Colin Dexter  作品別 内容・感想

ウッドストック行最終バス   6.5点

1975年 出版
1988年11月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 酒場の駐車場で惨殺された女の死体が発見される。その女は生前、もうひとりの女と共に行動をしていたらしいが、酒場までの足取りが不明なままであった。謎のもうひとりの女の正体は? そして殺人犯はいったい誰なのか? 事件を担当するモース主任警部は、捜査に奔走するものの、なかなか手掛かりが得られず・・・・・・

<感想>
 久々に読んでみたコリン・デクスターの作品。モース主任警部が活躍する第1作品。面白いような、面白くないような・・・・・・というようなテイストがむしろ癖になるのか?

 このモース警部の人物造形って、どうなのだろうと思ってしまう。なんとなく取っつきにくい、やたら弱音を吐くと思えば、部下にはやたら厳しい。こういったところを人間味があると感じるべきなのか、単なる変人と捉えるべきなのか、どんなものなのか。それとも、欧米ではこのような生活に人物もしくは、人物描写はスタンダードなものとして受け入れられるものなのかと考えてしまう。

 内容は、殺害された女がどのような道筋を辿って、犯行現場までいったのかを探るというもの。さらには、被害者と共にいたはずのもう一人の女を特定するというのも重要事項。モースは、被害者の足取りを追いながら、数々の怪しい人物らの証言を通して、真実の道筋を探り出してゆくこととなる。

 後半ではなんとなく結末が見えてしまうものの、それでもサスペンス小説として、よくできているなと思えるものであった。また、ただ単に意外性があるというだけではなく、実は被害者と真犯人のたどった道筋がうまく作りこまれており、事細かな部分もしっかりと作り上げられた作品であると感嘆させられる。

 モース警部の捜査に関して、中途ではなんとなく、回り道をし過ぎていると感じられたものの、結末までたどり着けば、ベストな捜査であったと思わずにはいられなくなってしまう。なんだかんだ言って、モースの人となりに惑わされたというか、騙されてしまったのかなと。


キドリントンから消えた娘   6点

1976年 出版
1977年12月 早川書房 ハヤカワミステリ
1989年12月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 モース警部は上司から2年3か月前に失踪したバレリー・テイラーの捜査を命じられる。今になって本人から両親へ手紙が届いたのだという。当時事件を担当していた警官は死亡しており、モースがこの事件を担当することとなった。モースの勘ではバレリーは既に死んでいるのではないかと思いつつ、ルイス部長刑事と共に捜査を進めてゆくのだが・・・・・・

<感想>
 今年「ウッドストック行最終バス」を再読したので、続けてモース警部シリーズ2作目となるこの作品も読んでみた。前作に続きモース節をこれでもかというくらい堪能できる作品。

 このモース警部の独特とも言える捜査、どうなんだろうと思わずにはいられない。特に決定的というような証拠もなく、大雑把な予想で大枠を決めてしまう。それに基づいて、推理というか推測をあーだ、こーだと組み立てて、なんとなく考えた結論のまま、予想した犯人の元へ突撃してゆく。それが失敗に終わったら、また同じことを繰り返すという、行き当たりばったりのような捜査法。正直言って、ミステリ小説というよりも、警察小説としてどうなのかと思えるのだが、これがこのシリーズの持ち味なのであろうか。ひょっとすると、この独特な捜査法が持ち味となり、ファンとなったものの心を捕まえて離さないのかもしれない。

 前作の方が、警察小説としての出来は良かったのではないかと。また、前作の方がモース警部の面目躍如というような内容ではなかったのかと。今作は、最初から最後までやられてばかり。小説のページが終わりかけになっても、まだ犯人が特定されていないので、読み手側としてはこれ本当に終わるのかと心配になってしまうほど。そうした挙句、結局モース警部がやられっぱなしで終わってしまうとは。こんななさけない警察小説であっても、それはそれでモース警部の人間味を表すものなのか!?


ニコラス・クインの静かな世界   6点

1977年 出版
1979年01月 早川書房 ハヤカワミステリ1321
1990年12月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 海外学力検定試験委員会の委員の一人が辞めたために、新たな一人を選出することとなった。そうして、ニコラス・クインが、聴力に難があることにより反対意見もあったものの、新たな委員として選出された。委員を務めることになったクインであったが、その3か月後、自宅にて死体となって発見されることとなる。死因は毒によるもので、何者かによって殺害されたと考えられた。モース主任警部は、殺人事件の捜査を開始するのであったが・・・・・・

<感想>
 コリン・デクスターのモース警部シリーズの3冊目。家に本が置いてあったので、昔に読んだはずなのだが・・・・・・全然覚えていない。覚えているのは印象深いタイトルのみ。

 検定試験委員会において新しい検定員となったニコラス・クイン。その特徴としては耳が聞こえづらい。そんな彼が数か月委員の仕事を務めていた時に、自宅で毒殺死体となって発見されることとなる。プライベートでは、さほど人と関わり合いがないので、検定試験委員会がらみで殺害されたのだと予想される。それでは、いつ、どこで、何者によって殺害されたのか? モース主任警部による捜査が行われる。

 いつもながらのモース警部による捜査ということになるのだが、何故か関係者たちがそれぞれ虚実入り混じった証言をするので、なかなか捜査が立ち行かない。“いつ”がポイントになりそうなのだが、嘘の証言により、アリバイをきちんと把握することができず、モースの苦悩はつのるばかり。

 と、そんな感じで、いつもの捜査が行われる。このシリーズの特徴としては、モースによる事件に対する多重推理がなされること。あれを推理して、うまくいかなければ、違ったパターンで、という感じで推理を進めていく。ただ、今作においてはそういった推理が繰り返されず、そのまま犯人逮捕へと突入していく。

 そして、今回はということなのだが、とりあえず容疑者を逮捕してからの多重推理となっている。この容疑者を逮捕して、うまくいかなければ、次の容疑者を逮捕というように、ちょっと倫理観に欠けるのではというような捜査方法。なんか、一歩間違えれば冤罪になってしまうのではないかという行為。一応、最後にはうまくまとまった感が出ていたような終わり方をしているものの、読んでいる側の後味としてはあまりよくなかったような。


死者たちの礼拝   6点

1979年 出版
1980年11月 早川書房 ハヤカワミステリ1362
1992年07月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 教会の礼拝中に、信者の一人が刺殺されるという事件が起きた。その後、その教会の牧師も謎の転落死を遂げていた。休暇から戻ってきたモース主任警部は、この事件に興味を持ち調べ始める。すると、教会で起きた事件の関係者と思われる人物が死亡するというさらなる事件が起きる。関係者たちの間で、何が起きていたのか!? モールはルイス部長刑事を率いて、さらなる調査を行っていき・・・・・・

<感想>
 コリン・デクスターによるモース主任警部シリーズの4作品目。

 序盤に教会を中心とした、その周辺にまつわる人々の様子が描かれ、その人間関係があらわとなる。その後、殺人事件が起き、それら人間関係を元に、どのような動機において、どのようにして犯罪が行われたのかをモース主任警部が捜査していくこととなる。

 結構複雑な人間関係のなかで描かれるミステリとなっている。さらに本書の特徴としては、結構血なまぐさいミステリとなっており、関係者の多くが死亡してしまうこととなる。そこからどのようにして解決に導いてゆくのかが、焦点となって行く。

 全て読み終えたのちに考えてみると、ミステリ作品としては、うまく描かれていたのではないかと感じられた。ただ、モース主任警部のシリーズとしては、若干微妙であったのではないかと思われた。1作目、2作目のように、色々と犯人についてや犯行方法についてこねくり回すというような場面も少なく、最終的には淡泊な感じで終わってしまったなと。特に犯人の自供によって、ほとんどが解決してしまうというのは、ちょっと興ざめしてしまうような結末であった。

 内容は面白いと思えたものの、モース主任警部らしさが出なければ、結局は普通のミステリ作品となってしまうかなという感じである。




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