<内容>
1971年12月の新潟県。東日新聞社新潟支局の記者・高樹治郎は、幼馴染である田岡総司と再会する。田岡の父親は政治家であり、総司は秘書として新潟県連の選挙応援に来ているという。その田岡は、自分たちの陣営の当選状況に黄色信号が出ていると感じ、資金をばらまいて票を獲得しようと画策する。一方、記者の高樹は裏で資金がばらまかれていることを知り、スクープを狙おうとするのであったが・・・・・・
<感想>
書店で見かけて、気になったので購入した作品。著者の堂場氏の作品を読むのは初めて。本書はミステリではなく、政治とマスコミに関わる作品となっているのだが、今年は兵庫県知事選など世間を騒がす事件も起きているので、こういった作品を読むのも面白そうだと思い、手に取ってみた。
読みやすく、内容も面白く、しかも興味深い。政治とマスコミの関わり等、色々と考えることができる作品となっている。特にマスコミが報じるうえで、社内の横の連携やら、警察との絡みやら、色々なしがらみにとらわれているということがわかる。スクープをものにしたとしても、それが原因で様々な記者クラブから締め出されてしまえば、情報を得ることができなくなるというジレンマを抱えているということがわかる。
といった、状況を感じつつも、最近はこういったスクープというのは、新聞社からの発信というよりは、週刊誌などからの発信となっているように思えるのは、そういったしがらみが積み重なったゆえのことなのであろうか。過去から現在へとつながる、こういった報道関係の裏側と遍歴を眺めるというのは、たとえフィクションであっても感慨深いものがある。
本書では、そうした新聞記者のしがらみだけでなく、幼馴染との人間関係も含めた葛藤が物語として描かれている。また、新聞記者の視点だけではなく、政治家側からの視点も描かれているのだが、政治家側の方には、なんの同情の念も浮かんでこなかった。読み終えてみると、資金をばらまいたことが悪手でしかなかったようにしか感じられなかった。色々と考えることが多い作品であったが、十分に楽しめる作品であることは間違いないので、残りの2冊を読むのも楽しみである。
<内容>
高樹和希は父親と同じ新聞記者という職業を選ぶことになり、東日新聞新潟支局記者で働いている。父親は現在、東日新聞本社で部長をしている。そんな和希のもとに、謎の男からのリークにより、不正選挙資金疑惑に関する情報がもたらされる。和希が調べていくと、それらは確かなものと思われ、やがては支局、そして本社をあげての取材へと発展していく。その資金疑惑の裏では、かつて和希の父親である高樹治郎に煮え湯を飲まされた、政治家の田岡総司が暗躍していた。いつか総理大臣を目指そうとしていた田岡総司は、マスコミを支配しようと、東日新聞に対して、罠を仕掛けていた。自分の息子である田岡稔を秘書にして、田岡総司は計略を巡らし・・・・・・
<感想>
新聞記者と政治家の因縁と戦いを描いた年代記とでも言えばよいのだろうか。その作品の2冊目にして、前作から25年の時を経て、次の世代に物語が受け継がれていくことにより、より年代記という重みを増すこととなっている。ただ、受け継がれつつと言いつつも、実際には第一部に登場した高樹治郎と田岡総司も、まだまだ存在感を放っているので、厳密には世代交代というまでには至っていない。
今作も面白く、分厚い作品を一気読みすることができた。ただ、前作に比べると、やや物足りないところがでてきている。それは、今回は選挙における資金疑惑に関するネタを追っていくことになるのだが、物語全編のネタとしてもこれだけであり、その他に広がることもなく、ちょっと物足りなさを感じてしまった。今作は、ほんとうに、ただ、その事件らしきネタを追いかけて終わるといったものだけであったなと。
何故、前述のような事態になったかといえば、登場人物が増えたからであろう。前作のメインキャラである高樹と田岡にそれぞれ息子ができたことにより、4者による物語の構成となってしまったために、全体的な物語の濃度が薄まってしまった感がある。さらに付け加えれば、今作では田岡の息子である稔に至っては、特に自発的な行動もなく、ただただ人物紹介みたいな感じで出ていただけであった(その割には登場パートはそこそこ多い)。それであれば、物語の構成上は世代交代をして、引き継がれた二人の視点のみで繰り広げられるような感じても良かったのではないかと感じてしまった。
そんなわけで、面白い作品ではあったものの、ちょっと読み足りなさを感じてしまったところも事実。ただ、これが3部作の2作目であり、最後にもう一波乱待ち構えているはずなので、そちらを期待して読んでいくこととしたい。たまには、こういった政治小説を読むのも悪くない。
<内容>
祖父の代から3代続いて新聞記者となった高樹健介。政治家、田岡総司を失墜させようと、彼の周辺を調査していた結果、息子の田岡稔に関して、スキャンダル等のさまざまな事実が浮かび上がる。これらをネタに田岡総司の息の根を止めようとするのだが、健介は田岡の孫である田岡愛海と出会い、次第に仲を深めていくこととなり・・・・・・
<感想>
文庫版で読み続けていた「小さき王たち」三部作もこれで最後。非常に読みやすく、面白い作品とも思えたものの、期待していた展開がなされなく、最終的にはかなりがっかりしてしまった。
政治小説を期待して読んでいたのだが、その内容がどんどんと薄まって行った。第一部こそ、新聞記者の活動と政治家の様相が濃厚に描かれていたという感じであったが、それらが第二部、第三部と来て、どんどんと薄まっていってしまった。特に第三部は家族間の話が主となっていて、やや所帯じみた小説となっていたような印象である。
さらに言えば、第二部、第三部に関しては、読んでいる最中に、だいたい結末の予想がついてしまい、物語上の波乱が起きるというようなものも特になかった。また、この第三部では、単なる恋愛小説みたいになってしまっていて、政治やら新聞記者の世界はどこへやら、という感じであった。
また、本書の特徴としては三世代に渡って描いた物語という点が大きいと思われるのだが、読んでいて三世代の絆が全く感じられないというのもどうかと思えた。二世代目に関しては、空気でしかなかったし、しかも世代間で統一した意思が感じられるどころか、どんどんと絆が緩んでいってしまっている様相は悲しい限りであった。こういう感じであると、世代を通して描いた意味がなかったように思えてならなかった。それであれば、いっそうのこと第一世代の新聞記者と政治家の二人を主軸とした物語のみで良かったかなと。
というわけで、読んでいくごとに段々と期待した方向から遠ざかって行ってしまうところが残念という印象のみで終わってしまった。“小さき王たち”というタイトルからして、こういうものが書きたいという意図から書かれたものではあると思われるのだが、物語全体としても“小さい”終わり方をしてしまったように思えてしまう。
<内容>
入学当初、ささいなミスにより、クラスメイトたちから無視され、幽霊のような存在となった一居士架(いちこじ かける)。そんな架の学校生活は、席替えにより彼の前に玖波高町(くば たかまち)が座ったことから変わり始める。唯一、架に話しかけてくれるクラスメイトができ、放課後の図書館でもともに過ごすようになる。しかし、高町のことをよく知るようになったことから、架は彼女の悩みに気づき始め・・・・・・
<感想>
ミステリというよりもライトノベルズ系のボーイ・ミーツ・ガール的な作品。もともと“Kindle ダイレクト・パブリッシング”で出版された作品を加筆訂正のうえ書籍化した作品とのこと。
なんとなくミステリっぽいところもあるのだけれど、基本的には学生生活の一コマ。しかも、いじめられっ子(厳密にはいじめられっ子というわけでもないのかもしれない)の視点からそれが延々と続けられるわけで、読んでいてやや退屈に感じられてしまう。主人公らに光が差し込む場面もあれば、影が差す場面もあり、その繰り返しで物語が進行していく。そうして最終的には、その二人の関係が大きく動くこととなる事件が起こるというもの。
学園生活を描いたライトノベルズ系の作品を読む、ということでとらえれば、決して悪くない作品ではないだろうか。ただ、ミステリを読むというスタンスであると、物足りないと思えるであろう。個人的には、ミステリ・フロンティアから出版する必要はなかったのでは? と、どうしても感じてしまう。
<内容>
5年3組の担任教師となった柿崎はクラスの一同に向けて「今年一年、このクラスのみんなでゲームをしませんか」と話し始める。“ニンテイ”と名付けられたゲームに、クラスの子供たちは戸惑いながらも徐々に慣れ親しんでゆき・・・・・・
<感想>
これはミステリ的にどうこうというよりも、まず内容自体に興味がもてなかった。実際のところミステリとしては薄味であり、基本的には小学校の生徒たちの生活ぶりや、担当教員たちの仕事ぶりといった描写が多かった。その内容に興味を持てるかどうかで、人によって良し悪しは変わってくると思われる。
最初、かつて起きた事件を思い起こさせるような場面から始まり、そして過去での5年3組の生徒たちの生活ぶりが描かれてゆく。物語は5年3組の生徒・山坂百音によるパートと、5年3組の担任である柿崎の同僚である田児あやめのパートの、二つにより並行して語られることとなる。
注目すべき点は、やはりクラス一同で行われる“ニンテイ”と呼ばれるゲームであるのだが、個人的にはただ単にクラスの行事で行われていたゲームぐらいの印象でしかない。一応、後半に起きるとある事件のなかでその“ニンテイ”が深くかかわってくるものの、それが5年3組の生徒たち以外の者を巻き込んでゲームを行わせる吸引力や必然性があるのかというと、微妙なように思われた。
また、この作品で一番気になるところは、なんらかの事件が起きたことにより、何か大変なことが起きたという事を終始、匂わせていること。それが実際に起きてみると、その事象自体に全く必然性が感じられず、何なんだろうと思わずにはいられなかった。まぁ、そのことにより生徒たちが動揺するというのはわかるが、この長い物語の終着点が“それ”かと拍子抜けしてしまう。
最終的に物凄く暗い雰囲気につつまれて、陰鬱な小説という感じで終わってしまっている。ただ、こういう感じだと5年3組の生徒たちが行ってきたことと担任がゲームを提案したことも含めて、間違いであったという風に結論付けられてしまうようで、それはそれで微妙な感じではないかと・・・・・・
<内容>
青山霜介は、両親の事故死から2年経った今でも、その現実から立ち直ることができないままでいた。高校からエスカレーター式に進む大学に入学し、無気力なままではあったものの、なんとか大学には通い続けていた。そうしたなか、青山は水墨画に出会うこととなる。どのような理由かわからないまま、有名芸術家の篠田湖山に才能を見出された青山は、戸惑いながら水墨画の世界に足を踏み入れてゆくこととなり・・・・・・
<感想>
メフィスト賞受賞作としては珍しく、本屋の店頭に本が積まれていて、出版社等が推している作品のようである。帯を見ると漫画化されるということであるが、それだけの割にはずいぶんと大々的に売ろうとしているなと意気込みが感じられた。そして実際に読んでみると・・・・・・これが凄く面白かった。
作品を読む前に、水墨画という芸術を描いた作品であるというようなことが書かれていたので、ミステリではないということはわかった。個人的にはミステリ外のものは、あまり興味がなく、そういった作品を読むことは少ない。ただ、メフィスト賞受賞作は全て読んでいるので、この作品についても期待せずに読み始めたものの、すると一気に作品に引き込まれることとなった。
内容は両親の死から立ち直れず、虚無的に生きてきた青年が水墨画の世界に引き込まれ、人生の再生をはかるという話。実は物語に関しては、王道と言うか、そんなに変わった展開はなく、いたって普通のストーリーと言えるかもしれない。ただ、水墨画の世界については繊細な描写と共に丁寧に魅力的に書き込まれている。主人公が水墨画の世界に感動すると同時に、読む側の方もその世界に没頭させられることとなる。
これは書き手の技量が素晴らしいということなのであろう。一見、普通のストーリーと思えるものの、一度読み始めたら、そこから目を離せなく魔力を感じられた。年をとってから、一気に作品を読み通すことが少なくなってきたのだが、この作品は一気に読み通してしまった。この著者であれば、別の背景の世界を描いても素晴らしい作品に仕上げられるのではないかという可能性が感じられる。久々にミステリ以外で素晴らしいと感じられた一冊。
<内容>
女子高生の津上有騎はストーカーに悩まされていた。何者かわからない男から手紙が来たり、後をつけられたりということが続いていた。そんな状況を解決してくれたのが、同じクラスの水瀬鮎子。何かしら人にかまいたがる鮎子は、いつもひかえめな長岡茉歩を守るかのように引き連れていた。有騎はストーカーの事件の後から鮎子や茉歩と一緒に過ごすようになったが、ある時から茉歩が華原美雲と連れ添ううようになった。その華原は悪い噂が付きまという人物であり・・・・・・
<感想>
青春ミステリというよりは、単なる青春小説に終わってしまったという印象。ミステリっぽい展開になりそうでならず、あまりすっきりとした印象は持てなかった。
主人公は、2人の同じクラスのアクの強い女子高生と関わることとなるのだが、それぞれに抱くイメージが互いに別々に話を聞くとそれぞれが異なるものであることを知る。主人公はしだいに、どちらが本当のことを言っていて、どちらが彼女の本当の見方であるのかがわからなくなっていく。そして、その彼女たちの間には、もう一人の印象の薄い人物が控えているのである。
そういった状況下というか、話が進むにつ入れて次第に色々とわかってくるのであるが、基本的に話自体に興味が持てなかった。ミステリというよりも、単に人を信用するかしないか、どちら側に立つかというものを優柔不断に決めかねているというだけのよう。また、そうした話のなかで館に住む少女の過去という話も入って来るものの、物語上必要なのか余分なのかということさえもわかりづらい。
そんな感じであまり面白いとは思えなかった作品。タイトルを見た時には面白そうだと思えたのだが・・・・・・