ifの迷宮


 二年前、殺人事件が起きた。串川兵吉(45歳)は自宅でナイフで刺され、撲殺されていた。凶器のナイフは現場から紛失し、串川は囲炉裏の火に顔と手を突っ込んで倒れ、しかも酸によって歯が溶かされていた。一見、何者か確認できない状態であったが、足紋などから串川本人と断定された。そして、串本の死体が発見された10分後、十キロほど離れた地点の車のトランクから池澤裕児の死体が発見された。この死体発見の前に目撃者がいて、目撃者は車内を掃除していて、トランクが開かれた車に池澤と思われる人物が近づいてきて、車のトランクの中にに入り込んだという。(この現場は串川の家の近く)車の持ち主は現場を移動してからトランクを開けると、そこに池澤の死体を発見する。大急ぎで人を呼んでくるとトランクから死体は消え、大量の血液と頭髪が残されていた。(遺伝子の鑑定によって頭髪と血は別人の遺伝子だと確認され、血は被害者池澤、頭髪は加害者と推定される。)さらにこのときにトランクの中の池澤と携帯で話をしていたものがいた。その人物は八木修。池澤の友人である彼は、池澤から携帯によって「あいつは恐喝者だったから・・・・・・首をやられた・・・・・・あの人の役に立てた・・・・・・宗門の家の近くに埋めてくれ」などと言い残した。そして八木は乗用車のトランクから池澤の死体を奪取し、遺言どおり宗門の近くの山に死体を埋めたという。

 警察が八木の話よって、二年前に埋めた池澤の死体を掘り出そうとしたところ、地すべりの見回り人たちが他の死体(宗門家の人に似た)死体を発見する。その場を逃げ出し、偶然警察の者達と会い現場に戻るがすでに死体は消えていた。そのような不可思議な出来事が起こった中、宗門家で殺人事件が起こった。宗門亜美が何者かに背中をナイフで刺され殺されていた。そして頭と両手は暖炉に突っ込まれ、焼け焦げていた。さらに素足の両足も焼けただれていた。体型や衣服などから宗門亜美と確認され、また亜美の19年前に亡くなった父・継信の遺髪と母・金子の遺伝子によっても亜美本人だと確認される。(亜美は金子が継信の精子を使用して体外受精によって産んだ子供)しかしこのとき遺伝子の照合により継信の遺髪と池澤の血の遺伝子指紋が完全一致した。

 宗門家の現在の家主、清周によって話される父・周の死体保存、周の死体にはエンバーミングが施されていた。土葬による埋葬を行っている宗門家にとって、周の死体が現状のまま長持ちされるようにという妻の意志によってであった。そして先ごろ山で発見された遺体はエンバーミングによって蝋化したかのような周の遺体であった。そして継信の遺体を掘り出して調べたところ継信が19年前に確かに志望していることが確認された。また、捜索によって発見された池澤の死体の遺伝子が加害者のものと思われていた頭髪の遺伝子と一致した。
 そういった出来事の中、発展しつづけるSOMONグループの新しい研究施設が発表されようとする中、その敷地から鉄砲水による災害が起こり、研究所は半壊。負傷者がでる始末となった。そんな中、倒壊した柱によって閉ざされた部屋から宗門静香の刺殺死体が発見される。そして被害者と争ったあとのある静香の爪から犯人の血液と皮膚が発見される。それを遺伝子によって照合したところ、宗門亜美のものと一致した。

 深まる謎に混乱する捜査陣。犯人は時空を超えてきたのだろうか? 犯人を特定するはずの遺伝子鑑定が逆に捜査を混乱させるという皮肉をもたらした。

 百バーセントの血液のキメラ。骨髄移植。曲げ木細工。人工授精による偶然。時間を超えた双生児。そして呪われし、忌まわしき宗門の血。宗門の遺伝子は宗門の家に還る。



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