パリから来た紳士   カー短編全集3

The Gentleman from Paris

「パリから来た紳士」 (The Gentleman form Paris 1950)
 男はフランスから長い航海を経て、アメリカにたどり着く。彼はアメリカに住む老婦人を説得して、彼女の遺産を困窮する実の娘に譲らせるためにやって来た。酒場で老婦人の家を訊き、訪れてみると、そこでは奇怪な出来事が!
 老婦人宅では弁護士によって遺言状の書き換えがなされたのに、その遺言状の所在が知れなくなったというのだ。老婦人が一晩、書き換えた遺言状を手元に置いておきたいということであったのだが、その遺言状は消えうせ老婦人は全身麻痺に!! 老婦人はなんらかのヒントを皆に与えようと、一つのジェスチャーを繰り返すのであるが、その意味を誰も理解できず、彼女の部屋から遺言状を見つけることはできなかった。
 フランスからやって来た男は失望して酒場に取って返すと、その片隅にひとりグラスを眺めている男がいた。その男に、ついこの奇怪な出来事を語ると・・・・・・

「見えぬ手の殺人」 (Invisible Hands 1958)
 岬の岩近くの浜辺で発見された死体は、絞殺されているのに浜辺に足跡が見つからなかった。海のほうから来るとすると、二十フィートの岩肌を登らなければならなく、人間業では不可能である。しかしフェル博士は殺人のあった時刻に射撃練習の音が聞こえたのを手がかりに・・・・・・

「ことわざ殺人事件」 (The Proverbial Murder 1943)
 妻の密告によって、スパイと目されているドイツ人教授が、特別捜査班の監視している最中に銃によって撃たれて死ぬことに! その弾丸は隣人で教授とは犬猿の仲で知られる大佐のライフルから撃たれたものと判明する。しかし、フェル博士は山猫の剥製の紛失と大量にむしりとられた苔の話を持ち出して、この犯罪が巧妙に仕組まれたものである所以を解き明かす。

「とりちがえた問題」 (The Wrong Problem 1945)
 フェル博士は偶然遭遇した白髪の小男から奇妙な回想を聞くことに。それは三十年前に池の中の島、そして屋根裏部屋で起こった密室殺人であった。それを聞いたフェル博士は・・・・・・

「外交官的な、あまりにも外交官的な」 (Strictly Diplomatic 1946)
 安静療法の後に、美人スパイとひと騒動でも起こしたほうが健康によいと医者に勧められた弁護士がほんとうに一目で恋に陥ってしまった。ところが楽しい語らいのある日、相手の女性が消えうせてしまったのである。彼女は並木道を通り抜けたはずなのに、その出口に控えていた人は彼女の姿を見かけなかったという。この道を通り抜けなければ外に出るのは不可能なはずなのだが・・・・・・

「ウィリアム・ウィルソンの職業」 (William Wilson's Racket 1944)
 最年少の大臣として名声鳴り響く政治家の婚約者の伯爵令嬢が、マーチ大佐のもとに訴えてきた。婚約者がパーティーの席上失態を演じたばかりでなく、ある事務所で他の娘を膝に乗せている場面に出くわすことに! 彼に問いただそうと部屋から出てくるのを待ち受けていたのだが彼は姿を表さず、部屋に戻ってみると服や持ち物を一切残しながら体だけがビルの一室から消えてしまったのだ!!

「空部屋」 (The Empty Flat 1945)
 深夜のマンションで静寂を震わせ続けるラジオの音。その騒音が仲介となり、それぞれ震源地を相手の部屋だと思っていた二人が顔を合わせることに。二人が調べてみるとその騒音は空き部屋から鳴り響くものでその部屋を探ってみると、そこには男の死体が・・・・・・

「黒いキャビネット」 (The Black Cabinet)
 アメリカ人を父にイタリア人を母にして生まれた女は、9歳のとき、母親らの企てたナポレオン三世の暗殺失敗を目の当たりにする。それから十年、周到な準備の後、暗殺実行に踏み切ろうとする寸前に邪魔が入った。刻々と迫る時間の前に、立ちはだかる正体不明の人物とは・・・・・・

「奇蹟を解く男」 (All in a Maze 1956)
 結婚前にロンドン観光にやって来た女性の遭遇した危険と不可解な謎は、人のよい新聞記者の口添えがあってH・M卿の元に持ち込まれる。誰もいないはずの回廊から聞こえてくる死の予告。密閉された部屋でひねられているガスの栓。女性の身辺に次々と迫り来る魔の手。事件を聞きH・M卿が達した答えとは!?



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