朱色の研究


「2年前の未解決殺人事件を再調査してほしい。これが先生のゼミに入った本当の目的です」
 臨床学者・火村英生が、過去の体験から毒々しいオレンジ色を恐怖する教え子・貴島朱美から突然の依頼を受ける。彼女は15歳のとき親戚に引き取られて暮らしていたが、その家が全焼し、叔父が焼け死ぬところを目撃したという。また、2年前にはとある事件に巻き込まれ、彼女の知人が殺されたが、まだ犯人は捕まっていないという。

 その後、火村は有栖川の家で夜通しその依頼について語り合うことに。そして明け方彼らの目を覚ますかのように一本の電話がかかる。有栖の家にかかってきた電話は火村あてのもので、「オランジェ夕陽丘の806号室に行け」という内容であった。不穏なものを感じた二人は現場へと向かう。そしてそのマンションには一人の男の死体があった。

 火村らは警察に連絡し、警察が到着し取調べが始まる。そこで火村が警察にあることを明かす。それは学生から頼まれた二年前の事件を調査するために昨日このマンションに住む、宗像正明という人物から話しを聞いていたという。関連の可能性を考え宗像がよばれ、死体の確認をしてもらうと、叔父の山内陽平(宗像の母の兄)だという。

 その後、宗像正明の母、真知と妹、亜紀らが連絡を受け現場へ到着。そして自然と二年前の事件の話しが出て、そのときの写真により火村らが今朝、現場に来たときにすれ違った男が二年前の事件の面子の中にいたことが分かる。ライターの六人部四郎。早速、彼は参考人として現場に呼ばれることに。警察に呼び出された六人部は実際にその日の朝にここにいたと証言する。しかも昨日の夜から何者かに呼び出されて・・・・・・

 その何者かは六人部を脅迫し、「午前1時にオランジェ夕陽丘の北側の階段を上れ。何階かに次の指示が書いてある封筒がある」と。六人部はそのとおり実行すると、十四階に封筒があり、「エレベーターで8階に降りて806号室へ入れ。そこで次の連絡を待て。午前5時半までに連絡がなければ帰宅してよし。」との指示が書いてあったという。六人部は結局その指示に従い、5時半を過ぎてから帰宅していったという。

 しかし、そうすると火村たちが806号室に入ったのは6時過ぎであったため、その短い時間の間に犯人は山内の死体をその部屋に運び込んだことになるが、それでは時間的に苦しいことになる。そうするとおのずと有力な容疑者は六人部に・・・・・・
 その後の調べでも六人部に有利な証拠は出てこなかったが、火村の実験によって六人部を騙したトリックがあきらかにされる。

 そして、彼らは舞台を移し、二年前に起きた事件の現場へとおもむき犯罪を検証する。

 二年前、和歌山の周参見の別荘で大野夕雨子という女性が殺された。彼女は撲殺された後、さらに崖の上から石を落とされ顔を潰されていた。
 そのとき一緒に別荘に泊まっていたのは、宗像真知、宗像正明、宗像亜紀、貴島朱美、山内陽平、中村、六人部、升田。
 大野と山内は元恋人同士であったが、わだかまりなく綺麗に別れその後も普通に会っていたという。また別荘に宿泊していたとき升田は大野をはさみ中村と六人部が口論をしていたのを目撃したという。また、二年前にビデオカメラでとった彼らの様子を参考に火村らは事件の謎を検証する。




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