「シュピオ」が1937年1月に刊行される。
 改題を機に、今までは大衆娯楽雑誌であったものから真の探偵小説専門誌を目指すようになる。
 1938年4月廃刊。
「探偵文学」(第1巻第1号1935年3月〜第1巻第9号1935年12月、第2巻第1号1936年1月〜第2巻第12号1936年12月)
「シュピオ」(第3巻第1号1937年1月〜第3巻第10号1937年12月、第4巻第1号1938年1月〜第4巻第3号1938年4月)

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 探偵小説隆盛期の掉尾を飾った「シュピオ」 山前譲

 「暗闇行進曲」 伊志田和郎
 「執 念」 荻一之介
 「猪狩殺人事件」 覆面作家/中島親/蘭郁二郎/大慈宗一郎/平塚白銀/村正朱鷺/伴白胤/伊志田和郎/荻一之介
 <愛読者各位へ 謹告>
 <宣 言> 海野十三/小栗虫太郎/木々高太郎
 「白日鬼」 蘭郁二郎
 「夜と女の死」 吉井晴一
 「柿の木」 紅生姜子(宮野叢子)
 「街の探偵」 海野十三
 「獅子は死せるに非ず」 小栗虫太郎
 「終刊の辞」 木々高太郎
 「休刊的終刊」 蘭郁二郎

 「シュピオ」の光と翳 若竹七海
 当時の探偵小説界と世相
 「探偵文学」「シュピオ」 総目次
 「探偵文学」「シュピオ」 作者別作品リスト

<感想>
「シュピオ」、わずか一年余りの刊行により、本当に幻と言われる雑誌となってしまったよう。戦前の追尾をかざる探偵雑誌とも言われているようだ。

 惚れた女とのすれ違いを暗く描いた「暗闇行進曲」と人面ソのようなものを描いた「執念」が面白かった。この最初の二つを読んで、その他の作品についても非常に期待が高まったのだが、ここに掲載されていた作品については、この2つがピークであった。

「猪狩殺人事件」は、リレー小説の失敗例。
「白日鬼」は、長い作品で本書の目玉的ともいえるのだが、探偵小説っぽい作品に過ぎない感じに終わってしまっているのがもったいない。書きようによっては、もっと探偵小説らしくできたと思えるのだが。
「夜と女の死」は、芸術家の稚拙な願いが想像通り悲劇的に終わるというもの。
「柿の木」は、馬鹿として扱われた女の短い人生の様子が描かれている。
「街の探偵」は、短編というほどでもなく、ちょっとした話くらいで終わってしまっているが残念。


「探偵春秋」傑作選   幻の探偵雑誌4

2001年01月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 探偵小説を意欲的に刊行していた春秋社が1936年から翌年にかけて発行した月刊探偵雑誌。
 1937年8月に廃刊(全11冊)。
 当局からの削除処分を受けたことが影響したのではないかといわれている。
 1938年8月から、探偵小説選集に月報のような形で「探偵春秋」と題した冊子を挟み込む。
 この選集が1939年7月に中断するまで10冊出された。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 精力的な出版活動を背景に創刊された「探偵春秋」 山前譲

【創 作】
 「債 権」 木々高太郎
 「血のロビンソン」 渡辺啓助
 「京鹿子娘道成寺」 酒井嘉七
 「放浪作家の冒険」 西尾正
 「皿山の異人屋敷」 光石介太郎
 「鱗 粉」 蘭郁二郎
 「霧しぶく山」 蒼井雄
【評 論】
 「探偵小説芸術論」 木々高太郎
 「探偵小説の芸術化」 野上徹夫
 「探偵小説十講」 甲賀三郎
【対 談】
 「一問一答」 江戸川乱歩、杉山平助

 60年前の論争 我孫子武丸
 当時の探偵小説界と世相
 「探偵春秋」 総目次
 「探偵春秋」 作者別作品リスト

<感想>
 この「探偵春秋」傑作選では、木々高太郎がさまざまな作家・評論家を論争に巻き込んだ“探偵小説芸術論”について取り上げられている。ただ、実際に内容を読んでみても探偵小説の芸術的部分というものが漠然としていて、その定義がきちんとなされていないと感じられた。そういう背景もあってか、やがてこの“芸術論”自体が下火になっていった模様。とはいえ、探偵小説史の歴史のなかではひとつの語るべき通過点ともいえよう。

「債 権」は、守銭奴の謎の死を描いた作品。なんか社会派ミステリっぽかった。
「血のロビンソン」は、古い外国の中古のソファの中から出てきたアルバムがもたらす恐怖。こういうのが本当にあったら面白い・・・・・・いや、怖いか!?
「京鹿子娘道成寺」 歌舞伎の演目で“道成寺”を扱ったミステリって、いくつかあるような・・・・・・これは単に有名だからかな? ラストでとんでもないバカミスっぷりな仕掛けが用意されていた。
「放浪作家の冒険」は、モダン風の探偵物語といった感じ。
「皿山の異人屋敷」は、異人の屋敷を舞台とした、というか舞台背景とした幻想譚。
「鱗 粉」は、謎の隠れ家で行われている秘密の行為が明らかになるというサスペンス。
「霧しぶく山」は、中編でありなかなかの力作。山を訪れた者たちが死体を発見し、残されていた手記から、そこで恐ろしいことが起きていたことを知るのだが・・・・・・。

 全体的に“これ”といったものがなく、平凡な感じであったなと。舞台仕立てや背景に関しては見るべきものがあるのだが、それらと物語がきっちりと融合していなかったような。「血のロビンソン」くらいの短めな分量の方が物語がしっくりといっていたなという感じ。


「探偵文藝」傑作選   幻の探偵雑誌5

2001年02月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 1923年、松本泰を中心とした「秘密探偵雑誌」が創刊される。
 1925年、その後身として「探偵文藝」が創刊される。
 「秘密探偵雑誌」は松本泰の作品意外は翻訳探偵小説と犯罪実話が中心。
 1923年、関東大震災の影響で「秘密探偵雑誌」は廃刊となる(全5冊)。
 1925年3月、復刊号と銘打って「探偵文藝」が創刊される(ただし、巻号数は継承していない)。
 創刊3年目の1927年1月に「探偵文藝」は突然の廃刊を迎える(全22冊)。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 探偵小説界に独自の足跡を残した「秘密探偵雑誌」と「探偵文藝」 山前譲

【創 作】
 「P丘の殺人事件」 松本泰
 「葉巻煙草に救われた話」 杜伶二
 「釘抜藤吉捕物覚書」 林不忘
 「ものを言う血」 深見ヘンリー
 「夜汽車」 牧逸馬
 「秘密結社脱走人に絡(かかわ)る話」 城昌幸
 「台湾パナマ」 波野白跳(大佛次郎)
 「シャンプオオル氏事件の顛末」
 「万年筆の由来」 中野圭介
 「毒 草」 江戸川乱歩
 「謎」 本田緒生
 「愛の為めに」 甲賀三郎
 「指 紋」 古畑種基
 「くらがり坂の怪」 南幸夫
 「偶然の功名」 福田辰男
 「白蝋鬼事件」 米田華こう(“こう”は舟へんに工)
 「日蔭の街」 松本泰

【随筆・研究】
 「「笑い」と掏摸」 松村英一
 「探偵小説の映画化」 畑耕一
 「偽雷神(支那の探偵奇譚)」 水島爾保布
 「錬金詐欺」 小酒井不木
 「馬鈴薯園」 野尻抱影

 探偵小説マニアの本懐 有栖川有栖
 当時の探偵小説界と世相
 「秘密探偵雑誌」 総目次
 「探偵文藝」 総目次
 「秘密探偵雑誌」 作者別作品リスト
 「探偵文藝」 作者別作品リスト

<感想>
 創作された作品が多々掲載されているものの、ここに載っていた作品でミステリとして注目するようなものは特に見当たらなかった。林不忘による「釘抜藤吉捕物覚書」あたりは、時代性が感じられてよいのかもしれない(この人はその後「丹下左膳」もので人気作家となったらしい)。

 その他、ミステリっぽいものとか、謀略ものっぽいものとかも色々とあるのだが、どれもあまりにもきちんと締められていないと感じられるものばかり。そのなかでミステリとは言い難いような気はするが甲賀三郎の「愛の為に」は、物語としてきちんと仕上げられていた。赤ん坊の失踪? 誘拐? ともとれるような珍騒動から、うまく家族の物語へと収束しているところは見事。

 ここに掲載されている中で一番長い作品であった「日蔭の街」であるが、ひとりの女性を巡って、殺人事件などの騒動が起き、主人公の青年が右往左往する話なのであるが、この結末は驚いた。ただし、決してうまくできているというわけではなく、ここまで物語を回しておいて、最後の肩透かしを喰わせるような結末には開いた口がふさがらなかった。

 随筆・研究については、“雷”や“掏摸”といったものに対するその時代の風俗を感じ取ることができて面白い。あと、「探偵小説の映画化」というものも書かれているのだが、こちらは、これからこんな映画ができたらいいなぁといような話。


「猟 奇」傑作選   幻の探偵雑誌6

2001年03月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 関西在住の探偵小説愛好家たちの手により、「映画と探偵」と「探偵・映画」という雑誌を経て(どちらもすぐに廃刊)、1928年5月に「猟奇」が創刊。
 春日野緑、山下利三郎、本田緒生、滋岡透らが中心となる。
 辛口の寸評蘭が人気を博す。
 1932年5月の五周年記念号が最後の発行となる(全35冊)。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 辛口寸評が話題を呼んだ「猟奇」 山前譲

 「瓶詰の地獄」 夢野久作
 「拾った遺書」 本田緒生
 「和田ホルムス君」 角田喜久雄
 「ビラの犯人」 平林タイ子
 「扉は語らず(又は二直線の延長に就て)」 小舟勝二
 「黄昏冒険」 津志馬宗麿
 「きゃくちゃ」 長谷川修二
 「雪花殉情記」 山口海旋風
 「下駄」 岡戸武平
 「ペチィ・アムボス」 一条栄子
 【コラム「りょうき」PARTT】
 「朱色の祭壇」 山下利三郎
 「死人に口なし」 城昌幸
 【コラム「りょうき」PARTU】
 「『猟奇』の再刊に際して」 国枝史郎
 「吹雪の夜半の惨劇」 岸虹岐
 「肢に殺された話」 西田政治
 「仙人掌の花」 山本禾太郎
 【コラム「りょうき」PARTV】

 「猟奇」よ、今夜もありがとう 霞流一
 当時の探偵小説界と世相
 「猟奇」 総目次
 「猟奇」 作者別作品リスト

<感想>
 途中、中断したこともあったようだが、探偵雑誌のなかでは長く続いたことにより、一目置かれる存在であったとのこと。「猟奇」自体が60ページほどの冊子であったようで、掲載された創作短編も短めのものが多かったよう。また、作家や出版社に対して毒を吐く“コラム”が名物であったというのも大きな特徴。

 ここに掲載されている短編については、これといったものがほとんどなかった。「和田ホルムス君」の“ホルムス”って何? と思いきや、何とホームズのことだったのかと読んで気づく。ただし、内容はホームズと言うにはほど遠かったような。「扉は語らず」は、百貨店内でのとある出来事を書いたものであるのだが、今となっては似たようなものが色々と書かれているように思える。ただし、こういったネタのパイオニアであったと考えるとすごいかもしれない(トリックではないので、すごくはないか?)。「死人に口なし」の自分の死後、棺のなかに電話をひくという内容はかなり面白かった。ただ、その解決編があまりにも微妙だったのがもったいない。

 いったん、途絶えた「猟奇」が再刊されたのであるが、そのときの国枝史郎氏による「『猟奇』の再刊に際して」が、うまくこの「猟奇」という雑誌の影響についてまとめている。功績と罪悪を挙げているのだが、そのうちの罪悪に書かれているそのままを挙げてみると、
 罪悪
 一、罪も無い新青年やその編集者を攻撃したこと
 二、新しい作家を産まなかったこと
 三、あんまり毒舌が甚だしかったので、この方面の世界の空気を少し険悪にした事等々です。

 これが簡潔に「猟奇」というものを言い表している。

 本書については、あまり読むべきところはなかったのだが、 【コラム「りょうき」】については、読む価値あり。作家やその作品の批評のみならず、出版社の批評(というか悪口)するというのは珍しい。


「瓶詰の地獄」 夢野久作の短編代表作? 他のアンソロジーでも見たような。直接、原因を語らず、読み手に想像させるところがポイントなのか?
「拾った遺書」 男女両者に心中を誘わせるという、変わった計略。
「和田ホルムス君」 ホルムスって何か? と思ったら、ホームズのことか。内容はホームズというか科学捜査的なもの。ただし、ひねりが全くなし。
「ビラの犯人」 誰がビラを貼ったのか? ということをややこしく。
「扉は語らず(又は二直線の延長に就て)」 百貨店内で寝過ごした男が引き起こした綺譚。
「黄昏冒険」 スリを追いかけてスリに掏られる。
「きゃくちゃ」 とある会社員の話を上司が語る。ゲストティー。何の話がよくわからなかった。
「雪花殉情記」 中国が舞台で、恋人が奪われ、復讐を企てた婚約者が殺される話。
「下駄」 縁起を気にして4の数字が付く電車に乗らない女? 事件の行方は下駄に。
「ペチィ・アムボス」 パリンスカーまで行って帰って往復し、死んだ女の話。
「朱色の祭壇」 金貸しの非道な男が殺害された事件の話。
「死人に口なし」 死人に話しかけられるという男の謎。死後の復活を予期して、棺に電話線をひくというストーリーはよい。ただ、解決が“知っていたから”というのが興ざめ。
「吹雪の夜半の惨劇」 元警察署長が怨恨により殺害されたと思いきや・・・・・、普通の警察小説。
「肢に殺された話」 怯えた男が猫パンチに殺される。
「仙人掌の花」 謎の手紙と、現在の画家の夫との関係は?


「新趣味」傑作選   幻の探偵雑誌7

2001年11月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 1920年に創刊された博文館の「新青年」は、探偵小説読者の注目を浴びた。
 しかし、「新青年」は探偵小説専門の雑誌だったわけではなかった。
 そうしたなか、探偵小説ばかりで紙面を構成する雑誌として、同じ博文館から1922年1月に「新趣味」が創刊された。
 途中、評判によってか、翻訳探偵小説専門誌へと変身する。
 関東大震災の影響により1923年に休刊となった後、そのまま廃刊(全23冊)

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 初めて探偵小説専門誌を意図した「新趣味」 山前譲

 「真珠塔の秘密」 甲賀三郎
 「毛皮の外套を着た男」 角田喜久雄
 「噂と真相」 葛山二郎
 「呪われた真珠」 本多緒生
 「美の誘惑」 あわぢ生(本多緒生)
 「誘拐者」 山下利三郎
 「血染のバット」 呑海翁
 「国貞画夫婦刷鷺娘」 蜘蛛手緑
 「ベルの怪異」 石川大策
 「沙漠の古都」 イー・ドニ・ムニエ(国枝史郎)

 八十年の距離、読者との距離 柄刀一
 当時の探偵小説界と世相
 「新趣味」 総目次
 「新趣味」 作者別作品リスト

<感想>
“探偵小説専門誌を意図した”雑誌ということもあり、それなりのミステリ作品がここに掲載されていると感じられた。震災の影響により、刊行年数がわずか2年というのが残念なくらい。

 どれも短い作品が多い、というかページ数の制限があってのことなのかもしれない。そのせいか、大がかりな事件より、ちょっとした盗難事件、詐欺事件が多かったように思える。

 真珠塔という貴重品を狙った盗難事件を描いた「真珠塔の秘密」。貴重なシベリア地図の窃盗事件を描いた「ベルの怪異」。

「呪われた真珠」、「美の誘惑」 ひとつの真珠を巡っての怪異を描く。ひとりの作家が別名義で続編を書くという変わった形で書かれた作品。

 とある詐欺の手口を赤裸々に描いた「毛皮の外套を着た男」。「誘拐者」は、タイトルの通り誘拐を描いたものかと思いきや、裏に潜むのは詐欺事件。「国貞画夫婦刷鷺娘」は、詐欺というわけではなく、合法的なちょっとした計略というか、いたずら。

 青春ミステリとして描かれた「血染めのバット」が面白かった。こちらは大学野球の選手がバットにより撲殺されたという事件。「噂と真相」も青春ミステリっぽのだが、学生の感受性が豊かすぎやしないかと・・・・・・

「沙漠の古都」は、この作品集のなかで半分以上を占める200ページの作品。連作短編のような形をとっていて、民間探偵レザールと油絵画家ダンチョンが体験する数々の怪事件を描いたもの。これらの作品、外国を舞台としているのだが、読んでいて事実に基づいたものなのかと、もの凄く微妙だと感じられた。しかし、読んでいるうちに、最初は探偵団かと思いきや、徐々にとんでもない冒険譚へと発展していくことに気づき、もはや事実などどうでもよい作品なのではないかと感じられてゆく次第。これならば、むしろ子供向けぐらいに描いたほうが受けたのではなかろうか、と。


「探偵クラブ」傑作選   幻の探偵雑誌8

2001年12月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 ここに掲載されている「探偵クラブ」と「探偵趣味」は、小説全集に付随する月報という形で発行されたもの。
「探偵クラブ」は、1932年から翌年にかけて新潮社から刊行された、「新作探偵小説全集」全十巻の付録として発行された。
「探偵趣味」は、平凡社版「江戸川乱歩全集」全十三巻の付録雑誌として発行。1931年5月から翌年5月まで毎月刊行された。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 ユニークな探偵小説全集の付録雑誌 山前譲

【探偵クラブ】
 「殺人迷路 (連作探偵小説第一回)」 森下雨村
 「殺人迷路 (連作探偵小説第二回)」 大下宇陀児
 「殺人迷路 (連作探偵小説第三回)」 横溝正史
 「殺人迷路 (連作探偵小説第四回)」 水谷準
 「殺人迷路 (連作探偵小説第五回)」 江戸川乱歩
 「殺人迷路 (連作探偵小説第六回)」 橋本五郎
 「殺人迷路 (連作探偵小説第七回)」 夢野久作
 「殺人迷路 (連作探偵小説第八回)」 浜尾四郎
 「殺人迷路 (連作探偵小説第九回)」 佐左木俊郎
 「殺人迷路 (連作探偵小説第十回)」 甲賀三郎
 [探偵コント集]
 「短 銃」 城昌幸
 「カメレオン」 水谷準
 「女と群衆」 葛山二郎
 「小 曲」 橋本五郎
 「戸締りは厳重に!」 飯島正
 「縊死体」 夢野久作
 「黒 髪」 檜垣謙之介
 「建築家の死」 横溝正史
 「動物園殺人事件」 南澤十七
 「僕の「日本探偵小説史」」 水谷準

【探偵趣味】
 [応募掌篇集]
 第一回掌編評 江戸川乱歩
 第二回掌編評 江戸川乱歩
 「息を止める男」 蘭郁二郎
 「してやられた男」 小日向台三
 第三回掌編評 江戸川乱歩
 「五月の殺人」 田中謙
 「嬰児の復讐」 篠田浩
 第四回掌編評 江戸川乱歩
 「私の犯罪実験に就いて」 深田孝士
 第五回掌編評 江戸川乱歩
 「硝 子」 井並貢二
 「彼女の日記」 凡夫生
 第六回掌編評 江戸川乱歩
 「最後の瞬間」 荻一之介
 「蛾」 篠崎淳之介
 第七回掌編評 江戸川乱歩
 「怪物の眼」 田中辰次
 「探偵Q氏」 近藤博
 「紅い唇」 高橋邑治
 「棒切れ」 鹿子七郎
 第八回掌編評 江戸川乱歩
 「剥製の刺青(黄金仮面えぴそうど)」 深谷延彦
 「炉辺綺譚」 篠崎淳之介
 第九回掌編評 江戸川乱歩
 「復 讐」 篠崎淳之介
 「夜 靄」 冬木荒之介
 「黄昏の幻聴」 深谷延彦
 「一 夜」 篠田浩
 「或死刑囚の手記の一節」 荻一之介
 「意識と無意識の境」 榎並照正

 青春の永遠、稚気の回帰 西澤保彦
 当時の探偵小説界と世相
 「探偵クラブ」 総目次
 「探偵趣味」 総目次
 「クルー」 総目次
 「クルー」 作者別作品リスト
 「探偵趣味」 作者別作品リスト
 「探偵クラブ」 作者別作品リスト

<感想>
 今回のものは雑誌ではなく、あくまで“付録”として付けられたもののまとめであるので、作品として読むべきところは少ない。それでも、リレー小説はなかなかうまく出来上がっており、感嘆させられる。その他は短めの作品ばかりでこれといったものが見受けられなかった。

 また、江戸川乱歩が探偵小説短編を募集し、選出したものも掲載されているのだが、ほとんどが10ページに満たない作品ゆえに、それぞれ評価するのは難しい。作品が長すぎると掲載できなかったのであろうが、短すぎる作品というものもまた書くのが難しいのではと感じさせられた。そうしたなかで複数回選出されている人は、検討しているなと感じ入り、それなりのものを書いているなという印象が残った。

 雑誌のみならず、こういったものをコレクターアイテムとして持っていると自慢できるかもしれない。もしくは、これらを集めるというのもまた乙であろう。


「探偵」傑作選   幻の探偵雑誌9

2002年01月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 1931年(昭和6年)5月に創刊された「探偵」は、探偵小説と犯罪実話の雑誌。(1931年5月〜1931年12月 全8冊)
 創刊号は甲賀三郎、横溝正史、浜尾四郎、他豪華ラインナップであったが、しだいに犯罪実話のほうが多くなる。
 1932年1月からは誌名を「犯罪実話」に変える。

 1935年12月に創刊された「月刊探偵」はページ数が少なく、出版社の宣伝記事が多かったため創作は少ない。
 (1935年12月〜1936年7月 全7冊)

 「探偵・映画」は1927年に二号だけ発行された。(1927年10月から1927年11月 全2冊)
 山下利三郎や加藤重雄ら関西の「探偵趣味の会」同人が編集に携わった。

 1931年9月に創刊された「探偵小説」。(1931年9月〜1932年8月 全12冊)
 海外作品の長編が一挙掲載されるのが特徴。日本人作家の創作はほとんど掲載されなかった。
 「新青年」と合同をはかる形で廃刊。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 短命ながらも個性的な探偵雑誌 山前譲

 【探 偵】
 「罠に掛かった人」 甲賀三郎
 「首吊り三代記」 横溝正史
 「後家殺し」 木蘇穀
 「情熱の一夜」 城昌幸
 「撞球室の七人」 橋本五郎
 「浅草の犬」 角田喜久雄
 「仲々死なぬ彼奴」 海野十三
 「現場不在証明」 九鬼澹
 「旅客機事件」 大庭武年
 「魔石」 城田シュレーダー
 「殺人狂の話(欧米犯罪実話)」 浜尾四郎

 【月刊探偵】
 「ながうた勧進帳(稽古屋殺人事件)」
 「執念」 蒼井雄
 「探偵小説に於けるフェーアに就いて」 木々高太郎
 「探偵小説の本質的要件」 金来成
 「J・D・カーの密室犯罪の研究」 井上良夫
 「夢野久作氏を悼む」 森下雨村/江戸川乱歩/大下宇陀児/水谷準/青柳喜兵衛/紫村一重/石井舜耳

 【探偵・映画】
 「フラー氏の昇天」 一条栄子
 「危機」 本田緒生

 偉大なロゴスに祝杯を 小森健太朗
 当時の探偵小説界と世相
 「探偵」 総目次
 「月刊探偵」 総目次
 「探偵・映画」 総目次
 「探偵小説」 総目次
 「探偵」 作者別作品リスト
 「月刊探偵」 作者別作品リスト
 「探偵・映画」 作者別作品リスト
 「探偵小説」 作者別作品リスト

<感想>
 本誌ではタイトルにある、雑誌「探偵」だけではなく、それぞれ1年未満の短命で終わった雑誌「月刊探偵」「探偵・映画」「探偵小説」も含めて紹介している。ただし「探偵小説」は海外作品の翻訳が主で国内作家の創作がほとんど掲載されていなかったので、ここに作品は掲載せずリストのみとなっている。

 ここに掲載されているものは意外にもミステリ的な内容のものが多く、楽しんで読むことができた。ゆえに、読み応えのある古典ミステリ集を読んだというような感触。

 横溝正史の「首吊り三代記」はどこかで読んだような気がする。氏の代表作の一つというところか。祖父と父親が首をくくって死んだゆえに、自分もいつか・・・・・・と悩む男の顛末がなかなか。
「後家殺し」は、とある殺人事件と、映画館の放火事件をうまく結び付けた作品。なかなか本格ミステリらしいことをしている作品といえよう。
「仲々死なぬ彼奴」は、海野十三らしく大味な小説。遺産をめぐる普通小説のような雰囲気の話にも関わらず、わけがわからないほど大味に炸裂してくれる作品。
「現場不在証明」は、完全犯罪を成そうとする男の話であるが、理想と現実がうまく語られており面白い。
「ながうた勧進帳」は、長唄の稽古の合間に、唄の師匠が殺害されるという事件を描いたもの。雰囲気といい、真相へのたどり着き方といい、雰囲気が出ている。

 と、印象に残ったもののみをあげたが、他の作品もそれなりに読み応えがあった。こうした創作推理作品が掲載された雑誌が当時いくつも生まれたようであるが、なかなか商業的な成功は難しかったようである。それゆえに、情熱のある人が、是が非でもという精神でこういう雑誌を作ろうとしたことこそが推理小説の歴史上で重要な事と言えよう。


「新青年」傑作選   幻の探偵雑誌10

2002年02月 光文社 光文社文庫

<雑誌概要>
 1920年(大正9年)1月の創刊から1950年(昭和25年)7月の廃刊まで合計400冊の発行を誇る。
 決して探偵小説専門誌と言えず、実際には幅広い娯楽総合雑誌であった。
 とはいえ、探偵小説の傑作が数多く掲載されたのも事実である。
 江戸川乱歩の登場以降、創作小説が多く求められるようになっていく。
 海野十三、大阪圭吉、木々高太郎、小栗虫太郎らはこの「新青年」でデビューした。

<内容>
 まえがき ミステリー文学資料館
 探偵小説の百科全書「新青年」 山前譲

 「偽刑事」 川田功
 「遺 書」 持田敏
 「犠牲者」 平林初之輔
 「印 象」 小酒井不木
 「越後獅子」 羽志主水
 「綱」 瀬下耽
 「凍るアラベスク」 妹尾韶夫
 「正 義」 浜尾四郎
 「第三の証拠」 戸田巽
 「嘘」 勝伸枝
 「氷を砕く」 延原謙
 「地獄に結ぶ恋」 渡辺文子
 「三稜鏡(笠松博士の奇怪な外科医術)」 佐左木俊郎
 「豚児廃業」 乾信一郎
 「寝 台」 赤沼三郎
 「三人の日記」 竹村猛児
 「燻製シラノ」 守友恒

 あのころぼくは新幼年だった 辻真先
 当時の探偵小説と世相
 「新青年」作者別作品リスト

<感想>
 決して幻の探偵雑誌ではなく、推理小説界を牽引してきた伝説の雑誌といってよいであろう。それでも1950年には廃刊になっているわけだから、今の推理小説オールドファンでもリアルタイムで読んだことのある人はほとんどいないだろう。発行巻数が多いので、古本としては入手しやすい部類であるかもしれない。

 ここに紹介されている作品は、他ではあまり掲載されていないものを選んだようであるが、それでも数多くの中から選ばれただけあって読み応えのある作品が多かった。

「偽刑事」は、万引き女に声をかけたことにより巻き込まれる騒動。一見、ありがちな話であるが、その後に交番の巡査が素晴らしい冴えを魅せるところが異色。
「犠牲者」は、神がかり的な冤罪をあらわした作品。ここまで運が悪いと何も言えないものがある。
「印象」は、結核にかかった母親が命をかけて子供を産むことにより果たすことができる復讐を描いたもの。なかなか発想が凄まじい。
「凍るアラベスク」は、ダイレクトに猟奇的な話。乱歩の映像作品を思い起こした。
「第三の証拠」は、最初は普通のミステリかと思ったのだが、なんと殺人犯が奇怪なトリックを仕掛けられるという話。浮かび上がる真相に驚かされる。
「豚児廃業」は、豚にこだわった話、豚を巡る冒険、豚に悩まされる男の苦悩、とにかく豚中心の騒動が描かれる。
「三人の日記」は、大山鳴動して鼠一匹という典型的な話のような。別々の視点から語られる日記により浮かび上がる疑惑と真相が語られる。


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<雑誌概要>

<内容>

<感想>




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