一九八四年 NINETEEN EIGHTY-FOUR (George Orwell)
1949年 出版
<内容>
“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは、真理省記録局に勤務し、歴史の改ざんを行うという仕事をしていた。ウィンストンは、完全に管理される生活と貧しい生活に不満を抱き、今の社会体制に不審を抱くようになってゆく。そうしたなか、美女ジュリアと出会い、恋に落ち、隠れて奔放な生活を送り始めることとなる。社会体制に反する生活を送りながら、ウィンストンは積極的に体制に反する行動に手を染めようと決意するのであったが・・・・・・
<感想>
名前は聞いたことがあるが触れたことさえなかった作品。新訳版が出たののをきっかけに購入して(といっても既に7年前に出た積読の書)読んでみた。ブラッドベリの「華氏451度」のような感じなのかなと思っていたのだが、それよりもさらに政治色が濃い作品。
近未来の世界を描いたという設定ゆえにSFという見方もあるのかもしれないが、これは文学作品といって過言ではなかろう。エンターテイメント性を排除したガチガチの全体主義という恐怖政治の世界を描いた作品である。
最初は虐げられていたものが徐々に希望を見出していくという作品なのかと思っていたのだが、そんな甘さの欠片も感じさせない展開が待ち受けている。そんじょそこらのホラー作品よりも恐ろしい現実的に有りうる恐怖を描いている。特にこの2016年の時代に読んでもこうした恐怖政治が行われていた国がかつてあり、現在でもこういった国があると容易に想像できてしまう。ゆえに、単なる空想小説ではなく、ノン・フィクション小説のようにさえ感じられてしまうのである。
何にせよ、ものすごくインパクトのある作品だなと。こうした作品を自由に手に取り読める喜びを我々はかみしめなければならないのかもしれない。
グレイベアド 子供のいない惑星 Greybeard (Brian W. Aldiss)
1964年 出版
<内容>
かつて起きた“変事”により、赤ん坊が生まれなくなり、老人のみとなりゆく世界。そうしたなかの閉鎖された村で暮らす“クレイグベアド(灰色ひげ)”と呼ばれるアルジャーノン・ティンバレンとその妻マーサ。その村でさえも、凶事が起こり、村から全員が逃げ出さなければならない羽目に。夫婦二人と、村人数人が船に乗り、別の土地へと向かうことに。そんなおり、クレイグベアドはこれまでの自分の人生を思い起こし・・・・・・
<感想>
2011年の創元文庫復刊フェアで購入した作品。子供が生まれずに、年を経るごとに老人ばかりの世界になってゆくという絶望的な世界の様相を描いている。
本書を読みながら思ったのは、頭に映像を浮かび上がらせながら読むことができるということ。何故か、場面場面が鮮明に映像化されるという感じで読むことができた。テーマ設定が複雑ではないからか、もしくは最近のゲームなどでは廃退した世界が描かれることが多いからか、何故か映像を頭に思い浮かべることが容易であった。
ただ、物語の行く末がわからないという点では読みづらかったかなと。どう考えても絶望的な世界であり、その行く末に輝かしい未来が待ち受けているとは到底考えることはできないもの。そして、ただ逃避行めいた行為を続ける主人公たちでさえも、その日その日を生き延びるのが精一杯という感じ。
最初、いきなり廃退した世界から物語が始まってゆくものの、物語の途中途中で過去の場面が表されている。それにより、過去に何が起きたのか、そして何故こういう世界になっていったのかが徐々に明らかとなってゆく。
そして最後には、人類にとってはやや残酷めいた未来が待ち受けているように描かれている。その様相を見ると、何気にこの作品は社会派的な思惑が強い作品であったのかなと感じてしまう。実のところ、最初から最後まで人類の過ちを攻め立てるように描いた作品であったのかと。
ビンティ 調和師の旅立ち Binti The Complete Trilogy (Nnedi Okorafor)
2015、2017年 出版
<内容>
ヒンバ族の少女ビンティは、父親譲りの調和師としての能力を認められ、やがては父親の跡を継ぐことを期待されていた。そんなビンティは優秀ゆえに、銀河系一の名門ウウムザ大学への入学資格を得た。一族の反対を押し切り、ビンティは宇宙船に乗りこみ、旅に出る。共に大学へと向かうのは、ビンティ以外はクーシュ族の人々であったが、ビンティは彼らとうまくすごすことができ、大学生活への希望は高まるばかり。そんなとき、宇宙船が異性種族メデュースに襲撃され、ビンティ以外のほとんど全員が殺害される羽目となり・・・・・・
<感想>
元々は中編として刊行された3作品を一冊の本にまとめた作品とのこと。少数部族の少女ビンティの旅路を壮大なスケールで描いた作品。
少数部族の掟の中で生きてきた少女の人生と、その後の宇宙への旅立ちという壮大さとのスケールが違うからこそ、その内容に魅力を感じてしまう。また、異星人とのコンタクト、そしてその後の地球に戻っての異星人間の争い、そして調和師としてビンティがそれを止めようとする様相は読んでいて飽きなかった。ハードSFというほどの内容でもないので読みやすく、またストーリーにも惹かれるものがあった。
ただし、手放しで面白かったかといわれると、微妙と感じられたところが多々ある。なんといっても、ビンティが大学へと行ってから、帰ってくるまでの期間があまりにも早すぎたのではないかというところ。そこはもっと大学の様子を描いてもらいたかった。さらには、基本的には全ての行動をビンティが選んでいるにもかかわらず、そこで起きたことに対し不満ばかり述べているのもどうかと思えた。そして、“調停師”という役割が、ややわかりにくかったというか、戦争を本当に止められたのかどうかというところが、若干あやふやであったような。
読んでいて、そんな不満もあったものの、基本的には面白く読むことができた。読みやすいエンターテイメント系のSF作品として、良質な作品ではないかと思われる。