<内容>
天正六年、織田信長に反旗を翻し、有岡城へと立てこもった荒木村重。彼の元に調停の使者として黒田官兵衛がやってくる。しかし、村重はその提案を飲まず、黒田官兵衛を土牢へ幽閉する。その後、城に立てこもり続ける荒木村重の前に、事件・難題が次々と起こることとなる。臣下の者達の心が揺らがぬように、そういった事件を慎重に解決せねばならなくなるなか、村重は土牢の官兵衛に相談を持ち掛け・・・・・・
<感想>
今回、米澤氏は歴史ミステリに挑戦。黒田官兵衛という名前はなんとなく知っていたが、主人公である荒木村重については全然知らなかった。読み終えた後で、軽く調べてみたのだが、本書の全体的な流れは基本的に歴史に沿っているようである。ただし作中で、城のなかで起きた出来事についてはフィクションという感じであろうか。
まぁ、ミステリとして楽しめなくはないものの、あまりにも閉塞感が強すぎる設定にゆえに重々しさが強すぎるのはどうかと思われた。数々の難題に直面した城主がなんとかそれを乗り切ろうとする流れはよいと思えるのだが、一番最後の主たる解決部分については、ちょっとどうかと感じてしまった。基本的に武士道精神に重きを置いた話であったように思えたのだが、最後の最後でそこまでとは異なる精神的な在り方のようなものが突然出てきたような気がして、ちょっとあっけにとられてしまった。
また、それと同様にエピローグで残された黒田官兵衛の文言も、話の流れからすると疑問が残るもの。ただ、個人的には武士道精神を前面に押し出した作品として読んでいたのだが、実は基本的な土台は民衆が支える社会が基本としてあり、あくまでのその上に武士たちが生きているに過ぎないと言うことを表していた小説であったのかもしれない。とはいえ、ちょっとその庶民的な部分の押し出しがあまりなかったような気もするのだが。
<内容>
図書委員を務める高校2年の堀川次郎は、返却本のなかに花の栞が挟まれているのを見つける。その花が毒を持ったトリカブトであることに気づき、同じ図書委員の松倉と共に持ち主の特定を急ぐことに。そうしたなか、コンテストで入賞した写真にトリカブトが写っているのを発見したり、花の栞の持ち主だという女生徒が栞を奪取しようとしたりと、色々と事が起きるものの、本当の栞の持ち主は特定できず。すると、嫌われ者の教師のひとりが毒物で倒れるという事件が起きてしまう。堀川と松倉は事態を収拾しようと、花の栞の秘密を解き明かそうとするのだが・・・・・・
<感想>
「本と鍵の季節」に続く作品。今後さらにシリーズ化していくのかな? 前作は4年前に出たものなので、おぼろげにしか覚えていない。それでも登場人物は一部重なるものの、ここで語られる話は独立したものなので、本書のみでも十分楽しめる内容。
トリカブトので作られた花の栞を巡る学園内での事件が描かれている。誰が何のためにその栞を作ったのか? 図書委員の堀川と松倉が調査を進めていくうちに、その栞を処分しなければならない理由を抱えるひとりの女生徒と出会うことに。
と、そんな感じで学園内の騒動を追っていくという作品。学園ものでありつつも、どこか学生という身分を逸脱し、大人への世界へと片足を踏み込んでいくような形で描かれていて、そのバランス加減が絶妙と思われる。結構大きな騒動であるものを、それを学生たちが自分たちの力のみで解決しようというスタンスが良いと感じられた。
全体的に良くできていて、面白く読めた作品。ただ、最終的な結末の付け方は、ちょっと未消化気味であったような。大きな事件になりそうなものであったがゆえに、そんなに簡潔に終わらない話のように思えたのだが。とはいえ、学校で起きた事件と言うことを考えると、むしろ騒動にせずに控えめに鎮静化させてしまうほうが普通の在り方なのかもしれない。
<内容>
「崖の下」
「ねむけ」
「命の恩」
「可燃物」
「本物か」
<感想>
米澤氏による警察小説というのは珍しいというか、ひょっとしたら初かも。まぁ、米澤氏が書くのだから、面白くならないはずがない。
群馬県警察本部、刑事部捜査一課、葛(かつら)警部が難事件を解決していくという短編集。葛警部の捜査の手法というか考え方が面白く、事件全体を見たときに矛盾や違和感が生じずないような構図が描けなければ、その矛盾や違和感をとことん捜査しつくすというもの。
特に顕著にそれが現れているのが「ねむけ」。一見、目撃者の証言が一致していることにより、その証言通りの結末をつけてしまえばよいというもの。しかし、葛警部はその証言と現場の状況との細かい部分が一致しないために、執拗に状況の検討を繰り返してゆく。ここでの考え方はなかなか圧巻であり、結末もなるほどとうなずけるものとなっている。
どの作品も面白いが、全体的にやや地味目なのがもったいなかったような気がする。最後の「本物か」は、それなりに派手な事件であったので、これは印象に残りやすい。ただ、それでも葛警部の人物造形が地味すぎるのがもったいないところ。とはいえ、ちょっと見栄えのするキャラクターを付け加えてドラマ化するというのは、容易に想像ができたりする。
「崖の下」 現場から消えた凶器の正体は?
「ねむけ」 真夜中の目撃者たちの証言が一致することに対する矛盾??
「命の恩」 バラバラにされた死体の理由と、被害者に恩義のある男の思惑。
「可燃物」 可燃ゴミに火がつけられるという放火事件が連続して起こり・・・・・・
「本物か」 ファミリーレストランで起きた、人質をとっての立てこもり事件。その真相とは!?
<内容>
小鳩と小佐内が学校帰りに堤防沿いを歩いている途中、暴走する車によって、小鳩は轢き逃げに遭う。病院に搬送された小鳩はしばらくの間、入院生活を送ることとなり、大学受験には間に合わないことを知らされる。彼を轢いた犯人の行方はわからないなか、中学時代にも同じ場所で、似たような事件が起きていたことを思い出す。そのとき轢かれた人物は日坂という同級生であったが、今は何をしているのかわからず、自殺したという噂もあったが定かではない。小鳩は、中学時代に日坂を轢き逃げした犯人を捕まえようと探偵活動をしていたことを思い出し、それをノートに書き留めていき・・・・・・
<感想>
2004年に刊行された「春期限定いちごタルト事件」から、夏期、秋期、間に「巴里マカロン」を経て、ついに2024年にこの作品・冬期が出て、シリーズの区切りを迎えることに。ただ、これで終わりか、続くのかは現状ではわからないので、こうご期待。
今作は、過去と現在の轢き逃げ時間を追うという内容なのであるが・・・・・・ちょっと回りくどいというか、もったいぶっているというか、ただただ長かったなと。もう少し、見せ方を工夫してくれればいいのだが、主人公の一人視点にこだわるがゆえに、病室と過去の記憶のみで構成されているので、ものすごく地味に感じられてしまった。
また、過去の事件の振り返りに関しても、警察捜査ものかと感じてしまうぐらいに地味な捜査が行われている。これまた単調な捜査が延々続けられるという感触しか残らなかった。目次では二部構成になっていたので、後半は展開が変わるのかと思いきや、全く変わらない展開で話はそのまま進み続けてゆく。
最後の最後になって、ようやく見せ場がやって来るのだが、そこだけであったかなと。別に話自体が悪いというわけではないので、もう少し簡潔に描いてもらいたかったところ。また、最後に明らかになる犯人の心情については、あまり理解できなかったが。
まぁ、それでも面白いシリーズであったので、続きがあれば読んでみたいところ。ただ、そのまま続けてしまうと、今度は終わり時が見えなくなってしまうかもしれない。