星影龍三  短編作品別 内容・感想

赤い密室   

1955年08月 「探偵実話」
2007年04月 光文社 光文社文庫(「消えた奇術師」収録)

<内容>
 解剖室で発見されたバラバラ死体。部屋は施錠されており、限定された人物しか入ることができない。この状況下で犯人はどのようにして犯行を行ったのか?

<感想>
 解剖室、解剖実習生といった舞台での密室でのバラバラ死体。トリック、真犯人、それぞれうまく作り上げられた密室ミステリであると感心させられる内容。鮎川氏による密室ものでは一番のできかもしれない。


黄色い悪魔   

1955年08月 「探偵実話」
2007年04月 光文社 光文社文庫(「消えた奇術師」収録)

<内容>
 愛人が内側から閉ざされた浴室の中で死体として発見された。被害者は生前、“黄色い悪魔”と名乗る者から脅迫を受けていたらしいが・・・・・・

<感想>
“黄色い悪魔”という脅迫状から、密室での死体という流れがうまくできている。さらには、これも犯人の正体がなかなか意外。


消えた奇術師   

1956年11月 「講談倶楽部」
2007年04月 光文社 光文社文庫(「消えた奇術師」収録)

<内容>
 四人組の奇術団の団員がひとりまたひとりと不可解な死を遂げてゆく。犯人の目的はいったい!?

<感想>
 スピード・サスペンス・ミステリという感じ。登場人物が少ない故に、犯人が限定されてしまっているが、サスペンスと考えれば、アリなのかも。


白い密室   

1958年01月 「宝石」
2007年04月 光文社 光文社文庫(「消えた奇術師」収録)

<内容>
 雪の降りしきる中、自宅で発見された教授の死体。残された足跡は発見者である男女の二人のものだけ。事件の真相は?

<感想>
 雪上の足跡もの。トリックは普通という感じであるが、突如あらわになる真犯人の正体が見どころ。


妖塔記   

1958年05月 「講談倶楽部」
2007年04月 光文社 光文社文庫(「消えた奇術師」収録)

<内容>
“シバの眼”と呼ばれる宝石を巡る奇譚。その話を聞いていた星影龍三は、謎は合理的に説明できると・・・・・・

<感想>
 他の星影龍三ものとは違って、落ち着いた雰囲気の物語という感じ。過去に起きた綺譚を聞いて星影が推理をするという内容。


道化師の檻   

1958年05月 「宝石」
2007年06月 光文社 光文社文庫(「悪魔はここに」収録)

<内容>
 バンドの楽団が住むアパートでボーカルの女が殺害された。現場では不審なピエロの姿が目撃されていたのだが、そのピエロは謎の消失を遂げる。果たして事件の真相は・・・・・・

<感想>
 ピエロの存在が、物語上際立っているのだが、要はその目立ったピエロを利用したアリバイトリックもの。タイムスケジュールを用いてアリバイの確認がなされ、そこから星影龍三の推理が始まってゆく。なかなかうまく出来たアリバイ・ミステリであると思われる。


薔薇荘殺人事件   

1958年08月 「宝石」
2007年06月 光文社 光文社文庫(「悪魔はここに」収録)

<内容>
 神奈川県に小栗虫太郎の“黒死館”を模した“薔薇荘”という建物があった。推理作家・鮎川哲也は知人の星影龍三と共に横浜見物をしようとしていたら、星影の知人である森警視に誘われ、薔薇荘で起きた殺人現場へと行くことに。現在、学生たちが住む館で、警察の捜査後もさらなる殺人事件が起き・・・・・・

<感想>
“黒死館”を模した“薔薇荘”という雰囲気があまり出ていないのがもったいない。長編化して、もっとそのへんを描き切ってもらったほうが良かったのでは、と思いつつも、それは鮎川氏の作風にあわないともいえそう。“色覚”を利用しての犯人当てとなっているのだが、それだけで終わってしまうのはもったいない設定。


悪魔はここに   

1959年01月 「宝石」
2007年06月 光文社 光文社文庫(「悪魔はここに」収録)

<内容>
 推理作家・鮎川哲也は知人である資産家の山荘へとまねかれ、大雨の中やっとのことでたどり着く。そこには、資産家と甥たちがおり、さらには最近になって消息が知れた姪も招かれていた。そして翌朝、その資産家が死体で発見されることに。動機は相続争いか? 大雨で警察がたどり着けない中、次々と殺人事件が起き・・・・・・

<感想>
 事件現場において、ひとつのものが、さかさまに置かれているという不可解な連続殺人事件。ただ、その謎自体がちょっと弱かったかなと。それでも、トリックのための伏線や、物語上の伏線などもしっかりと張り巡らされている作品。


青い密室   

1961年05月 「宝石」
2007年04月 光文社 光文社文庫(「消えた奇術師」収録)

<内容>
 劇団関係者が住むアパートにて発見された死体。その部屋は内側から鍵がかけられており、鍵は部屋のなかで発見された。犯人はいったいどのようにして密室を構築したのか?

<感想>
 地味な感じがするが、なかなかうまくできてる作品。これまた密室トリックよりも真犯人の正体の方が驚かされる。この小説を書いたのち、「鮎川哲也は密室がへたくそだ」と言われたらしく、それからほとんど密室トリック作品を書かなくなったとのこと。


砂とくらげと   

1961年10月 「宝石」
2007年06月 光文社 光文社文庫(「悪魔はここに」収録)

<内容>
 かつて鮎川哲也が事件に遭遇した薔薇荘にて、またもや殺人事件が。今度は薔薇荘に宿泊していた若い二人の女が砂浜で死亡しているのを発見される。しかし、その砂浜に人が出入りした形跡はないというのであったが・・・・・・

<感想>
 薔薇荘再び・・・・・・といいたいところだが、建物の外での事件(そういえば「薔薇荘殺人事件」も第一の犯罪は砂浜だったような)。事件もひとつのみで、短めの作品となっている。似たようなミステリがそこここで書かれているように思えるような内容。何気に殺人事件と海辺というのはマッチしている?




作品一覧に戻る

著者一覧に戻る

Top へ戻る