<内容>
死相学探偵・弦矢俊一郎は、黒捜課の曲矢刑事から“黒術師”の新たな噂を聞くことに。なんでも“黒術師”の噂が段々と広まりはじめ、彼を崇拝するものたちが表れたという。そして、“黒術師”が主催するバスツアーが行われ、そこに崇拝者たちが集うというのだ。曲矢から頼まれて、そのバスツアーに潜入することとなった俊一郎。危険を承知で乗り込んだはずが、思いもよらない状況に陥り、一人、また一人と参加者たちが殺されることとなり・・・・・・
<感想>
今回はバスツアーの最中に事件が起こるというもの。しかもバスツアーの前には、参加者全員に死相が見ており、それがツアーの最中、死相の具合が次々と変わってゆくこととなる。
このバスツアー、大変奇妙な出来事に遭遇する。バスが事故を起こし、その後参加者たちが気が付くと、誰も存在しない世界に彼らのみが取り残されるという事態に陥る。しかもスティーブン・キングの小説張りに、謎の霧によりツアー参加者たちが襲われる羽目にまで陥る。そうしたなかで、殺人事件までもが次々と起き、死相学探偵がどのように対処するのかが見どころとなる。
この作品、とうとうファンタジーめいた内容にまでなってしまったかと思ったのだが、事の真相が明らかになると、実際に某ファンタジー小説を思い起こしてしまうような内容であった。今まではこのシリーズ、結構現実的なところに中心を起きつつ、超自然的なものを取り入れるというイメージであったが、今作では完全にその領域から逸脱したという感じ。とはいえ、それはそれで面白く読むことができたのだが。なんといっても、作中の怪談話で出てくる馬骨婆の正体がなんともまた・・・・・・
<内容>
<序 章>
「黒い部屋 ある母と子の日記」
「白い屋敷 作家志望者の手記」
<幕 間(一)>
「赤い医院 某女子大生の録音」
<幕 間(二)>
「青い邸宅 超心理学者の記録」
<終 章>
<感想>
同じ出版社から出た「どこの家にも怖いものはいる」と同系列の作品。というか、あえてシリーズという見方をしてしまってもよいのかもしれない。この作品では、曰くのある家や部屋をひとつにまとめてしまった“家”にスポットを当てたもの。
三津田氏のこの系統の作品は、別々の短編小説をつなぎあわせたもの、という印象が強かったのだが、この作品ではひとつの家にスポットを当てた連作のような様相のものとなっている。ただ、最初の「黒い部屋」と「白い屋敷」までの流れは見事であったと感じられたのだが、その後の「赤い医院」と「青い邸宅」が前半の作品に対して関連性が薄くなてしまったのが残念なところ。前半でかなり盛り上がったので、このままの勢いで続けてくれれば、もっと面白くなったのではないかと残念に思ってしまう。
また、最終的にこれらの一連の物語に結末を付けず、ややグダグダな感じで終わってしまったのも残念なところ。あくまでもミステリではなく、想像を煽るようなホラー作品であるということなのであるかもしれない。ただ、途中までミステリ的なものを期待させるような書き方と思えたので、やはり最後までその流れを通しぬいてもらいたかったところ。
<内容>
得体のしれぬものに追われていた中学生の由羽希がたどり着いたのは、住職・天山天空と黒猫が住まう遺仏寺。そこはさまざまな“忌物”を払うための寺だという。寺へとたどり着いたものの、記憶を失っていた由羽希は、古ぼけた櫛を持っており、天山はそれが彼女にとっての忌物だと・・・・・・
第一夜 砂歩き
第二夜 後ろ立ち
第三夜 一口告げ
第四夜 霊吸い
最終夜 にてひなるもの
<感想>
連作短編形式の作品で、物語全体の大きな目的は、何者かから逃げてきた中学生の由羽希が持っていた櫛を“忌物”とし、遺仏寺の住職・天山天空が祟りを払うというもの。その祟りを払う過程として、寺にあるそれぞれの忌物に関わる物語を由羽希に聞かせていくこととなる。
今回の作品はミステリ的な趣向は薄く、怪談としての趣が強い。というか、章ごとに短編形式となっているので、いくつかの怪談話が語られる作品と言ってもよいくらいである。
上記に述べたように、最終的には由羽希が持ってきた櫛のお祓いをするということがメインであり、その点に関してはちょっとしたサプライズもあり、見どころはしっかりと作っている。また、最終的にシリーズとして続くようなこともほのめかしているので、今後また住職によって由羽希が別の怪異に繰り出されることとなるのであろう。
<内容>
作家であった父親が亡くなった後、母親が再婚することとなった小学6年生の優真。新しい父親とは馴染めずにいた優真であったが、義父の弟である叔父とはウマが合い仲良くなることができた。そんなある日、義父の海外赴任に伴い、一時的に叔父としばらくの間暮らすことができるようになる。優真は叔父に連れられ、彼の別荘へと行き、そこで過ごすこととなった。そして優真は、その別荘で恐ろしい体験をすることとなり・・・・・・
<感想>
三津田氏の作品といえば、読んでみるまでホラーに寄った作品か、それともミステリに寄った作品なのかわからないというところが楽しみのひとつ。本書はどちらかというとミステリ系に属される作品(と、言ってしまうと、それ自体がややネタバレになってしまうのだろうか)。
父親を亡くし、母親が再婚したことで義父ができ、裕福な生活を送ることができるようになった小学生の物語。その小学生の男の子が、叔父の別荘で体験する怪奇綺譚を描いた作品。
“家に潜む不確かなものに脅える”というのは、三津田氏の作品でよく見られるもの。しかも、いわくつきの森が存在していたりと、読んでいる人の中には、「またか」という感想を抱く人もいるはず。ただ、それらを含む、少年が体験する怪奇現象がやがて思いもよらぬ展開を見せてゆくこととなる。三津田氏の作品を読み続けている人も、これは楽しめる作品であると思われる。
どうにも、あれこれ書いてしまうとネタバレになってしまうので、色々と書くことができない困った作品。何にせよ、なるべく先に情報を入れずに、とりあえず読んでみることをお薦めしたい作品である。
<内容>
海に囲まれた狭い土地に人が住まう犢幽村。そこには過去から現在にまで至る4つの怪談が伝えられていた。それを聞きつけやってきた刀城言耶。彼を待ち受けていたように事件が起きる。村に来ていた民俗学者が竹林のなかで餓死状態で発見される。果たして彼は、何故竹林から出ていこうとしなかったのか? その後、村に伝わる怪談になぞらえたかのような見立て殺人事件が次々と起き・・・・・・
<感想>
久しぶりの刀城言耶シリーズ。今作では、四つの怪談になぞらえた見立て連続殺人事件という派手な事をやってくれている。シリーズならではの、読み応えのあるホラー系本格ミステリ作品。
今回、ちょっと微妙と思われたのは、事件が起きている中盤、あまりにも軽快に話が進み過ぎること。その分、読みやすい作品となっているのは良いことであるが、ホラー系の作品としてはいささか物足りない。特に、不安を掻き立てるような描写とか、事件の匂いを感じさせるような背景がなく、いつのまにかどんどんと勝手に事件が起きていたといった感触であった。
ただ、そうした不満をのぞけば、基本的にはよく出来たミステリ作品となっている。特に竹林のなかで発見された餓死状態の死体に関する真相などはよく出来ていると感嘆した。また、最後の最後でホラー色を前面に出してきて、不気味な余韻の残る作品となっている。
<内容>
【国内編】
「死 神」 南部修太郎
「妖異編 二 寺町の竹藪」 岡本綺堂
「竈の中の顔」 田中貢太郎
「逗子物語」 橘外男
「佐門谷」 丘美丈二郎
「蟇」 宇江敏勝
「茂助に関わる談合」 菊池秀行
【海外編】
「ねじけジャネット」 ロバート・ルイス・スティーヴンスン
「笛吹かば現れん」 モンタギュウ・ロウズ・ジェイムズ
「八番目の明かり」 ロイ・ヴィカーズ
「アメリカからきた紳士」 マイクル・アレン
「旅行時計」 ウィリアム・フライヤー・ハーヴィー
「魅入られて」 イーディス・ウォートン
【番外編】
「霧屍疸村の悪魔」 三津田信三
<感想>
編者が読んでゾッとした作品の中で、特に入手困難なものを選んだのがこの作品集。国内編7作、海外編6作、そして三津田氏の書下ろし作品が含まれたものとなっている。
国内作品については、「竈の中の顔」が理不尽な恐怖というものを強く感じ、すごく恐ろしかった。また「逗子物語」もよかった。こちらに関してはタイトルからして何気に有名な気もするのだが、現在では入手困難なのかな? ただ怖いだけではなくノスタルジックな雰囲気も味わえる作品。個人的には怖いというより、よい話のように思えたのだが、当の主人公は何故かひたすら怖がっていた。
海外作品は国内作品に比べると、やけに実体的という感触を受けた。なんとなく国内のほうは幽体的というか実態がないような感触であったのだが、海外の方が恐怖の根源がはっきりしているという感じ。これはたまたまそのような作品が集められたのか、それとも海外の宗教観によるものか。作品としては「アメリカからきた紳士」の結末がなんとも救いようがなくて印象的。
最後の三津田氏の作品については、これはミステリ的ではなく、完全なホラーよりの作品。何気におどろおどろしい内容と描写で、存分に恐怖を振りまくホラー小説として仕上げられている。
<内容>
「屋根裏の同居者」
「赤過ぎる部屋」
「G坂の殺人事件」
「夢遊病者の手」
「魔鏡と旅する男」
「骸骨坊主の話」
「影が来る」
<感想>
三津田氏による江戸川乱歩オマージュとでも言うような作品集。短編の題名を見てもわかる通り、それぞれの江戸川乱歩作品に言及したかの内容。
「屋根裏の同居者」は、屋根裏に誰かがいるのではと疑いを持ち始める男の話。「赤過ぎる部屋」は、その名の通りの江戸川乱歩作品の現代版。「G坂の殺人事件」では、街並みの中での坂を利用した大がかりなトリックが語られる。「夢遊病者の手」では夢遊病によりアパートのなかで犯罪を繰り返してしまう男の悲哀が描かれる。「魔鏡と旅する男」は、鏡にうつる兄弟もしくは虚像の話が語られる。
それぞれが単に乱歩を語るだけでなく、三津田氏らしいホラーによる味付けをしているところが特徴。しかもその味付けがしっかりと作品に活かされているところがすばらしい。「G坂」ではさりげなくホラーミステリ批判をしつつ、本格ミステリのような味わいを出している。「夢遊病者の手」では、ラストで乱歩作品と掛け合わせたような幻想性を出していたりと、それぞれ見どころ満載となっている。
これら5編のように乱歩作品オマージュのみだけを集めればよいものの、何故かその他のノン・シリーズ作品2編が収められている。三津田氏は作品集を多々出版しているので、別にノン・シリーズ作品集として、こういったのを集めてしまえばいいのにと思えてならない。ただ、残りの2編が「骸骨坊主の話」は映画「貞子3D2」のための特集として書かれた作品であり、「影が来る」は円谷プロ作品に対するトリビュートということで書かれた作品なので、オマージュとかトリビュートという意味合いでは全体的に整合性がとれているといえるのかもしれない。
何気に「骸骨坊主の話」はきちんと「リング」っぽい作品となっており、うまく書かれていると感心させられた。「影が来る」のほうは、円谷プロ・トリビュートでありつつも題材が「ウルトラQ」とマニアックゆえに、ちょっとわかりにくかったかなと。
<内容>
北九州の炭鉱にて、しめ縄連続殺人事件に見舞われた物理波矢多(もとろい はやた)は、その後灯台守になろうと思い立ち、関東にある灯台を経て、東北の轟ヶ埼灯台へと赴任することとなった。現地へと着いたものの灯台までは遠く、案内もなしに物理は単独で向かうこととなったのだが、そこで怪異に会うこととなり・・・・・・
<感想>
「黒面の狐」に登場した物理波矢多が再登場。ただし、前作と本作は何の関連もないので、どちらから先に読んだとしても全く問題はない。
今作では灯台と灯台守にスポットを当てた物語。それを怪談めいた事象も含めて物語が描かれている。ただ、ちょっとホラーっぽい話が語られているのみという感じで、読んでいてあまり面白くなかった。ミステリっぽい事象はほとんどなく、単に物語が語られてゆくというだけ。しかも途中から、同じ事象が似たような形で再度繰り返されるというような話になっており、読んでいる側としてはますますつまらないという感触。
最後の最後で、一連の物語に対してミステリ的な解答が与えられることに。その解釈については面白いと思え、うまくできている感じられたものの、やはりどうしても途中がつまらなかったという印象が強い。三津田氏の作品のなかでは「幽女の如き怨むもの」に構造が近い作品と言えよう。もうちょっとどうにかならなかったものかと・・・・・・ただただそれだけ。
<内容>
「妖服の如き切るもの」
「巫死の如き甦るもの」
「獣家の如き吸うもの」
「魔偶の如き齎すもの」
<感想>
刀城言耶シリーズ短編、4作品が集められた作品集。どの作品もそれぞれ面白い。そうしたなかで思ったのが、単にトリック云々ではなく、それぞれ凝った背景になっているということ。これらについてはよくぞ色々な設定を考えるなとただただ感嘆させられる。
「妖服の如き」は、同じ三男坊である息子を交換した二組の叔父と甥という関係。「巫死の如き」は村の中で隔絶したさらに小さな村の存在。「獣家の如き」はシャム双生児のような獣の石像が多く飾られた家。「魔偶の如き」は、幸運と災いを同時に呼ぶ土偶の存在。それぞれの作品で、こうした変わった設定が扱われている。
そして、それらの設定の中で「妖服の如き」は、交換殺人の方法、凶器運搬のトリックについて。「巫死の如き」では、閉ざされた村からの人間消失。「獣家の如き」は、謎の家の構造について。「魔偶の如き」は、卍の形をした部屋からの犯人の逃走方法。こうした謎について刀城言耶が推理をしてゆく。
全体的にどれも雰囲気を楽しめるのみならず、それぞれのトリックについても興味深く読める内容となっている。今年刊行されたミステリ系の短編集の中では随一といってもよいくらいの出来ではなかろうか。
<内容>
死相学探偵・弦矢俊一郎は、超能力者を養成するダークマター研究所へ行くことに。そこで日々、超能力を強化しようとしている少年少女らが、黒魔術師に命を狙われているようなのである。今回用いられる呪いは“九孔の孔”。警察と共に厳戒態勢をしく俊一郎であったが、魔の手によって、狙われた少年・少女たちが、ひとりまたひとりと。俊一郎は、真犯人のみならず、警察の行動にも不審なものを抱くのであったが・・・・・・
<感想>
死相学探偵の第7弾。今作は超能力研究所という妙な施設が今更ながら登場する。こんな重要そうな施設が存在するのであれば、もっと前に出てきてもよさそうだが・・・・・・基本的には今後シリーズとは関わり合いはないのかな?
そんな超能力研究所の少年少女たちが“黒魔術師”による危険にさらされるということで、弦矢俊一郎が捜査に乗り出す。しかし、俊一郎と警察の警護をよそに、次々と魔の手に・・・・・・という流れ。しかも、何やら警察の様子についても俊一郎はおかしなものを感じつつ、捜査を進めていかなければならないというもの。
今作に関しては、シリーズのなかでは一番捻りがないというか、結末がそのままという感じ。また、いろいろと突っ込みどころが多く、作品全体としても微妙な面持ち(特に超能力が万能な割には・・・・・・と)。シリーズの1作としてはいいのかもしれないが、この作品のみで考えると、あまり見せ場というべきものがなかったような。
<内容>
序 章
「あの家に呼ばれる 新社会人の報告」
幕 間(一)
「その家に入れない 自分宛ての私信」
幕 間(二)
「この家に囚われる 精神科医の記録」
終 章
<感想>
一応、シリーズ作品といってよいのかもしれない。中央公論新社から出た“家”シリーズとしては3作品目。編集者の三間坂が持ち寄ってきた書簡を作家の三津田が読みつつ、その内容についてあれやこれやと話し合うのはいつも通り。今作では“あるはずのない家”というものをテーマにした作品となっている。
内容としては今までのものと比べたら小ぶりであったような。ただ、小ぶりである分、話はまとまっているなと思われた。真相云々というよりは、物語の構造(詳しく言えば記録の並び)についての考察がなされるのみという内容。
結局のところ、全体的に話の盛り込み部分が薄く、表紙とか、今までの作品と比べたりして、なんとか一つの作品を作り上げたという感じ。まぁ、全体的なテーマとか真相とかそういったものにこだわらずに、普通にホラーとして描いてしまってもよさそうな気がするが。著者としてはあくまでもホラー・ミステリというジャンルにこだわりたいと言うことなのか。
<内容>
「お籠りの家」
「予告画」
「某施設の夜警」
「よびにくるもの」
「逢魔宿り」
<感想>
三津田氏によるいつもながらの怪談譚。今回はミステリ的な趣向は、ほとんど含まれていない。
普通に考えれば単に怪談として読めるものの、三津田氏の作風を踏まえて穿った見方をすると、ミステリ的な展開にもっていくことができなかった作品集なのかなと思ってしまう。それをなんとか強引に最後の「逢魔宿り」で結び合わせるというような趣向で物語を占めている。
全体的に三津田氏の作品を読みなれた者にとっては、特に目新しいものはなかったなという感想。だいだい、どこかで似たようなものを見たような。「予告画」のネタなどは、あまり三津田氏の作品のなかでは見なかったような気がするので、このへんのネタを使って長編でも書いてもらえれば面白そうだと感じられた。
季節外れではあるが、秋の夜長にもってこいの怪談話と言うことで、こういったジャンルの本を読みたいという人にはお薦めしておきたい。
「お籠りの家」 その子供は、突然親に田舎の家に連れていかれ、その敷地内から出るなと言われ・・・・・・
「予告画」 小学生教師が担任を務めるクラスの子のなかに、妙な絵を描く子がいた。しかも、そこに描かれた絵が予言のように現実となり・・・・・・
「某施設の夜警」 条件のいい夜警の仕事。その建物のなかで決められた時間に巡回すると、やがて何かが・・・・・・
「よびにくるもの」 何かが訪ねてくる家の話と、頼まれてとある家に香典を持っていく話。
「逢魔宿り」 仕事の一部を散歩途中のあずまやでしていた男は、そこで奇妙な話をする人たちと連続して出会うこととなり・・・・・・
<内容>
黒術師の居所を突き止めようとしていた死相学探偵・弦矢俊一郎と黒捜課のメンバー。そうしたとき、黒術師から招待状が届く。それは俊一郎と拝みやの祖母と作家の祖父、黒捜課の4名の計7名への離れ小島への招待状であった。彼らを待ち受けていたのは、島に建つ屋敷とそこで彼らをもてなすために雇われた人々のみであり・・・・・・
<感想>
死相学探偵シリーズもこの8作目にして完結となった。最後はミステリというよりは、シリーズキャラクタ総動員の伝奇小説というような内容。特に作品後半ではノン・ストップ・サスペンスのような感覚で作品に引き込まれること間違いなし。
シリーズの敵役として名前だけが出続けていた“黒術師”の正体が明らかになるというのも最終作ならではのポイント。ただ、“意外な正体”と銘打つと、シリーズ上どうしてもこのような結末にならざるを得ないだろうなといったところは致し方ないのかもしれない。
まぁ、そうは言ったものの、もはや内容云々関係なく、よくぞここまでシリーズ作品を書き切ってくれたなと感嘆するより他はない。エンディングも特に後を引くようなものではないところは潔いといえよう。
<内容>
虫くびり村の尼耳家にて行われる忌名の儀式。その儀式を7歳と14歳のときに行ったという尼耳李千子から不思議な体験を聞かされる刀城言耶。その李千子は、刀城言耶の先輩である発条福太と結婚するのだという。李千子は儀式をしたものの、家を継ぐことなく、その後家に来た親戚の双子の子(市糸郎、井津子)の男の方が継ぐこととなったという。そんな話をしている折り、当の市糸郎が忌名の儀式を行っている最中、謎の死を遂げたという知らせが! 刀城言耶は、福太と李千子らと共に、尼耳家へと向かうこととなり・・・・・・
<感想>
講談社版の刀城言耶シリーズ。今回はとある家で行われる奇妙な儀式の最中に起きた殺人事件を描いている。
一応不可能殺人というようなジャンルであろうか。誰がどのようにして殺人を行ったのか、それについて刀城言耶がそれぞれのアリバイを確認し、そして動機を調べ、そこから犯人を導き出そうとする。この儀式を行う家が、どのようなルーツをたどってきたのかというところもポイントとなる。
本書について、一番驚くべきところは動機にあるといってよいであろう。殺人方法も意外であるのだが、それよりも圧倒的な類を見ない動機になんとも言えないものを感じてしまう。さらに言えば、しっかりと伏線を張り巡らせたなかでの結論になっているというところもその動機の印象を裏付けている。とにかくうまく仕立て上げたなと感嘆してしまう作品。最後になんともいえない恐怖と後味の悪さが残るところもホラー系ミステリとして良い味を出している。
<内容>
戦後、東京に戻ってきた物理波矢多が目にしたのは、駅前に広がる闇市であった。旧友と再会した物理は、北九州の炭鉱で奇怪な密室殺人事件に遭遇したことを話すと、その経験を見込んで、事件の調査を依頼されることになる。なんでも、武蔵野の法生寺近辺の闇市跡が迷路のようになっていて、そこに“赫衣”と呼ばれる奇怪な人物が現れると噂になっているというのである。その都市伝説のような噂の正体を確かめることになった物理は、さっそく友人と共に現地へと向かうのであるが、そこで遭遇することとなるのは、密室で起きた惨殺事件であった!!
<感想>
戦後の日本の闇にスポットを当て、それをミステリとして描く物理波矢多(もとろい はやた)シリーズ第3弾。本書の内容は時系列的には、1作目の「黒面の狐」と2作目「白魔の塔」の間に起きた出来事となっている。ただ、本書はシリーズといっても、それぞれの作品の内容を知っておく必要はないので、バラバラに読んでも問題ない。ゆえに、本書から読み始めて、他の未読作品を読むという順番でも大丈夫。
ミステリとしての内容よりも、戦後の日本の裏の部分を描き出すという部分において非常に貴重な作品だと感じられた。本書では、戦後に広がった闇市について描いているのだが、それに関しても私自身が知らないことだらけであり、戦後の混乱期にどのような事が起き、人々がどのように生活していたのかがまざまざと描かれている。特にここで書かれている内容は、テレビドラマなどでは表せないものだと思えるので、本書でしか体現できない内容であろう。普通にわかりやすい近代歴史書として価値がありそうな作品だと感じてしまった。
ミステリとしての内容は普通といったところか。ほぼ密室に近いような形での殺人事件と、路地から消失する“赫衣”と呼ばれる怪人の謎について描いている。ただ、終わってみれば密室とか赫衣とかにスポットを当てた作品というよりは、動機についてスポットを当てたミステリというところに収まっていった感じであった。と、そんな風であったので、読んでいる最中の期待感が、解決では薄れてしまい、そこは残念であった。
<内容>
“作家”の元に編集者の三間坂秋蔵から、とあるノートが送られてきた。それは三間坂の祖父が怪異を書き留めたものであるという。ただ、それを読むことによって、日常の生活に差しさわりが出かねないというのであったが・・・・・・。“作家”は、当然のことながらその怪異が書かれたノートを読み始め・・・・・・
<感想>
三津田氏お馴染みの怪談シリーズ、といっても色々とシリーズがありすぎて、もはやどれがどれなのかという判別もつかなくなっているのだが。
今作に関しては、怪談としては面白く読むことができると思われる。ただ、全体的な構成としては、いまいちであったかなと。三津田氏の作品でこういった怪談モノは、ただ単に怪談のみとして終わらずに、全体的な解釈を付けたりして、一味付ける工夫がなされているものが多い。それが本書については不発に終わっているなという感じであった。幕間や終章においても、さほどこれといった効果が見られなかったような。
ただ、怪談そのものに関してはなかなかのものなので、普通にホラー作品として堪能できると思われる。物語のなかで、登場人物がさらに物語を語りという場面が続いて行く入れ子構造のような話が続く中で、まるで合わせ鏡の奥の方まで引き込まれ、物語の中から出られなくなるような感覚を抱くこととなる。
<内容>
「歩く亡者」
「近寄る首無女」
「腹を裂く狐鬼と縮む蟇家」
「目貼りされる座敷婆」
「佇む口食女」
<感想>
本書は刀城言耶の助手である天弓馬人(てんきゅう うまひと)と、彼に話を持ち掛ける女子大生の瞳星愛(とうしょう あい)の二人が中心となって語られる作品集となっている。シリーズ探偵である刀城言耶は名前のみの登場。
三津田氏の作品と言うと、ホラーよりか、ミステリよりかが気になるところであるが、本書はかなりミステリよりの作品となっている。語られる内容はホラーめいなものばかりであるが、それを人為的なものと解釈し、不思議な事件の謎を解き明かしてゆくものとなっている。
本書のなかで一番面白かったのは、「腹を裂く狐鬼と縮む蟇家」。これは、こどもが檻のなかで腹を裂かれて殺害される事件が立て続けに起こるという事件を描いたもの。さらには、場面が変わって、山の中で普通の家と比べると、やや小さめに作られた不気味な家に遭遇するという不思議な体験が描かれている。その関係なさそうな二つの事象を合わせて、ひとつの事件としてとらえて解決していく様子が非常に興味深かった。
その他の作品もそれぞれ見所のあるミステリ作品となっており、どれも楽しく(恐ろしく)読むことができた。さらにひとつ付け加えれば、三津田氏の作品を読み続けてきたものにとっては、最後の最後でちょっとしたサプライズが待ち受けていることになっている。
「歩く亡者」 亡者道で見かけた人とは思えないものと、あいびきの果ての自殺事件との関連は!?
「近寄る首無女」 相続で揉める家に現れる首無女の怪。
「腹を裂く狐鬼と縮む蟇家」 子供が次々と檻の中で腹を裂かれて殺される事件と、山の中の小さな家の謎。
「目貼りされる座敷婆」 大学の妖怪研究会の面々が妖怪が出るという宿の部屋で一夜を過ごしたところ・・・・・・
「佇む口食女」 山の中で跡を付けてくる口食女と、村で行われる葬儀の秘密とは1?
<内容>
ホラー作家の背教聖衣子は、自分が小学生のころに体験したネタを元に作品を書こうと考えていた。それは、彼女ら6人組の少女たちが笛吹き公園と呼ばれる遊び場で、笛吹き鬼という遊びを行っていた時の事。その場から一人の少女が突如消えてしまったのだ。そして、その後さらにもう一人・・・・・・。元々曰くありげな“笛吹き公園”、その謎を調べようと背教聖衣子は、当時の事を色々な人に聞いて回ってゆくのであったが・・・・・・
<感想>
謎の失踪事件と、さらにその前に起きた不思議な事件も合わせてのホラー・ミステリ作品。ホラーテイストであるが、しっかりとした本格ミステリとなっている。
昔に起きた謎の失踪事件をホラー作家が当時の事件関係者たち(本人も当事者であるが)に話を聞き、真相を見出していくというもの。その事件検証の途上で、現代においてもさらなる事件が起きるという展開。
かなり面白かったのだが、結末が淡泊すぎたなと。事件の導入としては凄く面白かった。過去に起きた事件を掘り起こし、検証し、真相へと導いていくという構成は良かったと思われる。ただ、それにしても結末の付け方があっさりとし過ぎていた。最後になって、探偵役のものと話をし、会話のみで真相が明らかになるというのは、それまでの流れに対してどうかと思えた。そこまでの流れであった、ホラーテイストなところからは、かなり外れた幕引きとなってしまったところがもったいない。