木製の王子
探偵の木更津悠也とその友人の香月は雑誌に載っていた、芸術家・白樫宗尚の家の内部にあるとあるマークを見て、過去の未解決の事件を思い起こすことに。土砂崩れにより発見された遺体が殺害された形跡があるので木更津の元に依頼が来たのだが、結局その事件は迷宮入りになっていた。そしてその死体発見現場から見つけられた指輪と同じ紋章が白樫家のマークと酷似していたのである。木更津は白樫家の調査を独自に進めることに・・・・・・
編集部に勤める安城則定は故郷の山口を離れ京都に単身働きにきていた。彼は自分の出生を探るという目的を胸に秘めながら。彼の母親の死に際に聞かされた彼の出生に関わる事実。彼の育ての母親は子供を産める体ではなく、駅で他の人の子供を見たときに連れ去ってきたというのだ。連れ去るときにその子の実の母親が「のりさだ、のりさだ」と叫んだので彼をその名で呼ぶようにしたという。そして彼の首には一つの指輪が紐で吊るされていたのであった。そして京都で自分の出生の手がかりを探していた則定はとある雑誌に芸術家の白樫家の写真が掲載されていて、自分の指輪と同じ紋をつけているのを発見する。
白樫家に近づきたいと思う安城であったがきっかけがつかめないでいたとき、白樫家のことについて聞いていた編集者の先輩の倉田から当てがあるといわれる。倉田はクラッシック鑑賞が趣味で、たまたま同じ趣味を持っていた白樫家の晃佳と知り合いだという。安城は倉田に白樫晃佳に紹介してもらい、少し白樫家に近づくことができた。
木更津の調べによると、白樫宗尚は突然新人賞をとってデビューしたが、しばらくの間は家族や家系がベールに隠されていたという。そして、7年前京都に居を構え孫が生まれたときにその“閉ざされた家系”を明らかにする。
安城は白樫家に取材する機会をつかむ。ただ、同行するのは倉田であったはずが、インフルエンザで倒れたために、代行の如月鳥有と取材に行くことに。考えていたよりも温和な人物であった白樫宗尚の取材を終えた後、安城は晃佳に誘われ彼女のピアノを二人きりで聞くことになる。そしてその場をチャンスと見て、安城は晃佳に自分の出生と指輪について打ち明け、「あなたは私の姉では?」と打ち明ける。晃佳は何かを納得しながらも動揺し、明日には全てを打ち明けるといって、その場での話しを打ち切ってしまう。
しかし、次の日に晃佳は殺害されてしまう。晃佳は首だけがピアノの鍵盤に置かれた状態で発見される。残りの胴体は邸の中の焼却炉で発見された。
外部から侵入した形跡がないことから晃佳は内部の人間によって殺されたということで捜査が進められる。しかしそれにたいして白樫家の人々の様子は奇妙なことに淡々としている。身内に殺人者がいるはずなのに・・・・・・
警察の捜査は進まぬまま日々が過ぎる。木更津はその状況から犯人を探ろうとミステリー同好会「ピブルの会」にて討議を繰り返す。
そしてある日、倉田と安城がまた白樫家に訪れる機会がやって来る。そしてまたもや安城の行動によって、さらなる事件が起こることに。白樫家で事件が起こる理由は安城則定が“魔”だからと・・・・・・
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