大島清昭  作品別 内容・感想

影踏亭の怪談   7点

2021年08月 東京創元社 単行本

<内容>
 「影踏亭の怪談」
 「朧トンネルの怪談」
 「ドロドロ坂の怪談」
 「冷凍メロンの怪談」

<感想>
 今年、鮎川哲也賞受賞作が“なし”となったため、物足りなく感じている人がいるのではと思われるが、そんな人は是非ともこの作品集を読んでもらいたい。心の隙間を埋められること間違いなしであろう。ちなみに、ここに掲載されている短編「影踏亭の怪談」は、第17回ミステリーズ!新人賞を受賞している(その他の作品は全て書下ろし)。

 本書は現実に起きた事件と、怪談作家・呻木叫子が調査した怪談に関するまとめとが、交互に展開される流れとなっている。それぞれの短編で扱われる怪談スポットにて、どのような怪談が語られているのか。そして、現実に起きた事件と怪談がどのような関係性を持つかを考えるような構成となっている。そうしているうちに、実は超自然的な現象と思われたものが、人為的に行われたものではないかと、紐解かれてゆくこととなるのである。

 そんなわけで、本書はホラー・ミステリ作品として堪能できる内容となっている。超自然的な部分もあるのだが、そこにカモフラージュするかの如く人為的に行われているものが隠されているのである。ゆえに、結構ガチガチの本格ミステリ的な小説としても読むことができるものとなっている。

 ひとつひとつの短編としても、なかなかよくできていると思われつつ、最後の「冷凍メロンの怪談」により、作品集全体で明らかになる全体的な構図も語られることとなり、それもまたよくできていると感心させられた。そんなわけで、最初から最後まで堪能させられたホラー・ミステリ作品集であった。地味に本屋に並べられているゆえに、気づかずに見過ごす人もいると思われるので、是非とも探し出して読んでもらいたい作品である。今年一番の隠し玉と言えるかもしれない。


「影踏亭の怪談」
 姉である怪談作家が家で両瞼を自分の髪の毛で縫い合わされ、昏倒していた事件。姉は直前まで影踏亭の怪談について調べていたらしい。そこには謎めいた客室があり、深夜の決まった時間に携帯に着信が届くのだという・・・・・・
「朧トンネルの怪談」
 4人の大学生が心霊スポットであるトンネルへと肝試しに行くことに。そこで気分が悪くなった女学生を車に残し、3人はトンネルの中を調べていく。すると、車に残っていたはずの女学生が行方不明となり・・・・・・
「ドロドロ坂の怪談」
 怪談作家の呻木叫子は、学生時代の友人から助けを求められる。彼女の息子が行方不明になったと。彼女が住んでいた場所は、ドロドロ坂と呼ばれ、お化けが出ると噂される場所であった。久々に呻木はその場所に立ち、事件を探ることに。すると、殺人事件に遭遇することとなり・・・・・・
「冷凍メロンの怪談」
 呻木叫子の頭に冷凍メロンがぶつかり、重傷を負う。当時、呻木が調べていた怪談は、その冷凍メロンが降ってきて、不特定多数の人間が死に至らしめられているというものであり・・・・・・


赤虫村の怪談   6.5点

2022年08月 東京創元社 単行本

<内容>
 怪談作家・呻木叫子は、とある書簡をきっかけに愛媛県にある赤虫村を調べることに。そこには、他では聞かないような“位高坊主”、“九頭火”、“蓮太”、“無有”といった怪談話を昔から現代にいたるまで聞くことができたのだ。そんな村で、村の名家である中須磨家を襲う怪事件が起きる。しかもそれらは、村に伝わる妖怪たちが引き起こしたような事件の状況となっており・・・・・・

<感想>
「影踏亭の怪談」に続く、大島清昭氏の2作目の作品。思っていたよりも早く出してくれたなという感じ。今作は長編である。

 怪談と本格ミステリが交わる作風は相変わらず。今作もやや怪談よりの雰囲気のミステリを展開させてくれている。一見、怪談話のみで終わりそうな作品であるが、ちゃんと現実的な事象として納められる部分も残している。

 本書において、意識してやっているのだろうと思いつつも、違和感を感じ取れたのは、“苦取”とか“印増”とかの名称。あからさまにクトゥルフ神話から取った名称。何故、このような名称にしたのかと思いきや、それらが本作全体にまつわる怪談の根底にかかわる出来事として書き表されている。最後まで読んでみればなるほどと。

 今作に関しては、前作ほどの驚きはなかったかなという感じ。怪談に関する部分はうまく描けていると思われるが、事件については解決がやや地味であったかなと。ただ、このような作風の作品を書く人は少ないので、是非とも今後とも書き続けてもらいたいものである。近年における注目作家のひとり。


地羊鬼の孤独   6点

2022年11月 光文社 単行本

<内容>
 栃木県警椰子尾警察署に所属する八木沢刑事は、小学校に置かれた棺の中に損壊した遺体が詰められていたという事件の捜査員の一員となる。棺に“地羊鬼”と書かれていたことから、オカルト関連の事件に詳しいとされる本部の林原警部補と組むことに。林原は日ごろ、オカルトについて詳しい船井仲丸から助言を受け、捜査の役に立てているという。そんな彼らと組むこととなった八木沢は、次々と見つかる棺、そしてそれら被害者に関わる密室事件、さらには過去に起きた連続児童誘拐殺害事件について紐解いてゆくこととなり・・・・・・

<感想>
 大島氏の3作品目。今までは東京創元社から出ていたが、今作は光文社から。今作も前2作と同様のホラー系ミステリとなっているが、今回はどちらかといえば、警察小説よりになっているという感じ。

 内容は結構豪華な感じになっている。というのは、連続死体損壊殺人事件の行方を追うのみならず、別の3つの密室殺人事件を追い、それらを解決しつつ、過去に起きた連続児童誘拐殺害事件にまで言及するというものになっている。それぞれの密室殺人事件を、いとも簡単にさらりと解き明かしているところなど、ミステリ小説としてはかなり大胆な感じと思われる。

 全体的によい作品と思えたのだが、後味の悪さが非常に気になった。ホラー系ミステリゆえに、こういった作風というのはありだと思えるものの、それでもやたらと後味が悪い。それゆえに、なんとなく心情的に受け入れられない部分があったかなと。


最恐の幽霊屋敷   

2023年07月 角川書店 単行本

<内容>
 度々の不審死を繰り返す賃貸物件。その不審さを売りに出して、賃貸契約が続けられているのだが、借り手はあとをたたないという状況。そして、不審死はさらに続いてゆく。探偵の獏田は、その賃貸物件に隠された秘密を調べてもらいたいと依頼されるのであったが・・・・・・

<感想>
 大島氏によるホラーとミステリが融合した作品・・・・・・と言いたいところだが、今作はかなりホラーよりであると思われる。というか、ホラーとして語られるべき作品であって、ミステリ要素は蛇足のようにも思われた。

 この作中でも言及されているのであるが、ホラー的な内容をそのまま語っても、どこかで聞いたことのある話くらいに留まってしまうようである。ゆえに、ホラー小説というもの自体も語り口、そして切り口を色々と変えていかなければならないということなのであろう。この作品を通して、なんとなくではあるが、そういったホラー作品の書き手の悩ましいところが透けて見えたような気がする。

 確かにこの作品のなかでも、数々のホラーエピソードが語られているものの、普通に語ってしまえば、よくある話とか、どこかで聞いた話という形に収まってしまいそう。ゆえに、この作品のように少し切り口を変えて語ってゆかなければならないということなのであろう。ただ、それでも本書に関しては、ホラー的な要素が強すぎて、最後にミステリ的な要素を持ってきても、そのホラー的な部分を覆すことができず、融合した作品という感じには思えなかった。ホラーとミステリのバランスの塩梅を考えて作品を作るというのも難しそうな話である。


バラバラ屋敷の怪談   6.5点

2024年07月 東京創元社 単行本

<内容>
 「バラバラ屋敷の怪談」
 「青いワンピースの怪談」
 「片野塚古墳の怪談」
 「にしうり駅の怪談」

<感想>
 東京創元社から出版されている怪談作家・呻木叫子シリーズ、第3弾。前作は長編であったが、今作は第1作のような感じで短編集に戻っている。このシリーズの相性としては、短編作品の方がしっくりいくと思われる。ただし、今作は短編作品といいつつも、それぞれの作品が結び合わされるところもあり、一冊の長編として捉えることもできるような作品集ともなっている。

 うまい具合にホラーとミステリが融合された作品と感じられた。ホラー的な背景をきっちりと描きつつ、部分部分をミステリとして解決してゆくという手法は今作においてうまくいっていると思われる。動機の部分にホラー的な要素を乗せるというところは悪くないと思われる。

 それぞれの作品がいい味を出している。また、力業という感じではあるが、全体をひとつのベースに収めて、ひとつの流れの物語とするところもよいと思われた。それぞれの作品に見所を置き、そしてひとつにまとめという形で、うまく大掛かりな怪奇ミステリを描き出していると感じられた。


「バラバラ屋敷の怪談」 50年前に起きた8人が殺害された大事件。その15年後に未解決のバラバラ死体事件が起き、その真相が今になり・・・・・・
「青いワンピースの怪談」 青いワンピースを着た少女の幽霊が現れる理由とは・・・・・・
「片野塚古墳の怪談」 古墳近辺で頻繁に起きる怪事件。そして、その資料館で起きた密室殺人事件。被害者のとった謎の行動は・・・・・・
「にしうり駅の怪談」 都市伝説とも言える存在しない駅に消えていった者達の末路は・・・・・・


一目五先生の孤島   6.5点

2024年11月 光文社 単行本

<内容>
 探偵に憧れて調査会社に入った倭文文(しとり あや)は、彼女自身の霊を呼び寄せるという体質から変調課という超常現象を調査するための課に配属されることに。今回、変調課が依頼を受けることとなったのは、リゾート会社が五福島に建物を建設しようとした際に、作業員の不審死が続いたので、調査してもらいたいというもの。その島では30年前に、島に滞在していた5人の人物が全て死亡するという事件が起きていた。しかも、そのうちの一人がミステリ作家であり、死の直前までの手記が残されていて、当時話題となっていたのだ。変調課のメンバーは過去の事件を調べつつ、島を調査していたのだが、その調査の最中、殺人事件に遭遇することとなり・・・・・・

<感想>
 大島氏によるホラー・ミステリ。今作も超常現象が存在するというホラーテイストな部分はしっかりと描かれているが、それ以上にミステリしていたという感覚の作品であった。また、超常現象を捜査する変調課というチームを組んでの探偵活動といったところも、楽しんで読めた要因となっている。

 変調課たちの面々が、過去に事件が起きたことにより、呪われた島そして呪われた建物のようになっている場所の調査を行うというもの。30年前に真相が解明されていない連続殺人事件が起きており、それが今回の件に関連しているのではと言うことから、その30年前の事件にも焦点が当てられる。さらには、変調課の面々が調査している最中にも殺人事件が起きてしまい、過去と現在の両方の事件について真相を突き詰めてゆかなければならなくなるという状況。

 過去に起きた事件が密室殺人を扱ったものであり、なかなか興味深いものとなっていた。さらには、現代に起きた殺人事件も思いのほか凝った仕掛けをしたものであった。後から考えると、それぞれどこかで見たことのあるトリックとは感じたものの、しっかりとミステリ的な仕掛けを堪能できた。また、全ての謎を締めることとなる動機についてが、結構イカレタ内容になっていて、それも面白いと感じられた。これはホラー・ミステリならではの趣向であるなと感じられるようなもの。

 読み終えてみれば、全体的にしっかりとミステリしていて、読み応えのある作品であったなと。ここで登場した変調課がシリーズ化されたら面白そうではあるが、どうなることやら。




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