踊る手なが猿
「踊る手なが猿」
亀永純子は新宿西口地下街のB喫茶店でウェイトレスをしている。Bの向かいにQというケーキやがあるのだが、彼女はそのガラスケースの上に置かれた猿の人形に気になることがある。この猿に結ばれている赤いリボンの位置が時によって変わるのだ。そのケーキ屋は年老いた老人と二十代ぐらいの若い娘という組み合わせで、純子は親子だと思っていた。しかし、Bの店長の田川から彼らは親子ではないと・・・・・・
Bの店長・田川は離婚をした四十代の男で、純子とは男女の仲である。その日、田川は仕事中ちょっと出かけてくるといって、彼女に婚約指輪を渡して出ていった。翌日、田川はホテルで毒を飲んで死んでいるのを発見される。警察は自殺に見せかけた他殺ではないかと判断しているようだった。
その後、純子は田口が他のウェイトレスと付き合っていたことや、身辺整理をして行方をくらまそうとしていたことを知る。そして失望の中彼女はQケーキ店から、娘と思っていた女性が飛び出してゆき、初老の男が追いかけていくのを目撃する。純子が彼らの後を追っていくと、初老の男が車道へ飛び出し車にはねられるのを見ることに。若い女が嘆く目の先には新宿の地下街図があった。それを見た純子は・・・・・・
「Y字路」
三田瑛子は自分の部屋で見知らぬ男の死体を発見する。彼女は資産家の婚約者・山岸透に相談することに。山岸は車泥棒が事故にあったというストーリーを作り、坂の下の押しボタン信号を利用しようと計画を練り、二人で実行に移すのだが・・・・・・
吉敷はY字交差点で起きた事故について捜査することになった。スポーツカーとトラックが衝突して、スポーツカーに乗っていた男が死んだのだが、彼の胸には包丁が突き刺さっていたことから単なる事故ではないことを知る。死亡した男は、土木建設に勤務する阿木と言う男。容疑者は三田瑛子という女性で阿木と付き合っていたが山岸と結婚するために関係を清算しようとして今回の事件にいたったと思われた。しかし吉敷が瑛子を尋問してみると、なぜか妙に話がかみあわないのだった・・・・・・
「赤と白の殺意」
子供のころ、軽井沢でよくすごしたはずなのだが、なぜかその頃の記憶が欠落している。欠落した記憶を思いおこそうと、雪のなか車で軽井沢へと向かう。そしてそこで一人の娘とであうのだったが・・・・・・
「暗闇団子」
高校の校舎改築工事の際、江戸時代の墓地にあたる遺跡が発見された。長屋の跡なども発見され、さらに発掘を進めていくと奇妙なものが発見された。
それは樽型の棺の中に男女二体の遺骨と暗闇団子という紙切れ、そして櫛が入っていた。その櫛は精巧なものでよほど高貴なものしか持てないはずのものだった。
その櫛には江戸時代に長屋に住む男と、ある“おいらん”との悲恋の思いが込められているのであった。
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