その他の作家 ま行 作品別 内容・感想

白骨の処女   5.5点

1932年05月 新潮社 新作探偵小説全集第8
2016年06月 河出書房新社 河出文庫

<内容>
 都内にて放置された盗難車両から青年の変死体が発見される。新聞記者である神尾はその事件の発見者であり、やがて被害者が新潟の資産家の娘・山津瑛子の婚約者であることを突き止める。すると、その当の山津瑛子が東京を訪れ、神尾に対し、事件に不審なものを感じるのだと告げる。その後、新潟で瑛子が行方不明になるという事件が起き・・・・・・

<感想>
 80年以上も前に書かれた探偵小説の復刊作品。この作品は森下雨村氏の処女作でもある。

 読んだ感想はというと、ごちゃごちゃしているというか、あまりにも視点が定まらない作品であるなと感じられた。序章では主人公が神尾という新聞記者なのかと思わせておいて、その後は新潟に住む永田という新聞社の客員とかいう素性のわかりにくい人物。ただ、では物語の進行が永田に移り、そこから全てが永田の視点になってゆくかというとそういうわけでもなく、また神尾に移ったりと、どこか全体的にあやふやな感じ。

 事件自体も、最初に東京で青年の変死体が見つかるものの、それはメインではなく、主となる事件はあくまでも資産家の令嬢失踪事件。ただし、この失踪についても死体が発見されたわけではないので、これにかんしても、あやふやな感じでの進行となってゆく。

 全体的に何を基盤として全体を見ていったよいのかがわかりづらく、その割には登場人物らの関係性を複雑にしてゆくので、どうにも内容を把握しにくい。最終的にうまく話をつなげていると思われる部分もあるものの、もう少しうまく書けたのではないかと感じられる部分もある。処女作であるから仕方のない部分もあるかもしれないが、なんとなく惜しい大作という印象が強い。


消えたダイヤ   5.5点

1930年03月 改造社 単行本(「日本探偵小説全集第二篇 森下雨村集」収録)
2016年11月 河出書房新社 河出文庫

<内容>
 定期船が沖合で破損し、もうすぐ沈没しようというとき、ひとりの男が救命ボートに乗ろうとする女性に“大事なものを預かってほしい”と懇願する。さらに、貴重なものなので不審な者に注意するようにと言われた女性は、快く依頼を引き受ける。船上で男が預けたものはロマノフ王朝に伝わるダイヤモンドであり、その後多くの者たちが、ダイヤを預けられた女性を探そうと争奪戦が繰り広げられ・・・・・・

<感想>
「白骨の処女」に続いて森下雨村氏の作品が河出文庫にて復刊されたのでこちらも購入して読んでみた。これら2冊を読んだ感じでは、本格ミステリを書く作家というよりも、広い意味での色々なミステリを欠いていた作家という印象(といっても、それほど多くの長編は書いていないようだが)。

 こちらの作品は冒険譚という感じの内容。高価なダイヤモンドを巡る争奪戦が繰り広げられるジュブナイル的な作品。イメージとしては、クリスティー描くトミー&タペンス(素人の男女が探偵となり冒険をしていくというというもの)を思い起こすようなもの。

 まぁ、面白くはあったものの、普通の昔に書かれた冒険小説という感じ。1930年に書かれた小説ということで、そこに読みどころはあるかもしれない。全体的に意外と明るい雰囲気であるところが特徴というか、ジュブナイル的。




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