<内容>
妊娠中の女子高生である私は、何者かにさらわれ監禁された。どうやらさらった者は人身売買の組織のようで、おなかの赤ん坊を狙っているようである。頭脳明晰で、感情を自身でコントロールできる私は、手元にある限られた道具を使い、監禁場所から脱出して、誘拐者たちに復讐を遂げることを誓い、行動を開始する!!
<感想>
限られた道具を使って誘拐された女が脱出と復讐を図る! というような内容に惹かれ購入したものの、見事に外してしまったという感じ。元々海外ミステリ作品は外しやすいのであるが、久々に微妙な作品に当たったなと。
前半は退屈であったものの、それは後半へと至る準備であり、後半になれば怒涛の復讐劇が始まるのだろうなと思いながら読んでいたのだが・・・・・・全くの期待外れ。計画的な復讐がなされるはずが、計画通りなのは監禁場所から脱出した時だけ。あとは予想外の出来事によって戸惑いながら、行き当たりばったりの行動をとるのみの主人公。これは全然予想したものとは違っていた。
また、本書では監禁された主人公のパートに並行して、警官による捜査のパートが展開されていくのであるが、これについても効果が薄い。物語の後半は一気にスピーディーな展開に持ち込むことができそうであったのに、そこでもさらに過去を回想し始めたりと、だらだらとした展開が続くばかり。これは内容云々というよりは、そもそも物語の構成の段階で失敗しているような。
<内容>
森の中から6本の左腕が発見された。その腕は、連続して誘拐された5人の少女たちのものと判明する。すると、腕の数が一本多いこととなる。それではもう一人の少女の身元はいったい? 失踪人探索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケスは現地に呼ばれ、この事件の調査の手助けをすることとなる。高名な犯罪学者ゴラン・ガヴィラが指揮する犯罪チームをあざ笑うかのように、次々と予想だにせぬところから湧き出てくる少女たちの死体。いったい犯人は何の目的でこのような大事件を起こしたのか? ミーラとゴランは協力して、徐々に犯人を追いつめていくのであったが・・・・・・
<感想>
イタリアの作家によるデビュー作。これまたもの凄い新進の作家が出てきたものだ。今度はイタリアのミステリが流行りになったりするのであろうか。
本書は、もう詰め込み過ぎという一言。これでもかというほどのサイコサスペンスの要素が詰め込まれている。とにかく多すぎると思われたのが、サイコな殺人鬼たち。巷には、これほどまでに危険な犯罪者があふれているのかと恐ろしくなるほど。しかし、この本を読んでいてどうしても感じてしまうのは、これを1冊のみの本で出版するのはもったいないということ。通常の作家であれば、3冊か4冊くらい、ここにある要素を利用して描けるのでないだろうか。
発見される6本の少女たちの左腕。亡くなったと思われる5人の少女と、ただ一人生存の可能性のある1人の少女を捜そうとする捜査チーム。その捜査チームに加わることとなる失踪人探索の専門家であるミーラ・ヴァスケス。そのミーラを最初から敵視する捜査チームの唯一の女性サラ。そうした反目を無視するかのように、少女たちの死体が次々と発見されることとなる。しかも、この事件と直接関係のない別の猟奇殺人鬼の存在までもが露わにされる。そしてやがて犯人の魔の手は、捜査員たちにまで伸びてくることとなり・・・・・・
とにかく、予想だにせぬ展開の連続。さらには、思いもよらぬ伏線が張られ、最初から最後まで考え抜かれた物語であることに驚愕することとなる。惜しいと感じられたのは、最終的に明らかになる真犯人像。物語の展開としては面白かったものの、どこかその結びつきの一つ一つが弱いと感じられる部分もあり、もう少し濃いめの首尾一貫性が見られれば良かったと思われた。とはいえ、これで最後まできっちりと決まっていたとすると、とんでもない完成度の作品となっていたであろう。著者の力量といい、登場する多数の殺人鬼の描写といい、色々な意味で恐ろしい作品。
この著者はすでに他の作品を2冊書き上げているということなので、やがてはそれらも翻訳されるかもしれない。ただ、続編だとは書かれていなかったので、ノン・シリーズを中心に描いていく作家となるのであろうか。今後が非常に期待できそうな作家である。
<内容>
トムのもとに昔の親友で現在弁護士をしているジャックから電話がかかってきた。ジャックは何者かに襲われているらしく助けを求めていた。そして最後にトムの家の住所を口にして、悲鳴をあげて、電話が切られた。トムは何者かが家に襲撃してくるのではないかとおびえ、子供たちを義母のもとに預け、大学で働く妻の元へと急ぐ。しかし、大学に妻の姿はなく、かわりにマスクをかぶった男にナイフで襲いかかられ・・・・・・
<感想>
昨年話題になった作品であるが、タイトル「ノンストップ!」の言葉通り、ノンストップで繰り広げられるサスペンス・ミステリ。読む者を決して飽きさせない怒涛の展開でラストまで一気に駆け抜けてゆく。
昔の友人が主人公の住所を告げたために、謎の集団から襲われる。妻を捜しに行くと、襲撃され、警察につかまり殺人犯と疑われる。その後、別の事件の謎が進行しつつも、主人公は何が起きているのかわからないままに、ただ単に襲撃者から逃げ回り、妻の行方を捜そうとする。
途中、色々な人物と出会い、情報を入手するも、どこまでが真実でどこまでが嘘かわからず、誰を信じていいのかわからない。全体的に何が起きているのかわからないまま主人公は事件に翻弄され続ける。ただし、日数にしてたったの二日間。その二日を一気に駆け抜ける。
これはかなり楽しめた。展開してゆく物語の先が気になり、一気に読みとおすことができた。キャラクターも主人公のトムだけでなく、殺し屋のレンチ、警官のボルトなどキャラクターがしっかりとしていた。続編という形はないにしても、警官のボルトをはじめ、他の作品に登場してきてもよいのではないかと思った人物もいる。サスペンス・ミステリとしては傑作といってよいであろう。
<内容>
元兵士で現在は自動車ディーラーを営んでいるタイラー。ある朝、目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋のなか。しかもベッドには恋人の首無し死体が! さらに部屋のなかのDVDには、タイラー自身が恋人を殺害したかのような映像が映されていた。タイラーは連絡をしてきた見知らぬ者からの指令を受けることとなる。指定された住所へと行き、そこでブリーフケースを受け取って来いと。タイラーは指示に従いつつも、誰が自分をはめようとしているのかを突き止め、反撃を試みようとするのであるが・・・・・・
<感想>
「ノンストップ!」に続いて訳された(とはいっても3年ぶり)、サイモン・カーニックの作品。前作「ノンストップ!」同様、この「ハイスピード!」もタイトルの通り、内容に惹き込まれ、一気に読まされる作品となっている。
内容は、殺人の罪をきせられ、何者かによって利用されることとなった主人公が警察やその他大勢の目をかいくぐり、真相を突き止めようとするもの。主人公は、車のディーラーであるが、元は兵士。その過去のスキルや人脈に助けられつつも、その過去の何らかの出来事が自分を追い詰めつつあるのではないかと疑いながら行動を起こしてゆく。
展開としては面白く読むことができるのだが、終わってみれば、特にこれといった捻りというほどのものは感じられなかった。何となく、事が起こっている最中が一番面白いというような作品。終わって息を整えて落ち着いてしまうと、「あれ、そんなものか?」という薄い印象。事件の核にもなっている、主人公の希薄な心持ちというものが、物語全体の印象の薄さにつながってしまっているように感じられてならない。手に汗握るスピード感を堪能しつつも、意外と薄味という突き抜けすぎた作品!?