悪党どものお楽しみ
Rogues in Clover   1929

「シンボル」
 18歳のときに家を飛び出したビル・パームリーが、6年間にわたるカード詐欺師、いかさま師、賭博師生活の果てにたどりついた故郷。ビルを出迎えた厳格な父親は、息子の目を見て即座にその放蕩ぶりを見抜き、「お前が勝てばここに残る。負けたら出て行く」とポーカーの勝負を挑む。さて、その結果やいかに?

「カードの出方」
 ギャンブル生活から足を洗って、田舎町の農夫となったビル。そんな彼がたまたま、車を運転していて田舎道の溝にはまってしまった女性を助けたことから、その夫をいかさまポーカーの被害から救うことになる。
 ビルを長いこと悩ませることになるトニー・クラグホーンとの出会いを描いた一編。

「ポーカー・ドッグ」
 トニーからの助けを求める電報にも重い腰をあげようとしなかったビルだが、夫人に懇願されては駆けつけないわけにはいかない。聞けば、トニーは夫人の従兄弟の青年がポーカーで巻き上げられたお金を取り戻そうとして、かえって自分自身が深みにはまってしまったという。結局ビルは、カードを隠し持つのが不可能だったにもかかわらず相手の手札が変わっていたという謎に、挑むことになった。ビルはいかさまを暴く小道具として犬を用意してきたのだが・・・・・・

「赤と黒」
 どこにでも鼻つまみ者はいるもので、トニーの所属するヒマラヤ・クラブの会員ホイットニーも、そのあまりの卑しさゆえに、みなの嫌悪の対象になっていた。こんな同情の余地のない被害者が、ルーレットで黒が13回連続して出たために大負けしたというのだから、内心では喝采を送りたいくらいだったが、トニーはいらずら心を起こして、ビルを呼ぶことにする。
 ビルが暴いた、ルーレットのいかさまの謎とは?

「良心の問題」
 権威あるウィンザー・クラブでトニーがまたトラブルに足を突っ込むはめに。トニーは、裕福な老人が貧乏な青年とカシーノの勝負をして、毎晩のように金を巻きあげられているのを見て、いかさまの被害に遭っているとうかつにも断言してしまったがために、それを証明せざるを得ないはめに陥る。例によってビルに泣きついてはみたものの、さすがのビルにも、他人の手札に工作する手段は思い浮かばない・・・・・・

「ビギナーズ・ラック」
 ビルも一目を置くポーカー・プレイヤー、ピート・カーニーにいかさまを暴いておしいという依頼の手紙がフロリダから送られてくる。それに目を通したビルはこともあろうに、トニーを自分の替わりに現地にやろうとする。きみならビギナーズ・ラックに恵まれ、初々しい気持ちで問題にあたることができるだろう、とおだてて。しかし、張り切って乗り込んだトニーはそこで恐ろしいはめに陥ることに・・・・・・

「火の柱」
 みずからの偶像ともいうべき友人が負けるケースなど想定すらしたことがなかったため、ビルがピーチ・ポーカーで大敗したと聞いたとき、トニーはただならぬ狼狽ぶりを見せた。だが相手がトニーの足元にも及ばないプレイヤーだと知って、ビルはおのれのプライドにかけて、いかさまトリックをつきとめようとする。

「アカニレの皮」
 これまでとは一転して、チェスの対戦が物語りの中心に据えられている。ここに登場するのは、鼻つまみ者の極めつけハンプトン・ホウクストラーテン。この御仁、ひとりよがりで独善的なばかりか、対戦中にすさまじい匂いの葉巻を吸っては相手の思考力を鈍らせ、まんまと勝ちをおさめてしまうのだ。重いあまったチェス・クラブの面々はビルに嘆願書を送り、なんとかこの男に一泡ふかせてやろうとする。



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