<内容>
「不具戴天」 (*不具戴天の具の字は、正確には人へんに具)
「伏竜鳳雛」
「優勝劣敗」
「奸佞邪智」
「自業自得」
<感想>
中山氏の作品は今は文庫化してから読んでいるのだが、この作品は単行本で購入。「作家刑事毒島」や「中山七転八倒」を読んだら毒島作品が気になってしまい買わずにはいられなくなってしまった。ちなみにタイトルの“最後の事件”であるが、これはシリーズの終わりを告げるものではなく、毒島が作家刑事となる前の普通の刑事時代の出来事を描いた作品ということによる。
前作と違って、出版界のみをテーマにしたものではないので、その分視点の幅が広がり過ぎてしまって、やや微妙。これでは社会風刺ミステリという感じに捉えられてしまうような。さらには、実際に起きた事件をモチーフにしたようなものもあり、ますます社会派ミステリという様相が色濃くなっている。
ミステリ作品としては最初の「不具戴天」が良かった。犯人をスピード逮捕できた理由が面白い。読み始めたときは、普通の倒叙小説っぽかったので、普通に終わるのかと思っていたのだが、一波乱巻き起こしてくれるところはさすがと言えよう。ただ、他の作品は普通に始まり、普通に終わったという感じ。今作は短編というより、連作短編集のような感じで謎の犯罪者“教授”の正体に迫る内容となっているものであった。
「不具戴天」 オフィス街のサラリーマンを狙う、連続銃殺事件。
「伏竜鳳雛」 出版社を狙う、連続爆破事件。
「優勝劣敗」 婚活OLを狙う、連続塩酸ぶっ掛け事件。
「奸佞邪智」 過去の犯罪者を狙う、とある復讐劇。
「自業自得」 そしてついに“教授”の正体が・・・・・・
<内容>
幣原勇一郎は警察勤務であるが、家族には公安に所属していることは隠していた。勤務が忙しく、家族とコミュニケーションをとれないでいるものの、息子は大学院に行き、娘は高校生と親子4人で警察の高級官舎に住むという恵まれた暮らしをしていた。中東ではイスラム国が台頭しており、日本でもイスラム国の戦闘員を募集する案内が見つかるという事件が起きる。そんなある日、幣原は突如内勤を命じられ、捜査から外される。何が起きたのかわからないまま日々が経過していく中、幣原の息子がテロリストに応募したことにより、逮捕されたとの報を聞くこととなり・・・・・・
<感想>
背景としてテロリストという言葉があるものの、それに直結するような内容ではなかったな。そのテロリスト騒動によって、マスコミに蹂躙され、世間から後ろ指をさされるということは起きるものの、それはテロリストには関係なく、別の事件を起こしても似たような事態になるのであろう。実際に、中山氏の作品で、そういった騒動を描いた作品はいくつか見ることができる。ゆえに、本書を特徴付けるものとして“テロリスト”の思想とか、そういったところにもっとスポットを当ててもらいたかったところ。結局、題材がちょっと変わっただけで、他の中山氏の作品とほぼ変わり映えのしない内容であった。社会風刺的な時代を反映した作品としては読み取れるものの、それ以外は読みどころがなかったような。
<内容>
メッキ加工会社で働く神足友哉は夜中、隣室のシャワーの音で目覚めた。その後もたびたび深夜、隣室の不気味な音で目を覚ますことになり、神足は寝不足となる。隣に住むのは同じ会社に勤める外国人の徐浩然。彼は夜な夜な何をやっているのか? そうしたなか、近所で女性を狙う連続殺人事件が起きる。犯人は被害者の女性の体の一部をところどころにばらまいているのだった。神足は隣に住む徐が殺人犯ではないかと疑い始める。しかし、神足は、事件について警察に知らせることができない理由があり・・・・・・
<感想>
サスペンス小説として面白かった。中山氏の作品と言うと、社会派よりの作品が多く、なんらかの背景をもとにミステリを展開させるというのが基本という気がする。作品によって、ミステリ部分が多かったり、少なかったりと色々なのだが、今作はかなりサスペンス・ミステリよりの作品になっている。
一応、海外企業実習生などといった内容も含まれているものの、そういった社会派面の描写は今回少なかったように思われた。内容は主に、主人公の心情的な不安を表したものとなっている。また、主人公の過去の秘密も触れたりと、不安と恐怖を煽るような内容の作品であった。
というわけで、サスペンスよりの作品となっているので、非常にスピィーディーな感覚で読める小説。元々、中山氏の作品は読みやすいのだが、今作はさらに読みやすく、読み進めやすい作品と言う感じ。
<内容>
第一話 もの言えぬ証人
第二話 像は忘れない
第三話 鉄の柩
第四話 葬儀を終えて
第五話 復讐の女神
<感想>
元裁判官の高遠寺静と、不動産会社経営者であり商工会議所の会頭でもある香月玄太郎の老齢者コンビが活躍する第2作品。元々この二人は別々の作品で主人公として活躍していたのだが、その二人が高齢者タッグを組んで事件に挑むというシリーズ。
この二人の主人公であるが、中山七里氏の作品を読み続けている人であればわかるように、別の作品にもからみがある。その関係から、この二人が活動する時代は少し過去に遡ってという形になり、かつて実際に起きた事件を取り上げてミステリを設定しているように思える。
特に時代性を感じたのは、構造計算書偽造事件。これは、かなり有名な事件。ただ、その内容や登場人物名などは変えてはいるが、過去に起きた実際の事件をしっかりと匂わせるように描いている。この事件に関しては過去を感じられたものの、その他の事件に関しては過去なのか、現在なのか、入り乱れているような感じもする。ただ、ひょっとすると高齢者ドライバー事件などは、昔から問題になっていたものであったのかもしれない。医療ミスに関する事件も過去から現在までずっと起き続けているようにも思えるし。
そんな感じで、特に過去の事件のみを掘り起こした作品群という感じではなかったのかもしれないが、日本で起きた様々な事件を取り上げてミステリ作品を構築しているところは非常に興味深かった。人情味と現代的な視点が混じりあったような感じで、独特なテイストを感じられるような作品集・・・・・・というか、中山氏の作品はだいたいこのようなテイストに仕上げられているようにも思える。
「もの言えぬ証人」 病院で起きた医療の過失ミスによると思われる死亡事件。点滴を入れ替えたのは!?
「像は忘れない」 社会的に話題となった構造計算書偽造問題。偽造を行った建築士が死亡したのだが・・・・・・
「鉄の柩」 高齢ドライバーが起こした事故。死亡した加害者は元警察関係者であり・・・・・・
「葬儀を終えて」 元司法関係者がアパートにて孤独死していた事件。痴呆が進んでいたとのことであったが・・・・・・
「復讐の女神」 司法関係者を執拗に付け狙う何者かが、今度は高遠寺静を狙い始め・・・・・・
<内容>
弁護士・御子柴礼司の事務所に、御子柴に対して懲戒を望む請求書の山が届き始める。どうやらネットで“この国のジャスティス”と名乗るものが先導しているらしい。事務員の日下部洋子と共に事務処理に追われる日々が続く中、その日下部洋子が殺人事件の容疑者として起訴されることとなる。洋子の弁護をすることとなった御子柴であったが、よくよく考えると、当の日下部洋子のことを全くと言っていいほど知っておらず・・・・・・
<感想>
悪徳弁護士・御子柴シリーズ、第5弾。今作では、御子柴の弁護士事務所で何故か淡々と働き続ける事務員・日下部洋子にスポットがあてられた内容となっている。というか、その洋子が殺人事件の容疑者となり、御子柴が弁護に臨むこととなる。
今作に関しては、あくまでもシリーズとしての作品という感じがした。御子柴が過去に行った犯罪に対して、それに対する周辺の様々な動きを追っていくという内容。一応、殺人事件が起きて、そちらがメインのような感じもするのだが、それに関してはほぼ結末が見えるものとなっていて(シリーズというか中山作品を読み続けていれば、こういう展開もなれっこという感じ)、あまり興味を引くものではない。この殺人事件に関してだが、あまりにも警察や検察側の捜査がザル過ぎていて、もう少しどうにかならないものかと思わずにはいられない。
そんなわけで、メインの事件よりも、御子柴の行動や言動を追っていき、うっすらながらも彼が感情を示す部分を注目していくべき作品。なんだかんだ言っても、作品としてしっかりと見るべきところはあるので、当然のようにこれからも追い続けていくシリーズであることは間違いない。
<内容>
宮城県捜査一課警部・笘篠誠一は、七年前の東日本大震災により、妻が行方不明となっていた。そんな彼の元に、その行方不明になっていた妻が死体となって発見されたとの報がもたらされる。現場に行って確認した笘篠であったが、死体は全くの別人であった。何者かが、彼の妻の名を騙り免許証を作っていたのだ。その後、似たような事件が起きたことにより、震災による行方不明者の名前を利用した詐欺行為が行われていることが明らかとなり・・・・・・
<感想>
ノン・シリーズ作品かと思っていたら、かつて出版されていた「護られなかった者たちへ」に続く、宮城県警シリーズとなっているようだ。ちなみに3作品目も今年(2024年)に刊行されるよう。
本書はシリーズ云々というよりも、どうしても震災関連小説としての印象が強いと感じられた。震災からもう10年以上経つものの、未だ行方不明者は存在しており、安否が確認されていない人たちがいる。この作品ではそうした行方不明者を利用して、名義が密かに売買されているのでは、という問題を提起するものとなっている。
全体的には震災によって、生き方を変えざるを得なかったものたちの悲哀を描いている。また、それだけでなく、その他の事象により、身元を変えることを熱望する者たちの苦難も描かれている。そうした思いから導き出された犯罪模様が描かれた作品と言えよう。ただ、今作での犯人となるものの人生については、あまり同情の余地はなく、もう少し普通の生活を送ることができたのではないかと思わずにはいられなかった。
震災が起きてから、10数年が経ち、当事者以外は記憶が風化しがちなことがありつつも、こうして震災後の事象を描いてくれる作品というのは、なかなか貴重なのではないかと感じられた。
<内容>
警視庁捜査一課の犬養隼人の娘が入院している病院に、腎臓の難病で入院している同学年の少年。その少年が退院することとなったのだが、どうやら高額の医療費を払いきれなくなってのよう。そしてその後、退院した少年が亡くなるという報がもたらされる。その死には不審なものがあり、何故か彼の全身があざだらけであったことを犬養は知る。事態を調べていくと、“ナチュラリー”という自然治癒をうたっている団体の存在が浮かび上がり・・・・・・
<感想>
シリーズ6作目となる本書。今回は警察が介入する事件という感じではなく、規模が大きなものへと発展していっている。読んでいるときは、1年前から続く宗教がらみの事件を意識して書かれた作品かと思ったのだが、よくよく考えてみれば単行本はその事件が起きる前に書かれている。予期せずにタイムリーな話題となった感のあるような内容。
難病や貧困を背景とした作品かと思いきや、途中からは自然治癒をうたった組織の存在が明るみに出て、どこからしらカルト教団を扱ったような内容へと変貌していく。途中感じたのは、その組織を後押しするかのような発言を有名アイドルや国会議員がすることとなるのだが、これはちょっと考えられないかなと。何気に日本国民は、特に新興宗教というものに対する忌避感みないなものが強い傾向にあると思われるからだ。とはいえ、過去を紐解けば有名人が宗教加入したり、カミングアウトしたりということがあったのも事実なので、全くないとは言えないのかもしれないが。
全体的に興味深い内容でありつつも、一介の刑事が扱うような事件ではないという気がしたので、微妙に思えるところも多々。それでも、その一介の刑事レベルに落とし込むことによって、わかりやすい内容になっているところはさすがだと思えたが。
<内容>
テレビ出演した際の浦和医大法医学教室の光崎教授の発言が気に障ったのか、テレビ局のホームページに妙な書き込みがなされた。絶対に自然死にしか見えない形で人を殺すと。それはまるで光崎に対する挑戦のようであった。医大助教の栂野と捜査一課の刑事・古手川の二人は不審死事件が起きるたびに現場へとおもむき、被害者の家族に解剖を行うむねを説明しなければならなくなり・・・・・・
<感想>
解剖医・光崎藤次郎が活躍するシリーズの4冊目。今作は連作短編形式に、次々と起こる不審死を捜査・解剖しながら真相を明らかにしていくという構成で描かれている。
一応、光崎藤次郎シリーズということになっているのだが、なんかどう考えても栂野・古手川コンビシリーズという風にしか捉えられない。悪く言えば、光崎が世間全体を騒がせて、あとはほったらかしで解剖だけをしているという感じである。後の肝心な部分は、おまえらがやって当たり前だろと言わんばかりに栂野・古手川に丸投げしているような。さすがにそのスタンスの極端さはどうかと思ってしまうシリーズとなりつつある。
今作では5件の不審死を扱っている。一見、どれもが自然死や事故死のように見えるものであるが、よくよく捜査してみれば、別の真相が裏に隠されているというもの。こういった事例が実際にどのくらいあるのかはわからないが、現実に人が手を加えた事件が見えないところに数多く横たわっていると考えるとうすら寒く感じてしまう。しかも、現実に“解剖”というもの自体がなかなか行われないという事実を突きつけられると、こういった不審死の事例が本当にありそうで恐ろしいとしか言いようがない。まぁ、ここまで極端な殺人にまで発展する事例は現実にはないと信じたいところである。
<内容>
学校法人に対する国有地払い下げに関して近畿財務局職員の収賄疑惑が取りざたされることに。大阪地検特捜部が捜査を始めるものの、なんと担当検事による文書改ざん疑惑が浮上することに。相次ぐ不祥事により大阪地検の評判は地に落ちることとなる。大阪地検の取り調べのために、最高検から調査チームが派遣されるのだが、大阪地検内からも調査チームの一員として検事の不破俊太郎と事務官の惣領美晴が加わることとなり・・・・・・
<感想>
能面検事こと不破俊太郎が活躍するシリーズ第2弾。今回はなんと実際に世間を騒がせた“森友学園問題”をモチーフとした事件に挑むこととなる。従来の殺人などを取り扱うミステリとは、また違った趣があって面白い。収賄事件と大阪地検特捜部内で起きる騒動を描いた作品となっている。
一風変わったミステリとして面白かった。ただ、最終的な落としどころとしては、小説としては致し方ないものの、無理くり物語的なものを当てはめたという感があり、そこはやや残念であったような。最後には人情物語的になってしまうのかと。とはいえ、その物語としても、それなりに堪能できたので楽しんで読むことができた。
<内容>
高級ホテルの宴会場で行われた同窓会。出席者の一人に国会議員がいて、注目を浴びる中、乾杯が行われた矢先、毒物により参加者のほとんどが死亡してしまうという大惨事が起きてしまう。その国会議員の手には<1>と書かれた紙片が握られていた。警察が捜査を行うも、犯人も動機も検討が付かない中、今度は観光バスの爆破事件が起こり、<2>と書かれたプレートが発見されることに。世間を驚かせる大型犯罪がその後も続くこととなり・・・・・・
<感想>
「嗤う淑女」シリーズの第三弾となる本書。今までシリーズを通して出てきた蒲生美智留と、指名手配中の脱走犯の有働さゆりとが手を組み、数々の大事件を起こしてゆく。この有働さゆりという人物であるが、ひょっとしたら他の中山氏の作品に出ていたキャラクターなのであろうか。さすがに、著書の数が多すぎて、あまりよく覚えていない。
今作は、のっけから大量毒殺事件が起き、とにかくショッキングな内容で展開される作品となっている。その他も数々の大量殺害事件が起きている。ただ、そういった事件が起きるものの、その裏に隠されている真相は、警察からしてみれば五里霧中ともいえるもので、簡単に明かすことができるようなものではない。さらに言えば、その事件の真相が、本書のみというよりは、今後に続くシリーズとして意味合いがあるような感じであったので、この作品のみという点では未消化気味であった。本書のみで見ると、かき回すだけ、かき回して、お終いというような感じである。
作品の途中は警察小説として展開されてゆくものの、結局最終的には警察はなすすべもなく、事件から手が離れるような感じとなってしまっている。最後の最後で、警察機構の意味合いが全く希薄になってしまい、大量殺人事件の結果だけが残ってしまうというのも、どうなのかと感じてしまった。
<内容>
盲目でありながらショパン・コンクールで入賞し、人気を博し始めていたピアニスト、榊場隆平。彼がコンサートを行おうとした際に、フリーライターの寺下がインタビューにやってくる。寺下は榊場が盲目であるのは嘘だという記事を広めようと考えていて、榊場を貶めるようなインタビューを行い始めた。インタビューは切り上げたものの、その後コンサートの最中にまで寺下によるいやがらせが続き、榊場は精神的に追い込まれてゆく。そうしたとき、榊場の家の離れの練習部屋で寺下が銃殺死体となって発見されることとなる。警察は容疑者として榊場をマークしはじめ、さらに精神的に追い詰められてゆく榊場であったが、そんな彼を助けるために彼の前に同じくピアニストである岬洋介が現れ・・・・・・
<感想>
岬洋介が活躍するシリーズ作品。今作では盲目のピアニストが登場し、モデルはあの人だなと予想させるようなものとなっている。そんな盲目のピアニストが主人公と言ってもよさそうな作品なのだが、なんと彼のことを“盲目なのは嘘ではないか”と難癖をつけてくるフリーライターが現れることとなる。盲目を疑うというのは、以前に耳が聞こえないというピアニストがゴーストライターから告発された事件が実際にあり、それに追従するような形での記事として世に出そうとするのである。そして、そのフリーライターが、当のピアニストの練習場で死体となって発見されるという事件が起きてしまうのである。
今作については、色々な点で極端だなと感じてしまった。というのは、フリーライターの強引な手際については、あまりにもやりすぎという感じであった。さらには、警察が状況証拠からとはいえ、盲目のピアニストを疑うというのもどうなのかと思ってしまう。しかも、銃による殺害という事件であるのに、ピアニストとはいえ、ある種の一般人をそんなに簡単に容疑者扱いするものなのかと疑問を抱いてしまう。これが間違いであれば、警察がどれだけ大きなダメージを食らうかと言うことを考えると、そうそう簡単に容疑者扱いできるような事柄ではないだろうと思わずにはいられなかった。
最終的には、シリーズ探偵といってもよいピアニストの岬洋介が登場し、事件をあっさりと解決してしまう。その真相については、ある程度中山氏の作品を読んでいる人にとっては予想通りの着地点であったかなと。特に解決に関しては問題はないものの、やはり事件の発端からその途上までは前述したように色々と感じることがあり、なんかモヤモヤしたものが残る作品であった。
<内容>
相続鑑定士の三津木六兵は長崎にある島、仁銘島へと向かっていた。その島の形は人の顔のように見えることから通称“人面島”と呼ばれていた。その島の村長・鴇川行平が死亡したため、財産の鑑定を行うこととなったのだ。その村長には、先妻の息子と現在の妻の息子が残され、二人は互いにいがみ合う仲。そんな状況で、財産の鑑定を行うこととなった三津木であったが、島で殺人事件が起きることに。果たして、動機は相続を巡ってのものなのか!? 三津木は、自分の肩についている人面瘡の“ジンさん”と相談しながら事態の解決を図ろうとするのであったが・・・・・・
<感想>
自分の肩にある人面瘡と会話しながら探偵活動を繰り広げる人面瘡探偵シリーズの2作目。といいつつも、本業は相続鑑定士であり、ゆく先々で事件に巻き込まれる主人公の様相を描いている。
これは全作でも感じたことなのだが、事件の解決にもう少し相続鑑定士という設定を生かしてもらいたいところ。それがうまく生かされなければ、普通のミステリとあまり変わりない。そして今作も、小さな島に住む一族の相続争いの様子を描いた、ありがちな設定のミステリといったところから突き抜けることはなかった。
中山氏の作品ゆえに、安心して読むことのできるミスりに仕立て上げられているのは間違いのないところ。とはいえ、もう一工夫くらい欲しかったなと感じてしまうことも確か。前作と同様に、最後にちょっと異常性のある終わり方をしておしまいという感じでは、主人公自身が浮かばれまいと。
<内容>
右翼系雑誌を扱う出版社が放火された。思想犯によるものと考えられ、公安刑事の淡海(あわみ)は現地で捜査を行う。そんなときに出会ったのが、作家兼業刑事の毒島であった。いつのまにか、淡海は毒島とコンビを組むような形で事件捜査に乗り出すことに。各種思想事件とみられる事件の裏に隠れているものの存在を暴き出そうと・・・・・・
<感想>
作家刑事・毒島が公安刑事と組んで、思想犯と対決するという作品。一応、各章で区切りとなっているので、短編集ような体裁ではあるものの、時系列と内容が連続的に流れていくので、連作短編集という感じ、もしくはひとつの長編と捉えてもいいかもしれない。
今回は思想犯との対決ということであるが、毒舌で有名な毒島が登場するシリーズゆえに、思想そのものというよりは、思想を語る者に対しての薄っぺらさをあげつらうような感じで描かれている。この作品を読みながら考えてみると、確かに巷には薄っぺらい思想的なもので溢れかえっているがゆえに、なるほどと納得させられてしまう。ただ、それらの思想が例え薄っぺらいものであっても、一定の危険性を持ち合わせていると言うことも、確認させられる内容である。
まぁ、普通に刑事毒島らしいシリーズとして楽しんで読むことができた。今回は、軽い感じでお終いなのかと思いきや、最後に思いもかけぬ一波乱が用意され、驚かされてしまうことに。本当に色々な意味で一筋縄ではいかない作品である。