Pの密室


「鈴蘭事件」  (小説現代1999年 5月増刊号メフィスト)
 石塚のもとに犬防里美が幼少の頃に御手洗がセリスト女子大の構内に住んでいたことがあるという情報をもたらす。そして昔、女子大のそばの駐在で警官をしていたものが御手洗が幼稚園の頃に解決した事件のことについて語り始める。
 キヨシの住んでいた女子大のそばにあったバー「ベル」の経営者の娘えり子(5歳)の父がある日車の運転中に埠頭から落ちて亡くなった。そして「ベル」の内部は何者かに荒らされていた。えり子にせがまれたキヨシは一人捜査を始める。
 バーの床に散乱する砕けた「コップだけ」のガラス。それに固執するキヨシ。キヨシからえり子のママへの手紙による忠告。そしてなぜかえり子のママを人質にとって立てこもる電気屋。謎の言葉「すずらん」。五歳の少年だけはすべて知っていた。



「Pの密室」  (小説現代1999年 9月増刊号メフィスト)
 御手洗の幼なじみの橘えり子から石岡は昔の御手洗の話を聞かせてもらっていた。そして御手洗が日本を去ろうとしていた小学校2年のときに一つの事件が起きた。
 画家の土田富太郎とその愛人・天城恭子が殺害されるという事件が起こった。土田は市の小中学校の絵画コンクールの審査員になっており、自宅でその絵画の賞の選考中に殺されたということだった。土田富太郎には妻と子供がいるが別居しており、妻子には金も送らずに愛人と暮らす日々を送っていた。
 この殺人をややこしくしているのは土田家が完全な密室であったということ。家の窓や扉にはすべて鍵がかかっており、犯人の侵入経路がわからない状態であった。しかも現場はぬかるんでおり、家の周囲を歩くと足跡が残ってしまう。足跡は二つ在り、発見者の市役所職員と天城恭子の夫の天城圭吉のものであった。警察は天城圭吉を逮捕するものの殺害方法が分からなく難色を示す。
 絵画コンクールの小学生の部と中学生の部の比率の去年との違い。高圧送電線の鉄塔の位置による土田家の異様な形。土田家の家の中の血と絵の具の後。家の中での殺害現場は? そしてカブトと傘。小学校2年生のキヨシは自ら進んで捜査の中へと入っていく。
 事件は悲しい結末へと。




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